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生きるべきか死ぬべきか
「何があったか知らないけど、まだ若いんだし、いくらでもやりなおせるよ。ねっ」
「気休めはよして!!」
カカシはなるべく穏やかに話しかけたつもりだったが、彼女は金切り声をあげる。
「生きていたって、いいことなんて何もない!もう死ぬしかないのよ」
「いや、でも、ここから落ちたらかなり痛いし・・・・」
「途中で気を失うから大丈夫よ」女性はカカシの説得など歯牙にも掛けず、今まで以上に柵から身を乗り出した。
彼女の履いていた靴が片方落ち、下にいる野次馬の悲鳴がさらに大きくなる。
屋上で昼寝をしていただけなのに、何故自殺騒動に巻き込まれたのか、カカシにも分からない。
だが、現場に居合わせた以上、黙って見過ごすわけにいかなかった。
「ははぁ、男に二股かけられてたんだー」
「そうよ!しかも、私が浮気相手で、向こうが本命の恋人だったの」
「それは、悲惨だねぇ」
彼女から3メートルほど離れた位置で事情を聞いたカカシは、しきりに頷いている。
「でもさ、そんな男は早めに見限って正解だよ。また浮気を繰り返すかもしれないし、気が休まらないよ」
「・・・・・・」
「君は可愛いし、すぐ新しい恋人が出来るさ」それは自殺を防ぐための出任せではなかった。
大きなすみれ色の瞳が印象的で、微笑みさえあれば、彼女に悪い印象を持つ者はいないはずだ。
タイトスカートから伸びた足は細く、色も白い。
一番可愛いのはもちろんサクラだが、カカシが今まで会ったくノ一の中で、5本の指に入りそうな美女だ。
「・・・じゃあ、あなたが彼氏になってよ」
「え!!?」
自分の瞳を見据えながら呟いた彼女に、カカシは驚きの声をあげる。
「あー、俺はもう結婚してるから」
「やっぱり死ぬわ」
くるりと体を反転させた彼女は、片足を空に向かって踏み出した。
風に煽られ、ただでさえ体は不安定になっている。
指一本の力で押したとしても、彼女は大空に飛び出しそうな感じだ。「わーーー!!!ちょ、ちょっと、待てって!!」
「先生―」
唐突に開かれた扉の音とその声に、振り返ったカカシの顔はたちまちに綻ぶ。
「お弁当、忘れたでしょう。持ってきてあげたわよ」
「サクラvv」
その瞬間、カカシの頭からは自殺志願者の女性のことは綺麗さっぱり消えてしまった。
結婚したばかりの新妻がわざわざ自分に会いにやってきたのだ。
近づいてきたサクラを、カカシは何の迷いもなく抱きしめる。
「今日は腕によりを掛け作った自信作よ。デザート付き!」
「嬉しいな~~v有難うね」
サクラの額にキスをしたカカシは、背後から強烈な殺気が発せられているのを嫌でも感じる。
忘れたままにしてこのままいちゃつきたかったのだが、仕方がない。
「あんた達!!人の目の前でベタベタするんじゃないわよ!!!」
カカシの姿しか視界に入れていなかったサクラは、そのときになってようやく屋上の縁に立つ女性を見付けた。
「あれ、危ないわよ。何してるの?」
「いやー、男にふられて飛び降り自殺するって騒いでるんだよね。それで困ってたところなんだ」
「へぇー」状況を理解したサクラは、とことこと彼女に歩み寄る。
「ねぇ、自殺なんてやめましょうよ。私がいい男紹介してあげますから。ほら」
そう言ってサクラが鞄から出したのは、彼女の周りで一番の二枚目であるサスケの写真だ。
もちろん、自殺志願者の彼女も興味を持ったようで、その写真を食い入るように見つめる。
失恋の痛手を癒すには、新しい恋をするのが一番。
カカシが彼女とサクラの間に割って入らなければ、話はうまくまとまっていたはずだった。「ちょっと、サクラ!!!何でサスケの写真がすぐに出てくるのさ!」
「ああ、昔、手帳に入れたのがそのままになっていたのよ。別に他意はないわよ」
「嘘だ!」
電話で呼び出されたサスケは、建物の入口で待ちかまえていた中忍から話を聞きながら屋上へと向かう。
そこでは、自殺志願者の女性を引き留めるため、カカシとサクラが必死に説得をしているらしい。
それでどうして自分が呼ばれたのかが分からない。
「とにかく呼んでこいって、カカシさんが言ってるらしいですよ」
「そうか」
訝りながらも屋上にたどり着いたサスケが目にした光景は、まさに修羅場だった。「死んでやるーー!!」
「ちょっと先生、落ち着いてよ。馬鹿な真似はやめて!」
「どうせ俺は馬鹿だよ!俺が死んだら、奴と再婚でも何でもすればいいだろ」
「あんた、変な焼き餅やいてるんじゃないわよ。奥さんの昔の男の一人や二人、三人や四人、大目に見なさいよ」
自殺志願者の女性の言葉は、事態を更に悪化させた。
「サクラの浮気者―――!!」
今にも屋上から飛び降りようとするカカシを、サクラと、もう一人の見知らぬ女性が必死に止めている。
どう解釈したらいいか分からず、立ちつくしていたサスケにカカシがいち早く気付いた。
「サスケ!死んだらお前のところに化けて出るからな!!」
「だから、死んじゃ駄目だって」
「あ、こんにちはー。私、サクラさんの知り合いで、花子って言います。よろしく!」
「・・・・」
泣き喚くカカシと怒鳴るサクラと馴れ馴れしく言い寄ってくる女。
早くこの場から立ち去りたい。
サスケは心の底からそう思った。
あとがき??
先生・・・・。
サクラはおそらく10代後半です。