ランプランプ 2


「先生は、もう3つ目の願い事を叶えていたんじゃないの」
パリパリとポテトチップスを食べながらサクラは言う。
カカシの話によると、サクラは病で死んだ例の少女の生まれ変わりだ。
よって、数ヶ月前からカカシに付きまとわれているわけだが、サクラには前世の記憶など全くない。
だが、カカシにいきさつを聞いたとき、素直にそう思った。

「その女の子は、誰かそばにいて欲しかったのよ。そして、先生は願いを叶えた。もう十分じゃない」
「・・・サクラ」
「これで、帰れるわよね」
カカシの依り代となっている古びたランプを突き返したサクラだったが、彼は何故か首を振った。
「俺の望みは願いを叶えるだけでなく、幸せすることなんだ。だから、サクラの幸せを見届けるまでは帰れないよ」
「・・・・もう、十分幸せじゃないの」

 

裕福ではないが金に困らず、両親も健在で、地元の高校に通う15歳。
砂漠で行き倒れていた前世など、想像も付かない幸せぶりだ。
ちなみにカカシとの出会いは、原宿の怪しい露店で古いランプを押し売りされたことに端を発している。
以来、彼はサクラの従兄として春野家に入り込み、彼女の通う高校でも校医として職務を全うする日々だ。

「先生・・・300年も地上にいて生活に慣れちゃったから、帰りたくないだけなんじゃないの」
「ハハハッ」
誤魔化すように笑うカカシは、サクラの頭を撫でると、愛読書へと視線を戻す。
大好きなイチャパラシリーズも、精霊の住む世界には存在しない物だ。
サクモや親戚達は、カカシはすでに帰ってこないものと諦めているらしい。

 

 

「サクラ、カカシさん、お茶が入ったわよー」
ノックの音を聞いたサクラは、慌ててカカシから距離を取って座り直す。
盆を持って部屋に入ってきた母親は、にこにこ顔でマグカップをカカシに手渡した。
「日本茶で良かったのよね」
「はい。有難うございますー」

魔法の影響で、カカシを親戚と思っているサクラの両親は、彼とすこぶる仲がよい。
特に、美形好きの母親はカカシがお気に入りだ。
「居候といわず、このままずっといていいのよ。サクラの婿になって頂戴ね」
「ハハハッ、言われなくてもそのつもりですよー、お母さん」
「ちょ、ちょっと、やめてよ!!!馬鹿!!」
「将来は二世帯住宅かしら〜。あっ、孫は結婚前に出来てもOKよ」

微笑み合うカカシと母親は、サクラの存在は全く無視して話を進めている。
来年のサクラの誕生日に合わせて入籍し、ハワイで挙式、ドレスはデザイナーに注文、考えると今からやることは山ほどあった。
語り合う二人は実に楽しそうだ。
自分のことながら、茶をすするサクラは、もう勝手にしてくという心境だった。

 

 

 

 

「え、もう部屋は一緒にさせられちゃったの!?」
「・・・信じられないわよね。これが親のすることなの」
しくしくと涙するサクラは、昼休みに入るなり両親の暴挙をいのに報告する。
どうせ結婚が前提の二人なのだからと、昨日からサクラはカカシと同じ部屋に押し込められた。
さすがにベッドは別々だが、何か間違いが起きたらとサクラは気が気ではない。
「孫の顔が早く見たいわ〜」と言った時の母親の目はかなり本気だった。

「じゃあ、先生がお腹をすかせているから・・・」
「いってらっしゃーい」
散々に泣きついてから、サクラは二人分の弁当箱を持って椅子から立ち上がる。
それまでサクラは適当に菓子パンを買って食べていたのだが、一度作ったところ思った以上に好評で、以来カカシの分も作る癖がついてしまった。
手を振ってサクラを見送ったいのは、用意してあったカレーパンを大きな口で頬張る。
「・・・でも、嫌いならお弁当作ってあげたりしないわよねぇ」
何だかんだ言いつつ、カカシを気に入っている様子のサクラに、いのは面白そうに笑っていた。

 

 

 

保健室から聞こえてくるのは、仏の教えを伝えるお経。
ではなく、故郷の民謡を歌う声だった。

「・・・・先生、下手なんてもんじゃないわよ。ド下手よ」
「今日は、喉の調子がいいんだよ」
サクラは耳を押さえていたが、カカシは気分が良さそうだった。
誰もいない昼休みだったから良かったが、病人がベッドに寝ていたらかなり縁起が悪そうだ。
おちおち休んでもいられない。

「何だよー、サクラが聞きたいって言ったんだろう」
「そうだけど・・・・」
カカシが地上に留まるきっかけとなった、少女に贈られた歌。
どのようなものだったか、興味があったのだ。
「たまにはお経ソングもいいかもね。じゃあ、手出してよ」
「んっ」
言われるまま、差し出された掌をぎゅっと握ってみる。
ここまでが、サクラが前世に頼んだという願い事。

 

「サクラの、三つ目の願い事って何?富も権力も、今なら何でも叶えてあげるよ」
「んー・・・」
両方の掌を重ねたまま、近づくカカシの瞳をサクラは逸らすことなく見詰め返した。
顔は悪くないが、サクラの好みとは少し違う。
それでも、どこか憎めず、離れがたいのは前世からの因縁のせいだろうか。
「前と一緒、かな」

死ぬまでそばにいて。
息が途絶える瞬間まで手を握って、知らない国の話と、歌を聞かせて欲しい。
ランプの精霊が何人いるか知らないが、叶えてくれるなら彼が良かった。
「了解」
微笑むカカシはそのままサクラと唇を合わせる。

 

 

300年捜して、ようやく出会えた彼女。
その幸せを見届けることが自らの願い。
魔法の力を使わずにすむのだから、この体が人間になっても叶えてあげられそうだった。


あとがき??
カカシ先生とサクラの原宿の出会いから書いていったら、えらい長い話になりそうだったので、大事なところだけ書き出してみました。
こうして見ると、続きがありそうな感じもしますが、何も考えていないです。
ただ、保健医カカシは絶対に譲れない部分。(笑)
最初に考えていたのと180度内容が変わりました。
ちなみにリクは、

・ランプの精カカシ先生が、サクラの願いを叶えるまで居座る
・願い事を3つ
・最後の願いは『ずっと傍に居たい』

・・・微妙ですね。
長々とお待たせした上に、この体たらく!!申し訳ないです!今はこれが精一杯です。
301010HIT、究ナルさん、有難うございました。


駄文に戻る