ランプランプ 1


人間の年で換算すると、15の頃。
悪戯で仲間に怪我を負わせた罰として、カカシは精霊の住む場所から人の世界に落とされた。
対象は誰でも構わない。
ランプの精霊として願い事を3つ叶え、その人間を幸せに出来たら帰ってきても良いという。

 

 

 

「お歌を歌って」

それが、彼女の一つ目の願い。
カカシはあまり歌が得意ではなかった。
だが、早く故郷に帰りたい一心で、思い付く歌をがむしゃらに歌った。
異国の言葉の、耳にしたことのないメロディー。
カカシの創作部分が多くなったが、下手な歌を、彼女は手を叩いて喜んでくれた。

「手を、繋いでいて」

二つ目の願い。
彼女の掌は小さく、病の影響なのか、ほとんど骨と皮ばかりだった。
段々と冷たくなる掌を、それでもカカシは握り続ける。
彼女の願いだったから。

 

ようやく、願い事は残り一つ。
だが、それは彼女の口から聞くことは出来なかった。
彼女の手を握ったまま過ごした一週間。
死という概念のないカカシには、何故彼女が急に動かなくなったのか分からない。
ただ、目を開けてくれるのを、ずっと待っていた。

下手な歌でも、望めば歌う。
手だって、いくらでも握っていてあげる。
三つの願い事。
魔法ではなく、カカシ自身の力を必要としてくれた。
他人のために何かをしたいと思ったのは、それが初めてだった。

 

 

迎えに来たサクモによって、カカシは彼女が永遠の眠りについたことを教えられる。
腐りかけた体は、人間の風習に従って砂に埋めた。

キャラバンからはぐれた病持ちの娘。
砂漠を旅する彼らにすれば、足手まとい以外の何ものでもなかったのだろう。
捨てられたことも知らず、水と食料を僅かに残されたテントの中で、彼女は親の帰りを待っていた。
カカシの力では過去は変えられないが、望めば永遠の命も財宝も、思いのままだ。
だが、彼女が欲しかったのは、そうしたものではなかった。

 

 

 

「帰るよ」
墓の前で立ちつくすカカシに、サクモは声をかける。
父親に肩を叩かれても、カカシは振り返らない。
そして、ある決意を胸に、拳を握り締めた。
「叶えるまで、帰れないよ」

 

彼女の、三つ目の願い事。
幸せにすると決めたから。


あとがき??
願い事を叶える精霊さん。
『エンジェル・ブルー』や王様シリーズとネタがかぶりそうだったので、悩みました。


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