12+


真実を知ることは、とても怖いことだった。

 

いのに誘われ、サクラは町外れにひっそりとたたずむその一軒家に足を踏み入れる。
いつ壊れてもおかしくない掘っ立て小屋だったが、そこには老婆が一人きりで住んでいた。
彼女の生活の糧は、外れたことは一度もないといわれる占い師としての能力。
噂を聞きつけてたまにやってくる客から金をもらい、何とか食いつないでいるという状況だ。
昔はさる大名家のお抱え占い師として裕福な暮らしをしていたようだが、今では見る影もない。

「何でそんなに凄い占い師が、こんな辺鄙なところに住んでいるのよ」
「知らないわよ、そんなの、行きたくないの?」
道中、そんな会話をしながら二人はその家にたどり着いた。
未来を告げる占いは、当たる方が良い。
そう、サクラは思っていた。
だが当たりすぎる占いはときとして不幸を呼ぶ。

 

 

 

「その恋は実らないよ」
予想していたこととだが、サスケの写真を見た老婆は間髪を容れず言った。
がっくりと項垂れたいのを尻目に、サクラはその老婆を凝視している。
着ている着物は粗末だが、妙に気品があり、良い暮らしをしていたというのも頷けた。
見た限り利発そうで、上手く立ち回ることが出来そうだというのに、何故大名家を追い出されたのか。
そのことが気になる。

「あんたは、何を見て欲しい?」
「一週間後に、アカデミーの卒業試験があるんです。それに受かって、立派な忍びになれるかどうかをお聞きしたいです」
いのから自分の方へと視線を動かした老婆に、サクラははきはきと答えた。
淀みのない黒い双眸を、サクラは黙って見つめ返す。
相手は子供のサクラ達よりもさらに小柄な老婆、無力な存在のようで、その瞳には異様な威圧感があった。
一国の王が目の前にいても、おそらく彼女はこのように相手を見るのだろう。

「下忍にはなれるよ。あんたには才能がある」
ふいに表情を和らげた老婆に、サクラも気が緩む。
そして、実の孫に対するように優しい眼差しのまま、占いの言葉を続けた。
「そして、12の年に命が尽きるよ。中忍にも、上忍にもなれない」
「・・・」
あまりに穏やかな顔で言われ、サクラはぽかんと口を大きく開けたまま声が出なかった。
たった今、死を予言されたというのに、全く実感がわかない。
「な、な、なんてこと言うのよ!!」
「真実が知りたかったんじゃろ」
サクラに代わって怒声をあげたいのに、老婆は静かに応える。

 

 

極めて優秀な占い師。
彼女は嘘をつくことが出来なかった。
だから、生まれ育った国を追われ、このような場所に隠れて住んでいる。
世話になった大名家に若君が誕生し、その祝辞と共に言ったそうだ。

「この子は長くは生きられない」

子の両親は当然のように怒ったが、彼女はどんなに責められても訂正することはない。
そして、予言の通りに、数ヵ月後に赤子は病で早世した。
占い師が殺したわけではないが、彼女の言葉が何かの呪いのように感じられたのだろう。
ほどなくして、彼女は城を追い出された。

 

 

「可哀相にね・・・」
最後にサクラを一瞥した、哀れみのこもった老婆の瞳が忘れられない。
彼女はサクラのことを嫌っていない。
だから、あれほどまでにサクラに同情的な眼差しを向けていたのだ。
サクラを傷つけるために、わざと悪い占いを口にしたわけではなかった。

「あんなインチキ占い、信じちゃ駄目よ!」
自分の手を引いて小屋を飛び出し、乱暴に歩を進めるいのを見て、サクラは思わず口元に笑みを浮かべる。
いのが安心したように表情を緩め、サクラも同じようにホッとした。
サクラは友人思いのこの親友が、大好きだ。
我がことながら、サクラはいののように頭に血をのぼらせて怒る気にはならなかった。
ただ漠然と、事実を呑み込む。

あの老婆の言うとおり、アカデミーを卒業して下忍になり、サクラは死ぬのだ。
どうあがいても、今のサクラには変えようのない未来だった。


あとがき??
続く。
か、か、カカサク書きたい・・・・。(禁断症状)


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