一人ぼっちの戦争 1


暗部で活動していた頃から、火影から直々に執務室に呼び出されたときはあまり良いことを言われないのだ。
自分自身の影を引きずるようにして歩くカカシの表情は暗い。
重い足取りの彼が目指している場所は、近頃一人暮らしを始めた生徒の家だった。
結果は聞かずとも何となく分かるような気がするが、やはり言わずにはいられない。
何しろ火影に問われて真っ先に浮かんだのは、他の誰でもなく、彼女の顔だったのだから。

 

 

 

「あれ、カカシ先生、どうしたの?出発は今日じゃないでしょう」
長期任務に向かうための荷物をリュックに詰めていたサクラは、突然やってきたカカシに目を丸くする。
明日からの任務に備えて7班は夕方には解散したのだが、予定の変更があったのだろうか。
そうであっても電話で連絡をすればいいことで、彼が直々に家までやってくる必要はない。
「あー、うん、えーと・・・・」
「取り敢えず、入ったら」
首を傾げるサクラは、自分と視線を合わせずまごまごとするカカシを部屋の中へと招き入れた。
すでにサスケやナルトと共に何度もカカシはこの家を訪れており、遠慮するような間柄でもないのだ。
茶と菓子をテーブルに用意したサクラは、周りを見回して落ち着かない様子のカカシの前に椅子を引いて座った。
「で、用件は?」
「うん。あのさ、明日の任務、サクラは行かないで里に残って欲しいんだ」
「・・・・・・・えっ、何!?」
暫しの沈黙のあと、サクラは思わず身を乗り出して聞き返した。
明日の任務といえば、同盟国である風の国まで密書を届けるという重要なもので、ナルトやサスケ、もちろんサクラも久々にランクの高い仕事に俄然張り切っていたのだ。
しかし、カカシの今の口振りだとサクラだけが任務から外されたように聞こえる。

「な、何でよ!!!」
「ほら、今回は
Aランクの任務だし、道中何があるか分からないからサクラは安全な里にいて欲しいなぁって思って」
「はあ!!?」
青天の霹靂のようなカカシの言葉に、サクラは素っ頓狂な声をあげる。
今までいくつも危険な任務を一緒にこなしてきたが、カカシがこのようなことを言いだしたのは初めてだ。
何か裏があるのかと勘ぐるサクラは、困ったように頭をかいたカカシの顔をじっと見据える。
「・・・・もしかして、これって先生流のプロポーズ?」
「えっ」
「結婚して仕事を辞めて、私に家庭に入って欲しいな〜ってことなの?」
「い、いや、別にそういうつもりじゃなかったんだけど」
「じゃあ本当ーーに危険だから里に残れって私に言ってるの!?」
頷くカカシを見て呆れかえったサクラは、段々と腹が立ってきた。
上司に頑張って欲しいと激励されるならともかく、里に残るよう言われるなど、忍びとしてひどい侮辱だ。

「馬鹿にして!!私を足手まといだって思っているなら、はっきりそう言ってよね!」
「あの、サクラ・・・・」
「もう出てってよ、明日の仕度をしてるんだから!!」
椅子から立ち上がったサクラは、顔を真っ赤にして玄関の扉を指差した。
カカシは穏便に話し合おうとしたのだが、問答無用で家の中から追い出され、サクラは全く聞く耳を持たない。
乱暴に閉められた扉を見つめるカカシは、悲しげな呟きを漏らす。
「怒らせちゃったよ・・・・」
サクラの気性を考えて、こうした展開は予想していたとはいえ、他にどう言えば良かったのかカカシには分からない。
さらに肩の荷が重くなったのを感じながら、サクラに投げつけられたサンダルを履いたカカシはすごすごと帰路に就く。
空気の澄んだ秋の夜空には星がいくつも煌めいていたが、カカシにはそれを見上げる余裕すらなかった。

 

 

 

密書の内容をナルト達は聞いていなかったが、ランクがAなことからも、よほど重要なことが書かれていると察せられる。
さらには火の国を出てから風の国に向かうまでのルートに大きな不安があった。
普段は迂回して進むことになっている魔の国は小国ながら独自の軍隊を持っており、火の国とは長年敵対関係にある。
密書を届けるために指定された道筋はこの魔の国を僅かばかり横切ることになり、風の国への到着日数は早まるものの、その分任務の危険度は増した。
そうしたリスクを背負ってでも火急に届けなければならない知らせなのだろう。
任務内容の説明を受けたサクラは、カカシが自分を外そうとした訳を理解したが、だからといって忍びとしてのプライドを傷つけられたことは忘れない。

 

「・・・・おかしい」
最初に異変に気づいたのは、磁石で方角を確認したサスケだった。
皆を呼び止め、各自に渡された地図を広げて自分達がいるはずの現在地を指差す。
「この地図によれば、二つ目の川を渡ったあとはすぐ街道に出るはずだろ。それなのに森はまだまだ続いている」
確かに、彼らの進路にあるのは鬱蒼とした森で、すぐ近くに町と町とを結ぶ主要な道路があるとは思えない。
「でも、ちゃんと距離を測って地図の通り進んで来たってばよ」
「これが間違っていたら?」
地図から目を離さずに発せられたサスケの低い声に、その場は静まり返った。
「・・・・変なこと言うなよ」
ただでさえ警戒している魔の国の国境近くで皆精神的に緊張しているのだ。
先人達の情報を元にして出来た地図が間違っていることなどナルトは考えたこともなく、そのような心配をしていたらおちおち遠方任務に行くことも出来ない。

「囲まれちゃったみたいねぇ・・・」
「えっ?」
それがあまりにのんびりとした口調だったため、カカシの視線を追って頭上を見たサクラは敵の姿を認めたあともすぐには動けず立ち竦む。
場所を考えると、魔の国に雇われた流れの忍びに間違いない。
ナルトとサスケは素早く印を結びクナイを構えたが、術を発動させる前に、両手を上げたカカシが大きな声で言った。
「降参しまーす」
ずっこけそうになったのは、ナルト達だけでなく、木の上から7班の様子を窺っていた敵も同様らしい。
顔を見合わせる彼らからは困惑した気配が伝わってくる。
敵の人数は不明だが、7班で力を合わせれば10人や20人の敵は簡単に蹴散らせるはずだ。

「こ、降参って、カカシ先生・・・」
「ほら、みんなも武器を捨てて、捨てて」
カカシは動揺するナルト達にも自分と同じ姿勢を取るように促した。
何の意図があるかは不明だが、班のリーダーであるカカシが腹をくくってしまっては、部下のナルト達にはどうしようもない。
ため息をついたサスケとナルトは、カカシを真似して身につけていた武器を放り、手を高く上げる。
「・・・何考えてんだ、あの馬鹿は」
「さあ?たぶん、何も考えていないんじゃないのかなぁ」


あとがき??
タイトルを見れば分かるとおり、元ネタはタイラーです。超そのまんま
NARUTOにしてみました。
大好きなものと大好きなものを掛け合わせれば、もっと愛情が深まるのではないかという、コラボ。
何だか私の妄想大爆発な気がします。完結、出来るといいなぁ・・・・・。(気弱)
ともかく敵の捕虜になったらまず尋問&拷問ですよね!(鼻息荒く)危うし、美少女くノ一サクラちゃん。
サスケ里に戻ってきているし、たぶんナルト達は16、7歳か。
適当に出した魔の国はマリネラをイメージしてしまいましたよ。(名前だけ)あっちは常春の島ですが。


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