一人ぼっちの戦争 2


コピー忍者のカカシ、うちは一族のサスケ、九尾の妖狐を封じたナルト、医療忍者のサクラ。
誰か一人であっても国にとって非常に有益となる捕虜だったが、4人まとめて捕縛したとなるとまさに大手柄だった。
さらに彼らはなにやら意味ありげな密書を所持している。
国境の警備を任されていた上忍は詰め所となっている建物に意気揚々と凱旋し、その足で最上階にある司令官の執務室へと向かった。

「カカシ?」
片眉をあげた蓮は怪訝そうに聞き返した。
忍頭である彼女は王から国の守りの一切を任され、またそれに見合うだけの実力を持った優秀なくノ一だ。
報告に訪れた警備隊長より幾分年が若く、20代半ばに見えるが実際の年齢は誰も知らない。
栗色の髪を二つに束ね、容姿はどことなく火影である綱手に似ていたが、この場所に木ノ葉隠れの里長と面識のある者はいなかった。
火の国と敵対する勢力の中心地なのだから、それも当然のことだ。

「カカシって、あの木ノ葉隠れのはたけカカシか?」
「そうです」
顎に手を当て、何か思案する蓮に警備隊長はおずおずとした口調で話を続ける。
「そのカカシが、頭目に会いたいと言っているんです。何でだか、蓮様のお名前まで知っているようで」
「・・・・ふーん」
蓮は無表情のまま前方を見つめ、はたからは何を考えているのか全く読めない。
戸惑う警備隊長を横目に、蓮に仕える特別上忍が彼女に問いかける。
「あの、蓮様はカカシと面識があるんですか?」
「まあねぇ」
ふと表情を和らげた蓮は、警備隊長に身振りで合図をする。
「会ってやるよ。ここに連れてきな」
「えっ、こ、この部屋にですか?はたけカカシを!?」
「そう」

 

 

 

チャクラの流れを乱す効果のある封術牢に入れられたナルトとサスケは、二人きりで鬱屈した時間を過ごしていた。
窓一つない牢は何も物が無く、地べたに座って時を過ごすよりない。
最初にこの場所に連れてこられた際はサクラも一緒にいたのだが、尋問のために連れて行かれたままなかなか戻ってこなかった。
二人はサクラを介して会話をすることが多いため、よけいに気詰まりだ。

「・・・・サクラちゃん、遅いってばよ」
同じことを繰り返すナルトに、サスケは無言の返事をする。
この牢にいるかぎり術はまるで使えないのだから、逃げ出すチャンスを見つけるまでは、体力を温存するしかない。
だが、ナルトは静かな場所にいると不安になるのか、しきりに何かを呟いていた。
「あの、サクラちゃん、本当に大丈夫かな」
その声音に今までと微妙に違う含みを感じ、サスケは怪訝そうに傍らを見やる。
「サクラちゃんは女の子だし、その・・・・俺達と違った尋問をされたりとか」
「・・・ああ」

ひどく遠回しだったが、ナルトの言いたいことを何となく理解してサスケは頷いた。
「されてるかもな。俺を取り調べをした奴はスケベそうな顔つきだったから、服を脱がされたり、抵抗すればその先も・・・・」
視線を逸らし、あえて言葉を濁したサスケに、ナルトの中で何かがぶち切れる。
想像力が逞しいせいか、助けを呼ぶサクラの悲鳴まで耳にこだましたような気がした。
「うおーーーーー、開けろーーー!!!サクラちゃんーーーーーー!!」
「どうしたんだ突然。落ち着け」
開くはずのない鉄格子の扉をがたがたと揺らし始めたナルトを、サスケは淡々とした口調で制止する。
正直な気持ちを口にしただけだったサスケは、自分がナルトの不安をあおったことにまるで気づいていなかった。

 

 

 

「何?」
誰かの叫び声のようなものが聞こえた気がして、サクラは思わず後ろを振り返る。
「どうかしたか」
「いえ」
目の前にいる上忍は気づかなかったらしく、自分の勘違いということで納得し、サクラは姿勢を正す。
密書には何かが書かれているのか、何故魔の国に侵入したのか、他に仲間は潜入しているのか。
先程から答えられないことばかり聞かれたが、短気なサクラがまだ冷静でいられたのは、尋問する忍びが実に紳士的な態度だったからだ。
カカシと同じくらいの年齢に見える彼は、サクラ達を捕らえたグループのリーダー格と思われる男だった。

 

「何か、悩み事でもあるんですか?」
先程から物憂げな様子でため息をついている警備隊長に、サクラは周囲に目を配りながら訊ねる。
素直に答えるとは思わなかったが、医療忍者としてカウンセラーもした経験があるため、つい訊ねてしまった。
微かに目を見開いた警備隊長は、彼女の顔を探るようにして見た後、おもむろに口を開く。
「君ははたけカカシと蓮様の繋がりを知っているか?」
「えっ?」
覚えのない名前を耳にしたサクラは、このとき初めて魔の国が雇った忍びの頭領の名前を知った。
警備隊長の話によると、カカシと蓮は昔ただならぬ関係にあったようだ。
その彼女が今、カカシを直々に呼び出し、執務室で二人きりで何かを密談しているらしいと聞いてはサクラも心穏やかではいられない。

「あの、あなたは、ええと」
「真だ」
「真さんは蓮さんとは、その・・・・」
「蓮様は私の気持ちには気づいていらっしゃらないよ」
上忍とはいえ忍頭である蓮とはまだまだ力の差があり、簡単には想いを告げることは出来ない。
忍頭に懸想をしていることは到底仲間達に相談できず、部外者であるサクラが相手だからこそ、真も本音を吐露出来たのかもしれない。
自分が囚われの身であることは重々承知していたが、サクラがつい親身に話を聞いてしまったのは、彼の心情が痛いほど分かったからだ。

「・・・蓮さんは綺麗な人なんですか?」
「もちろんだ」
真が胸を張って答えると、サクラの表情がみるみるうちに陰る。
久方ぶりに再会した恋人達がどのような会話をしているのか、考えるだけで胸が痛い。
「ハァ・・・」
サクラと警備隊長はほぼ同時にため息をつく。
立場はまるで違ったが、同じ悩みを共有する二人には妙な連帯感が生まれ始めているようだった。


あとがき??
何だか凄く時間かかりました。
思ったんですが、この話、カカサクファンにはあまり面白くない・・・・気がします。
書いてから気づいたよ。(=_=;)
ちなみに、蓮さんはハスと読んでください。真さんはマコトさん。
アザリン陛下の名前は使えないので、シアさんと山本くんにしてみました。


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