まいご


「サクラは料理上手だねーー」
「・・・・こんなの誰だって出来るわよ」
満面の笑みを浮かべて明太子スパゲティーを食べるカカシに、サクラは呆れ顔で言う。
親戚から送られてきた野菜を彼におすそ分けしたことがきっかけで、いつの間にかカカシの食事係のようになってしまった。
ナルトには野菜を食べるようしつこく言っていたようだが、彼自身の食事はインスタントや外食が中心だ。
調理方法が分からないというカカシのために、彼が里にいるときはサクラが家まで作りに来ている。
洗い物を終えて座ったサクラは、頬杖を付いて向かい側にいるカカシを見やった。

「先生、私がいなかったらどうするのよ」
「えー、だってサクラ、これからも来てくれるんでしょ」
カカシがデザートの林檎を頬張って言うと、サクラは首を横にふって答える。
「私、今度武者修行の旅に出ることにしたから。もう当分ここに来られないわ」
「えっ」
初めて聞く話に、手から林檎が落ちたことにも気づかずカカシは目を丸くした。
「な、何で!?どこに行くの」
「さあ、まだとくに決めてないけど。師匠にもう許可はもらったし、何年かしたらちゃんと帰ってくるわよ」
茶をすすったサクラはにっこりと微笑んだが、カカシの頭は混乱したままだ。
「行かないでよ」
思わず身を乗り出したカカシが声を荒げると、サクラは不思議そうに首を傾げる。
「何で?」

きょとんとしたサクラの顔を見つめるカカシは机に手をついた姿勢のまま固まった。
よく分からないが、ひどく動揺している。
とにかく嫌なのだと伝えたいのだが、それでは我が侭な子供の主張のように感じられた。
「・・・ご飯が、困るし」
「何よ、それ。私は先生のご飯係じゃないんだから」
サクラはくすくすと笑ったが、カカシは浮かない表情でテーブルに転がる林檎へ目をやる。
サクラが自分のそばからいなくなるなど、どうしてかカカシはこのときまで全く考えたことがなかった。

 

 

 

サスケが里抜けをして、ナルトが修行の旅に出て、今度はサクラだ。
そして最後が一番衝撃的だった。
下忍達はそれぞれ大切にしていたのに、この違いはなんだろう。
次の日の夜に余った明太子を使って、サクラのマネをしてスパゲティーを作ってみた。
意外にもそれは美味く出来た。
むしろ、サクラが作ったものよりも茹で具合は良い。
それなのに味気ない。
コップの水を飲み込んだカカシは、フォークを机に置くと小さくため息をついた。

一人暮らしをしていたサクラの家を訪ねると、部屋の物はあらかた片付いている。
旅に出る前にこの家は引き払うつもりらしい。
必要な荷物は全て実家に運んだそうだ。
がらんとした部屋に、カカシは胸の痛みは一層強くなったようだった。

 

 

「カカシ先生、見送りに来てくれたの?」
旅立ちの当日、里と外の世界を繋ぐ門の前で立っていたカカシを見て、サクラは嬉しそうな笑みを浮かべる。
いのやヒナタには任務が入っていたため、一人きりの出発で少しばかり寂しかったのだ。
だが、サクラはカカシが背負っている荷物にすぐ気づいた。
「あれ、先生も任務なの?」
「ううん」
てくてくと歩いてサクラの前まで来ると、カカシは笑いながら答える。
「サクラに付いていこうかと思って」
「・・・・・はあ!?」
「ほら、女の子の一人旅なんて物騒だしさ」
「そんなの平気よ!っていうか、カカシ先生が里から離れるなんて・・・・・」

そのまま二の句が告げなくなったサクラは、カカシの顔を穴が空くほど見つめ続けた。
里を守って死んだ四代目の意志を引き継いだカカシが任務以外でこの場所を離れるなど、サクラはどうしても信じられない。
実際、医療忍者として修行中のサクラと違い、上忍のカカシは名指しで任務を請けることも多く、代理を探すために何日も奔走した。
そこまでして何故自分についてこようとするのか、サクラには大きな謎だ。

「な、何で!?」
「えーと、その・・・、何でだろうねぇ」
「私が聞いているんだけど」
もじもじとするカカシを見据えたサクラが低い声を出すと、カカシは困ったように頭をかいた。
「サクラの作ったご飯が一番好きだから、かなぁ」
「・・・・先生、今までろくなもの食べてなかったのね」
カカシの言葉をそのままの意味として受け取ったサクラは、両手を腰に当てると、苦笑して彼を見上げる。
「じゃあ、一緒に行きましょうか」


あとがき??
うおおおおおおおおおおーーー、カカシ先生が可愛い系になってしまったよ。(=
×=;)
せ、攻めカカシが書けない・・・・。カカサク好きーとして致命的。
カカシ先生とサクラの二人旅って萌えるなぁって、それだけの話です。しかも、まだ先生の片想いっぽい。


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