third


カカシがいて、その隣りの席に快と小桜がいる、いつも通りの朝食の風景。
盆に料理を乗せてきたサクラは、皿を一つ一つ彼らの前に置いていく。
目玉焼きとベーコン、ほうれん草の炒め物の皿を見たカカシは、目をきらりと光らせた。

「サクラ!!」
「はい?」
「俺の卵が、快のより小さい!」
自分の皿を指差したカカシはパンを食べる快を見ながら訴える。
「そんなに変わらないでしょ。別に、目くじら立てなくても」
「ひどい!差別だ!!」
大声で叫ぶと、カカシはそのまま机に泣き伏した。
「サクラ、俺のこと愛してないんだなーー!!」
「・・・・また、大袈裟なことを」

昨日はプチトマトの数、その前はヨーグルトの器に入っていたバナナの切れ端の数。
日常茶飯事の出来事に、快と小桜は涙を流すカカシを気にせず食事を続けている。
「先生のことが一番大事よ」
サクラがなだめるように背中をさすると、カカシはゆっくりと顔をあげた。
「サクラ・・・」
「先生には特別にプリンのデザート付けてあげる。だから、機嫌なおしてね」
優しく囁く彼女を抱きしめるカカシは、すっかり子供達の存在を忘れているようだ。

 

両手を合わせて「ごちそうさま」と言うと、快は皿や茶碗を流し台へと運んでいく。
自室に戻り、鞄を持ってキッチンへ来ると、カカシの手から逃れたサクラが冷蔵庫を覗いているところだった。
「母さん」
背伸びをした快は、振り向いたサクラの頬に唇を当てる。
「いってきます」
「あああーー!!!」
間髪入れず絶叫したのは、一部始終を目撃していたカカシだ。

「お、お前、俺の女になってことするんだー!!」
「ああ、もうー」
椅子から立ち上がって握り拳を作るカカシを、サクラは何とか制する。
その間に、快は鞄を背中にしょって玄関から飛び出していった。
のんびりと食事を続けていた小桜は、再び頭に血を上らせたカカシを横目に、ため息を付く。
今度はプリンなどでは収まりそうにないと思いながら。

 

 

 

快の周りには、三人のサクラがいる。
一人目は、理想の母親である「サクラ」。
二人目は、理想の姉である「小桜」。
そして三人目は、快の担任をしている「さくら」だ。

彼女達に共通しているのは、桃色の髪に翡翠の瞳。
さくらが快の家族であるサクラ達と似通った容姿をしているのには、原因があった。
互いの祖父が従姉同士という血縁なのだが、頻繁に顔を合わせる間柄というわけでもなく、彼女に会うまで快は親戚の存在を知らずにいた。
快より6つ年上で中忍になったばかりのさくらは、学業が非常に優秀で、アカデミーの教師としての評判も上々だ。
その彼女の気を引くことが、今現在快の一番の関心事だった。

 

 

「どうしていつも、遅刻ばかりするの!」

さくらはなるべく威圧的に言い放ったつもりだが、それはあまり効果がなかった。
さくらの目の前にいる快は、口元が綻んでしまいそうになるのを堪えるので精一杯だ。
快は授業の遅刻を繰り返し、年中居残りでさくらに注意を受けている。
それはさくらとこうして二人でいる時間が欲しいからなのだから、叱られて直すはずがない。

「先生とお喋りしたいからだよー」
「冗談ばかり言って!!」
両手に腰を当てて怒るさくらは、すでに決めつけている。
6歳の年の差と、教師としての立場。
快がどんなに想っていても、彼女にとって彼は恋愛の対象ではないのだ。

 

「・・・先生、髪の毛に葉っぱが付いてるよ」
「え?」
険しい表情から一転、快の指摘にさくらは慌てて頭に手をやる。
「そこじゃないよ。ちょっと屈んでみて」
「うん」
無防備に顔を近づけたさくらに笑いかけると、快はその頬を押さえて素早く唇を合わせた。
いつも母親にしているのと、勝手は一緒だ。
違うのは、その反応。

事態を把握できず、ぽかんとした顔つきで快を見ていたさくらは一瞬のうちに頬を赤くする。
「な、な、何するのよ!!!」
「先生のことが好きなんだ」
にっこりと笑って言った快だが、さくらの表情は強張ったままだ。
口を両手で押さえて立ちつくすさくらに、快は首を傾げて訊ねる。
「もしかして、先生、ファーストキスだった?」
「ば、馬鹿―――!!」
涙を浮かべて教室から駆け出していったさくらに、快の心にあったのは罪悪感よりも、喜びだ。

 

「これで、少しは意識してくれるようになるかなぁ」
にやりと笑う姿はサクラと出会った頃のカカシと瓜二つだったが、彼が知るはずもなかった。


あとがき??
カカシ先生も似たようなことして、サクラのファーストキスをゲットしたようです。
快は11歳のカカシ先生、さくらは17歳のサクラの姿を想像してください。
逆年齢差も、良いですよね。
マザコンでシスコンの快くんには、是非ともさくら先生と両思いになってもらいたいと思います。頑張れ!
年を重ねるごとに父親似になっていく快くんでした。
本当はカカサクパラレルとしてやろうと思っていた話なんだけれど。そっちはもっとエロい話だった。

カカシ先生、50近い年齢だと思うんですが、あの子供のような甘え振りは・・・。は、恥ずかしい。(私が)外ではしっかりした上忍なのに。
『ハッピー・ファミリー』が元ネタ。なるとの方だけど。
ちなみにカカサク夫婦はカカシが幼くなり、サスサク夫婦はサクラが幼くなる。これ鉄則。
今回はあんな感じですが、普段は一緒にTVゲームをしたりと、実は仲良しのカカシ&快親子です。


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