おかえりなさい 2


7班の任務はいつも通り、森での迷い犬捜し。
サスケに活躍の場を奪われているナルトは、今日こそはと息巻いていたのだが、彼がこの日見付けたのは犬ではなかった。
草むらに、見慣れぬ少年が倒れている。
折れた枝が近くにあることから、木から落ちたのかと思い、ナルトは少年の様子を窺った。
ナルトと同じ年頃、白銀の髪の少年は手足に擦り傷を負っていたが大きな外傷はないようだ。

「頭を打って気絶してるだけかなぁ・・・・」
「どうしたの?」
背後からガサガサと草を踏む音がして、ナルトはしゃがんだ姿勢のまま振り返る。
そして、倒れた少年を視界に入れたサクラは、ナルトが座り込んでいた意味を悟った。
「・・・誰、それ?」
「さぁ」
「生きてるの」
「死んでいたらもっと慌ててるよ」

 

 

ぼそぼそと、誰かが話しているのを感じる。
おそらく、内容は自分に関するものだ。
アカデミーの卒業試験の途中、木から落ちて気絶したことを、少年は徐々に思い出していく。
情けない話だが、クラスメートとの忍術合戦には勝利したのだから、試験はおそらく合格だろう。

「どうしよう。先生に連絡した方がいいよね・・・・」
額に小さな手のひらが当てられ、不安げな声が聞こえる。
その瞬間、少年の意識は急速に覚醒した。
彼の一番大事な人。
何故彼女がいるのか分からないが、毎日聞いているものを間違えるはずがない。

 

「母さん」

半身を起こした彼に突然手のひらを握られ、サクラは驚いて目を見開いた。
だが、それは少年にしても同じだ。
桜色の髪に緑の瞳、そして声。
目の前にいるのは確かに彼の母親だった。
しかし、何故自分の少女時代の姿に変化しているのかが分からない。

「・・・・サクラちゃん、いつの間に子供を産んでたのさ」
「馬鹿!!12の私がこんなに大きな子供産めるはずないでしょう!!」
半眼で訊ねるナルトをサクラは怒鳴りつける。
少年が手を掴んでいなければ、拳骨をぶつけているところだ。
そして、彼らのその会話は少年に大きな衝撃を与えていた。

「あの・・・」
「え?」
「今の火影様って、誰ですか」
「三代目のじっちゃんだけど」
ナルトの返答を聞くなり、少年はとっさに頭を抱えてしまった。
何か真剣に悩んでいるその様子に、ナルトとサクラも戸惑った表情で顔を見合わせる。
森に倒れていたことといい、少年の言動はあまりに不審な点が多すぎた。

 

 

「お前ら、何やってるのさー。犬はもうサスケが見付けちゃったよ」
「あ、カカシ先生」
気まずい空気の中、ナルトとサクラを捜して現れたカカシを二人はホッとした気持ちで見つめる。
だが、その場にいた3人の中で、一番カカシの姿を凝視していたのは正体の分からない少年だった。
まるで幽霊か何かを見たように、驚愕の表情でカカシを見据えている。

「・・・俺の顔に、何かついてる?」
怪訝そうに訊ねられ、少年は何とか首を横に動かした。
考えてみれば、当たり前だ。
少年の予想が正しければ、ここは彼が生きていた世界よりもずっと過去。
頭で分かっていても、写真のままの父親が普通に喋り、歩いていることが、どうも奇妙に思えてしまう。

「で、その子は誰?」
「私達もよく分からないのよ。ねぇ、何て名前なの?」
カカシから少年へと視線を戻すと、サクラは彼を安心させるように微笑を作る。
今、少年の頭は、どうしようもなく混乱していた。
異世界に紛れ込んだ事実をすぐに受け入れることなど、出来るはずがない。
目に馴染んだサクラの笑顔がすぐ間近にあることが、唯一の救いだ。

「・・・・・快」
暫しの逡巡あと、サクラの手のひらを握ったままの少年は、囁くような声で言う。
「そう、素敵な名前ね」
「・・・・」
明るく笑うサクラを横目に、あなたが付けたのだと、喉まで出掛かった言葉を快は何とか呑み込む。
時の流れが違っても、彼女が快の最大の庇護者である事実は変わらなかった。


あとがき??
実はカカシファミリーシリーズだったんですね。
快くんは先生に反発してるし、どうなることやら。
元ネタは片山愁先生の『クリスタル
EYES』です。でも、アレンジしまくり。
ここまで書いたらすっかり満足したので、未完で終わるかもしれんです。
私が書くものですから、どういった展開になるかはすぐ分かってしまうと思いますが・・・。ほのぼの路線。
先生とサクラはまだラブラブじゃないので、普通の教師と生徒です。


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