おかえりなさい 3


「笑顔が魅力的だったのよ」
父親のことを聞いた快に、サクラはそう答えた。
「普段は、顔をマスクで隠しているから何考えているか分からないし、任務中にスタミナ切れで倒れちゃうなんてざらだし、へっぽこ上忍だったわ」
「ふーん」
「でもね、生徒思いで誰よりも優しくて、一緒にいると安心できる人だった。先生が笑っていると、こっちも嬉しくなる。そんな感じの人」

父親の話をするとき、サクラの顔はいつでも幸せに満ちていた。
そして、ふとした瞬間に、その表情が悲しげに曇る。
彼がもうこの世にいないことを、思い出して。
写真で見るサクラどれも明るい笑顔を浮かべていたが、それは快が一度も目にしたことがないものだ。
父親が生きていた頃は、いつもそうして笑っていたのだろう。

 

 

 

 

「うちの、遠い親戚じゃないかと思うのよね」
ナルトに対し、サクラは力強く主張する。
自分の名前以外は何も思い出せない記憶喪失の少年は、春野家で面倒を見ていた。
サクラが快を連れて帰ると、何故か両親が一目で気に入ってしまったのだ。
二人は快が他人のような気がしないと、口を揃えて言う。
それは、サクラも全く同意見だった。

「でも、サクラちゃんに全然似てないじゃん。むしろ、先生にそっくりっていうか・・・・」
「そうかしら。快の方が全然格好良いと思うけど」
サクラはサスケと立ち話をしている快の横顔を見つめ、にこにこと微笑む。
年は同じくらいだが、弟が出来たようで、一人っ子のサクラは嬉しくて仕方がないらしい。
カカシの了解を得たのをいいことに、任務にまで連れてくるのだから、かなりの気に入りようだ。
だが、サクラに片思いをするナルトとしては、快の存在は非常に目障り以外に何者でもない。

 

険しい表情で快に歩み寄ると、自分より目線の高い快を睨むようにして見る。
「おい、お前。サクラちゃんが優しいからって、いい気になるなよ。サクラちゃんに目を付けたのは俺の方が先・・・・」
「ナルトって、本当に小さかったんだね」
ナルトの存在に気付いた快は、彼の言葉を最後まで聞くことなく声を出した。
未来のナルトはサスケより背が高く、何より上忍らしい貫禄がある。
写真では昔のナルトを知っていたが、自分より小さかったとは、意外だった。

「な、な、何だとーーー!!」
快の考えていることなど知るはずもなく、頭に血をのぼらせたナルトは彼に掴みかかる。
「俺は将来火影になるんだからな!あんまり生意気なこと言うと、後悔するぞ」
「そうだね」
ナルトの言葉を、快はあっさりと認めた。
「ナルトは火影になるよ」
実際、快のいた世界のナルトは火影代行の仕事をして就任式を待つだけの身だ。
里の住人からも慕われ、実力もある。

「・・・・本当にそう思う?」
「うん」
快が頷くと、掴んでいた服を離し、ナルトはにこやかに彼の肩を叩いた。
「お前、良い奴だなー。今度一楽でおごってやるよ。あそこのラーメンは超一流だからな」
「有難う」
今のほうが随分と子供っぽいけれど、屈託のない笑顔はそのままだなぁ、と冷静に観察されていることをナルトは知らない。

 

「楽しそうだね。何の話?」
それまでぼんやりと読書をしていたカカシが近づくと、快の表情がとたんに厳しくなった。
「休憩時間、終わりじゃないですか?」
「え、ああ、そうね」
「早く仕事に戻りましょう」
カカシの顔を一瞥し、快はさっさと作業場に戻ってしまう。
とある屋敷のペンキ塗りの任務だが、別に急ぐように言われているわけではない。
ぎすぎすした空気はカカシだけでなく、ナルト達にももちろん伝わっていた。

「・・・俺、何だか嫌われてる?」
「先生、何かしたんじゃないの」
「知らないってー」
「あやしいわ!うちの快をいじめたら承知しないわよ」

 

 

黙々と刷毛を動かしながら、快は難しい表情で考え込んでいる。
実際に会ってみて、母は父のどこが良かったのか、ちっとも分からなかった。
数日の間見ていただけだが、カカシは遅刻癖があり、始終18禁の本を手放さず、気付くとぼーっとしていることが多い。
忍びとして最悪だ。
上忍試験に受かったのだからそれなりの実力はあるのだろうが、尊敬できる部分はない。

過去の世界に来ることが出来たのは、運命だったのだと快は思う。
いつ未来に戻れるかは不明だが、これを機会に、サクラにカカシ以外のパートナーを見付けさせようと密かに目論んでいた。
ナルトやサスケ、他にいい人物がいればそれでもいい。
とにかくサクラにふさわしい男ならば、自分の存在が消えてしまうことになっても快は全く構わなかった。


あとがき??
このお話、1、2の次に5を書き上げまして、すっかり満足して3、4を書く気力がなくなりました。
非常にまずいです。
よほど頑張らないと完成しそうにないです。
最後のみんなの笑顔は果たしてみられるのか・・・なぁ。
飽き性なので、とことん長編を書くのに向かないです。

余談ですが、ファミリーシリーズでは小桜がナルトにべったりですが、快はサスケに懐いているようです。
先生?先生は、サクラに付きっきりだから。(サクラ馬鹿・・・・)


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