幸せな花嫁さん


「可愛い〜〜v」
掃除の際、押入れから出てきたアルバムを何気なく開いた小桜は、思わず瞳を輝かせた。
それは父と母の結婚式の写真だ。
まだ15歳だった初々しい花嫁は、幸福に満ちた笑顔を浮かべている。
純白のウェディングドレスはミニスカートで、ほっそりとした足が惜しげもなく晒されていた。
胸元には薔薇の花を模した大きな飾りがあり、彼女の頭にも生花が飾られ、小桜はうっとりと見惚れてしまう。
まさしく、自分が将来、こうありたいと思う姿だ。
ただ一つ、難点を言えば、母の傍らで号泣している父が疎ましいという点だろうか。

 

「・・・・ねえ、ママ。普通、結婚式で泣くのって花嫁さんじゃないの?」
「えー?」
振り向いた小桜に訊ねられ、新聞紙をまとめていたサクラは怪訝そうに近づいてくる。
そして、彼女の見ていたものに気づくと、苦笑して頷いた。
「ああ、それ。カカシ先生ってば、式の間から披露宴まで、泣きっぱなしだったのよ」
「えええーーーー!!?」
仰天した小桜は思わず大きな声をあげていた。
「な、何でー!?パパって何年もママをストーカーして、卑怯な手段で強引に結婚までこぎつけたんでしょう!もっと勝ち誇った笑顔のはずじゃないの」
「・・・・どういう認識なのよ」
サクラは仰天する小桜を半眼で見つめたが、大体は事実で、否定は出来なかった。

「私のパパやママが最終的に結婚を許してくれて、式にも出席してくれたのが嬉しかったんじゃないかしらね」
「おじーちゃんと、おばーちゃん?」
小首を傾げる小桜は、アルバムの隅に写っている祖父母へと目を向ける。
家が近くなため、頻繁に行き来するが、孫の小桜を溺愛する優しい人達だ。
カカシも彼らを気遣い、任務で遠出すると必ずサクラの両親用の土産も買ってくる。

 

「最初はね、パパもママも結婚に反対で絶対に認めてくれなかったのよ」
「・・・でしょうね」
カカシはサクラよりも、彼らと年が近い。
そうした男、さらには元担任と結婚したいなどと言われて、サクラの両親はさぞ驚いたことだろう。
「でもね、先生ってば毎日うちに来て頭さげていったのよ。絶対に私と幸せにするからって。何回追い返されても、構わず通ってた」
「さすが、ストーカー。諦めが悪い」
「私が沈んだ顔してたから、気にしてくれたのよ」
娘の突っ込みに、サクラは苦笑して答えた。

「パパは忍びの仕事じゃなかったけど、叔父さんは任務中の事故で亡くなったから、私は絶対に忍者以外の職業の人と結婚させたかったみたい。それなのに、先生は上忍でしかもエリート。反対材料ばっかりだったのよね」
サクラは何気なくアルバムの写真へと目を落とした。
最後のページ、抱き合って泣く父とカカシの姿に、笑みがこぼれる。
母はサクラの言葉を段々と理解してくれたが、父は最期まで結婚に反対していた。
式や披露宴は父が不在のまま行われることを覚悟していたというのに、直前になって、彼は姿を見せたのだ。
「サクラを不幸にしたら、一生祟ってやる」と呪いじみたことを言って。
腹を割って話すと気の合う部分があったのか、今では本当の親子以上に仲が良くなっているのだから、何とも不思議だ。
現に今も、カカシはサクラの実家で父と将棋を指している。

 

「じゃあ、私が忍びと結婚したいって言ったら、またおじーちゃん達が反対するかなぁ」
「心配しなきゃいけないのは、パパ達より、カカシ先生じゃないの?」
「うーん・・・・」
サクラと小桜は揃って腕組みをして考え込んだ。
カカシは娘が赤ん坊の頃から、「小桜はどこにもやらない!」と断言している。
小桜の旦那となる男の暗殺など、簡単にやりそうだから怖い。

「小桜ちゃん、この荷物も下の部屋に運んでいいのー?」
開いたままの扉から部屋の中を覗いたナルトは、深刻な表情のサクラ達を不思議そうに見やる。
「どうしたの?」
「ナルト!」
アルバムをサクラへと渡すと、小桜は段ボール箱を持って立つナルトに駆け寄った。
「ちゃんと体を鍛えてね!闇討ちされないよう、夜道も用心して」
「え、ええ??」
訳が分からず目を白黒とさせるナルトに、サクラはくすくすと笑っている。

小桜の結婚式。
何年後になるか分からないが、式の間中泣き続けるカカシの姿が目に浮かぶようだった。


あとがき??
カカシ先生、サクラの両親を大事にしているようです。
結構、誠実らしい。
ちなみに結婚式で号泣していたのはうちの従兄です。
投票してくださった皆様、有難うございましたv


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