少女写真


「・・・何やってるんだい」
「アルバムの整理だよ〜。ちょっと量が増えちゃってさ」
仕事の合間の休み時間、ナルトはおもむろに写真を袋から取り出し、アルバムのページを埋めている。
綱手が鼻歌を歌うナルトの手元を後ろから覗き込むと、それは彼の写真ではなかった。
カカシが目の中に入れても痛くないほど溺愛していると評判の愛娘、小桜だ。

「可愛いでしょ〜vv」
「・・・そうだね」
「この前、俺が撮った小桜ちゃんの写真と先生のコレクションを少し交換したんだ。300枚くらい」
「・・・・へぇ」
少しで300枚なら、大きいとどれくらいなのだろうかと考えたが、やめておいた。
どうやらナルトはカカシと同じくらい小桜に愛情を注いでいるらしい。
彼が一番お気に入りの小桜の写真をパスケースに入れて持ち歩いていることも綱手は知っていた。

 

「でもさ・・・、ちょっといまいちなんだよね」
「何が?」
「これが先生からもらった写真。こっちが俺の撮った写真。先生の方が、ちょっと小桜ちゃんの表情がぎこちない気が・・・」
「そうかねぇ」
二つの写真を眺めたものの、綱手には判断しかねる。
だが、ナルトにそう見えるのだとしたら、理由だけははっきりとしていた。
「そりゃあ、あんたがカメラ持っていた方がこの子だって笑顔になるだろうよ」
「えっ、何で?」
「・・・・・相変わらず、鈍いね」

好きな男がそばにいて嬉しくない女はいない。
ナルトの撮る小桜がどれも明るい笑顔なのは、そうした訳だろう。
聞けば小桜の年齢は11歳、そろそろ父親が疎ましいということもあるのかもしれない。
「まぁ、どの写真も小桜ちゃんは可愛いから、いいけどねv」
笑顔の小桜の写真に微笑み返すように、ナルトはにこにこと嬉しそうに笑っている。
大きくため息をついた綱手の心境などナルトには少しも分からなかった。

 

 

「そういえば、綱手のばーちゃん、この前彼氏が出来たって言ってたじゃん。あれ、どうなったの?」
顔を上げたナルトが思い出したように言うと、綱手は急に肩を落として俯いた。
どうやら、聞いてはならないことだったらしい。
「・・・あれ、地雷踏んじゃった?」
「踏みまくり!!よけいなこと訊くんじゃないよ、馬鹿!」
「うーん、今年に入って、これで3人目かぁ・・・・」
腕組みをしたナルトは面白そうに笑って言う。
実際の年齢はともかく、美人でスタイルがよく、竹を割ったような性格の綱手はよくもてた。
度々年下の彼氏が出来たが、その男前すぎる性質が災いしてか、なかなか長続きしない。
何しろ、少しでも諍いが起きようものなら、家を半壊させるほどのパワーを持つ綱手にかなう者などいなかった。

「ナルト、あんた本当に婿に来る気、ない?」
「んー、ばーちゃんのことは大好きだけど、俺、他に好きな人がいるから結婚出来ないの」
綱手とナルトはもう何度目か分からない会話を繰り返す。
確かにプロポーズの言葉だが、二人には挨拶のようなものだ。
「生意気な奴め。断るなんて、100年早い」
「ちょ、ばーちゃん、ギブ、ギブ!!!」
綱手にヘッドロックをかけられたナルトは両手をばたつかせて必死に抵抗する。
腕力のこともあるが、ボリュームのある胸の持ち主である綱手に首を抱えられるのは、本当に苦しい。
窒息寸前のナルトには拷問でしかなかったが、傍目にはいちゃついているようにしか見えなかったことだろう。

 

 

 

「こんにちは!!!!」
大きな声が耳に届いて、二人はようやく火影の執務室に入ってきていた小桜の存在に気づいた。
彼女が手に持っている鞄には、綱手とナルトの昼食が入っている。
ナルトが近頃綱手の仕事を手伝っていると聞き、サクラが手作りの弁当を持たせたのだ。
「あれ、小桜ちゃん、いつからいたの?」
「・・・婿に来ないかのあたり」
真剣な表情で自分を見据えてくる小桜に、綱手は少しだけ呑まれる。
ずかずかと歩く小桜は、綱手の目の前まで来ると強い口調で言った。

「火影様、子供の時、何食べていました!!?」
「えっ・・・・」
「私、くノ一クラスで一番胸がぺったんこなんです。それで、ずっとこのままだったら、どうしようかと思って・・・・」
小桜の表情は段々と悲しげなものに変わっていく。
どうやら、小桜は彼らのラブラブぶりより、ナルトを圧迫していた綱手の胸の大きさに目がいったらしい。

「小桜ちゃん、大丈夫だよ。俺はどっちかというと平らな方が好・・・」
「小桜、これを見な!」
ナルトの言葉を遮り、綱手は机の上に飾っていた写真立てを小桜に差し出した。
そこにはアカデミーを卒業したばかりの、ほっそりとした綱手がVサインをして写っている。
「こ、これは・・・」
「私だって、小桜くらいのときは何にもなかったよ。あんたもこれからさ」
「は、はい!」

 

盛り上がる二人の傍らで、ナルトは少女時代の綱手の写真を見ながら考える。
小桜のうり二つの母親は、アカデミーの頃から今まで、ずっと控えな胸のままだ。
遺伝的に小桜が綱手似の胸になるのは難しいと思うのだが、期待に瞳を輝かせる小桜を見ていると何も言えなかった。


あとがき??
綱→ナルも、小桜→ナルも両方好きです!


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