はたけ家の一族


「おめでとうー」
「有り難う」
バースデーケーキの上のろうそくの火を吹き消した快は、満面の笑みで皆に応えた。
6歳の誕生日の夜、多忙な父のカカシもこの日ばかりは早めに帰宅し、ナルトは昼からパーティーの準備に余念がない。
サスケは今この場にはいないが、任務が終了次第、後から合流すると連絡が入っていた。
「上手く切ってよーー」
「まかせておけって」
ケーキを人数分に切り分けるナルトは、やや緊張しながらナイフを持っている。
『誕生日おめでとう!』のメッセージの書かれたチョコと、イチゴの沢山乗っている部分は主役である快のものだ。

「父さん、これ開けていい?」
「おー、いいぞ」
パーティーが始まってすぐ、カカシから手渡されたプレゼントの包みを快は嬉々とした様子で剥がしていく。
やたら軽いのが気になったが、期待をこめて箱を開いた快はそのままの表情で固まった。
何の変哲もない、布きれに見える。
「・・・・何、これ」
「携帯用マスク。はたけ家に代々伝わるものでねー、俺も昔はそれで顔を隠していたものだよ。通気性抜群で水に濡れても大丈夫。ちょっとした毒なら布地を通ったときに分解してくれるし」
「へーー・・・・」
快が父のマネをして首から口元まで隠れるマスクを装着すると、元々顔が似ているたけに、ミニカカシといった感じだった。
小桜は顔をしかめて見ていたが、手鏡を眺める快はなかなか気に入ったらしい。
これもはたけ家に脈々と流れる血の所以だろうか。

 

「小桜、お前のも特別に用意してあるぞー。女の子だからピンクな」
「ええっ、い、嫌よそんなダサイの!!!」
「何を言ってる、はたけ家の子供はアカデミーに入ったらマスク着用と決まってるんだ!小桜は遅いくらいだ」
「い、嫌だってばーーー!!」
小桜は手足をばたつかせて抵抗したが、所詮子供の力でかなうはずがない。
難なくカカシに押さえつけられ、30秒後には新たなマスク忍者の誕生だ。
小桜はしくしくと悲しげに泣いたが、カカシは満足そうに娘の顔を眺めている。

「これでお前もはたけ家の娘だぞ!胸を張っておもてを歩け」
「は、恥ずかしいよぅ・・・・・」
「あらー、可愛いじゃないのー。快、こっち向いてー」
どこかずれた感性のサクラは、嬉しそうにカメラで子供達を撮りまくっている。
そしてサクラの後ろから快と小桜を見比べたナルトは、口を尖らせてカカシに詰め寄った。

「いいなー、いいなーーー、カカシ先生、俺の分はーーー!!??」
「しょーがないなぁ、お前も家族みたいなもんだし。じゃあ、俺の予備のをやろう」
「わーーい!!」
「・・・・ナ、ナルトまで」
仲間外れにされるのが嫌だったナルトは自らマスクをかぶり至福の表情だ。
唯一まともな神経の持ち主である小桜は頭を抱えて叫びだしそうになる。
どこを見ても、皆、マスクマスク。
これではオシャレな衣装を身に着けても意味がなく、お化粧も無理だ。
誰かにこの空間から連れ出して欲しいという願いが通じたのか、次の瞬間、呼び鈴の音が部屋に響いた。

 

 

「・・・・仮装パーティーか?」
玄関先で出迎えた皆の顔を見回し、サスケはぼそりと呟く。
赤や黄色、色とりどりの覆面で口元を隠す怪しい集団を見れば勘違いしても無理はない。
「誕生日パーティーだってばよ」
「お前も仲間になるかー?」
「絶対に嫌だ」
カカシの誘いをサスケはきっぱりと拒絶する。
「顔が見えなければ木ノ葉隠れのアイドルたる自分の存在意味がない」というのがその理由だ。
自分の容姿に絶対の自信を持つサスケには誰も突っ込みを入れることは出来ない。

「それと、快はともかく女の子の小桜には必要ないだろう。こんなもの」
サスケに引き寄せられた小桜は口元を覆うピンクの布地を外されほっと息をつく。
「えー、何でー。小桜のも特注なのよ。はたけ家の一員として・・・」
「せっかくの可愛い顔が見えなくなる」
振り向いたサスケは、カカシの顔を真っ直ぐに見据えて告げた。
それももっともな意見だと納得してしまったのは、カカシが娘を溺愛する親ばかだったからだろう。

「有難う、サスケくんーーv」
窮地を救われた小桜はサスケに抱きついて心からの感謝を示す。
「サスケの口から、「可愛い」なんて言葉が出てくるなんてなぁ・・・」
「成長したってばよ」
ぼそぼそと会話をするカカシとナルトはやっかみ混じりの視線を二人に向けている。
小桜と違い、マスクを気に入った快は次の日からそれがトレードマークとなり、はたけ家の風習はかろうじて受け継がれたのだった。


あとがき??
ファミリーシリーズのサスケは、皆のお兄さん的立場なので、一番大人でしっかり者という設定。
昔よりずっと素直に自分の気持ちを口にします。
快くんは将来はやっぱりマスクマン。
マスク好きーというより、エリート上忍のお父さんに近づけたみたいで嬉しかったんだと思いますよ。
しかし家族全員マスクで外出したら、迫力ありますね。(笑)
タイトルは『犬神家の一族』っぽくしようとしたんですが。

一応、駄文投票ランキング一位のファミリーシリーズでしたが、今回短い話だったので他にも書きたいと思います。
投票してくださった方々、有難うございました。


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