失踪


「ただいまー」
カカシが土産を片手に帰宅すると、いつものように出迎えるサクラはいなかった。
「あれ?早く帰るって言ってあったのに」
訝りながら廊下を歩くカカシはリビングの扉を開ける。
そこには、パックンを枕代わりに寝ている小桜が一人いるだけだ。
ケーキの入った箱をテーブルに置くと、カカシはうろうろと家の中を見て回るが、どこにもサクラはいない。
今まで、サクラが子供を置いて無断で出かけたことなど一度もなかった。

「家出!?」
とっさにクローゼットを調べたカカシだが、サクラの衣類はそのままだった。
目に映る限り、無くなっているのはサクラが買い物に使っている鞄とサンダル。
暫く待ってみたが、サクラが帰ってくる気配はまるでない。
そもそも、カカシが連絡を入れたのにサクラがいないことがおかしいのだ。
「まさか・・・・・誘拐、とか」
最悪な事態を想定したカカシは、真っ青な顔で呟いた。

 

 

 

小桜が目覚めると、カカシと、彼に呼び出されたナルトが声を潜めて密談をしていた。
二人に近づいた小桜は、「あっちに行っていなさい」と遠ざけられてしまう。
パックンを抱えた小桜は、頬を膨らませて玄関へと歩き出した。

「誘拐されたんだよ、きっと」
「誘拐ねぇ。サクラちゃんだって成人した大人なんだから、そう簡単に攫われたりしないと思うけど」
「でも、サクラは可愛いし、隠れファンも沢山いるし」
カカシはハンカチを目に添えてしくしくと泣き続けている。
「うう。身代金の用意をして置いた方がいいかな」
「お金が目当て、ならいいけど・・・・。体が目的とか、国外に売り飛ばされたりとか」
ぼそりと呟いたナルトに、カカシはわっと泣き崩れた。

 

「まぁまぁ。そう安易に最悪な事態を考えないで、自ら進んで家を出たということで検討しようよ。サクラちゃんが家出したいと思い詰めるようなこと、カカシ先生しなかった?」
「・・・・・」
涙を拭ったカカシは腕組みをしながら考え込む。
「最近じゃ、夜中にキッチンで裸エプロンを強要したことかなぁ」
「え、そんな羨まし、いや、破廉恥行為を!」
「サクラは「小桜が起きてきたら困る」って拒んだから、無理矢理服を脱がせた。マッパよりチラリズムの方が断然もえるし」
「きっとそれが原因だよ!他にはないの」

「・・・・他って、サクラの薬草取りに付き合って山に行ったときに、草むらで押し倒したことかなぁ」
「え、野外で!」
甲高い声をあげたナルトは、近くにいるであろう小桜を思い出し、慌てて口元を押さえる。
「うん。外って誰が来るか分からない緊張感がいいよね。サクラは恥ずかしがってずっと泣いていたけど、それがまた可愛かった」
「先生ってば、外道!!もうないよね」
「うーん、サクラの飲み物に内緒で媚薬を入れたのも、めちゃくちゃ怒ってたような」
「え、それは何!!?」

 

 

 

カカシとナルトの会話が盛り上がっている中、チャイムの音に反応した小桜は玄関の鍵を開けた。
「ただいま」
「ママ!お帰りなさい」
手提げ袋を両手に持ったサクラは、飛び付いてきた小桜と足下のパックンに笑いかける。

「遅くなってごめんね。特売日だから、つい買いすぎちゃって。先生、帰ってきてるの」
「うん」
「ちゃんと私は買い物に行ったって言ってくれた?」
「それが、パパってばナルトと楽しそうに話していて全然相手にしてくれないの」
小桜は怒りの含む声でサクラに言い付ける。
サクラがリビングへとやってくると、何やら真剣な表情のカカシとナルトが電気スタンドをテーブルに置いて顔を突き合わせていた。

「カカシ先生、ナルト」
「しっ、今いいところなんだから!カカシ先生がようやく犯行を自供しそうなんだ」
「うーん、うーん。それとも生卵事件が原因なのかなぁ・・・・」
「何でも洗いざらい白状しちゃいな。ほら、カツ丼食べるか」
ナルトはどこからか持ち出したどんぶりをテーブルに出し、カカシの肩を叩く。
まるで昔の刑事ドラマの一場面を再現しているかのようだ。

 

「何よー、ナルトってばカカシ先生を独り占めして、ずるい!」
「ずるいーー」
サクラと小桜が声を揃えて不満をもらすが、なおもナルトはカカシを問いつめている。
何が発端で取り調べが始まったのかは、すでに忘れ去っている二人だった。


あとがき??
何やってるんだか・・・・・・。
サブタイトルは「馬鹿ばっか」です。
な、生卵事件って一体??
サクラはパックンが付いているから小桜に留守番を頼んだんですね。一人じゃ心配だけど。


駄文に戻る