キャベツの子


「だいぶ大きくなったなー」
二人目の子が宿ったサクラの腹部を、カカシはいとおしげに触った。
「うん。でも、あんまり目立たない方よ」
「そうなの?サクラ、痩せてるからかな」
少し首を傾げたカカシは、サクラと目が合うなりにっこりと笑う。
「男の子かな、女の子かな〜。サクラがお母さんなんだから、どっちでも可愛いだろうけど」
「えーと、元気良くお腹を蹴ってくるから男の子のような気がするわよ・・・・ん?」
子供のようにはしゃぐカカシに苦笑していたサクラは、脇にいる小桜が自分達を凝視していることに気づく。
「どうしたの、小桜?」
「・・・・何でもない」

ぷいと顔を背けた小桜は絵本を片手に足早に去っていった。
彼女の後ろ姿を眺めつつ、カシとサクラは訝しげに話し合う。
「何だか最近、小桜の様子が変じゃないか?」
「そうなのよ。何か言いたげな顔をしてこっちを見てるんだけど、絶対口には出さないの。何なのかしら」
愛娘の行動の意味が分からず、頬に手を当てたサクラは小さくため息を付いた。

 

 

 

小桜にとって、度々家に訪れるナルトとサスケは何でも話せる相談役だ。
サクラからのSOSの電話に、二人は仕事帰りにそろってはたけ家にやってくる。
子供部屋で折り畳み式のテーブルを組み立てると、ナルト達は彼女を座らせて神妙な面持ちで語りかけた。

「何か、心配事があるのか?」
「悩みがあるんだったら、俺が何でも相談に乗るよ!」
言葉と共に胸を叩いたナルトは、少々力の加減を誤ったのかゴホゴホと咳き込んでいる。
傍らを冷ややかに見ると、サスケは小桜へと向き直った。
「秘密は厳守するぞ」
「・・・・そういうんじゃないんだけど」
暫く落ち着かない様子で指をいじっていた小桜は、意を決して顔を上げる。

 

「どうしてお腹に風船を入れているの?」
「・・・は??」
「ママよ。あんな大きなものがお腹にあったら動きにくいじゃない。それなのにパパは何も言わないし、いつもにこにこしてるし、凄く変」
息巻く小桜に、ナルトとサスケは拍子抜けして顔を見合わせた。
もっと重大な告白があるものと身構えていておかげで、顔には笑みも浮かんでくる。
「サクラちゃんのお腹の中には、風船じゃなくて赤ちゃんが入っているんだ。小桜ちゃんの弟か妹だよ」
「赤ちゃん?」
目をぱちくりと瞬かせた小桜は、次の瞬間口を尖らせて反論した。

「そんなの嘘よ!私、知ってるのよ。赤ん坊はコウノトリが運んでくるって絵本に書いてあったんだから!!」
「それは創作上のことだ。実際とは違う」
「じゃあ、赤ちゃんはどうやって出来るの?」
「・・・・」
「・・・・」
小桜の素朴な疑問に、ナルトとサスケは揃って口をつぐんだ。
もちろん、成人している二人はその経緯を十分に理解している。
だが、それを幼い子供に分かりやすく説明するとなると、また別問題だった。

 

「・・・俺、パス」
「ちょっと待て!!」
立ち上がりかけたナルトの腕を、サスケがしっかりと掴まえた。
「逃げる気か」
「もう嫌だ。何で俺が微妙な年頃の子供を持った親の心境にならなきゃいけないんだよ!」
「俺だって知るか!」
「どーしたのー?」
言い争う二人を目の当たりにして、小桜は不安げに声を掛ける。
ナルトから手を離したサスケは、勢いで小桜の肩を掴んだ。

「小桜!一度しか言わないからよく聞け」
「う、うん」
「子供はコウノトリが運んでくるんじゃなくて母親の腹から出てくる。母親は10ヶ月かけて腹の中で赤ん坊を段々と大きくしていくんだ」
「ええ!!?」
目を見開いた小桜はそのまま絶句した。
口をぱくぱくとさせたあと、小桜は再び甲高い声で問い掛ける。
「何で、何でそんなところに赤ちゃんがいるの!?」
「赤ん坊の元が入ったキャベツを食べると出来るんだ。いいか、この話はこれで終わりだ。俺達はもう帰る」

 

 

 

サクラに「ちゃんと教えておいた」と言い残し、サスケはナルトを連れて帰っていった。
何をだろう、と思ったサクラだが、部屋から出てきた小桜は妙にすっきりとした顔をしている。

「ここに赤ちゃんがいるのね」
カカシと同じようにサクラの腹に触った小桜はしみじみと言った。
「そうよ。小桜はお姉ちゃんになるのよ」
頭を撫でるサクラに、小桜も笑顔で応える。
そしてサクラが一安心したのも束の間、夕食のメニューを見た小桜は強張った表情でその料理を拒絶した。

「どうしたの、小桜。あなたの好きなロールキャベツなのに」
「・・・・だって」
箸を置いた小桜は瞳に涙をためてサクラを見上げる。
「共食いになっちゃうよ」


あとがき??
ギャグ!?ほのぼの!??
ちなみに小桜ちゃんはかなり大きくなるまでキャベツを食べられませんでした。
何故キャベツなのかというと、「赤ん坊はキャベツ畑で生まれる」ってパタリロが言っていたからです。
後日談として、小桜ちゃんは台所にあったキャベツを一枚一枚捲って調べましたが、赤ん坊の元らしき物が出てくることはありませんでした。(そして、ママに怒られた)


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