「離婚よ!!」

扉を開けるなり聞こえたその言葉に、小桜は思わず後退りをする。
握り拳を震わせてサクラが睨んでいる相手は、もちろんカカシだ。
「・・・俺はサクラがそんなに心が狭い女だとは思わなかったよ」
「開き直らないで!こんな裏切り、耐えられないわ」
叫ぶように言うと、サクラは小桜の方へと顔を向ける。
「小桜、これからアカデミーでしょ」
「う、うん」
「早くいってらっしゃい。帰ってきたらすぐ荷物をまとめるのよ。もう、こんなところにいる必要なんてないんだから」

興奮状態のサクラに口答えが出来るはずがなく、小桜はすごすごとリビングをあとにする。
顔をそむけたカカシは一度も小桜の顔を見ることはなかった。

 

 

 

「喧嘩!?あの二人が?」
「・・・・うん」
目を丸くするナルトに、小桜は沈んだ顔で頷く。
驚くのも無理はなかった。
ナルトが記憶するかぎり、二人が喧嘩をしたことは一度もない。
大抵はサクラが一方的に怒り、カカシが謝って諍いは終わる。
逆の場合もあったが、それは稀だ。

「な、何が原因なのさ」
「知らない。パパはずっと黙り込んで怖い顔しているから、お話していないもの」
話すうちに、小桜の目は潤み始める。
「あんなパパ、はじめて」
「・・・・何か、よほどのことがあったんだな」

 

アカデミーの帰りにナルトの職場に立ち寄った小桜だが、そろそろ帰らないとサクラが心配する時間だ。
建物の外で見送るナルトを、小桜は何度も振り返って見る。
「大丈夫だよ。きっと、小桜ちゃんが帰る頃には仲直りしてるって」
「・・・」
大きな声で呼び掛けるナルトに、小桜は小さく頷いた。
小桜にとって、カカシとサクラ、二人がそろってはじめて帰るべき家になる。
どちらか片方でも欠ければ、それは全く違うものになってしまうのだ。

 

 

小桜の願いもむなしく、帰宅したときの二人の間の空気は依然緊張をはらんだものだった。
「小桜、急いでね。勉強道具と二、三日分の服があればいいから。あとは運送業者の人に運んでもらうわ」
サクラはすっかり身支度を整えたようで、赤ん坊の快は彼女の腕の中ですやすやと寝息を立てている。
カカシは同じ部屋にいたが、ソファーに座り涼しい顔で読書中だ。
止める気は全くないらしい。
何があったのか分からないが、カカシも相当頭にきているのだろう。

自分の部屋へと戻った小桜は、サクラに言われるまま衣服の整理を始める。
ふと見上げた先にあるのは、つい先週家族で遊園地に行ったときに撮った写真だ。
今の最悪の事態を想像するはずもなく、遊園地のマスコットキャラと共にみんな笑顔で写っている。
快を抱いたサクラと傍らのカカシを見つめ、小桜は溢れてくる涙をこらえることが出来なくなった。

「離婚なんて、やめて!!私、パパやママとずっと一緒にいたいよ!」
子供部屋を飛び出した小桜は、二人の前で強く訴える。
「小桜・・・・」
「私、絶対この家を出ていかない!!だって、ここは私の家だもの。パパとママと快がいる、私の居場所だもの」
そのまま大泣きした小桜は、カカシやサクラがなだめようとしても言うことをきかない。
自分の部屋に閉じこもったまま、次の日の朝まで出てくることはなかった。

 

 

 

「そういえば、喧嘩の原因は何だったの?」
小桜の涙が功を奏し、以前のように些か鬱陶しいほどいちゃつく二人に、小桜はテーブルに頬杖をつきながら訊ねる。
「ああ・・・・これよ」
サクラはエプロンのポケットに入っていたものをテーブルの上に出した。
それは、小さな紙の切れ端だ。
「・・・何、これ」
「『週刊木ノ葉通信』の袋とじ部分を開けたあとの切れ端。私というものがありながら、グラビアアイドルのエッチな写真を見たがるなんて、ひどい話よね!」
「別にエッチな写真じゃなくても、袋とじ部分って気になるものだろー」
「そうかしらね」
すねた口調で横を向いたサクラの頭を、カカシが撫でる。
喧嘩を蒸し返す気はないサクラだったが、面白くないことに変わりはない。

「そ、それが喧嘩の原因なの・・・・・」
呆れ顔で二人を見ていた小桜は震える声で呟く。
聞いてみれば、真剣に心配し、涙を流した自分が馬鹿になるような理由だ。
今さらながら、怒りの気持ちがこみ上げてくる。

「もう、離婚していいよ。私は快と二人で強く生きていくから」


あとがき??
元ネタはちびまるこちゃんですね。父と母が離婚しそうになったときの話。
サクラと結婚してから、カカシ先生はイチャパラも彼女に隠れてこっそり読んでいるらしいです。


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