病院に行ったら苺牛乳


「もしかして、彼のこと好きなの?」
「だって、可愛いじゃない。優しいし」

病院の無機質な廊下を、くすくす笑いの少女達が通り過ぎていく。
自販機にコインを入れたサクラは、迷わず一つのボタンを押した。
ゴトゴトと音がして、取りだし口に紙パックの飲み物が落ちてくる。
故障の気配は全くなかったが、サクラは無性に機械の脇を蹴り上げたい気持ちだった。

 

 

 

「サクラちゃん!」
病室の扉を開けて入ってきたサクラを見るなり、ナルトの顔はぱっと明るくなる。
「来てくれたんだ」
「・・・・・全然元気じゃないの。怪我で死にそうだって聞いたのに」
満面の笑みを浮かべるナルトとは対照的に、サクラは不機嫌そうに言う。
その口振りは、まるで重傷じゃなかったことを不満に思っているかのようだ。

「誰か来てたの」
「うん。職場の後輩で、良い子達ばかりだよ」
「ふーん」
つまらなそうに呟くと、サクラは窓際に置かれた花々に目を遣った。
花瓶に入っているものだけでも3つ、他にもフラワーアレンジメントの籠がところ狭しと並んでいる。
サクラが目撃した以外にも、見舞い客は沢山訪れているのかもしれない。
とくに、可愛い年下の後輩達が。

 

「・・・・あの、サクラちゃん、何か怒ってる?」
「何で私が怒らなきゃならないのよ」
サクラが睨み付けると、ナルトは反射的に身を縮める。
怯えた眼差しで自分を見るナルトに気づき、サクラは罰が悪そうにそれを放り投げた。
「お見舞い。あんたの分も買ってきてあげたわ」

ナルトが包帯を巻いていない方の手でキャッチしたのは、ピンク色のパッケージの苺牛乳。
サクラがいのの店で購入した花は、この部屋に入る手前で全く知らないお年寄りにあげてしまった。
何故そんなことをしたのは分からない。
だが、ナルトの病室から出てきた少女達を見たら、急に腹が立ってきたのだ。

「有難う」
くすぶった自分の気持ちなど知らず、律儀に礼を言うナルトをサクラは本当に馬鹿だと思った。

 

 

 

 

尋常でないスピードで回復したナルトは、普通ならば一ヶ月かかるところを二週間で退院することになった。
仕事に復帰をすれば互いに別の部署で働いていることもあり、なかなか会うことが出来ない。
退院の前日、病院に足を運んだサクラをナルトは喜んで迎え入れた。

 

「何度も、有難うね」
「・・・別に。苺牛乳が飲みたかったのよ」
優しく微笑むナルトに対し、サクラは素っ気なく答える。
病室の窓際には前回同様、綺麗な花々が並んでいた。
バラにスイートピーにカーネーション。
それらを順番に眺めていたサクラは、中心に置かれた見覚えのあるピンクの紙パックに目を留める。
数ある花を押しのけ、堂々と飾られている苺牛乳にサクラは目を丸くした。

「ナ、ナルト、あれって・・・」
「ああ、サクラちゃんがくれたやつ」
「何で飲まないのよ?腐るわよ」
サクラが怪訝な表情で訊ねると、ナルトは照れくさそうに頭をかいた。
「だって、もったいなくって。サクラちゃんがくれたからさ」

はにかんで笑ったナルトを見て、サクラのささくれた気分がみるみるうちに和らいでしまう。
だけれど、やっぱり素直な気持ちは口に出して言えない。

 

「馬鹿なんだから。本当に」
いつもより多少優しげな口調になったサクラに、ナルトはただ微笑を返しただけだった。


あとがき??
すみません。タイトルは私のことです。(^_^;)
というか、このタイトルで書きたくて出来た話。

全体的に私のナルチョ好き好きパワーが溢れております。
素直でないサクラを可愛いと思える彼は精神的に大人なのです。
将来的に女の子にもてそうなんだけどなぁ。駄目?


駄文に戻る