We are not alone


それは、奇妙な依頼だった。
木ノ葉隠れの里にある、人気のレストラン。
そこに、ナルト一人で来いという。
だが、カカシから頼まれたナルトはさして疑問に思わず任務を遂行した。

「えーと、ここで間違いないってばよ」
住所の書かれた紙と地図を見比べたナルトは、その店の前で独り言を呟く。
持ってくるよう言われた荷物も、しっかりと腕に抱えている。
カカシに渡された金で購入してきたものは、風呂敷にはちきれんばかりに入れられた野菜だ。
「これを届ければ、任務終了」
『本日、貸切』と書かれた札が入り口に掛かっていたが、ナルトは気にせず扉を開ける。
そして、鳴り響いたクラッカーの音に心臓が飛び出しそうなほど驚いたのだった。

 

 

「誕生日、おめでとう。ナルト」
駆け寄ったサクラに花束を渡されても、ナルトはまだ呆然としている。
言われた意味さえも分からない。
「え、ええ??」
「10月10日。あんたの誕生日でしょう」
にっこりと笑ったサクラに目を瞬かせたナルトは、やがて周囲にいる他の人々にも気づく。
カカシとサスケ、イルカやアカデミーの同期である仲間達の姿もあった。
彼らの後ろに張り紙には、『ハッピーバースデー ナルト!』の文字が書かれている。

「ナルトが買い物をしている間に、急いで準備したのよ。他の班のみんなも今日のためにスケジュールあけて集まってくれたんだから」
「それ、俺からお前に誕生日プレゼントな。しっかり食べろ」
抱えたままの野菜を指差しながら、カカシはナルトに笑いかけた。
驚きのあまり混乱していたナルトは、ようやく事態を把握する。
誕生日。
他人から祝ったもらったことなど一度もなく、すっかり忘れきっていた。
いや、故意に忘れようとしていたのかもしれない。
一人でケーキを食べたところで、嬉しいはずがないのだから。

「ナ、ナルト!?」
ぼろぼろと涙をこぼすナルトに気づいたサクラは、ぎょっとした顔で彼を見つめる。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ!」
「俺、嬉しいってばよ・・・」
涙を隠すことなくナルトは泣き続けた。
自分が生まれてきたことを祝福してくれる人がいる。
長い間、皆に疎まれながら生きてきたナルトにとっては奇跡のようなことだった。

「・・・・忍びは簡単に泣いたりしたら、駄目なのよ」
思わずもらい泣きしたサクラは、ナルトにハンカチを渡しながら言う。
こんなに喜ぶのなら、もっと早くに誕生日パーティーを開くのだった。
そう思いながら。

 

 

サクラからは手編みのマフラー、いのからはガーデニング用品、ヒナタからは手作りの焼き菓子。
嬉々とした表情でプレゼントの箱を開けていたナルトは、はたと気づく。
チョウジやシカマル、キバやシノのプレゼントはまだ脇に置かれている。
だが、ナルトと同じ班のメンバーである、サスケの物はどこにも見当たらなかった。
これだけあれば一つくらい無くても全くかまわない。
いや、あれば逆に怖いような気がする。
いろいろと考えながらサスケを見たナルトは、振り向いた彼と視線を合わせる。

「・・・・お前のは?」
好奇心に負けて訊ねると、サスケは訝しげに眉を寄せながらテーブルを指し示した。
「さっきから、置いてあるだろ」
「え」
そこには沢山の料理が置かれていたが、一番目立つのは中心にあるバースデーケーキだ。
「お、お前があれを買ってきたのか」
女性客に混じってケーキ屋で買い物をする姿を想像し、思わず笑ってしまったナルトだったがサスケは首を振った。
「買ってない。俺が作った」

その一言に、目が点になったのはレストランにいた全員だ。
サスケが甘いものが苦手なのは、周知のこと。
彼が生クリームだらけのケーキを作るなど、考えられない。
「マジかよー」
エプロン姿でケーキを作るサスケは、ケーキを買う場面よりも笑いを誘った。
場は一気に和やかな雰囲気になったのだが、膨れ面のサスケにとっては不本意なことに違いなかった。

 

 

 

夜になってパーティーはお開きとなり、プレゼントを山のように抱えるナルトはサクラと共に帰路につく。
荷物持ちとしてナルトの横を歩きながら、風の冷たさを感じたサクラは自分のプレゼントであるマフラーを彼の首に掛けた。
そして、片方の端を自分の首へ同じように巻きつける。

「これ、普通より長めだったでしょう。二人用のつもりで作ったのよ」
荷物の袋を持ち直すと、サクラは空いた方の手でナルトの掌を握って歩き出した。
「じゃあ、プレゼントじゃなくて、サクラちゃんのマフラーなんじゃないの」
「・・・そうかもね」
ナルトの素朴な疑問に、サクラは笑って答える。
ナルトの隣りにサクラ。
これからもずっとこうして歩くつもりなのだから、ナルトの言葉に間違いはない。

「そういえば、今日のパーティー、サクラちゃんが企画してくれたんだってね。有難う」
「別に。ナルトが大事だから、みんな集まったんだし」
照れくさそうに言うサクラに、ナルトは笑顔を返す。
マフラーはもう必要でないほど体は温まっていたが、お互い繋いだ手を離すことはなかった。


あとがき??
長い間お待たせして、申し訳ございません!
リクエストは、ナルトが幸せな話でナルサクでした。
サスケのケーキ、私も食べてみたい・・・・。
私の中ではサスケ=ギャグ担当なんですが、みんなは違うのかな??
ナルサクは私の「ナルト可愛い可愛いv」という心情がサクラに伝わっている話が多いようです。
サプライズパーティーってのは、どうも気恥ずかしい気がします。お互いね。

230000HIT、kei様リクエスト有難うございました。


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