独占欲!
「あの子、可愛くない?」
「ああ、本当だー。誰を待ってるのかな」
数人の少女達の黄色い声に反応し、サクラはその方角へと目を向ける。
待ち合わせ場所である犬の銅像の前に立っているのは、サクラのよく知った顔だった。
何となくむっとしたサクラは彼女達を睨むようにして見たが、会話が盛り上がっているために気づかない。7班は現在、長期任務のために菜の国に1ヶ月ほど滞在していた。
今日はたまの休日だったが、午前中に買い物を済ませたサクラは、昼からナルトと待ち合わせて映画に行く予定になっている。
銅像の前には他にも人を待つ若者達がいたが、その中でも目を引くのは金色の髪の少年だ。
故郷である木ノ葉隠れの里では彼は忌むべき存在として扱われていた。
だが、異国の地ならばそうした先入観はなく、ただの一人の少年として皆は彼を見ている。
いつもは飛び抜けて整った顔の仲間が傍らにいるために目立たないが、彼とて普通ならば十分に綺麗といえる顔立ちをしていた。
「ナルト、お待たせ!」
駆け寄ったサクラが声をかけると、ナルトは弾かれたように振り返る。
「サクラちゃ・・・」
突然抱きつかれたために言葉が続かず、さらにはキスをされてナルトは目を丸くした。
人目があるところであまりくっつくなと、サクラからいつも注意されているのだ。
その彼女がこうして大胆な行動を取るなど、思いもしなかった。
目をぱちくりと瞬かせるナルトを、サクラはごく至近距離で見据えている。
「と、どーしたの?」
「・・・別に」
ナルトの背中に回した手に力を込めると、サクラは先ほどナルトを見て騒いでいた少女達に向かって舌を出した。
殺気を感じたが、忍者がそれぐらいで怖がるはずもない。
とにかく、ナルトが誰のものか示せればよかった。「ナルトさ、ここで立っていて、誰かに声かけられなかった?」
「あー、うん。ちょっと付き合ってくれって、何人も来たよ。宗教の勧誘とかかなぁー」
「・・・・」
「都会って怖いね」
明るく笑うナルトをサクラは呆れ顔で見つめる。
ナルトに近寄る宗教の勧誘とやらは若い女子ばかりだったと思われるが、彼はその意味を全く分かっていない。
それなればそれで、わざわざ教えることもなかった。「ナルト、私以外の女の子に付いていったら、駄目だからね!」
「う、うん」
強い口調で言われたナルトは、びくつきながら頷く。
確認するようにナルトを見上げるサクラは、改めて思った。
十代半ばで伸び出した身長はサクラより頭一つ分は高く、金色の髪と青い瞳はそのまま王子様の色だ。
さらに、性格はすこぶる前向き、誰に対しても平等に優しい。
周りの女性達に騒がれない方がおかしかった。
「ナルト、私のこと、好き?」
「大好き」
ナルトが即答すると、サクラはようやく安堵の笑みを浮かべる。
「じゃあ、映画館に行こうか」
ナルトの手を引いて歩き出したサクラだったが、彼は話の合間にきょろきょろと首を巡らせていた。
見ているのは主に通り過ぎる人だ。
「どうかした?」
「んー、菜の国の女の子達は美人ぞろいって話を聞いたけど、本当だなぁと思って。どの子もみんな可愛いよね。驚いたよ」
「・・・・ナルト、カカシ先生みたいよ。そのうち、エッチな本とか読み出すんじゃないわよね」
サクラが冷ややかな眼差しを向けると、ナルトは困ったように笑う。「違うよ。可愛い子ばかりだけれど、やっぱりサクラちゃんの方が良いって言いたかったの。はいっ」
言いながら、立ち止まったナルトはポケットから出した髪留めをサクラにつける。
驚いて頭に手をやったサクラに、ナルトは笑いかけた。
「さっき、露店で買ったんだ。サクラちゃんに似合うと思って」
「・・・・・有難う」
「サクラちゃんが一番可愛いよ」サクラの心の中の不安を見透かしたようだった。
いつでも真っ直ぐに自分を見つめ、裏表のない笑顔を浮かべるナルトがサクラは眩しくて仕方がない。
彼といると、いつでも素直な気持ちになれるような気がした。
「サクラちゃん、俺のこと好き?」
「・・・大好き」
顔が赤くなり、少々どもってしまったが、サクラの目の前には優しい笑顔があった。
あとがき??
ラブラブです。ただ、ナルトに抱きついてチューするサクラちゃんを書きたかっただけ。
うちのナルトはスレナルくんなのでいろんなことは分かっているのですが、目隠しをするのです。
サクラちゃんのために。
16、7歳のつもりですが、未来のナルトは四代目の姿(カカシ外伝の)を想像してくださいね。