タルトへの道
「ナルト、誕生日プレゼント、何が欲しい?」
休日の朝、ナルトの家を訪れたサクラは、出された茶に口をつけながら訊ねる。
近頃仕事が立て込んでおり、あれこれ品物を選ぶ暇がないのだから、直接聞いて買いに行った方が早いと判断したのだ。
「・・・何でもいいの?」
「ラーメン以外ね。予算の問題もあるけど、とりあえず言ってみなさいよ」
「俺、赤ちゃんが欲しい!!」
きらきらと輝く瞳で言われ、サクラは口を大きく開けてナルトを凝視する。
今、妙な返答を聞いたような気がした。
「は??新手の冗談なの!?」
「えっ、何で」
サクラが素っ頓狂な声をあげると、逆に聞き返されてしまう。「この前さ、任務でお世話になった家に赤ちゃんがいたんだ。俺に懐いてくれて、すっげー可愛くて。俺も絶対欲しいって思ったんだよ」
「そんなこと言ったって、赤ちゃんは物じゃないんだから・・・」
「だからさ、シカマルに相談したら「そういうことはサクラに頼め」って言われたんだ。どうしてだろう?」
「・・・・」
とぼけているわけではなく、ナルトの目は真剣だ。
そこまで話を聞いて、サクラは何故だか非常に嫌な予感がした。
「ナルト、あんた赤ちゃんがどうやって出来るか・・・・知ってるわよね」
「もちろーん」
ほっと息をついたサクラに、ナルトは満面の笑みを浮かべてみせる。
「赤ちゃんはキャベツ畑で産まれるんでしょう!それぐらい、俺だって知ってるっての」
テーブルに突っ伏したサクラは暫くその状態で動けずにいた。
思えばナルトは授業中にいつも寝ていたのだから、そうしたことを学習しそびれたのだろうか。
疑問に思っても教えてくれる親はいない。
クラスメートに一人か二人はませた子供がいて話をしてくれそうだが、ナルトには友達も皆無だ。
さらに毎日9時前には就寝なのだから、いかがわしい深夜番組から知識を得ることも出来ない。
「あ、あの、ほら、シカマルとかサスケくんと、夜のお店とか行ったことないの?」
「お店?」
「ヤブ北町あたりのネオンがチカチカした・・・・夜も活気があって綺麗なお姉さんとかいっぱいいる・・・」
「ああ、あの辺に行った事ある!!エロ仙人に「これも勉強だ」とか言って無理やり連れて行かれた。なんだか薄暗い店内で客が男ばっかりで」
「そう、それよ、それ!!それで、どうしたの」
思わず我が事のように興奮したサクラだが、頬をかいたナルトは歯切れ悪く答える。
「俺、店に入ってすぐ眠くなって寝ちゃったんだよねぇ。9時すぎてたし、気づいたら朝で店の人も困ってた。エロ仙人には「もう連れて来ない」って言われるしさ」
「・・・・」
「でも、それと赤ちゃんの話と何の関係があるのさ?」脱力したサクラは、首を傾げるナルトを半眼で見据える。
目の前にいるのは本当にいまどきの若い少年だろうか。
いや、彼はすでに上忍で次代の火影と見なされているのだから、いつまでもこのままでいいはずがない。
誰かが、正しい知識を教えなくてはならないのだ。
「ナルト・・・赤ちゃんってすぐに連れて来られないのよ」
「えっ!」
「桃栗三年柿八年って言うでしょう。芽を出してから桃と栗は三年で、柿は八年で実を結ぶってことなのよ。人の場合は準備してから十月十日かかるの」
「へーーー。で、準備って?」
「ちょっと、顔貸しなさい」
手招きをされ、身を乗り出したナルトはサクラに唇を奪われる。
思いがけない事態に驚いたナルトは、すぐに体を離してサクラに問いかけた。
「ええっ、キスすると赤ちゃんが出来るの!?」
「えーーと、第一段階みたいなものかしら。続きは今度ね」サクラとてナルトと同様に初心者で、その道の経験などない。
それが、どうしてナルトの手ほどきなどしなければならないのか。
葛藤はあるものの、ナルトを他の誰かに奪われるのも癪だ。
「早く見たいなー、赤ちゃんv」
罪のない笑顔で言うナルトが、どうにも恨めしく思えるサクラだった。
あとがき??
み、道のりは長いです・・・・・・。
ああ、タルトというのは、ナルトとサクラの息子の名前。
mitsuさんの誕生日祝いにラブラブなナルサクを書こうと思ったら、こんな感じに・・・。ラブラブ??
一応、ラブチューのつもりです。中途半端で申し訳ない!!
スレナルの場合は全てを知った上でサクラをからかいそうですが、この話はピュアなナルトということで。
しかし、夜に活躍出来ない忍者って、役立たずのような・・・・。うーん。mitsuさん、誕生日おめでとうございました!