新婚さんナルサク


元気の塊のようなナルトが、珍しく肩を落として椅子に座っていた。
心なし、顔色も悪いように見える。
ナルトといえば、先ごろ上忍に昇格し、片思いをしていたサクラとも入籍を済ませて順風満帆な人生のはずだ。
何かを思い悩む性格でもない。
アカデミーの同期として少々気になったシカマルは、飲みかけの缶コーヒーを片手に彼に歩み寄った。

「浮かない顔してんなー」
「・・・・シカマル」
顔をあげたナルトは、彼と目が合うと力のない笑顔を浮かべてみせる。
「うん。近頃、眠れなくて・・・」
「何でだよ?」
「せっかく布団に横になっても、サクラちゃんが寝かせてくれないんだ。とにかく凄いんだよ、毎晩毎晩」

訥々と語るナルトに、シカマルは口に含んだコーヒーを噴き出しそうになった。
二人は新婚なのだ。
それほど驚くことでもないが、子供っぽい面を多く残すナルトがそうしたことを言うと、妙な気持ちがしてしまう。
「もう、信じられないくらい激しいんだから。でも、サクラちゃんのことは大好きだし、だから俺も何とか頑張っている感じだよ。今度からは縄で縛ったりしてみようかと、いろいろ考えて・・・」
「いい、もういいから!!!」
なおも続きそうなナルトの話をさえぎると、シカマルは彼の肩に手を置いてその瞳を覗き込む。
「お前も苦労してるんだな・・・・・」

 

 

二人の間には大きな誤解があったのだが、ナルトは全く気づいていない。
「精がつくから」と各種ドリンク剤をもらったものの、何故急にプレゼントをもらったのかも分からなかった。
誕生日は過ぎてしまったが、遅めの贈り物だったのかもしれないと思う。

「ただいまー」
「おかえりなさいv」
長い間、一人暮らしをしていたナルトにすれば、こうして家で誰かが待っていてくれるだけでも嬉しい。
さらには、エプロン姿で微笑んでいるのは最愛のサクラなのだ。
彼女は結婚後も綱手の元で働いていたが、帰宅時間はナルトよりも早かった。
「ご飯出来てるわよー」
「うん」
にこにこと微笑むサクラを、ナルトは一度強く抱き締める。
ライバル達を蹴散らしてようやく手に入れた、いとおしいサクラ。
些細な障害などで、この幸せを失うわけにいかなかった。

 

 

 

「じゃあ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
一緒に食事をし、共に風呂に入り、十分にいちゃつく時間を過ごした二人は、寝室の大きなベッドの上で就寝の挨拶をした。
健康的なサクラはすぐにすやすやと規則正しい寝息を立て始める。
だが、ナルトの夜はこれから始まるのだ。
真剣な眼差しをしたナルトはサクラの体をしっかりと抱きとめ、身動きが出来ないほど手に力を込める。
昨夜はうっかり熟睡した隙に後頭部へ肘鉄を食らってしまったが、今夜こそは離さない。

サクラの寝相は究極に最悪だ。
親友として何度も互いの家に泊まったことのあるいのは、二人が付き合いだした当初、ナルトに強く忠告していた。
とにかく、両手は離してはいけない。
うっかり寝返りを打って彼女の拘束が外れれば、後ろから強烈なキックが飛んでくるのだ。
くノ一クラスの修学旅行の際は、サクラのために同室の生徒が3人ほど病院送りになったらしい。
サクラは朝になると暴れたことを全く覚えていないのだから、始末に負えない。
さらに、綱手に弟子入りして怪力を身につけた今のサクラは、まさに全身凶器のような存在だった。

 

「大好きだよ、サクラちゃん・・・」
耳元で囁く声が聞こえたのか、サクラは薄く笑みを浮かべている。
室内灯のほの暗い明かりでもその愛らしさは全く損なわれていない。
彼女の笑顔を見てしまえば、極悪な寝相のことなど忘れてナルトは幸福に浸ってしまうのだ。
たとえこの世の終わりがこようとも、ナルトはこの手を離す気持ちにはならなかった。


あとがき??
シカマルが動揺した意味は、分からない人は分からないままでいてください・・・。
シカマルの役はサスケでもよかったんですが、坊ちゃんにはちょっと刺激が強すぎるかと思いまして。(笑)
坊ちゃんはイノセントのままでいて欲しいんです。
ナルトとシカマルのコンビは密かに好きです。


戻る