サクサク


「ぜってー殺す・・・」
「親に向かって、なんて口の利き方だ!!」
「まぁまぁ」
はたけ親子の喧嘩を、長男の嫁であるサクラは必死に止めようとしている。
サクラが嫁に来て以来、二人の諍いは日常茶飯事だった。
てっきり元から仲の悪い親子なのだと思っていたが、以前はわりとほのぼの家族だったというから驚きだ。
その原因が自分にあるとは、サクラは露ほども気づいていない。

「だってサクラ、こいつがサクラの風呂を覗いたんだよ!!許せるの?」
「お父様がそんなことするはずないじゃない。先生、落ち着いて考えてよ」
いきり立つカカシをサクラが何とかなだめる。
カカシが脱衣場にやってきたとき、その場にしゃがんだサクモは風呂場の扉の隙間を覗き込んでいたのだから間違いなく現行犯だ。
それなのに、サクラは事実を全く認めようとしなかった。
「何か用事があったんですよね、お父様」
「そうそう。腕時計を鏡の前に忘れて、取りに来ただけだったんだよ。それを、バカカシが急に騒ぎ出して」
同情的な眼差しで自分を見るサクラに、サクモはしゃあしゃあと言ってのける。

「サクラ、こんな被害妄想な男とは早く別れた方がいい。俺はいつでも大歓迎だぞ」
「え?」
サクラの細い腰を抱いたサクモは素早くその頬にキスをする。
突然のことにサクラは目を白黒とさせたが、彼女の掌を握ったサクモの表情は真剣だ。
「貯金ならたっぷりあるし、結婚式はカカシのときより盛大にしよう。家は、そうだな、海辺の一軒家を買って子供はサッカーチームが出来るくらい作ろう」
「は、はぁ・・・・」
野球チームじゃないのか、などと悠長に考えていたサクラは、後ろから体を持ち上げられて思わず悲鳴を上げそうになった。
「息子の嫁を誘惑するな、このくそ親父が!!!」
「・・・・先生」
カカシに抱っこをされた状態のサクラは、もはやにらみ合う二人に何と声をかけたらいいか分からない。
サクモの冗談を真に受けるカカシが、子供っぽく見えてしようがなかった。

 

「サクラ、風呂に入りなおすぞ!」
「え、ちょ、ちょっと先生!!私はさっき入ったばかりよ」
「もう一度、俺と一緒に入るの」
サクモに舌を出してみせたカカシは、サクラを小脇に抱えたまま脱衣所へと向かう。
これにはさすがのサクモも歯軋りをして二人を見送るしかない。
戸籍上は、今のところサクラの夫はカカシだ。
いくらサクラがサクモに懐いていても、カカシを抹殺しないかぎり彼女がなびくことは考えられなかった。

「ざまーみろ」
「先生ー、もっとお父様を大事にしてよ」
「はいはい。サクラ、万歳して、ばんざーい」
サクラの両手をあげさせたカカシは彼女のパジャマをどんどん脱がしていく。
奴は眺めることしか出来ない体に自分は直に触ることが出来る。
そう思うと、先ほどまでの怒りは少しだけ静まってきたような気がした。
「あ、先生、アヒルちゃん浮かべてみようか。昨日雑貨屋で見つけたんだけど、一羽じゃ可哀相だから二つにしたの」
一人優越感にひたるカカシをよそに、サクラは新品の風呂グッズを片手にはしゃいでいる。

「こっちの銀が先生で、小さいピンクが私」
「うん、かわいーね」
まだ15歳になったばかりの幼な妻の頬にカカシは唇を寄せる。
「え、何?」
「しょーどく。さっき、変なおっさんに触られたから」

 

 

 

サクモの行為は許せなかったが、それがきっかけで、久しぶりに二人で風呂に入れた。
そう考えると、彼の存在も無駄ではなかったのかなぁと、お湯に浮かぶアヒルを見ながらカカシはぼんやり思う。
自分に重なるように湯船につかるサクラの頭に、カカシはそっと触れた。
「ねぇ、サクラ」
「んー」
「サクラさ、うちの親父のこと好きなの?」
「え??」
「・・・何か、いつも俺より親父の方をかばうし、一緒にいて楽しそうだし、俺が任務でいないときは二人で遠出しているみたいだし、もしかし俺よりも親父の方がいいのかなぁ、なんて」
話すうちに、段々と声が沈んでくるのが自分でも分かり、カカシは何だか恥ずかしくなる。
サクラがくすくすと笑う声が聞こえるのだから、よけいにだ。

「だって、お父様がいなかったら先生もこの世にいないのよ。だから、大切にしないといけないと思う。それにお父様って本当に先生にそっくりだから、自然と甘えちゃうみたい」
体の向きを入れ替えたサクラは、カカシの瞳を間近で見据えながら話す。
「先生のことが大好きだから、お父様のことも好きなの。分かる?」
「・・・うん」
「だから変な焼餅やかないで。お父様だって私のことを娘だと思って大事にしてくれているのよ」
「・・・・」
それは嘘だと思ったが、カカシは一応黙っておいた。
昔から、サクモとは女性の好みが一緒で、好きになる女性はほとんど横から彼に掠め取られたのだ。
サクラの存在は幸い結婚式の直前まで隠すことができたが、そうでなかったらどうなっていたか、考えるだけで怖い。

 

「サクラー、俺達はサッカーチーム二つ分くらい子供作ろうね」
「・・・それ、無理だから」
自分を抱き寄せて言うカカシに、サクラは冷静な突っ込みを入れる。
サクモがサクラの入浴を覗き見しないようにするための対策。
それは、やはり自分が一緒に入るしかないだろうかと真面目に考えるカカシだった。


あとがき??
サクモさん、カカシ先生にそっくりらしいので、サクラも彼に懐いている様子。
ただ「サクサク」という可愛い名称のカップリングをやりたいために書いた話でした。
サクモ×サクラなんて書いているの、うちだけだよ。きっと。
「カカシ父のサクモとサクラはサクサクですね」という書き込みを見てさっそくこんな話を考えてしまうあたり、アホです・・・・。
でも、こういうご意見があるから、楽しくサイトを続けさせて頂いています。
有難うございます。


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