サクサク 4


嵐の去った朝だった。
風が止んだことを知るなり、カカシは缶詰状態だった職場を一目散にあとにする。
たとえ家を留守にしても3時間ごとの電話はかかさないカカシだったが、昨夜は家の近くの電信柱が倒れたらしく、全く連絡がつかなかったのだ。
無理に家に帰ろうとしても、雷雨に阻まれる。
何故そこまでしてカカシが帰宅にこだわるか不思議な同僚達だったが、心配なのは家ではない。
中にいる住人、サクラただ一人の安否だ。

 

 

 

「サクラーー、無事かーーーー!!」
扉を開けるなり血眼になって呼び掛けたカカシだったが、早朝の玄関は静まりかえっている。
駆け出したカカシは迷わず寝室に向かったがそこにもサクラの姿はなかった。
非常に嫌な予感が頭を掠める。
トイレや風呂や居間、順番に見ても、どこにもサクラはいない。
クローゼットの中まで調べつくした後に、カカシは恐る恐る、その場所へと足を向けた。

「さ、サクラ・・・・」
小さな呼び掛けと共にカカシが覗いたのは、家の一番奥まった所にあるサクモの私室だ。
逃げようにも外は激しい雷雨、電話線は切れ、“白い牙”と言われたサクモにサクラは到底適わない。
自分のいない隙にサクモがサクラに強引に詰め寄る姿が、嫌でも脳裏をちらつく。
案の定、サクモのベッドで眠るサクラを見付けて、誤解するなという方が無理だった。

 

「サクラ、サクラ!!」
「んー・・・・」
カカシに体を揺すられ、顔半分まで布団をかけて寝ていたサクラは目を擦りながら上を見る。
ぼやけた視線の先にいたのは、何故か泣きそうな顔のカカシだ。
「あ・・・先生。おかえりなさ・・・キャーーー!!!」
突然パジャマの前合わせを引きちぎられたサクラは、状況を把握できずに悲鳴を上げた。
「な、何するのよ!やめて」
「俺がいない間に何があったか、調べてやる」
「いやーー!!!」

暴れるサクラを力任せにねじ伏せると、カカシは彼女を下着一枚の姿にしてしまう。
服で隠しても肌に残る愛撫の痣は一目瞭然だ。
声を詰まらせて泣くサクラに、カカシは冷ややかな眼差しを向ける。
「やっぱり、昨日親父と寝たんだな」
「何のことよ!」
後ろ暗いところがあるにしては、サクラの声は明瞭だった。
「これは、先生が一昨日の夜につけたんでしょう!!忘れたとは言わせないわよ」
「・・・え?!」

頭に血が上っていたカカシは、サクラの怒鳴り声にようやく思考がまとまり始める。
サクラがサクモの寝室にいたということで、気が動転していたのだ。
いつもはサクラに拒まれて痣は残さないが、あの夜は確か酒が入っていた。
もしかしたら自分がやったのだろうかと思いつつサクラを見ると、怒りに燃える瞳の彼女と目が合う。
「馬鹿!!!」
思い切り頬を殴られ、カカシは自分が早合点したのだということを嫌でも思い知らされた。

 

 

 

「何の騒ぎーー??」
寝ぼけ眼で寝室と続く書斎から出てきたサクモは、頬を押さえるカカシと、下着姿のサクラを不思議そうに見た。
「あれ、絶景だねぇ・・・」
「お父様!!」
あらわになった肌を見てニヤついたサクモは、腕の中に飛び込んできたサクラを受け止める。
「よしよし。こんなに泣いて。何があったのさ」
サクモに抱きつくサクラはただ泣きじゃくるのみで、何も話そうとしない。
自分の不貞を疑われたなど、サクラにはひどい屈辱だ。
しかも、相手が日頃から慕っているサクモとなると、さらに許せない。

「先生の馬鹿!!もう離婚よーー!!!」
「え、ちょ、ちょっと待ってよ、サクラーー!!」
「近寄らないで!」
カカシが詰め寄れば詰め寄るほど、サクラはサクモにくっついていく。

 

不穏な空気は確かにあったのだ。
雷を恐れて泣くサクラがこの部屋に入ってきたとき、サクモは何度も押し倒そうと思った。
だが、自分を信じ切っているその眼差しを裏切れず、彼女をベッドに寝かしつけ、隣接する書斎の長椅子で横になったのが項を奏したようだ。

「サクラ、離婚届は今日中に出した方がいいよ。あそこの引き出しに用意してあるから」
「何で用意してあるんだよ、そんなもの!!」
素肌のサクラにべたべたと触りまくるサクモをカカシは怒鳴りつける。
窓の外、豪雨が過ぎ去った空は、洗濯日和の快晴だった。


あとがき??
楽しいなぁ。
サクラが服を着て、一人で寝ていた時点で「違う」と分かるべきなんですが。先生、そうとう焦っています。
サクモ好きーのやひろさんや八犬さん、その他沢山の方から温かなメッセージを頂いたので、頑張りたいです。
ちなみに、カカシ先生は土下座&クリームあんみつ一ヶ月分でサクラに許してもらいました。
本当に離婚はしないですよ。(笑)


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