大好き、カカシ先生


枕元でガーガーと掃除機をかける音が聞こえる。
キッチンでは、何か食器が割れていた。
クローゼットをがさごそと漁っているのはナルトだろう。
「・・・帰ってくれ、本当」
カカシは涙ながらに訴えるが、下忍達は誰一人聞いていなかった。

この日、7班の下忍達はカカシ宅の大掃除のために、休日を使って集合していた。
ちなみに、カカシは熱を出して寝込んでいる。
日頃世話になっている担任のため、3人で力を合わせようというわけだ。
やってきた彼らを最初は追い出そうとしたカカシだが、体調が万全でないこともあり、無理に押しきられてしまった。
そうして、今の最悪の状態があるわけだ。

 

 

 

「えへへー、先生、ちょっとお皿を10枚ばかり割っちゃった」
「・・・・そう」
「掃除機が壊れた」
「・・・・あまり、乱暴に扱わないでね」
「先生、タンスの奧に隠してあったエロ本捨ててもいいのー?」
「・・・・それ、大事だから」
いちいち報告に来る下忍達のおかげで、寝ている暇はない。
むしろ、彼らが来る前より熱が高くなったようだった。

「へー、先生のインナーって、こんなのなんだ」
「はい、女の子は見ない、見ない」
ナルトがクローゼットから出した下着をしげしげと眺めているサクラに、カカシはため息を付きながら窘める。
これではプライベートも何もあったものではない。
また、カカシが普段、自分のことを何も話さないために、下忍達も必要以上に周りを物色するのだろう。
本棚の奧の18禁ビデオが発見されることは、まだ免れているようだった。

 

 

「あのさー、君達、本当は散らかしに来たんでしょう」
「先生ってば、そんな言い方、ひどいよ!俺達は看病してくれる彼女もいない可哀相なカカシ先生が一人きりで孤独な死を迎えたら大変だから、忙しい合間を縫ってしょうがなく応援に来てあげたのに!!」
「帰れ」
心外だとばかりにまくし立てるナルトに対し、カカシは吐き捨てるように言う。
表情には出さないが、我慢の限界は近づいていた。
ぴりぴりした空気を察したのか、サクラはキッチンにあったコップを急いで持ってくる。
「先生が嫌なら帰るから。これだけは飲んで」
「・・・何、それ」

サクラが持つコップの中身は、怪しげな紫の飲み物だった。
奇妙な色とツンとする匂いのせいで、見ているだけで気分が悪くなる。
「熱を下げる効果がある薬よ。サスケくんが実家の本棚で見付けた書物を見て、私が作ったの」
「うちは家代々伝わる、門外不出の書だ。有り難く思え」
サスケは仰々しく懐から出した本を一同の前で広げて見せた。
年代物の薬学の書物らしく、端々はすり切れて、文字も霞んでいる部分が多い。

「・・・・あの、大丈夫なの、これ?」
「一生懸命作ったの。先生、早く飲んで!」
コップをカカシに押しつけると、サクラは上目遣いで懇願する。
非常に迷惑な話だったが、下忍達がカカシを心配して気を遣っているのだということは分かっていた。
ここで拒否すれば、彼らの信頼は永遠に失われることだろう。
震える手でサクラからカップを受け取ったカカシは、皆が見つめる中、息を止めてその液体を一気に飲み下した。

 

 

 

「先生、大丈夫かなぁ・・・・」
「まさか、あのまま気絶しちゃうなんて」
何とかカカシをベッドに寝かしつけた下忍達は、不安げな足取りで帰路についている。
だが、薬の調合は完璧で、カカシはそれを全て飲んだのだ。
本の記述が確かならば、明日の朝には元気になるはずだった。

「じゃあ、次に会うのは新年だね」
「そうね、自分の部屋の大掃除もしないと・・・・あれ、サスケくん?」
振り返ると、並んで歩いていたはずのサスケが、随分と後方に立ちつくしている。
そして、門外不出と言われる書物を、食い入るように見つめていた。
「サスケくーん、どうかしたー?」
「な、何でもない」
顔を上げたサスケは、何故か動揺した様子で書物を鞄へと押し込んだ。

 

今さら、絶対に言えなかった。
熱を下げる薬の作り方としてサクラに見せた部分が誤りで、本当は水虫のための塗り薬を調合するページだったとは。


あとがき??
合掌・・・・・。
あれ、タイトルに偽り有り??
というか、うちは一族、水虫の人がいたのか。門外不出って・・・・・恥ずかしいから?


駄文に戻る