地球最後の日


「俺の知り合いで宇宙人に詳しい奴がいるんだけど、明日エイリアンが地球に攻めてくるらしいよ」

集まった7班のメンバーに、ナルトは衝撃的な発表をした。
あまりに唐突な話のため、顔を見合わせた仲間達にも動揺が見え隠れしている。
「そ、それって、どうなるの?地球は滅ぼされちゃうの」
「そう簡単に占領出来ないだろう。だが、エイリアンを相手に俺達の忍術が通じるかどうか」
「・・・・無理だろうな。相手は得体の知れない光線を打ってくるんだぞ。おそらく勝負はあっという間だ」
必死に対応策を考えるカカシだったが、サスケはにべもなく言い放つ。

「分からないじゃん、もしかしたら、石とか投げてくるだけの攻撃かも」
「あ、それなら何とかなりそうね」
「いや、エイリアン達は気付かないうちに俺達の仲間になりすまして潜伏している可能性もある。情報を内部から攪乱されたら誰を信じたらいいか」
「・・・どうしてそう、お前は悲観的なのよ」
喧々囂々と言い合う彼らだが、一向に話はまとまらない。
そんな中で、決着を付けたのは簡単明瞭なナルトの一言だった。

 

「諦めよう」
「え!!!」
「どうせ、明日には人類は滅亡するんだ。考えるだけ時間の無駄さ」
あまりにナルトらしくない発言だったが、彼の瞳は何の迷いもなかった。
「残り一日、自分の好きなことをと好きなようにして過ごす。それが一番だよ」
「な、ナルト・・・・」
確かに、彼らに残された時間はあまりに短い。
こうして話し合いをしていては、あっという間に明日になってしまう。
そうなれば後から悔やんでも遅いのだ。

「サスケくん!!」
心を決めたサクラは、意を決して振り返った。
サクラの夢は、サスケと一夏の経験をすること。
夏にはまだ早いが、明日世界がなくなるのなら背に腹は替えられない。
「私と今日一日付き合っ・・・・・・あれ?」
話すうちに、サクラはつい先程まで隣りにいたサスケの姿が忽然と消えていることに気付く。

「さ、さ、サスケくんーーー!!!?」
絶望的な表情でサスケを探し回るサクラだが、影も形もなかった。
「何だか鰹の一本釣りに挑戦するって言って海に向かったよ。鰹節でも作って、おかかのおむすびを握る気じゃないの?」
「そ、そんな・・・・・」
夢やぶれたサクラは、その場で愕然と跪いた。
一夜のアバンチュール。
いや、こうなったら相手が誰であれ、一度くらいは経験をしておきたい。
どのみち明日には地球が無くなってしまうのだ。

 

「あの、サクラ、大丈夫?」
肩を落としたまま立ち上がらないサクラに、カカシは心配そうに声をかける。
顔を上げたサクラにホッとしたのも束の間、ぎらつく彼女の瞳にカカシは思わず体をびくつかせた。
「先生、上手いのよね!!」
「・・・え、な、何が?」
「いいわよ、サスケくんがいない以上、先生で我慢する。ナルトより幾分マシよ!」
「ちょ、ちょっと、サクラ」
気迫に押されたカカシは、詰め寄るサクラを怯えた眼差しで見つめる。
こうして、カカシはサクラに引きずられるようにしていなくなり、あとにはナルトだけが残された。

「一楽のメニュー、全部食べ尽くそうかなぁ・・・・」
呟きと共に、ナルトは貯金の全てである蛙の財布を懐から取り出す。
明日までに出来ることといえば、それぐらいしか考えられなかった。

 

 

 

翌朝、再び顔を合わせた7班のメンバーに、ナルトは昨日以上の衝撃発言をした。

「エイリアンが来るの、10年後に伸びたんだって」
「ええ!!!」
仰天するのも当然だ。
あと一日だけ、と言われたからこそ思い切った行動が出来たわけで、あと10年伸びたと言われても非常に困る。
サスケなど、親の残した遺産をつぎ込んで買った漁船で海に出て、鰹を持ち帰ってきたばかりだ。
すっかり日焼けをして真っ黒になった肌がたくましく見える。

「ど、どうしてよ!!」
「何だか、エンジントラブルみたいで」
「10年もかかるものなのか」
「時間の感覚が俺達とは違うみたいだよ。もしかしたら、100年後かも・・・」
のんびりと語るナルトは、昨日まではパンパンだった蛙の財布を逆さに振った。
「俺さー、貯金全部使ってラーメン食べ歩きしちゃったんだよね。今日からどうやって暮らそう」
「あんたの金なんてどうだって良いわよ!!私の純情返してよ、馬鹿―ーー!!!」
「え??」

ナルトの襟首を掴んで激昂するサクラを横目に、カカシは困ったように頭をかいている。
サスケはさっさと頭を切り換えて鰹のたたきを作っていたが、今回の宇宙人騒動で一番得をしたのはカカシかもしれなかった。


あとがき??
元ネタはやっぱり『魁!!クロマティ高校』。
web拍手おまけSS用に書いていたので、展開が早い早い。いや、いつも通りか。
自然とカカサクネタが入ってしまったよ。あれ??
先生はサクラの純情をもらっちゃった責任取ってくれればいいと思います。
サスケ、変な人っぽいですかね。うちではあれが普通です。普段が、普通を装っているというか。

・・・あれ、もしかして「クロ高って何?」って人、いますか。
アニメや実写で映画にもなっているんですが。アメリカ版も発売されたようですよ。
週刊少年マガジンに連載しているので、機会があれば是非。劇画タッチのギャグです。


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