人にやさしく


(注)イルカ、ナルト、サクラ、サスケが一つの家で暮らしています。
・・・・どういう家族構成なのかは考えないように。

 

 

「犬、拾ってきちゃったー」
そう言ってサクラが連れ帰ったのは、銀色の毛並みの綺麗な犬。
青と赤、左右瞳の色が違うオッドアイが印象的だ。
まぶた付近に切り傷があるが、随分昔に付けたものらしい。
サクラはすっかり気に入っている様子で犬を大事そうに抱きしめている。

「可愛いってばよ!」
玄関に出てきたナルトが瞳を輝かせると、犬も嬉しそうに鼻を鳴らした。
「ねぇ、飼ってもいいでしょう、イルカ先生―」
上目遣いのサクラは、必死に訴える。
「俺からもお願いだってばよ、先生!」
ナルトとサクラ、揃ってお願いをすれば、彼に逆らうことなど出来るはずがない。
子供好きの彼の性格は二人も十分承知していた。

「しょうがないなぁ。お前達で世話をするんだぞ」
「わーいv」
「有難う、イルカ先生―」
ナルトとサクラは喜んでイルカに抱きついた。
彼らの様子を廊下で眺めていたサスケは、一人首を傾げる。
皆の目には銀色の犬に見えているらしいその動物。
サスケの目には、それは何故か人間の若い男の姿に見えていた。
ただの犬ではないと思い、注意深く観察していると、本人と目が合う。
にやりと笑った彼はサスケが警戒していることを十分理解しているようだった。

 

「俺は反対だ!!」
「可愛い、可愛い」と皆が持てはやす中、サスケは大きく声を張り上げる。
「え、サスケくん!?」
「そんな野良犬、妙な病気でも持っていたらどうするんだ。この家には絶対に入れないぞ!」
犬のすぐ間近まで来ると、サスケは彼の目を見据えながら厳しい口調で言う。
「お前、サクラちゃんがこんなに可愛がってるのに、そんなこと言うのかよ!」
だから駄目なんだ、とは言えず、サスケはそっぽを向いていた。

「・・・・サスケはちょっと頭が固いよな」
「気になるようだったら、獣医さんに調べてもらえばいいんだし」
「サスケくん、犬嫌いだったかしら」
集まった三人は廊下の隅でぼそぼそと話し合いをしている。
その隙に犬に近づいたサスケは犬を睨みつけた。
「さっさと出て行け!」
有無を言わさず追い出そうとしたサスケの手に、犬はすかさず噛み付いてきた。

「イタッ!!!おい、見たか、こいつはとんでもなく凶暴な犬だぞ!!」
「え、何が?」
「どうしたの」
肝心な場面を見逃したらしいナルト達は不思議そうにサスケを見る。
「この犬が噛み付いたんだ!!」
「・・・・・そんな風に見えないけど。こんなに大人しいわよ」
サクラが体を撫でると、犬は人懐こい様子で彼女にくっついてくる。
それがサスケの目には銀髪の男がサクラに抱きついているようにしか見えないのだから、よけいに神経が逆なでされた。

 

 

「まぁまぁ。ここで飼うか飼わないか決めるのは、明日にしよう。今日はもう日も暮れたし、今さら追い出せないだろ」
一家の長であるイルカに諭すように言われ、サスケも口出しできない。
ここで無理を言えば、ますます自分が悪者になることは分かっていた。
まして、これが犬以外の何かだと主張しても、頭がおかしくなったのかと思われるだけだ。

「わーい!じゃあ、今日はこのワンちゃんと一緒に寝るわ」
「えっ、サクラちゃんずるい。独り占めして」
「そうだ、そんなことは絶対に駄目だ!!!!」
何故だか興奮した様子で口を挟むサスケに、サクラとナルトは目を丸くする。
「・・・なんだよ、サスケ。飼うのを反対したくせに、犬を独占したいのか」
「そうだよ!」
自分でも支離滅裂だと思うが、こんな危ないものがサクラやナルトに近づくよりマシだ。
サクラにまとわりつく犬を無理やり引っ張ると、唖然とする彼らを横目にサスケは自室へと戻っていく。
そして、爪で頬をかいている犬をじろりと睨んだ。

「お前、何者だ・・・」
「写輪眼の坊ちゃん、あんたには見えちゃってるみたいだねぇ」
低い声で訊ねるサスケに、犬は全く動じず笑顔を見せていた。


あとがき??
元ネタは『魁!!クロマティ高校』、北斗くんとアザラシの話ですね。(笑)
焼肉の話を見てから、北斗ファンです。あんまり出番ないけど。子分の方がちょくちょく出てきていますよね。
随分前に書いて放ってあったものを、手直ししてアップしてみる。拍手のおまけSS用でした。
よって、続きがありそうな感じですが考えてません。


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