ナルトはどこへ消えた?


「おはよーー」
「えっ、カカシ先生、本物!!?」
彼が歩く姿は随分前から見えていたが、サクラは目を瞬かせながら確認する。
毎日、2時間、3時間と遅刻するカカシが定刻に集合場所にやってくることなど、今まで一度もなかった。
しかし、残念なことに、これで7班のメンバーが全員揃ったわけではない。
「あれ、ナルトは?」
「遅刻しているみたいよ。でも、先生より遅いなんて・・・・」
辺りを見回したカカシに、サクラは不安げな様子で答えた。
昨日、帰り際に珍しく咳をしていたナルトを思い出したからだ。

「ねえ、先生、今日の依頼主の家って、ナルトの家と同じ方角よね。寄ってから行くんじゃ駄目かな」
「いいよー」
サクラの提案をあっさりと受け入れ、カカシは小さく頷いた。
一人暮らしでは、急な病や怪我で倒れたとしても気づく家族はいない。
用心にこしたことはないはずだ。

 

カカシとサスケとサクラはそろってナルトの家へと向かったが、途中彼にすれ違うこともなく、扉の前にたどり着く。
そして、チャイムを何度鳴らしてもナルトは出てこなかった。
「・・・まさか、本当に具合が悪いんじゃ」
「馬鹿は風邪をひかないから、大丈夫だろう」
俯くサクラを元気付けようとするサスケの声も、いつもの覇気はない。
「おーい、管理人さんに合鍵借りてきたぞー」
階段を上ってきたカカシは、さっそくそれを鍵穴に差し込む。

「ナルトーー??」
「どこだ、ウスラトンカチ」
遠慮無く上がり込んだ3人だったが、彼らの目にナルトの部屋はひどく不自然に映った。
ベッドはもぬけの殻で、どこにもナルトはいない。
さらに窓は開いたまま、いくらナルトでもこの状態で外出するなどあり得ないはずだ。
「先生、額当ても置きっぱなしよ」
「・・・・・入れ違いってわけじゃないみたいだな」

もしや、誘拐されたのでは。

顔を見合わせた三人の考えは一致したらしく、サクラは真っ青な顔でその場にしゃがみ込んだ。
「きっとそうよ。あんなに可愛いんだもの、一人暮らしなんて危険だとずっと思っていたのよ。ナルトーー!!」
「サクラ、落ち着け」
「ああっ、今頃どんな目にあっているか・・・・・」
サスケの声など耳に届いていない様子で、サクラはすでに泣き出している。

「昨日、ナルトは家に誰かが来るとか、どこに行くとか、聞いていなかったか?」
「・・・・イルカ先生がご飯作りに来てくれるって、言っていたけど」
目元をこするサクラがハッとして顔をあげると、カカシもサスケも神妙な顔で頷いた。
この家に簡単に侵入でき、ナルトがもっとも心を許している人間。
彼ならば、苦もなくナルトをここから連れ出すことが出来るはずだ。

 

 

 

「さあ、吐け!!ナルトをどこにやった!」
「ナルトー、どこなの、ナルトーー!!迎えに来たわよーーー!!!」
「い、一体、何事ですか」
そろそろ出勤しようと用意していたイルカは、扉を開けるなり自分を押しのけて入ってきた三人に度肝を抜かれる。
土足で上がりこんだサスケとサクラは押入れやカーテンを開いて何かを探している風だ。
イルカはカカシに襟元を掴まれて、まともに抗議することも出来ない。

「イルカ先生、最後にナルトに会ったのがあなただってことは調査済みなんですよ」
「は??」
「ナルトがいなくなったのよーー!!ひどいわ、イルカ先生、ナルトを独り占めしようなんて。拉致監禁は重罪よ」
「えっ、ナルトが!?」
目を丸くしたイルカに、カカシは冷ややかな眼差しを向ける。
「白々しい、驚くふりなんかして・・・」
「確かに昨日の夜、ナルトの家に行きましたけれど風邪気味のようだったからすぐ帰りましたよ。ちゃんと薬も飲ませたし」
「薬!!!」
イルカの言葉に、三人は過剰に反応した。
「ひどい、イルカ先生!!怪しげな薬を飲ませて自由を奪ってから可愛いナルトを誘拐したのね」
「え、ただの風邪薬・・・・」
「この外道がーー!!」

 

カカシ達が暴れたせいで部屋はメチャクチャに荒らされたが、それでもナルトは見つからなかった。
何が起きたのかまだ理解出来ないイルカは、一人呆然と佇んでいる。
「まだ口を割らないのか・・・」という舌打ちが聞こえたが、身に覚えのないことをいくら訊ねられても答えようがない。
部屋に響くサクラのすすり泣きが皆の気持ちをよけいに憂鬱にさせる。

「ううっ、ナルト・・・また一緒にお風呂入ってあげるから、出てきてよぅ」
「えっ、風呂、そんな羨ましいことを!」
持ってきたナルトの額当てを握り締めて泣くサクラの呟きに、カカシがすぐさま振り返る。
「サクラ、今度俺とも入ろうよv」
「ナルトが一緒ならね」
「お前ら、のんきに風呂の話なんかしている場合じゃないだろう!!ナルトの安否を心配しろ、ナルトの」
「じゃあ、お前は入らないの?」
いきり立つサスケの瞳を見据え、カカシは真顔で訊ねる。
「・・・・・・入る」

 

 

 

同時刻、ナルトの部屋では、もぞもぞと動く物がベッドの下から這い出していた。
寝相が悪いため、彼はよくベッドから落ちるのだ。
さらに昨夜は薬を飲んで熟睡したせいか、ベッドの下にもぐりこんでそのまま眠り続けたらしい。
立ち上がって大きく伸びをした彼は、時計を見るなり大きな声をあげる。

「ゲッ、大遅刻だってばよーーー!!!」
大急ぎで着替えたものの、何故か机に置いていた額当てがない。
昨夜うっかり開け放した窓もそのままで、玄関の扉まで開いていた。
「しょうがない、帰ってきてから探すか」
上着を羽織って飛び出したナルトは鍵を閉めて駆け出した。
集合場所についても7班のメンバーは誰一人おらず、困惑することになるのだがそれはもう暫く後の話だ。


あとがき??
落ち込んだ
mitsuさんを励ますために考えたナルト総受け話だったんですが、全然違う方向に行ってしまった気がします。
すみません・・・・。
タイトルは、『チーズはどこへ消えた?』のような感じで。
カカシ先生のいないカカシ班が温泉に行っていたので、正規の7班でも温泉に入っているところが見たいなぁと思いました。もちろん混浴!


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