パンチDEデート PART3


待ち合わせ場所は、遊園地の入り口にある広場だ。
どうやらヤマトが一番乗りらしく、彼は緊張の面持ちで皆がやってくるのを待つ。
暗部として忙しく活躍していた彼がこうして遊園地に来ることなど久しぶりだったが、顔が強ばっているのはそれが理由ではなかった。
今日のトリプルデートには、あの、バブルスもやってくるのだ。
彼女はどんな水着を用意してくるのか。
いや、そんなことよりも、遊園地に入場出来るのかが気になって夜も眠れなかった。

 

 

「こんにちは」
悶々と考え込んでいたヤマトは、ふいに声をかけられ、はっとなる。
いつの間にか傍らに立っていたのは、17、8の年齢と思われる、見たこともない美少女だった。
栗色の髪は肩で揃えられ、青いのキャミソールの下に豊満なバストがあるのがすぐ分かる。
舌足らずの声は彼女の愛らしい容姿を強調しているようで、ヤマトは自然と頬を緩ませていた。
「こんにちは。えっと・・・」
「お久しぶりです。私、山田バブルスです。覚えていらっしゃますか」
「えっ・・・・・・・・・・」
その瞬間、ヤマトの思考は完全に停止した。
目の前に立っているのは完全に人間で、しかも美少女だ。
はにかんだ笑顔が眩しすぎて、直視できないほど可愛い。
そして、ヤマトが以前に会ったバブルスは彼女に似ても似つかない、喋る言葉(?)は全て「ウホッ」の毛深いゴリラだった。

「いたいた。ヤマト隊長、お待たせーーー」
「あ、バブルスちゃんも、もう来てたのね」
ヤマトが頭を混乱させる中、途中の道で一緒になったらしいナルト達4人がわいわいと騒がしく歩いてくる。
そして、二人のすぐ手前で立ち止まると、サクラはバブルスを上から下までじろじろと眺めた。
「・・・バブルスちゃん、ちょっと雰囲気変わったような」
「髪の毛切ったんじゃないのー」
ナルトはあっけらかんと答えたが、ヤマトは大きく首を振る。
身長が、声が、全てがこれ以上ないほど変化しているというのに、皆の反応があっさりしすぎだ。
そもそも、何故彼女を一目でバブルスと認識出来たのか、聞きたいくらいだった。

「えへへ、分かった?実は昨日、全身脱毛してきたの。私、ちょっと毛深くて」
照れ笑いをして答えるバブルスに、ヤマトは愕然とする。
あのゴリラのような毛皮(?)の下に、これほどの美少女が隠れていたとは誰が想像するだろうか。
そして、ちょっとやそっとの脱毛技術ではこうはいかない。
「僕はそのままの君で構わなかったんですが・・・」
「まあ」
少しがっかりとした表情で言うサイに、バブルスは苦笑で応える。
いや、そう思うのは全世界でお前だけだとヤマトは声を大にして言いたい気持ちだった。

 

 

こうして困惑するヤマトを除き、存分にプールで楽しんだ5人だったが、夕方にはさらなる驚きが彼を襲うことになる。
ヤマトとバブルスは途中まで帰り道が一緒ということで、皆と別れたあとに二人きりにされてしまった。
朝見た通りの美少女が隣りにいるなら、ヤマトも少しは気分が浮き立ったかもしれない。
しかし、今、ヤマトと肩を並べて歩いているのは身長2メートルを超すゴリラだ。

「け、毛深いって本当だったんだね。まさか、半日で元に戻ってしまうなんて・・・」
「ウホッ」
バブルスは返事をしたが、言葉が分からなければ、表情から気分を読みとることも出来ない。
何故、自分はゴリラを動物園、いや、家まで送ることになったんだろう。
ぼんやりと考えるヤマトだったが、いくら夕焼けの太陽を見つめても答えが出てくることはなかった。

 

 

 

「ハッ!」
ベッドで目覚めたヤマトは、額に浮き出た汗を腕で拭う。
「・・・・・夢か」
見慣れた天井を見つめたヤマトは、小さく息を吐いた。
プールに行く前夜、眠れぬ頭で悩んだせいか、妙な夢を見てしまったようだ。
「ハハッ、何だよ、夢にまで出てくるなんて、まるで彼女のこと好きになったみたいだな」
半身を起こしたヤマトは、壁に掛かった時計をチェックし、両手を上げて伸びをする。
同じ暗部出身でも、ヤマトはカカシと違って待ち合わせの15分前には到着するよう家を出るタイプだ。
今からシャワーを浴びて仕度をしても、十分に余裕がある時間だった。

 

「嘘・・・・・」
待ち合わせ場所に向かったヤマトは、そう呟いたきりその場で立ち竦んだ。
広場にはもうサクラが到着しており、そのとなりには夢で見た、あの人間の姿のバブルスが立っている。
あれは夢なのだから、人間の姿のバブルスがサクラと仲良く会話しているはずがなかった。
それともまだ自分は目覚めていないのか、段々と頭がこんがらがってくる。
「あ、ヤマト隊長、おはようございますー」
ヤマトに気づいたサクラが手を振ると、隣りにいるバブルスもぺこりと頭を下げた。
「お、おはよう。あの、彼女は・・・・」
「ああ、実はバブルスちゃんが今日、急に熱を出して来られなくなったんです。彼女はそれを伝えに来てくれたんですよ」
「そうなのか」

彼女はバブルスじゃない。
当然のことなのだが、ヤマトは夢と現実の境界を見つけたようで、ほっと胸をなで下ろした。
「彼女はバブルスちゃんのお姉さんで、山田ゴンザレスちゃんです」
「・・・・・・・え、姉?」
「はい。バブルスがお世話になっています」
「そっくりな美人姉妹でしょうー。お母様も二人に似て綺麗な人なのよー、ってヤマト隊長!!」
突然後方にひっくり返ったヤマトに、サクラとゴンザレスは慌てて駆け寄る。
「ど、どうしたんですか?」
「いや、ちょっと、寝不足で・・・・・人がゴリラに見えるかも」


あとがき??
これにて終了―。脱毛ネタは『×』の因幡くんからですよ。
すんごいスラスラ書けてしまった。初めはweb拍手用のネタだったんです。


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