パンチDEデート PART2


木ノ葉隠れのくノ一の間で、新しくカカシ班に加わったメンバーは美少年らしいという噂が流れた。
彼の本性を知っているサクラは「止めた方がいいよ」と何度も言ったのだが、会わせて欲しいという女子は後を絶たない。
木ノ葉隠れのアイドル、サスケが去った今、彼に似ていると評判のサイの人気は鰻登りだ。
結局彼女達の要求に折れたサクラは、仕方なく食事の席を設けることにした。
一度サイの毒舌ぶりを目にすれば、少女達の夢も壊れることだろう。
こうして、サクラを含めた友達二人とヤマト、サイ、ナルトの三人で、男女の数を合わせた食事会が始まったのだった。

 

 

 

「ヤマト隊長、恋人いないんですって?私が綺麗どころの先輩を呼ぶから、期待してくださいね」
会合の前日、にっこりと笑って言ったサクラに、ヤマトは少なからず胸を躍らせたのだ。
しかし、それが大きな間違いだったということは、席に着く前、彼女達の後ろ姿を見ただけで分かった。
「あ、あの、これ使いますか?」
「ウホッ」
醤油を差しだしたヤマトは、彼女の返答が「
YES」か「NO」かを判断出来ずに固まる。
いや、それよりも、人語を理解しているかどうかの方が知りたい。
今、ヤマトの目の前の席にいるのは、どう見ても身長2メートルを超す巨大なゴリラだ。
頭に付いているリボンは、メスだという証だろうか。

「彼女はゴリ・・・、山田バブルスちゃんっていうの。内気な子だけど、うち解けると何でも話してくれるのよ」
傍らでフォローするサクラに、「今、ゴリラって言おうとしたんじゃ」とヤマトは心の中で突っ込む。
幸い、ゴリ・・・バブルスの隣りにいる、もう一人のハナという少女はパッチリとした瞳で、明るい笑顔が魅力的だった。
彼女となら是非親しくなりたいと思うものの、隣りにいるゴリ・・・バブルスが気になるせいでなかなか話を切り出せない。
ナルトはサクラといつものように夫婦漫才のような会話をしているが、たまにゴリ・・・バブルスにも普通に話しかけているところを見ると、状況の不自然さは全く感じていないようだ。
さすがは獣を腹の内で飼っているだけあると、ヤマトは少なからず感心した。

 

「イタッ・・・サイ?」
突然脇腹を突かれたヤマトは、怪訝そうに振り返る。
「隊長、サクラさんの話によると今日の主役は僕ですよ。あまり彼女と仲良くしないでください」
「えっ」
ハッとしてサイの視線の先をたどったヤマトは、ハナと目が合った。
サクラにはナルトがいて、あとの二人の女子(?)からどちらかを選べと言われたら、当然の結果だろうか。
出来ることなら、ヤマトもハナとお近づきになりたい。
だが、サイの言うとおり今日は彼のお披露目のために開かれた会なのだから、人数合わせで呼ばれた自分がしゃしゃり出るのも悪いような気がした。
何より、ヤマトはこのグループで一番の年長者だ。

「・・・・分かったよ」
ヤマトが小声で答えると、サイは満足そうに頷く。
「あの、これ、わりと美味しいですよ。どうぞ」
サイは珍しく頬を染めて新たに注文したデザートを彼女に差し出した。
素直に皿を受け取るゴリ・・・バブルスを見てヤマトはずっこけそうになる。
「そっちかよ」
サイの肩を反射的に叩きながら、彼の美的感覚が一般の人間と違うことを改めて思い知ったヤマトだった。

 

 

 

「ヤマト隊長、ハナちゃんと上手くいってるんですってねー」
「ああ、まあ、ね」
「紹介した私も嬉しいです」
にこにこと笑うサクラは、心から嬉しそうにヤマトを見つめる。
あれから二人で行った二次会の店ですっかり意気投合し、付き合いは今でも続いていた。
次の休みにも、ハナと映画を見に行く約束をしている。
「そうそう、あの夜バブルスちゃんをお持ち帰りしたサイも、仲良くやってるみたいですよ。おかげでサイも近頃表情が豊かになったし、良かったわ」
「え!!」
思わず驚きの声をあげたヤマトの横で、腕組みをしたナルトが頷く。
「バブルスちゃん、チャーミングだからなぁ。あっ、サクラちゃんほどじゃないけど」
「何よ、別にフォローしなくていいわよ」
「ああ、サクラちゃんが一番可愛いって、ねっ」

頬を膨らませるサクラに必死に取り繕うナルトを横目に、ヤマトは額に手を置いて考えていた。
バブルスと仲むつまじく過ごすサイ。
何ともシュールな光景だ。
「じゃあ、今度はみんな一緒にトリプルデートでも計画しましょうか」
「いいね。じゃあ、みんなでプールにでもいこうよ。木ノ葉遊園地のプール、7月からだよー」
「ヤマト隊長、
OKでしょう」
「ああ・・・・別にいいけど」
何か言いたげなヤマトに、ナルトは首を傾げる。
「何?」
「そのプールって、ゴリラが入っても大丈夫なのか?」

ヤマトの問いかけにナルトとサクラは揃ってきょとんとした顔つきになる。
「そんなわけないじゃん」
「ゴリラがいるのは遊園地じゃなくて、動物園でしょう。どうしたのよ、ヤマト隊長?」
「ああ、いや、すまん・・・」
頭を掻きながら苦笑いをしたヤマトは、「もしかして、自分の視力が衰えたんだろうか」と真剣に悩み始める。
何はともあれ、サイが前よりも皆にうち解けたのは事実で、カカシの入院中に再び絆を深くしたらしいカカシ班の面々だった。


あとがき??
サイのファンの方、すみません!
本誌を読んでいると、彼はサスケを超えるギャグキャラになりそうだと思いました。
バブルスちゃんは近藤さんのお見合い相手ですが(銀魂)、話のイメージはきっと『魁!!クロマティ高校』です。
あと、とみこさんと会ったときの青木さんとか。(はじめの一歩)


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