そーなんです、川崎さん 1


山の麓に広がる樹海。
昼なお鬱蒼としたその森に、7班はいた。
憔悴しきった顔には絶望の色が見え隠れし、皆言葉を発することも億劫なようだ。
遭難し、食料が底をついてから三日が経過している。
座り込んでいる彼らに、もう動く気力はない。

 

 

「・・・誰だよ、こんな場所で山ごもりの修行をしようなんて言い出した馬鹿は」
「俺だよ」
鋭い眼差しで自分を見るサスケに、ナルトは開き直って言う。
「まぁ、こんな馬鹿の話にのった俺も馬鹿だったけどな」
「馬鹿馬鹿、うるさいんだよ!俺が責任を取るよ。責任を取って死ねばいいんだろ」
「死ねるもんなら死んでみろ、馬鹿」
「やめてよ!」
興奮する二人を諫めるようにサクラが声を出す。

「こんなところで仲間割れしたってしょうがないでしょ。無駄な体力使うだけよ」
「・・・・ごめん」
しょんぼりと肩を落とすナルトに、サスケは顔を背けている。
「お腹がすいてるからイライラするのよ。これを食べましょう」
言いながら、サクラは鞄の底に残っていた缶詰を取り出した。
「それは唯一の食料だ。もっと先のことを考えて取っておいた方が」
「こんなところで喧嘩されるよりマシよ」
サスケの横槍を気にせずサクラは缶詰に刃を入れる。

「ところで、これ、何の缶詰なの?」
無地のラベルを見たサクラは、缶詰の持ち主であるナルトに不思議そうに訊ねた。
「あー、昔、山頂で買ったんだ。お土産に」
「・・・・・」
非常に嫌な予感がしたサクラとサスケはそろって缶の中を覗き込む。
中身は、空だ。
見事なまでに何も入っていない。
「山頂の空気を入れた缶詰なんだってさ。何かいい匂いとかする?」

ナルトの頬を殴りつけるサスケを、今度はサクラも止めなかった。

 

 

 

「ところで、カカシ先生、遅くない?」
膝を抱えて座るサクラは、不安げに呟く。
下忍達を残し、樹海を抜け出す道を探しに行ったカカシがこの場を離れて5時間は経過していた。
「まさか、どこかで行き倒れになったんじゃ・・・・」
「やめてよ、縁起でもない!!」
サクラが悲鳴のような声をあげた瞬間、サスケは何かの気配を感じ、後ろを振り返る。
遠くにうっすらと見えるのは、確かに人影だ。

「おーーーーい・・・・」
「カカシ先生!!」
下忍達が目を見張る中、カカシは手を振りながら彼らの方へと歩いてくる。
「悪い悪い、ちょっと時間くっちゃってー」
「もう、心配したんだからね!」
頭をかきながら謝罪するカカシに、ナルトとサクラはそろって安堵の笑みを浮かべた。
「で、それは何だ」
目ざとくカカシが持つビニール袋を見付けたサスケは、いち早く訊ねる。

「それがさぁ、獣道を二時間ほど歩いたらコンビニを見付けたんだよね。だから食料を買ってきたよ」
「カカシ先生、お手柄!!」
ナルトとサクラは嬉々としてカカシのビニール袋に群がった。
「あれ、カップ麺だけ?パンとかおにぎりとかは」
「馬鹿!こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぞ!!選んでいる余裕があると思うか」
「ご、ごめんってば」
カカシに怒鳴られたナルトはしゅんとなる。
「でも、コンビニってどこにでもあるのね。私も行ってみたいわ」
「無理無理。偶然見付けた獣道だからもう二度とたどり着けないね。ここに戻って来られたのが奇蹟だよ。それより、サクラどれ食べたい?」
カップ麺の配分で盛り上がる中で、一人難しい顔をしているのはサスケだ。

 

「・・・なぁ、コンビニがあったんだろ」
「ああ」
「何でそこの人間に助けを求めなかったんだ」
しごく冷静なその質問に、カカシは珍しく真面目な表情でサスケの肩に手を置く。
「何を言ってるんだ。お前達を残して俺だけ行けるわけがないだろう。戻ると約束したじゃないか」
「カカシ先生!」
感動の涙を流したナルトはひしとカカシに抱きついた。

「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて・・・・」
「そうよ。大事なことを忘れてるわ」
カップ麺の容器を持ったサクラは怒りを含む表情でカカシを見る。
「先生、お湯は?」
「あ、忘れてた!!」
「もーカカシ先生ってば、意外と抜けてるんだから」
ハハハッと笑い合うナルト達に、サスケは思わず額を押さえる。

 

 

はたして、無事にこの樹海を抜け出すことが出来るのか。
それは誰にも分からないことだった。


あとがき??
タイトルはザ・ぼんちのネタだったようですが、よく分かりません。
そのまんま『魁!クロマティ高校』5巻なので、比べて読むと面白い・・・かもしれません。


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