そーなんです、川崎さん 2


7班が樹海で遭難して、7日が経過。
体力的にも精神的にも追い込まれている状況だった。

「あのさ、樹海の中って食べられる物が本当にないのかな。探してみようよ」
「・・・そうだな。ずっとこの場所に留まっていても、何も変わらないしな」
ナルトの言葉に賛同したカカシは、下忍達にさっそく指示を出す。
木の実や山菜や茸、蝙蝠や蛇等の生物でもいい。
口に入りそうなものを集め、一時間後に集合すること。
どんなものであれ、人体に無害ならば贅沢なことは言えなかった。

 

「とはいっても、こう日差しが入らないと、植物もなかなか育たないよなぁ・・・」
丹念に草木を調べるナルトは、高らかに鳴る腹の虫に顔をしかめる。
思い出すのは、懐かしい一楽のラーメンのことばかり。
そして、考えているうちに野生の勘が働いたのだろうか。
ナルトは無意識にその方角へと歩き出した。
草むらの間を分け入る獣道を通り、今にも落ちそうな古い吊り橋を渡り、ナルトは明らかに人の気配のする灯りを発見する。

「ラ、ラーメン!!」
ネオンが眩しい24時間営業のラーメン屋の看板を見上げたナルトは、思わず目を潤ませる。
休憩時間なのか、丁度中から出てきた店員に、ナルトはさっそく駆け寄った。
「おっちゃん、ここに味噌ラーメンある!!?」
「あー、悪いねぇ。うち、醤油ラーメン専門店だから」

 

 

「もう、がっかりだよ!!!味噌ラーメンがないなんて」
皆のもとへ戻ったナルトは、さも悔しげに見てきたことを報告した。
「それは残念ね。せっかく獣道を歩いてようやくたどり着いたのに。私は塩ラーメンが好きだけど」
「ラーメン屋のカレーも、わりと美味いよね」
頷きながら意見を交わすカカシとサクラを見たあと、サスケは暗い面持ちで俯く。
結局樹海では食べられそうなものは何一つ見つからなかった。
だが、問題はそこではない。

「救助を求めれば良かったんじゃないか、そのラーメン屋のおっさんに」
サスケの一言に、無駄話をしていた三人はハッとなった。
「・・・・悪い。そこまで頭が回らなかった」
「この馬鹿!アホ!ウスラトンカチ!!」
頭ごなしに言われ、さすがのナルトもムッとした顔になる。
「何だよ。それなら、前回のコンビニのときに強く言ってくれれば良かっただろ」
「それは俺も反省している」

 

 

 

こうして状況は振り出しへと戻った。
交代で近くの沢へと水くみに行くサクラの足取りも重い。
四人分の水筒へ水を入れながら、サクラはナルト達に聞かれないよう、小声でもらす。
「このままだったら、どうしよう・・・」
涙の滲む目を擦ったサクラがふと顔をあげると、木陰から顔を出したカカシが不自然に手招きをしていた。
首を傾げたサクラに、カカシは口元に指を当てて声を出さないよう促している。

「・・・何?」
彼のすぐ間近まで来たサクラはひそひそと話しかけた。
「これ、一個しかないから。他の二人には内緒な」
そう言ってカカシが差し出したものに、サクラは目を丸くする。
銀紙に包まれた、チーズの欠片。
今の彼らには、何よりのご馳走に見える。

「忍犬達の餌の残りが胸ポケットに入っていたんだ。今までずっと忘れていた」
「でも、これ・・・」
「しっ、黙って」
カカシはチーズをサクラに押しつける。
無言で頷くカカシに、サクラは先程とは違った意味で泣きそうになった。
罪悪感がないといえば嘘になるが、背に腹は代えられない。

 

「じゃあ、いただきま・・・・」
「ちょっと待ったーーー!!!」
チーズを口に入れようとしたサクラは、唐突に現れたナルトに手首を掴まれた。
あとからやってきたサスケ共々、目はサクラの持つチーズに釘付けだ。
「ナ、ナルト、サスケくん」
「俺の嗅覚をなめてもらっちゃ困るよ!先生、ひどい!!サクラちゃんにだけなんて」
「しょうがないだろー、一個だけなんだから。それにサクラは女の子だし大事にしないと」
「こんなときだけ男女差別!?」
「いや、女の子の中でもサクラは特別なのよ。将来結婚して俺の子供を産んでもらうわけだし、こんなところで倒れられるわけには・・・」
「はあーー??」
カカシが言い終えないうちに、サクラは素っ頓狂な声をあげる。

「ちょっと、聞いてないわよそんなの!」
「そうそう。サクラちゃんは俺のお嫁さんになるんだから」
「それも却下!!」
間髪入れずに言うと、サクラは傍らのサスケに飛び付いた。
「サスケくん、助けて!」
「・・・・チーズ」

 

 

どこにそのような体力があったのか、騒がしく口論する7班を遠巻きに眺め、ため息を付く者達がいる。
10班の担任であるアスマと、カカシの忍犬であるパックンだ。

「まだまだ元気そうだな」
「・・・本当に。このまま帰ってもいいような気がしてきた」
遭難した際、カカシに呼び出されたパックンは単独で樹海を抜け、救援であるアスマを見事にこの場所まで案内していた。
だが、当の主人はそのようなことをすっかり忘れ、ナルトやサスケを相手に大人気なく言い合いをしている。
カカシ達が気づくまで、7班の面々をそっと見守ることを決めた一人と一匹だった。


あとがき??
ちょいとサクラ受け要素を入れたらまた面倒なことに・・・。
パックン、あんな主人だけど頑張って支えてあげてちょうだいな。
ああ、木ノ葉特製の犬用チーズは特別加工なので保存が利きます。人間が食べても美味しいv


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