(おまけSSシリーズ176)『愛人の愛人と愛人』

 

「サスケ、今すぐ結婚しろ」
朝、いつものように遅刻してやってきたカカシは、出し抜けに言った。
訳が分からず唖然とするサスケに、カカシは持っていた見合い用写真を手渡す。
「相手は大名家の姫君だよー。いい話でしょう」
「うわー、可愛いってばよ!」
サスケの持つ写真を後ろから覗き込んだナルトは歓声を上げる。
確かに、一目で高価と分かる着物を身につけた少女は楚々とした気品のある美少女だ。
だが、カカシに突然結婚話を斡旋されるなど、理由が分からない。

「お前、この間、大通りで暴れ馬に踏みつけられそうになった女の子を助けただろう」
「・・・ああ」
「それ、お忍びで町に出てきていたお姫様だったの。見初められるなんて運が良かったねー」
カカシはバシバシと強くサスケの背中を叩く。
「一族再興の第一歩だよ。大名家の姫君を嫁に貰えるなんて、うちは家の名前に箔が付く」
「良かったなー、サスケ」
にこにこと笑ってサスケを祝福するカカシとナルトだが、その腹は分かっている。
サクラに目を付けている彼らは、ライバルが減ることを喜んでいるのだ。

「火影様経由で来た話だから、断るのは大変だよー」
「くっ・・・」
四面楚歌の状態となったサスケは、救いを求めるようにしてサクラを見る。
血筋の良い姫君は確かに悪くない。
だが、彼にもあと数年は仕事に専念し20前後にサクラと結婚、等々、未来設計があるのだ。
自分にべた惚れのサクラならば、当然反対意見を言ってくれるものと信じていた。

 

「披露宴には呼んでね」
にっこりと笑ったサクラの一言に、サスケは愕然とする。
「サクラちゃん、サスケを取られちゃってもいいの?」
「私、愛人でも十分だし。サスケくんのためを思えば、やっぱり正妻は姫君でしょう」
サスケが仕事を続ける限り、忍びとしての繋がりは消えないのだから不安になる必要はない。
意外にも、気持ちの切り替えの早いサクラだった。

「奥さんが複数いた方が、子供が増えて一族の再興に役立つし。別宅を用意してもらえば・・・」
「いいなー、俺もサクラちゃんの愛人になる!!」
「愛人の情夫か・・・。面白そうだから先生も混ぜてよ」
「三人一緒だねー」
ナルトはサクラとカカシの手を握って嬉しそうに笑う。
「サスケくん、これで問題(?)は解決よv」
「アホか!俺はそんなにただれた関係は、絶対に嫌だ!!」
愛人に愛人が二人居る愛人生活などややこしいことこの上ない。

「俺は妻は一人で十分だ!」
「サスケくん・・・、誰か好きな人いるの?」
嫌にきっぱりと言い切ったサスケに、サクラは首を傾げて訊ねた。
急に赤くなって慌てだしたサスケを横目に、カカシとナルトは顔を近づけてひそひそ話をする。
「馬鹿だねー、サクラちゃんってば鈍いから、はっきり言わないと分からないのに」
「いつになったら素直に告白するのかね」

 

あとがき??
ただれた生活、万歳です。
ラブリー7班。

 

 

(おまけSSシリーズ177)『誘惑』

 

「私と同じ年でもう経験している子だっているんだから!」
「・・・・サクラって、12歳だよね」
「そうよ」
「・・・・少し早くない?」
「普通よー」
のんびりした会話だが、仰向けに横になるカカシの上に、サクラは馬乗りになっている。
先程まで読んでいたイチャパラはサクラによってどこかに放られてしまった。
大体、自宅でゆっくりくつろいでいたはずが、何故こうした事態になったのか。
考えられることは一つしかない。

「・・・サクラ、それは犯罪だってば」
「えへへー」
悪びれもせず、サクラは無断で作ったカカシの家の合い鍵をちらつかせている。
前にナルト達と遊びに来たときに、密かに型をとったらしい。
そして今日、カカシが家にいることを調べた上で侵入したのだろう。

 

「据え膳食わぬは男の恥って言うじゃないの。先生、頑張りなさいよ」
「あのさー」
やる気満々のサクラをどかそうと手を伸ばしたカカシは、その感触にぎょっとした。
「・・・サクラ、素足なの?」
「うん。今日はスパッツ無しです」
スリットから覗く太股が変に意識されて、カカシは珍しく動揺する。
「下着もつけていなかったりして」
畳み掛けるように言われれば、さらに体温が上昇していった。
胸元のファスナーが妙に下がっていると思ったが、見た限り本当に下に何もつけてない。

「観念しちゃいなさいよ」
息が掛かるほど間近で呟くと、サクラの方からキスをされる。
14も年下の女の子にリードされるというのも、妙に新鮮な気持ちだった。

 

あとがき??
結局、最後まで頂かれちゃったらしいカカシ先生・・・。
受け身の先生も好きです・・・・・。

 

 

(おまけSSシリーズ178)『嘘に本当』

 

信憑性の低いネタを集めることで有名な雑誌、『木ノ葉の友』。
いのと待ち合わせをしているサクラは、暇つぶしのためにテーブルの上のその雑誌を手に取る。
まず最初のページに、宇宙人を捕らえたなどというふざけた記事が平気で載っていた。
中身を流し読みしていたサクラは、見慣れたある名前のところで手を止める。
写輪眼のカカシが、未亡人を捨て、一つ年下の女性と付き合いだしたというネタだった。

「また、こんなところにスクープされちゃって・・・」
「何、熱心に読んでるの?」
耳元で囁かれ、サクラはぎくりとして振り返る。
下忍・中忍控え室にいるはずのない人物が、すぐ隣りに座っていた。
「先生、なんでこんなところにいるのよ?」
「いのちゃんから言付け。急な仕事が入って今日は会えないってさー」
カカシはさり気なくサクラの肩に手を置きながら答える。
疑いの眼差しでカカシを見るサクラだったが、彼女がここにいることはいのしか知らない。
おそらく、本当にどこかでいのに会って、伝言を頼まれたのだろう。

 

「未亡人、随分綺麗な人だったみたいだけど、もう別れちゃったのね」
「いやだなぁ、サクラ。そんな三流雑誌を信じないでくれよ」
サクラが記事を目の前に持っていっても、すでに内容を知っているのか、カカシは落ち着いたものだ。
「俺は、好きな人に一途な男なんだよ」
「・・・どーだか」
不審な眼差しでカカシを見るサクラだったが、彼はただにこにこと笑っている。
カカシの知り合いとおぼしき忍びが通りかからなければ、サクラはまんまと騙されていたはずだ。

「よー、カカシ!この前飲み屋でお持ち帰りした女の子、どんな感じだった?」
「・・・・」
気安い様子で声をかけてきた忍びと、カカシの顔をサクラは交互に見やる。
「あれ、何だかまずかったか?」
カカシを睨むサクラの存在に気付いた忍びは、不安げな表情で訊ねていた。

 

 

「近寄らないで!不潔よ!!」
「サクラー、誤解だってば。あいつは何か勘違いしているんだってー」
「嘘!!」
肩を怒らせながら歩くサクラは、外に出たあともまだ顔を真っ赤にして怒っている。
その後ろを追いかけるカカシは、ふと首を傾げて呟いた。
「おかしいよねー、こんなにラブラブだってのに、サクラのことは全然スクープされないなんて」
「ラブラブじゃないわよ!それに、こんな子供が先生の次の相手だなんて誰も思わないからでしょう」

言っているうちに少し悲しくなったサクラだが、それでも前を向いて歩き続ける。
カカシに後ろから抱き竦められなければ、絶対に立ち止まっていない。
「じゃあ、キスでもしてみましょうか」
「・・・・離してよ」
サクラは腹立たしさを押し隠しながら声を出す。
美人と浮き名を流すエリート上忍と、たいした取り柄のない下忍ではどう考えても不釣り合いだ。
サクラが振り向けば、彼はすぐに飽きて彼女の前から消えるに決まっている。

 

「先生なんて、嫌い」
泣きそうに顔を歪ませるサクラを、カカシは困ったように見ている。
サクラのことを好きなのは本当だ。
その思いが邪魔をして、他の女性のように強引に口説き落とす気にならない。
今、告白してもサクラには「嘘」と言われるに決まっていた。

「どうしようかねぇ・・・」
自分の手から逃れようとしているサクラを抱えなおしながら、カカシは小さく漏らす。
嘘も本当も通用しないなら、一体何を言えばいいか見当も付かなかった。

 

あとがき??
引き続き、エドガーとリディアなカカサクでした。
どっちも相手が怖くて動けないという状況。
本当のことだけを言えばいいのに、先生は嘘の中に本当を入れるので、信じて貰えないのです。

 

 

(おまけSSシリーズ179)『二人と一人』

 

「薫ユミ主演の『くノ一忍法帳(完結編)』、チケット3枚もらったのよ。行かない?」
「行く、行くーvv」
「サスケくんは?映画とか、見ないかな」
「・・・・・」
サクラは明るい口調で訊ねたが、サスケは渋い顔をして彼女を見ている。
このところ、いつもそうだ。
ナルトの了解を得てから、サスケに話しかけてくる。

「・・・・行く」
「え!!?」
サスケの返答を聞いたサクラは思わず目を丸くした。
「ほ、本当に!!?行くの?忍者映画よ」
「・・・・」
仰天するサクラを見ていると、断った方が良かったかと思えてしまう。
もしサスケが行かないと言っていたら、他の誰かを誘ったのか、それとも二人で映画に行ったのか。
おそらく後者のような気がした。

 

 

「お待たせー!」
「サスケくん、ごめんね、待たせちゃって」
休日の午後、待ち合わせ場所にはナルトとサクラが揃ってやってきた。
待ったのはほんの3分程度だからかまわないが、二人が一緒なことが妙に気になる。
「同じ方向だったか?」
「え?」
「家」
サスケが何を聞きたいか気づくと、サクラは傍らにいるナルトに目をやりながら答える。
「このところ任務が夜まで続いたでしょう。ナルトの家が汚くなってたから、片づけてきたの」
「洗濯も干してきたってばよ!」

よく似た笑顔を浮かべるナルトとサクラを見て、サスケはさらに複雑な気持ちになった。
一人暮らしという点では、サスケも同じ境遇だ。
サクラは一度も彼の家にやってきたことはない。
黙り込んだサスケの心情を悟ったわけではないが、サクラは弁解めいたことを言い始める。
「サスケくんはしっかりしているからナルトみたいに散らかさないわよね。私は必要ないでしょう」
「・・・ああ」
確かにその通りだが、断って来ないのと、最初から来ないのとでは大きな違いだ。

 

暗い顔で思案するサスケに、サクラは手に持っていた紙袋を差し出した。
「そうそう。サスケくん、これ、田舎の親戚が送ってきたの。おすそわけ」
中身は大粒の実のついた高価な葡萄だ。
葡萄が好物なことは、サスケマニアのサクラは当然承知している。
「ナルトには」
「ナルト?ないわよ。サスケくんだけ特別」
にっこりと笑ったサクラに、今までのわだかまりが徐々に小さくなっていくのを感じた。
ナルトを見やったサクラが言葉を続けなければ、二人に対する疑念は完全に消えていたことだろう。

「ナルトはあんまり葡萄好きじゃないのよね」
「うん!」

 

あとがき??
サ、サス→サク→ナル?
元ネタは『いまどきのこども』でした。
あー、ナルチョ可愛い、可愛いv

 

 

(おまけSSシリーズ180)『夏がくる』

 

「7月から9月までは、くっつくの禁止!!」
「えーーー!!!」
いつものように抱きつこうとして、思い切りサクラに避けられたカカシは不満げな声を出す。
「何で」
「暑いでしょう!ところかまわずベタベタベタベタ、やめてよね」
「恋人同士なら、当然じゃないの」
「誰が、いつ、恋人同士になったのよ!!!」
思わず金切り声を出したサクラは、何とか平静を取り戻す。

「守ってもらうから」
「見返りはー?」
「なし!」
「守れなかったらー?」
「一生、私に触らないでね」
取り付く島もないサクラだったが、カカシが足下を指さしているのに気づき、眉を寄せる。
「何?」

サクラが視線を下げたとき、丁度ジャンプした蛙が彼女のサンダルの上に乗った。
動物好きだが、は虫類、両生類のたぐいは苦手なサクラは悲鳴を上げてカカシに飛びつく。
「嫌ーーーー!!!」
「ハハハッ、サクラ、もうあっちに行っちゃったから平気だよ」
「き、気持ち悪い。足に感触が」
涙目のサクラを抱きしめるカカシはラッキーな状況をすっかり満喫していた。

「サクラってば、くっつくの禁止じゃなかったの?」
その言葉にハッととなったサクラは慌てて身を離そうとしたが、手遅れだ。
「言い出したサクラが守れないんだから、禁止令は反故ね」
「キャーー!!!!」
頬ずりをされ、暴れ出したサクラをカカシはしっかり抱えている。
こうなると、今までの経験上、当分の間は離れることはない。

 

「あの蛙ってば、先生が仕込んだのかなぁ」
「だろう」
アイスを食べながら、休憩時間もいちゃつく二人をナルトとサスケは遠巻きに眺めている。
本格的な夏はすぐ間近まで来ているようだった。

 

 

あとがき??
久しぶりにほのぼの(?)7班。
サクラ馬鹿な先生が大好きです。

 

 

(おまけSSシリーズ181)『つなぎ』

 

「・・・・暑いね」
「暑いわね」
ナルトの言葉に、サクラも繰り返して答える。
頭上の太陽はギラギラと輝き、歩いている人々の体力を根こそぎ奪っていった。
シャワーで汗を流しても、外に出て30秒もすれば、また水をあびたくなる。
シャツはぐっしょりとぬれ、気持ちが悪い。
そうした状況で、どうして自分達は手を繋いでいるのかと不思議になった。

「・・・・離す?」
「ナルトが離したら離す」
繋いだ手のひらを指さすと、サクラは青い瞳を見つめて即答した。
じりじりと太陽は照りつける。
喉は冷たい飲み物を求めているのに、それでも互いの温もりは邪魔ではない。
「サクラちゃんの意地悪」
「どっちが」

強く手のひらを握り返すと、再び前を向いて歩き出した。
家についたら、かき氷にイチゴシロップをかけてごちそうしてあげる。

 

あとがき??
ナルサク?サクナル??

 

 

(おまけSSシリーズ182)『姐さんはくの一』

 

友人と飲んだ帰り道だった。
明日の任務のことを考え、早めに切り上げたつもりだったが、足がもつれている。
自宅はすでに目と鼻の先だというのに、なかなかたどり着けない。
少々の見過ぎたかと反省した直後、紅は電柱をよけようとしてそのまま転倒した。
知り合いには絶対に見せたくない、情けない姿だ。

「大丈夫ですか、立てます?」
目の前に唐突に現れたその人物を、紅はぎょっとして見つめた。
彼女に向かって心配そうに手を差し出したのは、教え子である下忍達の元担任のイルカだ。
「何でここに?」
「ナルトの家に寄った帰りです。ちょっと遅くなっちゃって」
掌に掴まった紅を立たせると、イルカは笑顔で言葉を続ける。
「送っていきますよ」
「えっ、大丈夫です。すぐ近くだし」
「女性に一人で夜道を歩かせるわけにいきませんから」
「・・・・・」

先導して歩き出したイルカの背中を見つめ、誰に対して言っているのかと思う。
紅は上忍でイルカは中忍。
その実力は雲泥の差だというのに、イルカは彼女を守ろうとしているらしい。
少々あきれてしまったが、女性として扱ってくれるのは嬉しくもあった。
こうした律儀なところは、知り合った頃から全く変わっていない。
イルカの一番好ましい部分だ。

 

「イルカ先生」
「はい?」
「私、昔あなたのことが好きだったんです」
酒のせいで、ついつい本音がもれた。
突然の告白に慌てふためくイルカを想像した紅だったが、振り向いた彼は明るい笑顔を浮かべている。
「俺は今でも好きですよ」

何の裏表もない、優しい笑顔だった。
予想外のその反応に赤面し、紅は俯いたまま声を出せなくなる。
忍者としての実力はともかく、人としてはイルカの方が一枚上手なようだった。

 

あとがき??
アス紅もいいですが、イル紅も好きです。
おまけSSで7班メンバーの関わらない話って、これが初めてですかね??
イルカ先生(と四代目)はナルトの未来予想図なので、言動がちょっとうちのナルトっぽいかも。
イルカ先生には早く結婚して子沢山パパになってほしいです。
ちなみに、先生は自分以上にナルトのことを大切にしてくれる人を嫁にもらうと思います。
・・・・え、サクラ?
元ネタは『ジャングルはいつもハレのちグゥ』、アシオとウェダでした。

 

 

(おまけSSシリーズ183)『遠い理想』

 

「快!!お前の父ちゃん、あの“写輪眼のカカシ”って本当かよ!!!」
「えー、うん」
「マジでかーー!!!」
興奮で震えている同級生をほとんど無視して、快は帰り支度を始めている。
昨日本屋で買ったミステリーの続きを早く読みたかったのだが、彼はなおも快を引き留めた。

「昔から憧れてたんだよ!千の技を持つ男、菜の国で姫君を助けた任務なんて伝説になってるだろ!!」
「そうね」
「格好良い父ちゃんだよなーー!!うらやましいーーー!!!」
「・・・・・」
「家ではどんな感じなんだ。やっぱり、難しい兵法の書なんか読んでるんだろ」
「ああ、そう。うちはTV、NHKしか映らないし。父さんは3歳でトルストイを読破したそうだよ」
「すげーーーー!!!」
「じゃあ」
さっさと帰ろうとした快の腕を彼は強く掴む。
「お前の家、遊びに行ってもいいか!!?」

 

 

絶対に嫌だと言ったのだが、無理矢理押し切られた。
明後日、カカシが任務から帰るのに会わせて家に来るとのことだ。

 

「ただい・・・・」
自分で鍵を開けて玄関の扉を開いた快は、そのままの姿勢で硬直する。
父が、床に母を押さえつける格好で手を振っていた。
「おかえりー」
「・・・・だたいま」
「先生の馬鹿ーーーー!!!快が帰ってきちゃったでしょう、早くどいてよ!」
「いやー、我慢できなくて」
どうやらカカシは予定より早く帰宅し、出迎えたサクラをそのままこの場所で押し倒したようだ。

「別に続けていいよ。俺、すぐ上に行くから」
「ちょ、ちょっと快!」
「サクラーーvvいいってさ」
見慣れた光景に動揺しなくなっている快と違い、サクラの方が慌てている。
階段を上がりかけた快は、思い出したように振り返った。
「父さん、明後日、家をあけてくれる?」
「え、何で」
「何でも。一日外に出て、家に帰ってこないで。母さん連れて行っていいから」
「ラジャー!」
「か、勝手に決めないでよ!!私にだって予定がーー」

 

サクラの悲鳴じみた嘆きを聞きながら、快は自分の部屋に向かって歩き出す。
アカデミーの友達には絶対に内緒だ。
父が母にメロメロなハレンチ親父で、家では18禁本しか読まない役立たずな存在だということは。

 

あとがき??
ハレンチ親父・・・・・。
小桜ちゃんと快くん、もっと兄弟がいてもいいですよね。不思議。
なんだか父の扱い方を分かっている快くんがいい感じです。(笑)

 

 

(おまけSSシリーズ184)『チヨさん』

 

「カカシ、久しぶりじゃな!」
「・・・・・・誰?」
サクラと連れだってやってきたその美女を見て、カカシは怪訝な表情になった。
自慢ではないが、女に関する記憶力はいい方だ。
見たところ20代半ば、スタイルも抜群で、プラチナブロンドの髪も艶やかな美人。
彼女ほどの美女を忘れるなどあり得ない。

「先生、この人、チヨ婆さんよ」
「・・・・え?」
「砂隠れのチヨ婆さん。一緒に仕事したでしょう」
「・・・・・・」
自分に向かってウインクをするチヨの姿に、カカシは開いた口がふさがらなくなる。
以前会った彼女は皺のある老婆だったが、今はその面影が微塵もない。
「砂には優秀なエステティシャンがおってのう。少し磨いたらこの通りじゃ」
「す、少し・・・」
チヨをカカシの元まで案内したサクラも、汗をかきながら彼女を見つめた。

 

「どうじゃ、カカシ。わしと付き合わないか?」
にっこりと笑ったチヨの言葉に、カカシとサクラは驚愕の表情になる。
「え、ええ!?」
「何か、不満でも?」
「いえ、凄く綺麗です。光栄です。嬉しいです」
すごみのある声で言われたカカシは体を震わせて答えた。
確かに、前の姿を考えなければ、味見をしたいと思える美女だ。
だが、チヨの隣で不安げな顔をしているサクラを見てしまっては、邪な感情も消えてしまう。

「俺は、チヨ婆様のことが大好きですよ。エステなんかに行かなくても、十分魅力的です」
「カカシ・・・・」
「でも、俺には他に好きな人がいるので、お付き合いはできません。すみません」
頭を下げてからサクラへと目をやると、彼女はほっとした顔で口元を綻ばせている。
サクラを手に入れるために他の女性達と手を切ったのに、チヨの誘いを受けるわけにいかない。
そんなカカシの気持ちを察したのか、チヨは納得気味に頷いて見せた。

 

「分かった、わしもしつこい女にはなりたくない。諦めよう」
「チヨ婆様・・・」
「代わりに、サクラをもらうぞ」
「・・・・・は!!?」
思わず目が点になったカカシだが、チヨは傍らにいるサクラをしっかりと抱き寄せた。
「サクラ、一緒に砂に行くぞ」
「チ、チヨ婆様」
あたふたとするサクラを抱きしめるチヨは、満足そうに笑っている。

「ちょ、ちょっと待ったーー!!チヨ婆様、本当は最初からそれが狙いで」
「サクラは可愛いからのう」
「駄目です!!サクラは俺の嫁になって俺の子を産むんです!!!子沢山の大家族になるんです」
「サクラ、砂にくれば何でも買ってやるし、好きにしていいぞ」
美女姿のチヨに抱きすくめられたサクラはどうしたらいいか分からず硬直していた。
チヨの発言にも驚いたが、カカシはカカシでまたとんでもないことを言っていた気がする。
チヨかカカシか、まさに究極の選択だった。

 

あとがき??
カカチヨもいいけど、チヨサクもいいよねぇ。
・・・・え、私だけ!?またマイナーカップリング?
プラチナブロンドだと思った髪はだたの白髪だったんですね。
若チヨの顔は、サソリの女版を想像しておいてくださいな。

 

 

(おまけSSシリーズ185)『姐さんはくノ一 2』

 

「有り難うございました」
「いいえ」
居酒屋帰りの紅を送ったイルカは、にこにこと人当たりの良い笑みを浮かべていた。
「じゃあ」
「あの、お茶でも飲んでいきませんか?せっかくですし」
きびすを返そうとしたイルカに、紅は家の扉を指さして言う。
口に出してから、非常に意味深な発言だったのではないかと思った。
別に、彼を家に引っ張り込み、酔いにまかせて押し倒そうなどと考えたわけではない。
だが、夜に一人暮らしの家へ男を入れるということは、誤解されても仕方がない気がする。

「・・・・・」
「ち、ち、違うんです!別にそういう意味じゃあ、イルカ先生をどうこうしようなんて・・・」
無言のまま瞳を見つめられ、紅の頭はさらに混乱していった。
これでは下心があるとはっきり言っているようなものだ。
「あの、あの・・・」
「今夜は帰りますよ」
口ごもる紅を安心させるように、イルカはにっこりと微笑んだ。
「あ、そ、そうですよね」

 

断られて当然だが、紅は気落ちした表情で俯く。
肩に手を置かれ、視線をあげたときには妙に近い位置に彼の顔があった。

「紅先生、明日の任務、早いですから」
黒い瞳を間近で見つめる紅は、すぐに声を出すことが出来ない。
キスをされた。
教師の鏡、清廉潔白そのものの彼が、こうも大胆な行動を取るとは予想外だ。
唖然としたまま自分を凝視している紅に、イルカは優しく笑いかけて言った。
「今度、昼間に伺いますね」

 

あとがき??
た、楽しい・・・・。1から続いているけれど、見なくても分かるかな。
大人
×大人の組み合わせはあまり好きではないですが、その分、紅先生を子供っぽくしました。
余裕のあるイルカ先生って、格好良いなぁ〜〜。ヘタレカカシとは大違いな。
うちのナルトはスレナルくんですが、イルカ先生もスレイルくんだったようです。
善人そのものの顔で裏がある。またイル紅書こうかな。

 

 

(おまけSSシリーズ186)『姐さんはくノ一 3』

 

最悪だった。
あと数分後にはイルカが来るというのに、部屋は散らかり放題。
髪はぼさぼさでメイクもしていない。
自慢の手料理は頑張りすぎて緑色の妙な液体が完成してしまった。
数日前から体調が悪かったのだが、風邪だったのか咳を繰り返している。
「せ、せめて食べられそうなものをもう一品・・・それより、顔を何とかした方が」
右往左往としている間に、来客を告げるチャイムが鳴り響く。
彼と会えるのは嬉しいはずなのだが、紅はまるで死刑執行の合図を聞いたような顔で天を仰いだ。

 

「すみません・・・・」
「謝らなくていいですよ。困ったときはお互い様ですし」
紅の顔を一目見て、熱があることを察したイルカは彼女に横になるよう指示を出した。
そうして、彼は部屋を綺麗に掃除し、ベッドにいる紅に薬とおかゆまで作って運んできたのだ。
まさに至れり尽くせりだったが、彼を家に招いた紅はばつが悪くて仕方がない。
「あのー、本当はもっと片づいているんですけど」
「分かってますよ。紅先生の提出する報告書、いつも丁寧ですから。几帳面な性格だと思ってました」
にこにこと笑うイルカの顔を見て、紅は無性に胸が熱くなる。
彼は本当にいい人だ。

「あ、薬を飲む前に少しでも食べた方がいいですよ。起きられます?」
「はい」
ゆっくりと体を起こした紅に、イルカは匙ですくった粥を持っていく。
「はい」
「・・・・え?」
「食べさせてあげます」
そのようなことをしたことも、されたこともない紅は驚きに目を見開く。
「い、い、いいです!自分で食べられますから」
「遠慮しなくていいですよ。はい」
「で、でも・・・」

なおも拒む紅の口に、イルカは有無を言わせず匙を入れた。
息を吹きかけて冷ましてある粥は適温で、味も絶品だ。
「・・・・美味しい」
「それは良かった」
もぐもぐと口を動かす紅に、イルカは明るく笑いかける。
頬が赤くなったことを自覚した紅だったが、熱のせいだと誤魔化せるのは幸いだった。

 

 

「イルカ先生ー、紅先生の家に遊びに行ったんでしょう。どんな感じだった?」
一楽で偶然イルカと出くわしたナルトは、興味津々で訊いてくる。
イルカが紅の家に行くことは昨日彼から聞いて知っていた。
「んー・・・」
ラーメンを前にして箸を二つに割ったイルカは、顔を綻ばせて答える。
「可愛い人だったよ」

 

あとがき??
なんだか続いているイル紅。楽しいなぁ〜。
紅先生が『ブリジット・ジョーンズの日記』っぽくなってしまったよ・・・。
いつまで続くんでしょうね、このシリーズは。
ああ、この話の中のイルカ先生はスレイルです。

 

 

(おまけSSシリーズ187)『チヨさん 2』

 

(あらすじ)
驚異のエステパワーで若い姿を取り戻したチヨ婆様。(サソリ似)
可愛いサクラを木ノ葉隠れの里から連れ出そうとするが、カカシに阻まれる。
三角関係の行方は・・・・。

 

 

「サクラはわしが砂に連れて帰るんじゃ!」
「サクラは俺のですーー!!」
「い、痛い、痛い!」
両腕をそれぞれの方向に引っ張られるサクラは、涙声で訴える。
だが、互いに相手に負けたくない二人はその声など聞こえていない。
彼が偶然通りかからなければ、腕が抜けていたかもしれなかった。

「ちょっとー、何やってるのさ!!サクラちゃんが泣いてるだろ」
悲鳴を聞きつけて駆け寄ったナルトは、彼らの手を払ってサクラを救出する。
「大丈夫?」
「・・・うん。有り難う」
「サクラちゃんは将来俺と結婚して俺の子供を産む大事な体なんだからね。傷つけないでよ」
ぷんぷんと怒るナルトは、涙のサクラを抱きしめるとチヨとカカシを睨み付ける。
反省する二人はどこかで聞いた台詞だと思ったが、担当する教師の影響だろうか。

 

「・・・あれ、チヨばーちゃん?」
チヨが何かを言う前に、彼女の姿を見つめるナルトは驚きの声をあげる。
「分かるのか?」
「うん。俺は綺麗な人は一度見たら忘れないよ」
にっこりと笑うナルトを見たチヨは、胸がキュンとなるのを感じた。
エステで若返りに成功したチヨだが、一目で見破られたのは初めてだ。
「カカシ!」
ナルトとサクラを両脇に抱えると、チヨは真剣な表情でカカシに向き直る。
「この二人、まとめてわしが頂戴する」
「ええー、な、ナルトまで!!!人さらいーー!!」

可愛い生徒を誘拐されたカカシは、必死にチヨのあとを追いかけている。
二人を手中にしていれば、おのずとカカシもセットで付いてくるようだ。
「何なの?」
「さあ」
チヨに抱えられるナルトとサクラは顔を見合わせ、同時に首を傾げていた。

 

あとがき??
全体的に何が起きているのかよく分かりません。
カカチヨ(チヨカカ?)やチヨサクだけでなく、チヨナルにまで手を出す。
可愛いナルチョは年上に好かれるタイプだと思います。ラブリーvv
ナルトは天然の人たらしなのです。

 

 

(おまけSSシリーズ188)『くノ一の授業』

 

「サクラ!」
町中でサクラの姿を見つけたいのは、手を振りながら駆け寄る。
「丁度良かった、あんたの家に行こうと思ってたのよー。時間ある?」
「んー、駄目。先生のところに行くの」
「先生って、カカシ先生?」
「そう。くノ一の授業をするからすぐに来いって」
「・・・・・何、それ」
いのもくノ一として活動しているが、初耳だ。
授業というからには、どうも気になってしまう。

「どんなことするのよ」
「上手なキスの仕方を教わったり、胸が大きくなるよう揉んでもらったり、一緒にお風呂に入ったり」
なおも続くサクラのびっくり発言の数々に、いのは目と口を大きく開けた。
「だいぶ上達したって言われたけど、今のところそれぐらいかなぁ。いのはどうなの?」
「・・・サクラ、それ、セクハラ」
サクラの肩に手を置くと、いのはげんなりとした声音で言う。
偽の授業で真面目な生徒を釣るとは、彼女の担任はとんだ人非人だったようだ。

 

「アスマの馬鹿!サクラに「もう先生の家には行かない!」って言われちゃっただろー」
「・・・・何で俺のせいなんだよ」
家まで押し掛けられたアスマは、ぷんぷんと怒るカカシに対して半眼で訊ねる。
偽の授業をしていたのはカカシで、さらにそれをばらしたのはいのだ。
アスマに関わりはない。
「生徒の不手際は担任の責任だ。サクラにいのちゃんの言ったことは嘘だって言っておいてよね」
「俺を巻き込むな」
カカシの思考パターンは全く理解出来ないが、それだけは言っておきたいことだった。

 

あとがき??
ないのかなぁ、くノ一の授業。
「サクラがー(涙)」というカカシ先生の台詞を書きたかっただけでした。

 

 

(おまけSSシリーズ189)『ビバノンノン♪』

 

「ほんとーーに、すぐ帰ってね!」
「OKーOKー、アンダースタンド」
サクラの心配をよそに、カカシは満面の笑顔で頷く。
一人暮らしの女の家に、夜、恋人でもない男がやってきたら普通は入れない。
しかし、相手はすぐ近くに住んでいる彼女の担任だ。
風呂釜が壊れ、銭湯も休みで、サクラのことを思い出したらしい。
「一日くらい入らなくても平気でしょう!」
「綺麗好きなの」

 

風呂から出たあとも、カカシは腰にタオルを巻いた姿でうろついていた。
「ちょっと!!先生、服着てよ、服!それで早く帰って」
「いやー、女の子の部屋って久しぶりだからさー。サクラ、綺麗にしてるね」
サクラの不満などどこ吹く風で、兔のぬいぐるみを持ったカカシはにこにこと笑っている。
額を押さえたサクラは大きくため息をついた。
「あ、電話だよ、電話」
「・・・・」
カカシを半眼で睨みながらも、サクラは部屋の隅にある電話の受話器を取る。
相手は実家の母親だった。

「あー、うん。ちゃんと食べてるから大丈夫よ。心配しないで」
おざなりの返事をしながら、カカシの動きが気になってサクラは目が離せない。
「嫌、勝手に開けないで、ああ、違う、何でもないから」
クローゼットを開けようとしたカカシをいさめながら、サクラは母親の声にも答えている。
そんな中、サクラは衝撃的な言葉を受話器ごしに聞いた。
『お父さんが、そっちに行ったわよ。田舎から送ってきた、野菜を届けるって』
そして、鳴り響くチャイムの音。
てくてくと扉に向かうカカシを止めようとしたときは、もう遅かった。

 

「こんばんはー。あれ、宅急便の人?」
「・・・・・」
野菜を入れた箱を持つサクラの父は、娘の部屋から出てきたカカシを唖然として見つめている。
何しろ、彼は裸にタオルを腰に巻いただけで、髪も洗ったばかりでまだしめっていた。
「え、あの、ちょっと・・・」
「ギャーー!!!お父さんーーーー!!!」
無言のままその場で倒れ込んだ父を見て、サクラは悲鳴を上げる。
電話の向こうの母は、何が起きたのかと大騒ぎをしていたが、どうしていいか分からない。

「え、この人、サクラのパピーなの?気絶してるけど」
「・・・先生のあんぽんたん」
しくしくと涙するサクラは、首を傾げるカカシにそれだけ言うのが精一杯だった。

 

あとがき??
どうなるんでしょうねぇ。サクラ、16才くらい。
え、続く!??

 

 

(おまけSSシリーズ190)『くノ一の授業 2』

 

〜 前回のあらすじ 〜
偽りの「くノ一の授業」で先生にあーんなことやそーんなことをされたサクラちゃん。
いのちゃんに真実を知らされ怒り心頭。
「先生の家にはもう行かない!」と言い切ります。
果たして、悲しみのカカシ先生の運命は・・・・。

・・・・なんだか違う気もしますが、大体、こんな感じ。

 

 

「何も知らない女の子に一から教えるなんて初めてでさ、結構楽しかったんだよ」
「・・・はぁ」
「サクラの体だって段々いい感じに育ってきて、これからってときにこの状況はないでしょう」
「・・・そうかい」
無理やりカカシの愚痴につき合わされているアスマは、傍らを歩くカカシを半眼で見やる。
もともとは、カカシがサクラを騙していたのが悪い。
一応サクラには謝ったようだが、彼女は任務中も必要最低限な会話しかしてくれないようだ。

「あー、サクラに触りたいなぁ・・・・」
「サクラだ」
呟いた直後に言われ、顔を上げると廊下の向こうにサクラが立っていた。
いやに険しい表情をしており、仁王立ちというやつだろうか。
「また、なんかやったのか?」
「・・・・どれがばれたんだろう」

 

盗聴や盗撮、尾行、次々発覚するカカシの犯罪まがいの行為に、サクラはついに切れたらしい。
カカシは救いを求めるように隣りを見たが、アスマはさっさと退散してしまっている。
面倒なことに巻き込まれるのはご免、ということだ。

「もー、何なのよ、先生はーー!!」
サクラはカカシの体をぽかぽかと叩きながら金切り声を上げた。
「何でこんな嫌がらせばっかりするのよ!そんなに私が嫌いなの」
「えっ」
意表をつく言葉にカカシは目を丸くしたが、サクラの目には涙がにじんでいる。
「嘘ばっかりつくし、先生が何考えてるのか全然分からない」
「・・・・えーと」
もちろん、サクラへの愛情が全ての発端なのだが、彼女は逆に考えていたようだ。
ここ数日、怒ったサクラがどこか悲しげに見えたのは、それが原因だろうか。

「ごめん。サクラのことが好きだから、何してるのかいつも気になったんだよ。もうしないから」
涙を手の甲でぬぐうサクラを引き寄せる。
小さくて、腕の中にすっかり収まってしまう体をカカシは大事そうに抱きしめた。
柔らかなその匂いに、何だかひどく安心する。
「授業じゃなくても、そばにいてくれる?」
「・・・もう、嘘はやめてよ」

 

あとがき??
サクラが可哀相だったので、フォローSS。ラブラブーなんです。これでも。
私は盗聴するような彼氏は嫌だなぁ。(笑)

 

 

176〜190まで載せてみました。
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