(おまけSSシリーズ236)『団扇マーク』

 

「これをやろう」
不遜な物言いと共に渡されたシャツを、サクラは無言のまま見つめる。
バックプリントの団扇マークがとんでもなくダサい。
ということは、口が裂けても言えない。
サスケがいつも着ているものと色違いで、おそらくサクラ用に合わせたサイズだ。
「・・・・・有難う」

ペアルックをやりたいなどと思う人だっただろうか。
サクラはふと顔を上げたが、彼の横顔から表情を読み取ることは出来ない。
うちはの家に通うようになって、何日目かした夜のことだった。

 

 

「一応着てみたんだけど、変かしら」
「微妙――」
自宅から団扇マークの入ったシャツを着てきたサクラは、サスケに会う前にまずいのの花屋に立ち寄った。
評価を聞きたいと思ったのだが、案の定の答えが返ってきてしまう。
「やっぱり。でも、一度くらいは着ない駄目かなぁと思って・・・・」
「一度じゃないでしょう。ずっとじゃないの」
「・・・・えっ」
「それ、受け取ったってことは、プロポーズも了承したってことでしょう」
つまらなそうに言ういのは、花を短く切ってフラワーアレンジメントを作っている。
耳慣れない言葉を聞いたサクラは、暫く時間が経過してから、素っ頓狂な声を出した。
「はあ!!!?なに、それ!!」
「・・・・あんた、気づいてなかったの」

一般の家庭はいざしらず、名門うちは家の家紋となれば一族の者以外が身につけると大変なことになる。
訴えられれば即牢獄行きだ。
そうした理由で、現在里で団扇の家紋を使えるのはサスケのみだが、彼はサクラにも許可を出した。
つまり、家族になろうと言っていたらしい。
サクラは何の考えもなく家紋の入ったシャツを受け取ったが、あれで婚約は成立していたようだ。

 

「そういえば、式の日取りがどうとか・・・・。何かうちは家の行事があるのかしらと思っていたけど」
「結婚式でしょう」
「ええーーー!!!」
再び絶叫するサクラに、いのは思わず耳を手でふさいだ。
今は客がいないからいいものの、とんだ営業妨害だ。
「も、もしかして、花嫁衣裳とか、今後着る服とか、その他日用品とか、全部この団扇マークが入るの?」
「光栄なことじゃない」
いのがにっこりと笑ってみせると、サクラは妙に情けない顔でシャツの裾を掴んでいる。
「・・・ワンポイントで、許してくれないかなぁ」

 

あとがき??
江戸時代における、葵の御紋だと思ってください。
水戸黄門のように扇マークにひれ伏す庶民でございます。
サスケ&サクラは18歳設定です。
カカサクの場合は15歳、サスサクの場合は18歳で結婚する予定のサクラちゃん。

 

 

(おまけSSシリーズ237)『home sweet home』

 

(注)
暗い部屋に書いている、血途シリーズと繋がっています。
サスケとサクラの間にサチとユキという子供がいる設定。

 

「サクラは?」
仕事から戻ったサスケは、扉を開けたサチを見るなり訊ねた。
いつもはサスケの帰りを待ちわびるサクラが飛んで出てくるのだから、当然の疑問だ。
「ユキを連れて買い物。今、出て行ったばかりだけれど・・・」
「そうか」
サチの頭を撫でたサスケは二階にあがり、服を着替えて戻って来た。
「サチ、外に行けるか?」

 

前々から知っていることだが、サチは改めて思う。
彼の父は非常に目立つ。
すれ違う女性達のほとんどが振り返ってサスケの姿を凝視していた。
瞳は思い切りハートマークになっている。
隣りを歩くサチは自分が見られているわけではないと分かっていても、居心地が悪い。
サチもうちは家の人間として日頃から何かと人目を引いているが、程度がまるで違った。
サスケの様子を窺うと、彼は女性達の熱い視線を意に介さず平然と歩いている。
たぶん、慣れているのだろう。

「・・・父さん?」
突然立ち止まったサスケにつられ、サチも同じように足を止める。
彼は三軒先にある、人だかりの出来た八百屋のレジをじっと見据えていた。
注視すると、その中にピンク色の髪が混じっているのが分かる。
「写輪眼を使ったの?」
「使わなくても分かる」

涼しげに答えるサスケを、サチは不思議そうに見やった。
サスケは歩く際に邪魔となる人の目など気にしていない。
だが、人ごみにあっても彼はサクラを見つけることが出来るのだ。
理由を尋ねても、サスケは曖昧な笑顔を浮かべただけだった。

 

 

「美味しかったねーー」
「ねー」
少し屈んでユキと目線を合わせたサクラは、にこにこと微笑んで言葉を交わす。
久しぶりの外食で満腹になった彼らは、先ほどから機嫌がいい。
家までの帰り道、ユキと手を繋ぐサクラはサチにも手を伸ばしたが、拒まれてしまった。
「じゃあ、サスケくん!」
強引にサスケの手を握ったサクラは、彼の顔を見上げて嬉しそうに笑う。
自分から断ったというのに、サチはどうも仲間外れな感じだ。
振り向いたサスケに促されれば、今度は彼の手を取らないわけにいかなかった。

サクラとユキは大抵明るい笑顔で、家族と共にいるときはサスケも表情が和む。
何故だかひどく安心した。
「たまには、外で食べるのもいいね」
「そうだな」
両親の声を聞きながら空を仰ぐと、星が瞬いているのが綺麗に見える。
いつもどおりで、少し違う団欒の光景。
幸福とは、こうしたものかもしれないと思った。

 

あとがき??
サチくん視点。
このシリーズのサスケはサクラ大好きなんですよ。
分かりにくいんですが。
ユキくんが4歳ってことは、サチくんは8歳ですかね。

 

 

(おまけSSシリーズ238)『home sweet home 2』

 

(注)
暗い部屋に書いている、血途シリーズと繋がっています。
サスケとサクラの間にサチとユキという子供がいる設定。

 

朝、鏡の前で櫛を使っていると、後ろを通ったサクラが忍び笑いをしていた。
「何?」
「うん。髪の毛のはね具合が、サスケくんそっくりだなぁと思って」
ユキの後ろの癖毛に触れると、サクラは再びくすくすと笑う。
二人の息子、サチとユキは桃色の髪に緑の瞳の、母親そっくりの容貌だ。
唯一父親に似ている部分といえば、髪型くらいだった。

「前ね、蒸らしたタオルを使ってサスケくんの髪をまっすぐにしたことがあったの」
「へー。成功したんだ」
「うん。でも、3分で元に戻っちゃった。よけいなことするなって怒られるし、散々よ」
サクラはあっけらかんと語ったが、そのときの状況を想像すると何とも愉快だ。
母につられて笑うユキに、サクラは優しく問いかける。
「サチは昔から櫛が言うことを聞かない髪が嫌で、結んでいるのよ。ユキも伸ばす?」
「んーー・・・・」
顎に手を当てて考えると、ユキは小さく首を振った。
「いいや。僕はこのままで」

憧れである父と、些細なこととはいえ共通点があるのは喜ばしいことだ。
鏡越しに見えるサクラはユキと同じ顔で微笑みを浮かべていた。

 

あとがき??
サクラとユキくんはとっても仲良し母子でございます。
二人ともまったりとした性格なので、ほのぼの〜となる。
サチくんは考え方がサスケ似です。
mitsuさんの描かれたユキくんの髪がはねていたので、こんな話を書いてみたり。

 

 

(おまけSSシリーズ239)『美しい人 4』

 

床に落ちていた、一本の長い黒髪。
一人暮らし中のサクラの家でそれを見つけたサスケは、思わず首を傾げていた。
サスケの髪は短く、彼の物ではないのは確かだ。
「サクラ、誰か来たのか?」
「えっ」
サクラが振り向いたとき、サスケは拾った髪をゴミ箱に捨てていた。

「あ、うん。くノ一の後輩よ」
「そうか」
微笑んで答えるサクラには何ら不審な様子はなく、話題はすぐに他のものへと移る。
次の日曜に、サスケはサクラの実家に行く予定になっていた。
いずれ親戚付き合いをするのだから、彼女の両親とは仲良くしておくべきだ。
彼らは娘が名門うちは家に入ることを案じているようだが、幸いサスケは次男で跡は継がない。
そのことを知ったサクラの両親は幾分安心したようだった。

 

「今日はゆっくりしていけるんでしょう」
「・・・そうだな」
「この前、サスケくんが置いていった服、洗濯しておいたから。はいっ」
家の中でくつろぐための服をクローゼットから出してきたサクラは、サスケの前にそれを置く。
「ご飯の前にお風呂入ってきたら?もう少し時間かかるから」
にこにこと笑うサクラを、サスケは無言のまま見つめた。
おそらく、結婚すれば毎日彼女と同じようなやり取りをするのだ。
自分は木ノ葉で一番の幸せ者かもしれないと思った。

「サスケくん?」
突然抱きすくめられたサクラは不思議そうな声を出したが、抗うことはない。
背中に添えられた掌の感触に、無性に安心する。
サクラのことだけは、この先何があろうとも手放さないことを心に誓った。

 

 

「また、サクラちゃんちに泊まったのー?」
「外泊するときは、連絡を入れろ」
朝帰りしたサスケが台所の前を通ると、食事中の両親が何かと声をかけてくる。
適当に受け答えをしたサスケは、ふと、イタチの椅子が空いていることに気づいた。
「兄さんは?」
「もう任務に出かけたわよ」
「そう」
「あいつも、このごろ急に消えたりするな。恋人が出来たんじゃないのか?」
「ええ、あの子とお付き合い出来る女の子なんて、いるかしら!?」

わいわいと騒がしい両親をよそに、サスケは冷蔵庫から出した牛乳を飲んでいる。
兄に恋人というのは、サスケにも想像出来ない。
彼が家に女性を連れてきたことは皆無で、もてるようだが、異性に興味がなさそうだ。
いずれ良い相手を見つけるとしても、完璧な兄の目にかなう、相当な大和撫子を想像してしまう。

コップを置いたサスケは、流し台に絡まる黒髪を無造作に手に取った。
一本の長い黒髪。
母は現在髪を短く切りそろえているのだから、兄のイタチのものだろう。
どこかで似たようなことをしたと思いながら、サスケは傍らにあるゴミ箱にそれを捨てていた。

 

あとがき??
パラレル未来物語。
イタチは出てきませんが、イタサクを匂わせてみる。(笑)
うへー、このシリーズ、私が書くものの中で一番、サスケがサクラにぞっこんラブですよ。
か、可哀相な坊ちゃん。
あらゆる意味できつい話ですね。

 

 

(おまけSSシリーズ240)『Sin city』

 

「父さんと母さんの仇!!」

里を守るための塀の外へ出て、少しも歩かないうちだっただろうか。
振り返ると、十代前半と思われる少年が殺意を帯びた眼差しで向かってくる。
怒りで赤く染まった瞳は、どこかで見た覚えがあった。
あれは、数年前の自分自身。
修行を重ねてここまでたどり着いたのだろうが、仇を前にして我を忘れている。
避けることも、返り討ちにすることも簡単だったが、逡巡するサスケはその場から動くことなく佇んでいた。

少年が捜していたのは、写輪眼を持つ男。
兄のイタチか、サスケか、どちらなのかは分からない。
また、どちらでも良かったのかもしれない。
写輪眼を持つ人間は全て彼の憎悪の対象だ。

大蛇丸の元へ行き、彼の指示で滅ぼした村や町の住人の中に、少年の両親がいたのか。
兄を仇と憎んだ自分が、今は誰かの仇となって憎まれている。
死んでもいいような気がした。

 

 

サスケはただ、少年の顔を見ていただけだ。
そして、瞬きをした刹那、足下を汚した血は彼ではなく少年のものだった。
頸動脈が切られ、目を見開いた表情のまま事切れている。
痛みを感じる間もなく逝けたことだろう。
顔にはねた血を手の甲で拭きながら横を向くと、サクラが静かな眼差しで子供の遺骸を眺めている。
握りしめたクナイは赤く染まっていた。

「馬鹿・・・」
医療忍者であるサクラが反対の仕事をするのは、似つかわしくない。
サクラが殺すのだったら、自分がやれば良かった。
人を殺めればその瞬間から誰かの仇となる。
サクラがそうした立場になるのは、何だか嫌だった。

 

「サスケくんは、私が守るよ」
揺るぎない瞳で言うサクラは、サスケの体にしがみつく。
彼に刃を向ける人間は、誰であろうとサクラの敵だ。
相手が女や子供といった弱い者でも、里の長といった強い者でも、許さない。

「馬鹿だな」
サクラにそこまで思われる価値などないが、だからサスケはここに留まっていられる。
何度、馬鹿と言われても、彼をつなぎ止める手の力は緩まない。
血の匂いのする彼女が何よりもいとおしかった。

 

あとがき??
腹が痛かったんです。それで、夜中に目が覚めた。
苦しいー、苦しいーと思って腹を抱えていたら、この話が頭に浮かんだ。
ナルトの話もあったんですが、目が覚めたらそれは覚えていなかった。暗かった気がする。
せめて、サスケ話だけでも書いてみました。
サスサクを書くのは苦手ですが、サスケを好きなサクラちゃんは好きです。
イタチ兄が死んだ設定の未来なので、里に戻ったサスケがふぬけになっている感じ。
大蛇丸のところでサスケが悪事に手を染めているなんて、誰かさんが言ったからこんな話が・・・・。

 

 

(おまけSSシリーズ241)『ナース』

 

「・・・・・何の真似だ」
「出張ナースですv」
「帰れ!」
にっこりと微笑んだサクラを怒鳴りつけると、サスケは扉を勢いよく閉めた。
風邪をひいて寝ていたというのに、乱暴に扉を叩かれ、無理矢理起きてみれば、相手はサクラだ。
しかも、何を勘違いしたのか看護婦の格好をしている。
カカシやナルトならば喜んだかもしれないが、孤高の王子のサスケには無用のものだ。

「あー・・・」
足下をふらつかせたサスケは、廊下の中程で倒れ込む。
大声を出したせいで、また熱が上がったようだった。
「大丈夫、サスケくん!!ささっ、早くベッドに」
「・・・・・・・」
心配そうにサスケの背中をさするのは、間違いなくサクラだ。
どうせ、前回押し掛けたとき密かに合い鍵を作ったというオチだろう。
突っ込む気力もなかった。

 

 

「それでね、それでね、サスケくんってば超可愛かったのよーー」
翌日、いのと顔を合わせたサクラはさっそく看病にいったときのことを話し出す。
何しろ、病で弱ったサスケはサクラの言いなりだったのだ。
「お粥をこうやって私が食べさせてあげて、汗かいたからパジャマも着替えさせて」
「ふむふむ」
「さすがに下着を変えようとしたら抵抗されたけど、無理矢理・・・・」
会話の合間、咳払いをしたサクラは不安げな表情で喉元を押さえる。
「・・・・何だか、喉が痛いような」
「風邪、うつったんじゃないの??」

いのの予想は的中した。
その日の夜に熱を出したサクラは、任務に向かえる体調では無くなる。
そして、寝込むサクラの傍らには、何故か林檎を剥くサスケの姿があった。

 

「両親はどうしたんだ、両親は!」
「一ヶ月の世界一周旅行に行っているのよ」
ゴホゴホと咳をするサクラは、熱で赤い顔をしながら、それでも嬉しげにサスケを見上げている。
もちろん、しつこく電話をかけ、強引に呼び出したのだ。
「死ぬかもしれない」と繰り返し、電話口で倒れる音まで立てられては、さすがに無視は出来ない。

「はい、あーん」
「・・・・」
大きく口を開けるサクラにサスケは渋々林檎を食べさせる。
満足そうに頷いたサクラは、ふと、サスケの顔を見据えて訊ねた。
「サスケくん・・・・ナースの格好はしてくれないの?」
「ぜっっったいに、嫌だ!!!」

 

あとがき??
私は見たいなぁ、ナースサスケ!!(笑)きっと似合いますよ!!ラブリー。
カカサスサイトとかチェックすれば、ナースサスケ、いますかね。(本気)
ああ、サスケの下着は無理矢理サクラが変えたようです。可哀相に・・・・。

 

 

(おまけSSシリーズ242)『選別方法』

 

「そんなわけで、一番優秀な忍びと認められたから、問題児二人を任されたってわけなのよ」
「へーー・・・・」
カカシの自慢話を聞かされてしまったサクラは、茶を飲みながら適当な相槌を打った。
当然ナルトとサスケも来るのだと思っていたのだが、どうやらカカシの家に呼ばれたのはサクラのみだったらしい。
土産に持ってきたケーキを頬張るサクラはそれを食べ終えるまでは彼の話に付き合うことにした。

「それで、ナルトとサスケくんは分かったけど、私は何で先生の班の一員になったのよ」
「アカデミーの卒業生で一番可愛い女の子をメンバーに入れてくれって、火影様に頼んだの」
「えっ!!」
「っていうのは、嘘でー」
思わず喜びの声をあげたサクラを見て、カカシはくすくすと笑う。
「・・・・何よ」
ふてくされたサクラは、彼の顔を睨みながら先の言葉を促した。

「実は、サクラの履歴書を見て俺が選んだんだよーv新人の中で一番可愛かったから」
頭をかくカカシは照れているようだったが、言われたサクラの方がもっと恥ずかしい。
とりあえず、2個目のケーキを食べるまではここにいてあげることにした。
「・・・・私情が入ってもいいの?」
「一番優秀だから、いいの」

 

あとがき??
サクラが7班にいるのは、謎ですよね。
あとの二人は3代目に託されていたようですが。
日向家の跡取り娘、ヒナタちゃんあたりがメンバーでもおかしくないような。

 

 

(おまけSSシリーズ243)『奥手』

 

「サスケがー、サクラちゃんに愛されていないんじゃないかって心配してたよ」
口に含んだ茶を噴き出しそうになり、サクラは目を丸くして振り返る。
「はあ!??」
「この前、サスケの家に前の依頼人の娘が押し掛けたみたいじゃない」
「ああ、そんなことがあったわね」
サスケは顔が良いため、護衛任務を引き受けた家の姫君に気に入られることが度々あるのだ。
そして、彼女がやってきたときサクラはたまたま彼の家にお邪魔していたのだった。

「サクラちゃんは彼女を見て、どういう反応したの?」
「夜も遅かったし、「今夜は泊めてあげたら?」って言って帰ろうとした」
「それだよ、それ!」
サクラの返答に、ナルトはオーバーリアクションで反応する。
「普通、恋人の家に他の女を泊めようなんて思わないだろ。サクラちゃん、本当に帰っちゃったし」
「あー、次の日、任務が早い時間に入っていたのよ、たぶん」
アハハッと笑うサクラは実にあっさりとした口調で言う。

 

「えっ、何、それであれ以来サスケくんが不安そうな顔でこっち見ているわけ?」
「気づいていたんだ」
「何となくねー」
腕組みをしたサクラは、椅子に深く腰掛ける。
休憩室には幸い二人以外の忍びはおらず、大きな声で会話をすることも出来た。

「私はサスケくんのことが一番好きよ。これまでも、これからも、ずっとずっと」
「だよねーー。俺もそう言ったんだけど、あいつ妙に落ち込んでたんだよなぁ」
俯くナルトは、喧嘩友達でライバルであるサスケのことを、それなりに心配しているらしい。
「分かった。今日、サスケくんちに寄ってたっぷり愛情押しつけてくる。知らせてくれて有り難うね」
「どういたしまして」
サクラににっこりと微笑まれたナルトは、曖昧な笑顔で応える。
いつの間にか二人を取り持っていたが、サクラにはまだ未練があるのだから、あまり仲良くされても複雑な心境だ。

「で、サクラちゃんはなんで近頃余裕なの?前は、サスケに女の子が近づくと煩かったじゃん」
「サスケくんが究極の奥手タイプだって分かったから」
「・・・何、それ」
「付き合い始めてチューするまで、どれだけ時間かかったと思うのよ。その次の段階に進むにはさらに数ヶ月」
サクラは苦笑しつつ話を進める。
「最初に私の家に泊まったときも、何もしなかったわねぇ・・・・」
「へー」
そうした前例があるのなら、信用しているのも分かる気がする。
相手が身分の高い女性となると、さらに萎縮しそうだった。

 

「ねえねえ、今度、俺もサクラちゃんちに泊まってもいいー?」
調子に乗ったナルトが身を乗り出して訊ねると、サクラは後退しながら目を細める。
「駄目!!あんた、手が早いから」

 

あとがき??
未来のナルサクサスですね。ちょいと大人。
サクラも一人暮らし中のようです。
苦手なサスケが出てこない話は、すらすら書けるような・・・。

 

 

(おまけSSシリーズ244)『うさ耳天国』

(注)
7班の下忍達に、うさぎの耳がくっつきました。
どうか、妄想力を働かせてください。

 

*ナルトの場合*

「ナルト、あんた私の話、全然聞いてなかったわね!!」
「ごめんってば・・・・」
「もーー、あんたはいつもいつも、迷惑ばかりかけてーーー!!!ばかばかばか」
きちんと正座してサクラの積極を聞くナルトは、しゅんとして俯いている。
任務中にナルトが失敗をすることなど、すでに日常茶飯事だ。
そして、サクラが先に激怒するため、担任であるカカシはどうも機を逃してしまう。
いつの間にか二人を仲裁する役所になってしまうのだった。

「まあまあ、サクラ。ナルトも反省しているようだし。逃げた鶏もすぐ捕まるよ」
「カカシ先生ってば、ナルトに甘いんだから!!!」
「だってサクラ、ナルトをよく見てごらんよ」
「・・・・何?」
怒りに我を忘れていたサクラは、そのときようやく冷静にナルトの姿を見つめる。
怯えるナルトの心情を表すように、頭から生えたうさ耳が小刻みに震えていた。
見ているだけで、同情がこみ上げてくるようないたいけな様子だ。
さらに、しくしくと悲しげに泣かれては、まるで弱い者いじめをしている気持ちになる。

 

「・・・・ナルト、もういいわよ」
「えっ」
「一緒に鶏捜してあげるから、立ちなさいよ」
サクラが手を差し出すと、ナルトはすぐに涙を笑顔に変えて飛びついてくる。
「サクラちゃん、大好きv」
萎れていたうさ耳もぴんと張り、すっかり元気になったようだった。

 

あとがき??
ぎょえーーーー!!!か、可愛い、可愛すぎる!!
mitsuさんのお描きになったうさ耳ナルトが可愛かったので、こんなSSを書いてみる・・・。
想像以上の破壊力でした。
サスケ編とサクラ編も書こう。

 

 

(おまけSSシリーズ245)『うさ耳天国! 2』

(注)
7班の下忍達に、うさぎの耳がくっつきました。
どうか、妄想力を働かせてください。

 

*サスケの場合*

何メートル離れようとも、その手裏剣は必ず的の真ん中に命中する。
そして、サクラの瞳はテストが始まった当初からずっとハートマークになっていた。
「キャーーーー!!!サスケくん、格好良いーーー!!」
「ちっ・・・」
サスケを横目で見るナルトは彼が失敗するよう念を送っていたのだが、無駄だったらしい。
今日の手裏剣投げテストでトップの成績だったのは、いつものようにサスケだ。
時たまダミーが混じる動く標的を狙うのはなかなか難しい。
ナルトなど、下忍全ての成績を総合しても、ダントツで最下位だった。

「サスケくん、凄いね!一番よ、一番。頑張ったね」
サスケに駆け寄ったサクラは彼にタオルを手渡し、にこにこと話しかけている。
しかし、サスケは「当然」というような顔つきでそっぽを向いているだけだ。
これがナルトならば、飛び上がって喜びを表現していたことだろう。

 

「嫌みな奴だってばよ・・・」
「いや、あれは凄い喜んでいるんだよ」
「何で分かるのさ」
「だって、ほら・・・・」
カカシが指差した方向を見たナルトは、サスケのうさ耳を目にとめた。
表情には全く出ていないが、心なし、嬉しそうにピコピコと動いている。
「・・・・分かりにくいってば」

 

あとがき??
ナルト編に続き、サスケも書いてみる。
無表情なのに耳がピコピコ動いていたら、可愛いなぁと思いました。
ピコピコは、ピコピコです。

 

 

(おまけSSシリーズ246)『うさ耳天国! 3』

(注)
7班の下忍達に、うさぎの耳がくっつきました。
どうか、妄想力を働かせてください。

 

*サクラの場合*

カカシに呼び出され、アカデミーにやってきた下忍達だったが、途中で雨に降られてしまった。
少し前に見た天気予報では降水確率0%だったのだから、誰も傘を持ってきていない。
ずぶぬれでやってきた3人にタオルを手渡したカカシは、サクラの頭を見てほんわかした笑顔を作る。
耳についた雨水を払うため、ふるふると動く耳が何とも愛らしい。

「それで、カカシ先生、用件は何だってばよ」
「ああ、これこれ。君たちに渡しておこうと思って」
カカシに紙袋を渡された下忍達は、そろって首を傾げる。
「これは?」
「忍び服。今度から下忍も着用する決まりになったんだ。これを渡そうと思って今日はみんなを呼んだの」
「へえー・・・」
それまで忍びの制服を着られるのは中忍クラスになってからだ。
だが、こうして服を支給されると、一人前と認められたようで何となく嬉しい気持ちになる。
「明日からさっそく着てきてね」
「今、着替えたらいいんじゃないの?丁度、服も濡れちゃったし」
「そうーー??」

 

 

いつの間に採寸したのか、服のサイズはそれぞれにぴったりだった。
問題はサイズのことではない。
くノ一用といって渡された、サクラの衣装だ。
更衣室から出てきたサクラはカカシに向かって突進し、ナルトとサスケは唖然として彼女を見ている。

「何よ、これーー!!!」
「あー、可愛い、可愛いvサクラ、似合ってるよ」
「冗談じゃないわよーー!!」
カカシに詰め寄り、金切り声をあげるサクラは何故かバニーガールの姿になっている。
新しいくノ一の衣装だというが、おそらくカカシの個人的な趣味で用意した衣装だろう。
「ちゃんと網タイツとハイヒールも履いてるじゃないの」
「先生が濡れた服の入ったカゴ、持っていったからでしょう!返してよーー!!」

 

「・・・・新しいくノ一服、なかなか良いいいよなぁ」
指を銜えて呟くナルトの声に、傍らのサスケもしっかりと頷いていた。

 

あとがき??
ナルト&サスケ編に続き、サクラも書いてみる。
やっぱり、うさ耳といったら、バニーー。耳と尻尾は元々くっついていますし。
ただでさえ可愛いのに、バニー衣装になったら先生も大暴走です。
仕事にならないっての。

 

 

(おまけSSシリーズ247)『九官鳥』

 

歩くことが妙に億劫だと思ったら、足に枷がつけられていた。
遠くに行くことが出来ないように。
名前を呼ばれて振り返ると、飼い主の顔が見える。
寂しそうだ。
望んで繋がれているのだから、主従関係ではない。
いや、彼女を繋いだのは、自分の方だっただろうか。

 

 

「・・・・変な夢ぇ」
目元をごしごしとこすり、カカシは寝返りを打つ。
すぐ近くに、第三者の温もりを感じた。
目を開けることなく、鼻にあたる髪の香りでその存在を確認したカカシは、自然と頬を緩ませる。
無意識に頬を寄せてくる仕草が無性にいとおしく思えた。

 

『先生は、いなくならないよね』

8班や10班の活躍を聞いているうちに、不安になったのかもしれない。
サクラは毎日綱手の元で修行に励んでいる。
その合間に、大蛇丸に関しての情報を集め、いなくなった仲間の消息を調べているが徒労のようだ。
彼を追いかけるように里を出たもう一人の仲間は、文を書く性分ではなく、消息は不明。
サクラは頻繁にカカシを訪ねてきた。

『先生は、いなくならないよね』

その日は丁度やっかいな任務をいくつも掛け持ちでこなした後で、疲れていたのだ。
繰り返される問いかけに同じ返答をするのが面倒で、小さな体を抱き寄せる。
彼女は抵抗しなかった。

 

「そばにいるよ、サクラの」
サクラの寝顔に声をかけると、その表情が少しだけ綻んだように見える。
単純なものだ。
一時的にだが、この一言でサクラの不安は消え去る。
サクラが本当にそばにいて欲しい人物は、他にいるのだろうけれど。

 

あとがき??
先生はサクラの心の隙間につけ込む結構嫌な人です。
生徒としてしか見ていないのに、サクラは可愛いし、ちょっと魔が差して手を出してみたり。
でも、あとから本気になって抜け出せなくなるんですね。
サスケが見つかったら、そっちに行っちゃうんじゃないかと不安になってしまう。
馬鹿ですね。

・・・・拍手SS向きじゃなかったような。暗い?
カカサクを書いてやる気だそうと思ったんですが。
ナルトもサスケも里に居ない間に、ねんごろな関係になっているといいなぁSSでした。

 

 

(おまけSSシリーズ248)『美しい人 5』

 

「重いから嫌だ」
「もー!!リンゴ3つ分くらいで、何、軟弱なこと言ってるのよ。ちゃんと渡してね」
渋るサスケの鞄に、母は無理矢理リンゴの入った袋を押し込んでいる。
任務終了後のデートの約束を聞きつけた母は、サクラにリンゴを裾分けするつもりらしい。
親戚が段ボール箱にぎっしり送ってきたため、このところ毎食デザートにリンゴが出てくる。
黙々と朝食を取るイタチは、TVの天気予報を見つめて茶をすすった。
今夜は嵐だ。

 

 

「急がなくちゃ!!」
出かける支度を整え、水玉模様の傘を持ったサクラは慌てて家から飛び出した。
何しろ、彼女の恋人は非常に几帳面で、遅刻をしない人なのだ。
サクラとて、きっちり時間通り待ち合わせ場所に行くのだが、彼は10分前には来ている。
遅れていなくても遅れた気持ちになるため、サクラも5分前には到着しなくてはならない。
髪のセットと着替えが完璧でも、彼が不機嫌になってしまえば意味がないのだ。

「ああー、せっかく家に戻って髪をブローしたのに、雨が・・・・キャッ!!!」
鍵穴に鍵を差し込んだサクラは、突然目隠しをされて大きな声をあげる。
両目を覆った手が濡れていたために、よけいに驚いてしまった。
「だ、だ、誰!!?」
「こんばんは」
びくつきながら振り向いたサクラだったが、彼女の背後に立つ人物はにこやかに挨拶をする。
軽やかな声に反比例して、彼の顔は真っ青だ。
彼の服に滲んだ血に気づいたサクラは、目眩を起こしそうになった。

「い、イタチさん、どうしたんですかその怪我!!早く病院に・・・」
「入れて」
サクラの声は耳に入っていない風で、イタチは扉を指差す。
困ったように彼を見たサクラだったが、目が合ってしまうと、どうにも断れそうになかった。

 

「怪我をするたびに来られても、困るんですけど・・・・」
「サクラは病院の医者より腕が良い」
治癒の術を使うサクラに、イタチはさらりと言う。
にっこりと微笑まれれば、サクラはもう不満をぶつけることも出来ない。
しかし、問題はこの怪我だ。
「あの、これは本当に任務中に出来たものなんですか」
「何で」
「・・・・前と全く同じ場所、同じ角度の傷です。まるで、自分で腕を斬りつけたような」
困惑気味に告げた直後に、イタチはサクラの推測を笑い飛ばす。
「自分で自分を傷つける意味はない」

傷が深く、治療に思いのほか手こずったサクラは、サスケと会う約束を仕方なく断念した。
途中、急用が入った旨を電話で伝えたが、彼が不審に思った様子はない。
忍びという仕事柄、いつ何時任務が入るか分からないのだ。
雨は時間が経つにつれ降りが激しくなっているようだった。

 

 

「おかえりなさい。台風直撃よ。サクラちゃんと会わないで帰ってきて、正解かもね」
サスケが濡れた靴を脱いでいると、タオルを持った母がすぐにやってきた。
渡せなかったリンゴを入れるため、廊下にある段ボール箱を開けるといくつか減っている。
「誰かにあげたの?」
「イタチが持っていったのよ。今夜どこかに泊まるから、お土産に持っていくんだって」

 

あとがき??
一部にファンがいるらしい、イタサク。
結局、サクラちゃんはリンゴを食べられたようです。
もはやサスケそっちのけで、イタサクっています。
二人を会わせないためだけに、自分を切り刻むイタチ兄の図って、ちょっと怖い・・・。
ちなみにサスケとサクラは別の部署で働いているようですよ。

 

 

(おまけSSシリーズ249)『姐さんはくノ一 11』

 

「お前も早く身を固めた方がいい」
「・・・はあ」
「ナルトのためにも、母親は必要だぞ!」
イルカの肩を叩くと、彼の先輩にあたる教師は見合い写真を置いて職員室から出ていった。
ナルトのためにと言われても、彼はイルカの子供ではない。
しかし、はたから見ると二人はすっかり親子の関係なのだろう。

頬杖を付くイルカは周囲に人がいないことを確認し、見合い相手の写真を眺めた。
着物姿の女性はなかなかの美女だが、彼女にはかなわないと思ってしまう。
結婚して、傍らに紅とナルトのいる生活。
想像してみると毎日が幸せそのものだ。

 

「・・・・楽しそうですね」
「うわ!!!」
後ろから声をかけられたイルカは、驚きのあまり飛び上がる。
いつからいたのか、イルカの手元にある写真を覗き込んだ紅は明るい微笑みを浮かべた。
「イルカ先生、お見合いするんですか」
「あっ、いや、これはその・・・あの」
「上手くお話が進むといいですね」

言葉とは裏腹に、ブリザードが吹き荒れている気がする。
紅から発せられる笑顔の威圧感に呑まれたイルカは、言い訳をすることも出来ない。
先輩に渡されて仕方なく受け取ってしまったが、会う気は毛頭無いのだ。
しかし、口がぱくぱくと動くだけで、肝心の声が出てこない。

絶体絶命の窮地に立たされたイルカは、そのとき初めて紅の傍らに立つナルトの存在に気づく。
冷や汗をかいて硬直するイルカをよそに、ナルトは見合い写真をしげしげと眺めていた。
「わーー、綺麗な人だねーーー、イルカ先生」
「な、ナルト・・・・」
「でもさ、俺は紅先生の方が好きだな」
写真から目を離すと、ナルトは右手に紅、左手にイルカの掌を握ってにっこりと笑う。
「ラーメン食べに行こうよ。廊下で紅先生と会ったから、一緒にイルカ先生を誘いに来たんだ」

 

ナルトの微笑み一つで、たちまちに場の空気が和んでしまった。
計算してやっているのだとしたら凄いことだと思うが、ナルトの表情から読みとることは難しい。
「・・・行きますか?」
「は、はい、もちろん!」
躊躇いがちに訊ねる紅に、イルカは何度も首を縦に動かして答える。

紅も、イルカとナルトを親子の関係と思って見ているのだろうか。
ナルトが明るい話題を振るため、自然と両側にいる二人の顔にも笑みがこぼれる。
本当に三人で過ごせたら、これ以上幸せなことはないように思えたイルカだった。

 

あとがき??
見合いネタが続く。
イルカ先生の嫁はやっぱりナルトを可愛がってくれる人が良いですね。
ナルトはイルカ先生のことが好きだから、紅先生と上手くいくといいなぁと思っている。
紅先生はナルトをいい子だと思っていて、ナルトを可愛がるイルカ先生を可愛いと思ってる。
これからも、細々とイル紅ネタを続けていきますよ。マイナーカップリング、万歳!

 

 

(おまけSSシリーズ250)『美しい人 6』

 

サクラの瞳と同じ色合いをした石だった。
首からさげた緑の石を、気づくとサクラは触っている。
くせになっているのだろう。
考えてみればサクラはいつでもそれを身につけていた。
仕事中もプライベートも、寝るときさえ離さない。

「貴重な石なのか?」
「えっ」
訊ねられ、石に手を置いていることに気づいたサクラは、首を振って答える。
「ううん、違う」
何故、サクラの笑顔が困っているように見えたのか。
サスケには分からなかった。

 

 

うちは家の人間は、火を扱う術を得意としている。
だからこそ、イタチはあえて水遁の術を極めてみたいと思った。
演習場にある池は術の練習に最適な場所だ。
広さはないが、深さは十分にある。
毎日通ううちに、夏も冬も、季節に係わらず水に浸かるのがほとんど習慣になっていた。

 

「・・・・何、やっているんですか」
いやに怪訝そうに言われてしまった。
水辺に立つサクラはカゴを持っており、そこに薬草が沢山摘まれている。
歩み寄るサクラを見つめながら、近くに薬草を育てるハウスがあることをぼんやりと思い出した。
「泳いでいる」
「・・・もう、寒いですよ。それに、何で服を着たまま」
「問題ない」
「はあ」

あまり表情が顔に出ないため、イタチは何を考えているか分からない。
口数も少なく、沈黙が続いてしまったが、不思議とサクラの気持ちは落ち着いている。
サスケの前にいると何を喋るか焦って考えてしまうのに、今はそうした気にならなかった。
何かが十分に満たされている。
話すことがないときは、黙っていればいいのだ。

 

光と風で色合いが微妙に変わる水を見ていたサクラが、ふと視線を向けるとイタチがいない。
一体、いつから潜ったのだろう。
ぼんやりと水際を眺めたサクラだが、時間が3分、4分と経過するうちに、段々と顔が青くなっていった。
5分以上の浸水など、いくら何でも長すぎる。
音がないのだから、水から上がったとは考えられない。
溺れたのだ。

「い、イタチさん!!」
慌てたサクラがカゴを放り出して池に入ると、太股まで水に浸った時点で目的の人物の頭が見えた。
そして、髪を撫でつけた彼は、サクラの姿を見るなり首を傾げる。
「・・・服を着たまま泳ぐのか」
ぱくぱくと口を動かすサクラに、彼は真顔で告げた。
「寒いぞ」
「ば、馬鹿ーーー!!何やってたんですか、心配するでしょう!」
涙声で非難するサクラだったが、彼はどうして怒られるのかが分からない。
とりあえず、喚き続けるサクラの目の前に拳を突き出し、握っていたものを差し出した。
「あげる」

 

日を当てると、硝子玉のように輝く。
湖の底に沈んでいた石が、彼からの最初のプレゼントだった。

 

あとがき??
イタチ兄が『銀曜日のおとぎばなし』のシャーロットになっております。
相変わらずサスケそっちのけでイタサクっている二人。

 

 

236〜250まで載せてみました。
サスサクが多いのは、サイトでカカサク&ナルサク祭りをやっていた時期だったので、その反動ですね。
web拍手にて、何番の作品がお好きかご意見を頂けると嬉しいですv

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