(おまけSSシリーズ16) 『カカシ先生の勝ち』

「おはよー、サクラvv」
遅刻して集合場所にやってきたカカシは、いつものようにサクラに抱きついた。
通常、ここでサクラは叫ぶ→カカシを殴る→叩きのめすという行動に出る。
だが、その日のサクラは違った。
何事もなかったように涼しい顔をしている彼女に、ナルトは不思議そうに訊ねる。
「体調でも悪いの?」
「いいえ。私は気づいたのよ。逃げられれば、人は追いかけたくなるもの」
サスケをちらりと見たサクラは、両手で握り拳を作る。
「逃げなければ、そのうち飽きて近づかなくなるわ!!」
「へー、サクラ頭良いねぇー」
頬をすり寄らせてくるカカシに、サクラはひたすら「忍耐」の文字を頭に思い浮かべていた。

数日後。

相変わらずカカシはサクラにべったりで、彼女も平然とやり過ごしている。
そして、カカシがサクラから離れる気配は微塵もない。
「サクラちゃん、目測誤ったんじゃないの?」
「んー・・・」
サクラは自分の肩を抱くカカシをそのままに、ナルトを見やる。
「何か、もうどうでもよくなった。言い付けはわりと守るし」
カカシが飽きるより先に、状況に慣れてしまったのがサクラの敗因だった。

あとがき??
サクラにペット感覚で扱われているカカシ先生って、一体・・・・。
いいなぁ。私もサクラに頬ずりしたいよ。

 

(おまけSSシリーズ17) 『先生の先生』

「四代目ーー、俺の可愛い生徒に手を出さないで下さいよ。サクラは俺の嫁になるんですから」
後ろからサクラを抱きしめたカカシは、ぶーぶーと四代目に不満を訴える。
毎週日曜日の園芸の時間。
サクラにくっついて畑にやってきたカカシのおかげで、二人は草花の手入れもままならない。
にっこりと微笑んだ四代目は、畑の隅でカカシを手招きした。
「カカシ、ちょっとおいで」

四代目がぼそぼそと耳元で囁いたあと、カカシの顔色は一変する。
サクラの目にも、その動揺振りは明らかだ。
「くそー、今に見てろよーーー!!」
握り拳を作ったカカシは、捨て台詞と共に涙を流して駆け去っていった。
残されたサクラは呆然とその後ろ姿を見送ったが、四代目はにこやかな表情で手を振るだけだ。

「え、え、どういうこと?」
「長いつきあいだからね。あいつの弱みならいくらでも知ってるのさ」
「カカシ先生の弱み!!?」
好奇心旺盛なサクラは、瞳を輝かせて四代目にすがりつく。
「知りたい、知りたい!」
「内緒―」

あとがき??
四代目が生きていたらパラレル話。『声』という駄文の続きです。
コフミさん他、いろいろな方からご意見頂けて嬉しかったので書いてみました。
全然関係ないですが『中学生日記』で「くそー、今に見ておれー」という台詞に驚いた。
じ、時代劇!??(笑)しかも女子の台詞だし。しかも棒読みだし。

 

(おまけSSシリーズ18) 『本当の嘘』

カカシ先生は、嘘の中にほんのちょっとだけ本当を混ぜ込む。
気づかれないように。
気づいてくれるように。

 

「ごめん、ごめん。今日は川で溺れた子犬を助けてたんだ」
「ふーん・・・」
待ち合わせに遅刻した先生を、私はふてくされた表情で見やる。
「服、全然濡れてないね」
「わざわざ着替えてたから遅れたんだよ。あのままだったらサクラとデート出来ないし」
先生は私の怒りなど何処吹く風で、広いおでこにキスをした。
それで喧嘩は仲直り。
私達のルールを、先生はよく理解している。

目的の映画館へ向かう前に、先生に聞いておかなければならないことがあった。
「先生、“一楽”のお姉さんと親しく付き合ってるって本当?」
「・・・何、それ」
「二人が先生の家に入っていくところを、いのが見かけたって」
実際は、一緒に歩いていたところを見ただけ。
少し脚色した話に、カカシ先生は困惑気味に眉を寄せた。

「出任せだよ」
頭を撫でる先生の手を掴むと、私は上目遣いに彼を見上げる。
「先生、私のこと好き?」
「うん」
柔らかく微笑んだ先生を、泣きそうな気持ちで抱きしめる。

 

嘘を見抜けたら本当。

あとがき??
サクカカブーム到来・・・・。
果たして、どれが嘘なのでしょう。

 

(おまけSSシリーズ19) 『赤ちゃんと僕 4』

「サクラはウサギのぬいぐるみが大好きで、これをあげると泣きやむから」
「ああ」
「ナルトはすぐ腹を空かせるけど、飯のやりすぎに注意して」
「そうか」
「サスケは放っておくと脱走するから、目を離さないように・・・」
「もう分かったってば」
長々と説明するカカシに、同僚はうんざりとした口調で言う。
今日はカカシと三人の赤ん坊の別れの日だ。
怪我が完治したカカシは通常の仕事に戻ることに決まった。
すっかり自分に懐いた子供達を前に、カカシは後ろ髪を引かれる思いで彼らを同僚に預ける。

「じゃあ、俺、仕事に行くから」
「早く行ってこい」
サクラ達は突然の別れを理解できず、ただ不安げにカカシを見上げている。
そして、カカシが扉の陰に消えた瞬間だった。
まず最初に泣き出したのは、サクラ。
あとは泣き声が連鎖となり、ナルトとサスケもすぐさまわめき始めた。

「サクラ、ナルト、サスケ!」
子供達の声を耳にし、たまらず戻ってきたカカシは、三人しっかりと抱きかかえる。
「もう、このまま俺がこいつらを育てる!!」
「おいおい・・・・、ナルト以外はちゃんと親がいるんだって」

十数年後、偶然にも再会した彼らは昔のことをまるで覚えておらず、カカシを大いに失望させたのだった。

あとがき??
こういう内容だったのか・・・。赤子時代の記憶なんて、無くて当然だよ、カカシ先生。
ただ少年カカシと赤子サクラでラブラブやりたくて書き出した話でした。

 

(おまけSSシリーズ20) 『とべない鳥』

外で鳥が鳴いている。
ただの鳥ではない。
里にいる上忍の召集を伝えるための、特殊な合図。

「・・・行かなきゃ」
ベッドの中で身じろぎしたカカシは、自分の胸に顔を埋めている少女の頭を叩きながら言う。
だけれど、彼女はカカシの背に回した手を放さない。
つい先程まで寝入っていたカカシだったが、彼女にもあの鳥の声は聞こえていたはずだ。
忍びならばどこにいても、何をしていても、体が反応するように出来ている。
「サクラ」
「行っちゃ嫌」
顔を上げたサクラは、さも不満げに口を尖らせる。
「先生が行かなくても、他の人達が集まってるから平気よ」
「でも、呼び出されるたびにすっぽかしていたら、俺に仕事が来なくなるよ」
「いいわよ。私が先生の分の生活費を稼ぐから、先生は専業主婦になるの」
「そんな、めちゃくちゃな・・・・」

ナルトもサスケも、無事に師のもとから巣立っていった。
それなのに、残る一羽だけはいつまでも安穏たる場所に留まっている。
「先生は弱っちょろいから、私が守ってあげないと駄目なのよ」
こましゃくれた小鳥は当然のように宣言し、なおも居座り続ける。

このまま互いに足を引っ張り合ったら、職を失い末は飢え死にだろうか。
自分にしがみついたまま再び寝息を立て始めたサクラに、それもまた幸せかと思ったカカシだった。

あとがき??
なまけ病の二人。何だかまったりしてますね。リラックマの影響か?
結構、物騒な話だったりするけど、幸せならば良いでしょう。

 

(おまけSSシリーズ21) 『最後に』

ひどい風邪をひいた。
何日も寝たきりで、体は衰弱していくばかり。
こういうとき、一人暮らしは困る。

ベッドで吐き気を催しても洗面器を持ってきてくれる人はいない。
のどが渇いても、自分で蛇口まで這っていかなければならない。
おまけに、たとえようのない孤独感で、気弱になってしまう。
眠りに付けば、悪夢の連続。
親兄弟がいるわけでもなし、どうせ自分が死んでも誰も困らないのだ。
などと、最低ラインの考えまで浮かんでくる。

自暴自棄になり、眠るともなしに目を瞑っていると、ふいに額に感じたひんやりとしたもの。
それは人の手だった。

 

「先生、寝ているときくらいマスク取った方が良いわよ」
自分の顔を覗き込んでいるのは、あきれた表情のサクラだ。
「・・・サクラ、手、冷たい」
「先生の熱が高いからよ」
「そう?」
「私、平熱低いから手も人より冷たいかもしれないけど。冬は冷え性で大変なの」
「ふーん」
ごほごほと咳き込みながら、サクラを見上げる。
「悪いね。俺のせいで」
熱のある体にはちょうど良い冷たさ。
理由があるとしたら、サクラの手が冷たいのは、たぶん今の一瞬のためだった。

「何だかねぇ、もう死んでもいいかと思ったんだ。でも・・・」
うわ言のように続く言葉は、そこで途切れる。
心配げに自分を見るサクラはタオルで額の汗を拭いてくれた。
「何?」
「サクラの顔を見たら生きていて良かったと思った」

ついさっき死んでもいいと思ったはずなのに。
本当に、人間は勝手な生き物だ。
でも、そこにいたのがサクラだから、そう思ったんだろうな。
死ぬ前に最後に会えるとしたら、自分は彼女を選んだだろうから。

あとがき??
風邪っぴきの先生の思考なので、どこか支離滅裂。
サクラは管理人さんに頼んで鍵を開けてもらったようです。

 

(おまけSSシリーズ22) 『幸せ』

幼なじみとお茶をした帰り道、偶然カカシ先生と出くわした。
その顔を見たとたん、何だかホッとした気持ちになったから、両手を広げて抱きついたら物凄く驚かれた。
「どーしたの?」
「ちょっと深呼吸」
先生の匂いを吸ってようやく、元の世界に戻ってきたと実感できる。
あんまり安心したから、出来ればずっとこうしていたいくらいだった。

 

久しぶりに会った幼なじみは、ティールームに自分の恋人を連れてきていた。
それがあまり感じの良くない人だったのだ。
初対面の人を悪く言うのはよくないと思うけれど、しょうがない。
すぐ近くの席に幼い子供を連れた家族がいるのに、煙草を平気で吸っているところがまず気に入らなかった。
足を前に突き出し、体を反り返らせて座る彼は随分とえらそうに見える。
実際、彼の家はお金持ちで、別荘やクルーザーを多く所有しているという話だ。
聞きたくなくとも、彼はぺらぺらと自慢話をしてくれる。
むしろ、家の広さや所持品のことしか話さない。

「どういうところに惹かれたの?」
「お金持ちなところ。何でも買ってくれるし、とっても大人なの」
彼が席を外した隙に訊ねると、彼女は頬を染めてそんなことを言った。
私にしてみれば、お金は親のものだし、自分では働かず遊んで暮らしている彼が大人とは到底思えない。
彼にすっかりお熱の彼女に言っても無駄だったけれど。

 

「サクラ、元気ないね」
「分かる?」
心配げに自分の顔を見る先生に、私は力なく答える。
休日になると、額に汗を滲ませて、楽しそうに花の手入れをしている彼女が好きだった。
彼にプレゼントされたという高いドレスや香水を身につけて満足している、今の彼女とは別人の。
いつか痛い目をみなければ良いと、心から思う。

「先生は何してたの。さっきから、ずっと下ばっかり見てるけど」
「ああ。近所に住んでる女の子がさ、俺と同じパグ犬を飼っているんだけど」
「うん」
「その犬の散歩中に大事なブローチを落としたんだって。死んだおばあさんの形見の品らしくて、随分泣いてた」
話している間にも、先生はきょろきょろと道の端に目を走らせている。
「母親は新しい物を買ってあげようとしていたけど、やっぱり違うだろ。今日は仕事が休みだし、探してあげようかと」
くすくすと笑い声をもらす自分に気づいた先生は、不思議そう首を傾げた。
「何?」
「うん。私、先生が別荘やクルーザーを持っていなくて無一文になったとしても、大好きよ」

あとがき??
幸せはお金と等価値ではないのですね。たぶん、サクラの年齢は10代後半。
女の子と先生は“愛犬友の会”の会員で仲良しなのですね。

 

(おまけSSシリーズ23) 『小梅ちゃん』

サクラの従妹、小梅は今年アカデミーに入ったばかりだ。
その姿は昔のサクラと瓜二つで、手を繋いで町中を歩けば十中八九姉妹に見られる。
家が近所なこともあり、小梅は毎日のように春野家へ遊びに来ていた。

「お姉ちゃん、この人、誰!」
サクラの部屋でその写真を見付けた小梅は興味津々に訊ねてくる。
それは7班の集合写真で、小梅が指差しているのはサクラの意中の人物だ。
年齢を問わず、サスケは女子の目を惹く顔立ちをしているらしい。
「サスケくんよ。これから彼の家に行くんだけど、付いてくる?」
「うん」

 

道中、手みやげのスイカを購入したサクラは、小梅と共に彼の家に向かった。
小梅が一緒だということは、電話で伝えてある。
サスケは何も言わなかったが、否定されなければ肯定ということだ。
「行儀良くしていてね」
小声で囁いたサクラは、さっそく玄関のチャイムを鳴らす。
彼女達の気配を察していたのか、間髪入れずに開かれた扉の先にいた人物に、小梅は息を呑んだ。
写真よりもずっと端麗な顔は、初対面の小梅が見惚れるに十分値するものだった。

緊張のあまり声の出ない小梅だったが、サスケの方も何故か黙っている。
小梅を凝視したあとのその低い呟きは、近くにいた彼女だけが聞き取ることが出来た。
「・・・・・小さい・・サクラ」
リボンが巻かれた小梅の頭に手を置くと、サスケは口端に微笑を湛えてみせる。
好意的というより作為的なその笑みに、小梅は思わず体を硬直させていた。

「良かったわねー、小梅。サスケくん、あなたのこと気に入ったみたい」
浮き浮きとした声で話すサクラに、小梅は曖昧な笑顔を返す。
顔はこの上なく綺麗だ。
だが、変な人かもしれない。
それがサスケに対する第一印象だった。

あとがき??
一応、続く予定ですけど分からない。変なサスケを書きたかったようです。
いつもカカシ先生でやっていることなんですが。

 

(おまけSSシリーズ24) 『クーリングオフ』

「サクラー、誕生日、おめでとうーーvv」

いつもどおり、遅刻して7班の集合場所にやってきたカカシはいやにハイテンションだった。
何のつもりかは分からないが、頭に赤いリボンを付けている。
気味悪いことこの上ない。
「・・・先生、私の誕生日、3ヶ月も前だったんだけど」
「細かいことは気にしない、気にしない。知ったのが昨日だったんだからしょうがないでしょー」
「・・・・そうですね」
ぽんぽんと頭を叩くカカシを、サクラは諦めの気持ちで見つめる。
人の話を聞かないことでは、この教師の右に出るものはいないのだ。
サクラが先程から感じている悪寒はこの先の展開を易々と想像出来たからかもしれない。

「それで、サクラにプレゼントをあげようと思ったんだけど・・・」
「いりません!!」
サクラは言下に答える。
頭に赤いリボンを巻いた彼を見れば、続く言葉は嫌でも分かった。
「そう言わずに、中身を見てからでも」
「ギャーー!!!!」
いそいそと服を脱ぎだしたカカシに、サクラは青い顔で絶叫した。

「ナルト、あんたにあげるわ!!」
「えー、いらない」
「サ、サスケくん!」
涙目になっているサクラに対し、サスケは無言のまま首を横に振る。
「サクラv」
「ひーーーーー」
かまわずくっついてくるカカシにサクラは再び甲高い悲鳴をあげた。
「よ、8日以内なら、返品可なのよね」
必死な表情で訊ねたサクラだったが、ナルトは冷静な声音で返事をする。
「サクラちゃん、うちの里にクーリングオフ制度はないよ」

あとがき??
カカシ先生、私は欲しいけどなぁ・・・。しかし、上忍の扱いって、一体。
元ネタは『お嬢様と私』ね。
プレゼントがカカシ先生だとしても、頂くのはやっぱりカカシ先生なのよね。(^_^;)

 

(おまけSSシリーズ25) 『ブライド』

その日の7班の任務は、披露宴のガーデンパーティーのセッティング。
立食形式で、仕事を終えれば7班も食事をすることを許されている。
飾り付けを終えた庭園には次々に人が集まり、ドレス姿で登場した花嫁をサクラはうっとりと眺めていた。

「素敵―vv花嫁さん、綺麗v」
ひとしきり騒いだ後、サクラは傍らにいるサスケをチラチラと見ながら訊ねる。
「サスケくん、お庭もいいけど船上パーティーもいいと思わない?」
「嫌だ」
言下に否定され、サクラは大いにショックを受けた。
「船なんて冗談じゃない!!沈んだらどうするんだ!」
「そ、そうよね・・・」
泳げないサスケにすれば船は恐怖の乗り物でしかない。
だが、そのような事情を知らないサクラはしょんぼりと肩を落としている。
「じゃあ、新郎新婦が白鳥のゴンドラに乗って登場する披露宴とかは・・・・」
「一人で勝手に乗れ」

ナルトとカカシは会話をするサスケとサクラを横目に料理を皿によそっている。
なるべく高い食材を選びつつ口に運ぶカカシは、ナルトの脇腹を突きながら囁いた。
「サスケってば、サクラとの結婚話自体は否定してないんだなぁ」
「ねぇ」

あとがき??
ラブラブのつもりなんですが。あれ?6月に考えたネタでした。
ちなみにうちのサスケは金槌ですので。

 

(おまけSSシリーズ26) 『赤い簪』

「これを使いな」
そういってカカシに渡されたのは、赤い珊瑚の簪。
浴衣を身につけたサクラは結い上げた髪にそれを挿した。
「・・・いいの?」
サクラが今夜呼ばれたのは木ノ葉隠れの里に多額の出資をしているさる名家だ。
その家の若君に見初められたサクラは、閨の共をする任務を請け負った。
くの一も17になればこうした仕事が舞い込むことはサクラも承知している。
「サクラの好きにしていいから」
頭を撫でるカカシの言葉に、サクラはにこっと笑った。

顔を合わせたのは数回だけだが、若君はなかなかサクラ好みの顔立ちをしている。
首尾良く事が運べば、妾として不自由のない暮らしが出来るかもしれない。
上質の香が薫る彼に抱きしめられたサクラは、それも良い考えだと思う。
枕が二つならぶ夜具を横目に、サクラはカカシに言われたとおり好きにすることにした。

 

「誰だったの、依頼人は?」
「彼のお父さん。問題の多い放蕩息子よりも、出来の良い次男に跡目を継がせたかったみたいね」
「ふーん・・・それで、身分違いの恋人とかけおちしたっていう筋書きにしたんだ」
実の父に死を願われた哀れな若君を、サクラは同情の眼差しで見つめる。
「可哀相にね」
夜具の上で、口から血を流して死んでいる彼にその呟きはもちろん聞こえていない。
致命傷は首の急所に刺さった珊瑚の簪だ。
念入りに毒の塗られたその簪を渡された瞬間に、サクラはカカシの意図を悟った。

「私が若君のことを気に入って、本当の任務内容ばらしたら、どうしてた?」
「だから好きにしていいって言ったじゃないの」
「意地悪ねー」
すねた口調で言うと、サクラはカカシの首筋に腕を巻き付けた。
わざわざ死体処理班が来る前に様子を窺いにやって来たのは、心配だったからだろう。
彼女の気持ちを確かめるような任務を持ってくる彼は、サクラの大事な恋人だった。

あとがき??
たまにはダークな話を入れてみたり。駄目ですかね。

 

(おまけSSシリーズ27) 『唐変木』

「あれー、サクラ、どうしたの?」
このときカカシが訊ねた意味は二つある。
休日に自分の家に来た理由。
そして、何故サクラが着物を着ているのか。

「今日ね、従姉の結婚式に呼ばれたの。その帰り」
カカシに招き入れられたサクラは、促されるままソファーに腰掛ける。
「これ、似合ってる?可愛い??」
「うん」
にっこり笑顔で答えたカカシに、サクラの頬が心なし赤くなったように見えた。
「あ、パックン、高そうな着物だから爪とかたてるなよ」
「・・・拙者は猫とは違うぞ」
とてとてとサクラに近づいたパックンは、不満げに言うと彼女の膝の上に乗った。
一度行動を共にしてから、サクラとはすっかり仲良しだ。

「結婚式は、どんな感じだったの?」
「豪華だったわよ。会場も素敵だったし、料理も美味しいし、ヴァイオリンの生演奏まであったわ」
「へぇ・・・」
「披露宴は午前中で終わったの。せっかく綺麗な格好をしたから先生に見せてあげようと思って」
「ふーん」
適当に相槌を打っていたカカシは、そこで首を傾げた。
「・・・・何で?」
「え」
「何でナルトやサスケやいのちゃんじゃなくて、俺のところに来たの。家、遠いのに」
不思議そうに訊ねるカカシは、サクラの気持ちにまるで気づいていない。
急に立ち上がったサクラに、膝の上にいたパックンは足元へずり落ちた。
「カカシ先生の唐変木!!」

怒ったサクラが家から駆け出していったあとも、カカシは怪訝な表情をしている。
「サクラ、どうしたのかなぁ・・・・」
「拙者はサクラの言葉が正しいと思う」
「えー??」
すたすたと自分の前を横切ったパックンの呟きに、カカシは困惑気味に声を出した。

あとがき??
サクカカも好きです。

 

(おまけSSシリーズ28) 『天使の色』

その部屋はクーラーがきいていて、快適だった。
だからといって、せっかく自分が遊びに来ているのに、居眠りをしなくてもいいと思う。
クッションを枕に寝息を立てるナルトは、恨みがましいサクラの視線に気づくはずがない。

「帰っちゃうわよー」
ふくれ面をしたサクラだが、言葉とは裏腹に、ナルトと並んでカーペットの上に横になる。
頬を指で突いたが、起きる気配は微塵もなかった。
「・・・睫毛も金色」
することもなく、暇なサクラは頬杖をついてナルトの顔を凝視している。
黙っていれば、サスケほどではないにしろ、女子の目を引く顔立ちだ。
寝顔の方が大人びて見えるのは、苦労の多い人生を送ってきたせいだろうか。

「・・・何してるの」
すぐ間近にある緑の瞳に、ナルトは目を瞬かせた。
唇に触れたあたたかな感触は、おそらく彼女のものだ。
「お姫様を起こすには、王子様のキスが必要かと思って」
「寝込みを襲うなんて、ひどい!」
「馬鹿言ってるんじゃないわよ」
ペシリとおでこを叩くと、サクラはナルトの腹部に頭を乗せて目を瞑る。

太陽の金に青空の瞳。
雲の上にいる住人は、彼のような色彩を持っている気がした。

あとがき??
ベタベタラブラブチューなサクナルを書きたかっただけ。ナルチョ好き。

 

(おまけSSシリーズ29) 『天使の羽』

「サクラさん、一緒に映画でも見に行きませんか?」
「・・・嫌です」
任務の帰り道、待ち伏せていたハヤテにサクラはきっぱりと答えた。
新たに登場したライバルに驚いたナルトは、こそこそと傍らのサスケに訊ねる。
「一体、いつの間に・・・」
「咳き込んで蹲っていたハヤテをサクラが介抱したのが縁らしい」
「ベタな設定」

薔薇の花束を渡されたサクラは困惑気味に眉を寄せた。
「あの、困ります。たいしたことしていないのに」
「そんなことないですよ。この間は本当に助かりましたv」
気にせずサクラの手を握ったハヤテだったが、彼女の顔はさらに険しくなる。
ハヤテが嫌いということではなく、異性に触れられること自体が苦手なようだ。

「カカシさんならいいんですか?」
「え」
「あの人の方が、年中あなたにべたべたしてるでしょう」
「・・・・ああ」
ハヤテの言葉にサクラは頷く。
確かに、カカシは用もないのにくっついてくることが多々あった。
「でも、先生は先生ですから。それに、先生にはちゃんと好きな人がいるんですよ」

にっこりと笑ったサクラに、ハヤテは意外そうに首を傾げる。
「カカシさんがあなたにそう言ったんですか」
「ええ。相手は天使のように可愛らしい人みたいです」
「天使?」
「そうです。正義感が強くて頑張りやで、思いやりがあって優しい人だって」
「・・・・」
腕組みをしたハヤテは暫しの間考え込む。

「あのー、サクラさん、ちょっと後ろ見てもらえますか」
「え?」
言われるまま振り向くと、ハヤテはサクラの背中を指差して訊ねた。
「見えません?天使の羽」

あとがき??
サクラに好きな人を訊かれたカカシ先生は「天使」と答えたらしいです。
気づかないサクラが悪いのか、抽象的なことを言ったカカシ先生が悪いのか。はて。
好きだからくっつきたいに決まっているのですが。

 

(おまけSSシリーズ30) 『小梅ちゃん 2』

「きっとお父さんかお母さんよ!」
「どうしたの?」
頬を膨らませるサクラに、従姉の小梅は不思議そうに訊ねる。
「私の日記。引き出しの中に入れておいたのに、こうして机の上に出てるの」
机を指差したサクラは怒りに顔を赤くしていた。
確かに、そこには「サクラの日記」と表紙に書かれたノートが置かれている。

問いつめてみたが、サクラの両親は「知らない」と首を傾げただけだった。
だが、春野家の家族は両親とサクラのみなのだから、彼ら以外に犯人がいるはずがない。
「嘘までつくなんて、最悪よ!!」
「落ち着いて」
小梅は憤るサクラを何とかなだめる。
サクラの両親は嘘をついているように見えず、小梅にしても不可解な事件だった。
真相が分かったのは、それから3日後のことだ。

 

「あのー・・・・」
小梅はサクラの部屋で不審な人物を発見する。
正確には、彼は小梅のよく知る人間だ。
「サスケお兄ちゃん?」
振り向いた彼の手には、「サクラの日記」と書かれたノートがある。
日記盗み見事件の犯人はどう見ても彼だった。

「な、何で?」
「サクラの交友関係を全て把握するためだ。例えば、この一行」
指差した場所には「カブトさんと美術館に行く約束をしたv楽しみ」という記述がある。
「危険な兆候だ。早めに何とかしないと手遅れになる」
「・・・はぁ」
「あとは、俺の悪口を書いていないかのチェックだな」

 

小梅が困惑気味に頷いたあと、部屋の扉が唐突に開かれる。
見ると、コップが二つのった盆を持ったサクラが立っていた。
「あれ、小梅、一人?」
「え!」
慌てて振り返ると、サスケの姿が忽然と消えている。
「話し声が聞こえた気がしたけど、空耳かしら・・・」
言いながら盆を机に置いたサクラは、そこに再び日記があるのを見付けた。

「あ、またこんなところに!小梅もお父さんかお母さんが見てると思うでしょ!!」
「えーと・・・・」
頬をかいた小梅はさりげなく天井へと顔を向けた。
刺すような彼の視線を感じつつ、小梅は額から汗を流しながら答える。
「こ、小人さんの悪戯じゃないかしら」

あとがき??
こんなサスケは嫌だ・・・・・。
元ネタは『お嬢様と私』。

 

16〜30まで載せてみました。
web拍手にて、何番の作品がお好きかご意見を頂けると嬉しいです。

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