(おまけSSシリーズ281)『これも同じ一日』
イチャパラシリーズ、一年ぶりの新作。
満を持して発売される本を、カカシは何よりも楽しみにしていた。
丁度その日は任務がなく、開店と同時に本屋に駆け込むことを固く決意していたのだ。
「・・・・・三軒目」
臨時休業の張り紙をした本屋のシャッターの前で、カカシは泣きたくなる。
一件目は小さな店舗なためイチャパラ最新刊は置いておらず、二軒目はいつの間にか八百屋になっていた。
もう町にカカシの知っている本屋は一つもない。
自来也から直接手に入れるという方法もあるが、あいにく彼は旅の空だ。
「帰ろう・・・」
無駄足を踏んだカカシはすっかり意気消沈し、影を引きずるようにして帰路に就いた。「カカシ先生ーーー」
肩を落として歩き続けるカカシは、その声に反応して立ち止まる。
真横へと首を動かすと、サクラが息を弾ませて走ってくるのが見えた。
その手には買い物袋が握られていて、カカシと違い十分に休日を満喫していたらしい。
「どこに行くのー?」
「本屋・・・・だったんだけれどね」
まるで奇蹟のようだった。
諦めきっていたイチャパラ最新刊が、今、カカシの手の中にある。
「良かったわねーー」
カカシの傍らでにこにこと笑うサクラがいなければ、本は手に入らなかったのだ。
彼女に案内されてたどり着いた店は近頃出来たばかりらしく、まだ新装開店の花飾りが置いてある。「先生ー、アイスご馳走してよ。本、買えたんだから」
「いいよ」
気持ちが高揚していたカカシは、サクラのおねだりを快くOKした。
本屋の隣りにあるアイス屋に連れて行かれたカカシは、この寒いのによくアイスを食べるものだと感心する。
しかし、サクラが注文したアイスは、何故か二人分だった。「はい!!」
「・・・・俺、甘い物苦手だし」
「これは甘くないから平気なの。はい!」
アイスののったコーンを手渡され、カカシは渋々それを口に運ぶ。
そして、心の底から驚いた。
「美味い・・・」
「でしょう〜。それ、砂糖を全然使っていないのよ。この店にしかないオリジナルなの」
店から出ると、サクラはカカシに向かって手を差し出してきた。
それが何を意味するのか分からず、首を傾げているとサクラは強引に彼の手を掴む。
「手を繋いで歩こうって言ってるのよ」
「・・・何で」
「寒いでしょう。アイスを食べて体が冷えた気もするし」
引きずられるようにして歩きながら、カカシはサクラのピンク色の髪を見つめる。
「サクラ、さっきまで手袋していたじゃないの」
「カカシ先生は手袋持っていなかったじゃないの」
諦めていた本が手に入った。
自分の口に合うアイスがあることも知った。
そして、誰かと手を繋ぐとこんなにも暖かくて、気恥ずかしかったのだと思い出した。「何?」
カカシが自分を凝視していることに気づいたサクラは、不思議そうに訊ねる。
「うん、可愛いなぁって思って」
柔らかく微笑むカカシを見るなり、サクラの顔はたちまち赤くなる。
数時間前まで絶望的な気持ちだったというのに、サクラに会えたおかげで、運命が好転しだしたようだ。
次の休み、サクラを連れて遠出をしたら、またなにか良いことが起こるだろうか。
あとがき??
アイスーー。
(おまけSSシリーズ282)『太る人、やせる人』
風呂上がり、バスタオルを一枚巻いた姿で、サクラは何度も体重計にのったりおりたりを繰り返していた。
脱衣所の前を通りかかったナルトは、怪訝そうに首を傾げる。
「そんなことしても、体重、変わらないと思うよ」
「・・・・だって、変だもの。おやつ食べなかったし、夕飯だって、ご飯を半分にしたのに」
ふてくされたサクラは、思わずナルトを睨み付ける。
サクラがこれほど体重に気を遣っているというのに、彼はまるで無頓着だ。
夜中でも構わずラーメンを食べているのだが、そのわりにまるで太っているように見えない。「ナルト、あんた体脂肪率何パーセント?」
「10・・・2、3かな・・・・」
「あんた、嫌い!!!」
激怒したサクラに険しい眼差しを向けられても、ナルトにはどうすることもできなかった。
「ナルト、お前、最近太った?」
「幸せ太りかーー、こいつー」
「・・・うん」
新婚のナルトをひやかす同僚の声に、彼は曖昧な表情で応える。
幸せなのは事実だ。
「サクラちゃんが、毎日毎日ケーキ作って俺に食べさせるんだよね」
「菓子作りが趣味なのか?」
「そーじゃないんだけど・・・」二人並んで歩いていると、ナルトが細いために、自分の太さが目立つとサクラは思ったらしい。
サクラの作戦が成功したのか、このところナルトの体重は順調に増加している。
だが、元々がやせていたために、ようやく標準か、それより少し重い程度だ。
「でも、今夜からサクラちゃん、実家に帰っちゃうんだ。お母さんが体調を崩したみたいで・・・」
ナルトは、はたから見ていて心配になるほど、しょんぼりと肩を落とす。
ようやくサクラとの生活に慣れたというのに、また一人きりの家に帰るのかと思うと、たまらなく憂鬱だった。
「ギャーーー!!!」
一週間ぶりに帰宅したサクラは、ナルトの姿を見るなり悲鳴を上げた。
体型が、元に戻っている。
いや、それ以上にやせてしまった。
「わ、私がいない間も、ちゃんと沢山食べなさいって言ったでしょう!」
「一人だと、食欲がなくって・・・」
「お帰りー」と、抱きついてきたナルトの体を引き離すと、サクラは上目遣いに彼を見据える。
「もう一度、チャレンジよ!」
母の具合は思ったより早く良くなり、久々に実家でのびのびとしたためか、サクラの体重は再び増えたのだ。
ナルトもそれに合わせてもらわないと困る。自分を太らせるよりサクラがやせればいいのでは。
そうしたナルトの疑問は、絶対に口に出して言えないことだった。
あとがき??
冒頭は『あたしンち』のお母さんですね。後半は実話ということで。
(おまけSSシリーズ 283)『付き合い始め』
「それで、どんな感じなのー」
「・・・・別に。前と同じだよ」
紅に好奇の眼差しを向けられたカカシだったが、返答はあっさりとしたものだ。
「任務で毎日顔をあわせているしさ。仕事中はサクラも気を遣ってあんまり近寄らないよ」
「つまらないわね」
ふてくされても仕方がない。
晴れて恋人同士になったとはいえ、カカシとサクラは上司と部下でもある。
それに、サクラの方が積極的なせいか、カカシはあまり実感が湧かない。「あー、そういえば、素人の女の子と付き合うのって初めてかも」
「・・・・それはサクラに言わない方がいいわね」
「そお?」
深刻な表情で腕組みをする紅を、カカシは首を傾げて見つめる。
どこか、ぼんやりとした人間なのだ。
仕事以外のことは、あまり深く考えない質なのかもしれない。
7班ではなく個別に入る任務を終えて家に帰ったのは午後の8時すぎ。
自分の家に向かって階段を上ったカカシは、扉の前に立つ少女を見つけて驚いた。
「サクラ」
声をかけると、振り向いたサクラは満面の笑みを浮かべる。
「カカシ先生」
駆け寄るサクラの頭に手を置くとカカシは怪訝そうに彼女を見た。「どうしたの?」
「先生に会いたくなったの」
「・・・・午前中の任務で会ったじゃないの」
「6時間以上経ってるでしょう!」
すねた口調で言うサクラだが、その顔を見れば本気で怒ってないと分かる。
カカシに会いたいという理由だけで、いつ帰るか分からないというのに、何時間も待っていたのだ。
氷のように冷たいサクラの髪の感触に、妙に胸が苦しくなった気がする。「サクラってば、本当に可愛いねぇ・・・」
鼻の頭を赤くした彼女を抱き寄せると、自然とカカシの顔に笑みが広がった。
「すぐお茶入れるから、うちで暖まってから帰りなさい。送っていく」
「うん」
腕の中の小さな存在が何よりいとおしく感じらえる。
どういった返答が正しいか不明だが、次に紅に同じ質問をされたら、「幸せ」と答えようと思うカカシだった。
あとがき??
先生、ぼーっとしているイメージなので、基本的にニブチン。
一緒にいて段々と「サクラ、好きだなー」と思い始める感じ。
サクラはこのあと先生に合い鍵もらったそうですよ。風邪をひいたら大変だから。
(おまけSSシリーズ 284)『まくら』
ランクの低い任務を請け負う下忍でも、たまに大きな仕事が回ってくる。
その日7班は里を出て半日がかりでその宿にたどり着いた。
目的地まではここからまた1日歩く行程だ。
「今日はゆっくり休んで体の疲れを取れよー」
就寝前、浴衣姿でのミーティングでカカシは皆の顔を見ながら言った。
食事を取り、温泉につかり、あとは眠るだけ。「じゃあ、おやすみなさい」
女の子のサクラには、雑魚寝の皆と違い隣に一人部屋を用意されている。
サクラがサスケに向かって小さく手を振ると、彼はかすかに頷いたようだった。
部屋には暖房器具があるが、冬の廊下は寒い。
夜、厠に行くために起きたサクラは、自分で自分の体をかき抱いて歩く。
ふと窓の外を見ると、見事に丸い月だ。
「明日も晴れそうね・・・・」
金色に輝く月を眺めて呟くサクラは、前方に人の気配を感じ、はっとなる。
最初は薄暗い廊下に白い浴衣を着た者がいることしか分からなかったが、近づくにつれサクラの警戒は解けていく。
「サスケくんも、起きちゃったんだ。寒くない?」
「・・・・」
にっこりと微笑んだサクラの問いかけに、サスケは無言の返事をする。
尋常でなく不機嫌なその表情に、サクラは不思議そうに首を傾げた。「もしかして、眠れないの?」
「・・・枕を忘れた」
再度追求すると、今度は静かな口調で答えが返ってくる。
枕が替わると眠れない、繊細な人間なのだ。
よって彼は野宿のときでも家から持ってきた枕を使って眠っている。
ナルトなどはいつでもどこでも眠れる性質で、彼の悩みは一生分からないことだろう。
「サスケは?」
ナルトが目覚めたとき、カカシはすでに身支度を整え、隣りの布団は無人だった。
「さあ。散歩でも行ったんじゃないか」
「サクラちゃんは、もう起きてるかなぁ・・・」
もそもそと動くナルトは、枕元に置いた荷物から着る物を出す。
上着に袖を通したときに襖が開き、振り返るとまだ浴衣姿のサスケが立っていた。
「お前、そんな格好で今まで外をうろついていたのか?」
「隣で寝てた」
「へぇーー」
そのまま視線を逸らしたナルトは、暫しの沈黙のあと、再びサスケを見やる。
「・・・・・隣って、サクラちゃんの部屋じゃん」何故かは分からないが、サクラがいると枕がなくとも安眠出来るらしい。
ナルトはしきりに「ずるいーー!!」と喚いている。
サクラから誘われたと説明しても、納得出来ないようだ。
「ねーねー、本当にただ寝ただけなの?」
カカシなどは面白がって訊ねたのだが、サスケは眠たげに目をこすりながら答える。
「・・・・秘密」
あとがき??
ちなみに、サスケ愛用の枕はクマさんの形の子供用枕。小さい頃マミーが作ってくれたのです。
サクラはマミーの代わりでしょうか。
サスサクが読みたいとのリクがあったので書いてみました。
原作のサスケの部屋は気にしないように。(笑)
(おまけSSシリーズ 285)『えいが』
手を繋いで楽しげに歩く恋人同士を、サクラは羨ましそうに見つめる。
あれがサクラの望む姿だ。
この日、サクラはようやく憧れのサスケとのデートにこぎ着けたのだが、まだまだ二人の距離は遠い。
3歩前を行くサスケの背中を見て、サクラは思わずため息をついた。「おい」
「は、は、はい!!」
「どこまで行く気だ。あっちだろう」
考えながら歩いていたために、サクラは映画館の前を通り過ぎてしまったらしい。
立ち止まってチケット売り場を指差しているサスケに、サクラは苦笑いで応える。
無理を言って付き合ってもらったというのに、とんだ失態だった。
映画はサクラが前から見たいと思っていた、外国の映画だ。
感動する映画と評判だったが、予想以上に感情移入してしまい、最期には涙が止まらなくなる。
おかげで、エンドロールが終わるまで席を立つことが出来なかった。
館内が明るくなり、ハンカチで顔を拭きながら周りを見回したサクラは思わず目を大きく見開く。
彼女のように泣いている人は誰もいない。
「いい映画だったねー」という明るい声が聞こえるだけだ。
一人で泣いているなど馬鹿なようで、サクラは恐る恐る傍らのサスケの様子を窺う。意外だった。
赤い瞳のサスケは、映画館の中で唯一のサクラの仲間だ。
「・・・帰るぞ」
「う、うん」
促されて立ち上がったサクラは、途中、パンフレットを二冊購入してサスケに渡す。
勇気を出して手を繋いでみても、とくに嫌な顔をされることもない。
サクラにとってまだまだサスケは遠い人だが、その距離が少しだけ縮んだように思えた日だった。
あとがき??
感性が同じ人がそばにいると嬉しいですよね。
同じ物を見て、笑ったり、泣いたり、出来る人がいいです。
サスサクを見たいというリクを頂いたので書いてみました。
(おまけSSシリーズ 286)『白い烏』
「そういえば、カカシ先生って暗部にいたのよね」
任務の合間の休憩時間、カカシの傍らに座るサクラは思い出したように言う。
「あー、そう」
「・・・・・おかしいわね。エリートの集団って話なのに」
イチャパラを眺めつつ返事をしたカカシを、サクラはじろじろと見つめている。
どうも、彼女の中のエリート像とカカシが重ならないようだ。「それが、どうかしたの?」
「うん、ちょっと聞きたいことがあるの。カラスって人、知らない?」
「・・・・・え゛」
「カラス。白いカラスっていうの。先生みたいに白い髪で、犬のお面を付けているのよ」
久方ぶりに聞いた自分のコードネームに、カカシは内心動揺を隠せない。
身分を隠すために付けられる通り名を、サクラが知っているはずがなかった。「どうしたのよ。知ってるの、知らないの??」
「・・・・・知ってるっていえば、知ってるような」
「本当ーーー!!!」
目を見開いたサクラは、興奮のあまりカカシの掌を両手で掴んだ。
キラキラと光る瞳で見つめられ、カカシは思わず後方へのけぞる。
「な、何でサクラがカラスを知っているの?」
「彼は私のファーストキスの相手で、初恋の人なの!!」
カカシは今度こそその場にひっくり返りそうになった。
「森で迷子になったとき、その人が現れて言ったのよ。「泣くのはおよし、おちびちゃん」って」
「・・・・へぇ」
「それでね、お面をずらして私のおでこにキスをしたの。驚いて涙も引っ込んじゃったわよ」
サクラは照れくさそうに話したが、カカシは全く覚えていない。
幼女相手に何をやっているのかと、昔の自分に突っ込みを入れたいくらいだ。
「それ以来、私のおでこはキスのための場所になったのよ。彼にまた会いたくて、忍者になろうと決めたの」
「そうですか」
「・・・ちょっと、ちゃんと聞いてるの?」
あやふやな返事ばかりするカカシに、サクラは不満げに眉を寄せた。迷子のサクラを保護したカラスは、彼女の記憶の中で相当に美化されているらしい。
そして、カカシはというと、遅刻ばかりで18禁本を読み歩くだらしない教師として認識されている。
彼らが同一人物とは到底考えられないようだ。「で、彼に会えたら、サクラはどうするの?」
「お礼を言うわよ。それに・・・恋人がいないなら、立候補しちゃうかも」
顔を赤らめてもじもじとするサクラに、カカシは心底悩む。
このまま黙っていてサクラの夢を守るか、正体を明かして少しでも自分の印象を良くするか。
究極の選択だった。
あとがき??
今度から、うちの暗部カカシ先生のコードネームは「白いカラス」ですよ。(笑)
カカシといったら、カラスとしか思い浮かばなかった・・・・。
ヤマトさんが名前を付けてもらっていたので、やっぱり暗号名があるのねぇと思って。
ああ、先生の台詞は丘の上の王子様ですよ。(キャンディ×2)
やっぱり、暗部×幼女の組み合わせは良いですわ。
(おまけSSシリーズ287)『案山子ワールド』
木ノ葉隠れの里で雪が降り、サクラが夕暮れの町をいのと連れだって歩いているときだった。
電柱の影から二人の様子を見守るカカシは、サクラに対して強く念を送る。
サクラが雪道で滑って、転ぶように。
怪我をするか、服を濡らすかしたサクラを近くにある自分の家に連れ込む算段だ。
転べ、転べ、転べ、というカカシの呪いは、運が悪いことに、狙いがそれた。「キャッ!!」
「いの、大丈夫!!?」
「うんー」
見事、雪の上で尻餅をついたいのは痛そうに顔をしかめている。
そこに、タイミング良くカカシが駆け出した。
「サクラー、どうしたんだ」
「あ、カカシ先生。いのが滑っちゃって・・・・」
「大変だ。ささっ、うちが近いから、服を乾かしていきなよ。お茶も入れるからさ」
「えっ」
考える暇すら無かった。
いのは強引に引きずられ、サクラもそれにくっついて移動する。
カカシの計画と違い少々よけいなおまけが付いてきたが、サクラを自分の家に招ければ、まあOKだ。
「先生、悪いわね」
「いいんだよー、困ったときはお互い様だ」
いのと並んで椅子に座ったサクラは、暖かな室内ですっかりくつろいでいる。
そして、カカシの出した茶を一口すすったときだった。
「サクラ!!」
突然机に突っ伏したサクラにいのは悲鳴を上げたが、彼女はただ寝ているだけのようだ。
「あれ、サクラ、疲れていたのかなー」
カカシは白々しく言ったが、彼のサクラに対する邪念を感じ取っていたいのは、すぐに察する。
茶の中に強力な睡眠薬が入っていたのだ。「わ、私、帰ります」
「そうー、気を付けてねーー」
「さ、サクラも一緒に連れて帰るわ」
眠り続けるサクラを強引に抱えたいのは、決死の思いで玄関までたどり着く。
扉を開けると、そこは雪国だった。
「あらーー、随分と雪が積もっちゃったねー」
付けっぱなしのTVは、丁度、豪雪注意報のニュースを流している。
吹き付ける風と雪に阻まれ、どう頑張っても家までたどり着けそうもない。
「ふふふー、今夜は泊まっていくー??」
「・・・・」
子供の頃、雪山で遭難した若者が、雪女の住む小屋で一夜を明かす昔話を聞いたことがある。
今、サクラを抱えるいのが感じている恐怖はそれ以上のものだった。
あとがき??
「花とゆめ」連載中、加藤四季先生の『兄ワールド』をカカサクで表現してみました。(笑)
続き、どうなるんでしょうね。頑張れ、いのちゃん!
(おまけSSシリーズ288)『サクラの寝言』
サクラと出会って早5年、晴れて恋人同士になれたものの、カカシには悩みがあった。
「いのちゃん・・・・」
どんな夢を見ているのか、サクラは隣りで寝ているカカシの胸を触ってくる。
寝言でサクラの口から出るのが女友達やペットの名前ならまだ良い。
問題はその後に続いて出てくる名前だ。
「どーいうことだよ!」
「・・・・何のことだ」
のんびりと休日を過ごしていたサスケは、突然自宅に押し掛けたカカシを不機嫌そうに見やる。
「サクラの寝言だよ。どうしていのちゃんやナルトだけじゃなくて、お前の名前まで出てくるんだ」
「ナルトはいいのか」
「あれはうちのペット代わりだからいいの。サクラに絶対服従だし。それより、お前だ」
「・・・・・」
急に伏し目がちになり、思案しだしたサスケにカカシは不安を煽られる。「な、何だよ」
「俺と一緒のときはカカシの名前がよく出てくるぞ」
「えっ、そうなの!」
自分が呼ばれないことを少なからず気にしていたカカシは思わず笑顔になりかける。
いや、今、それ以上に大事な発言があったような気がした。
「お前と一緒のときって、いつのことだよ、おい!」サクラのことになると、とたんに冷静な判断の出来なくなる上忍をサスケは面白そうに眺めている。
もう暫くはからかえそうだ。
「カカシ先生・・・・」
その日の夜、寝ぼけたサクラに尻を触られたいのは驚いて飛び起きてしまった。
一ヶ月に一度か二度は互いの家でお泊まり会をする二人だが、近頃は頻繁にカカシの名前が出てくる。
どうやら仲良くやっているらしかった。
あとがき??
元ネタは『カルバニア物語』です。
(おまけSSシリーズ289)『大人への道』
扉を開けると、そこにサクラが立っていた。
「早く中に入れてよ」
外は風が強いらしく、サクラは両手で自分の腕をさすりながら言う。
彼女が来ることを事前に知らされていなかったナルトは、暫し唖然としていた。
今、家は散らかし放題、さらには見られて困るものが山ほどある。
「ちょ、ちょ、ちょっと、1分だけ待って!!」慌てて家の中に駆け込んだナルトは周りにある洗濯物、漫画類をクローゼットに押し込んだ。
グラビアアイドルのポスターの上には風景画のカレンダーを貼り付ける。
あとは食事をしたときのまま机に置いてある皿やコップを流しに運べば、少しは見られる部屋のはずだ。
「ど、どうぞー」
ナルトが顔を出すと、サクラは「お邪魔します」の言葉と共に上がり込む。
お土産は近くの洋菓子店で売っているジャンボシュークリームだった。
「あ、あの、ご用件は・・・」
好きな女の子と自宅で二人きりという状況に緊張するナルトは、妙に改まった口調で訊ねる。
「別に。ただ、あんたの顔が見たかっただけよ」
あっけらかんと答えながら、サクラは何故かきょろきょろと首を動かしていた。
ナルトがその言動に一喜一憂しているなど、考えもしていない。
「お茶、お代わりいる?」
「うん」突然の来訪に驚いたが、サクラが来てくれたことはもちろん嬉しい。
鼻歌を歌うナルトが振り返ると、サクラのいたはずの場所が空席になっている。
「あれ、サクラちゃん?」
首を傾げて呼びかけたナルトは、自分のベッドの脇に座り込む彼女を見つけるなり目を大きく見開いた。
そこには、お色気の術を使う際の参考に使っている、大人向けの雑誌が沢山隠してある。
案の定、何冊か手にとって眺めるサクラの姿に、ナルトは気が動転してどうしたらいいか分からなくなった。「ベッドの下に隠すなんて、ベタよねぇ・・・。ま、分かりやすくていいけど」
てっきり怒られるのかと思ったが、意外にもサクラは平静だ。
「ナルトもちゃんと男の子なのね。感心、感心」
顔を上げてにっこりと微笑まれても、ナルトは返答に困る。
「サスケくんとは、こういう本の貸し借りとか、しないの?」
「へっ?」
何を言われたか分からず聞き返したナルトは、少しの沈黙の後、首を大きく横に振った。
「全然」
「やっぱりねー。サスケくんの家を必死に探索したけど、一冊もなかったのよ、一冊も!驚いちゃった」
「はあ・・・・」
「実はカカシ先生の家から少し拝借したんだ。これ、ナルトに預けるからサスケくんにも貸してあげてよ」
サクラに促されるまま、手渡された本を開いたナルトはそのまま鼻血を吹いて倒れてしまった。
彼が今まで見たどの作品よりも、過激な内容だ。
「私としてはサスケくんにもっと勉強してもらいたいのよ。どうも、あれが今ひとつ・・・」
ぶつぶつと呟くサクラの言葉は、ナルトには聞き取れない。
ナルトに顔を拭くハンカチを差し出すと、サクラはおもむろに立ち上がった。
「私からは言いにくいから、頼んだわよ」
「え、ええ??」結局、サクラが何をしに家に来たのか分からないまま、ナルトは彼女の後ろ姿を見送る。
鼻血が止まらず、彼の方はまだもう少しの間は動けそうにない。
閉まる扉の音を聞きながら、ぼんやりと、大人になるのはいろいろと大変なのだと感じたナルトだった。
あとがき??
私のサスケに対するイメージが前面に出た話のような気が・・・・。
サスケ、出てこないけど一応サスサクでナルサク。カカはどこいった??
サクラの突然の来訪に慌てるナルトを書きたかっただけの話なんですが、おかしいな。
15、6歳設定だったんですよ。
(おまけSSシリーズ290)『feeling couple』
「えー、じゃあ今日はサクラちゃんいないんだー」
カカシ宅にやってきたナルトは、あからさまに気落ちした表情で言う。
相変わらず、“忍びは感情を表に出さない”という掟とは無縁の性格だ。
「何だよ、俺だけじゃ不満か」
「先生の顔なんて見ていてもちっとも嬉しくないもん」
不平を並べながらそれでもしっかりとカカシの出した茶菓子を食べている。
サクラは今日、知り合いの仕事を手伝うために外に出ていた。
カカシの家に来ればサクラがいると思っていたナルトにすれば、とんだ番狂わせだ。「先生ー、なんかちょっと暑くない?窓開けるよ」
「いいよ」
窓に近づいたナルトは、外から部屋を覗く人影に気づくなり目と口をこれ以上ないほど大きく開ける。
そこにいたのは、ただの人間ではない。
恐ろしい鬼の面をつけた着物姿の者が、屋根の上に立って部屋を窺っていたのだ。
驚くなという方が無理だった。「ば、ば、化け物ーーーー!!!先生、豆、豆持ってきてよ!!」
「えー??」
まだ節分には早いのでは、と思いつつ歩いてきたカカシは、鬼を見るなり僅かに首を傾げる。
「・・・・サクラ?」
「ええ??」
ナルトが再び驚きの声を上げる中、鬼の面の下から現れたのは確かに桃色の髪の少女だ。
にっこりと微笑むサクラと、彼女が先ほどまでつけていた恐ろしい面とのギャップはすさまじい。
「どうしたの、それ」
「だから、仕事の手伝い。すぐ近くでお子さま向けのショーをやってるのよ。私は悪役その3」
「へえー。お茶を入れるから、休んでいったら?」
「すぐ戻らないといけないのよ」開かれた窓から部屋に入り込んだサクラは、しっかりとカカシに抱きつく。
「先生ってば、全然驚いてくれなかったわねー」
「サクラならどんな格好をしていても可愛いもの」
ラブラブな空気に当てられたナルトが俯いていると、ようやくサクラは後方を振り返った。
「あれ、ナルト、いつからいたの」
「・・・・・最初からです」
いくら可愛いサクラの顔を見られるとはいえ、この家に来たことをナルトは後悔していた。
彼女が去ったあと、カカシにやっかみ混じりの視線を向けるナルトは口をとがらせながら訊ねる。
「先生、何であれがサクラちゃんだってすぐ分かったのさ」
「んー、なんとなく。それに、丁度サクラに会いたいなーって思ってたから」
えへへっと笑って頭をかくカカシから、ナルトはおもむろに顔を背けた。
やっていられない。
もう二度と、少なくともサクラに未練があるうちは、この家に足を踏み入れないことを固く誓うナルトだった。
あとがき??
やっぱりカルバニア??
(おまけSSシリーズ291)『先生、もしくは・・・』
近頃、ふとした瞬間に視線を感じるときがあった。
振り返るとそこにはサクラがいるのだが、カカシと目が合うとさっと顔を背ける。
不可解だ。
顔に何か付いているのかと思ったが、鏡を眺めてもいつも通りの眠たげの瞳があるだけ。
右手を見ると18禁の愛読書があり、カカシははっとなる。
あれは、軽蔑の眼差しというものではないだろうか。
どれほど煩く注意されようと、カカシの遅刻は相変わらず続いている。
サクラが自分を疎ましく思っているという予測に、カカシは無性に落ち込んでしまった。
「あの・・・サクラ」
「何?」
ナルトやサスケがいないことを確認し、カカシはこっそりサクラを呼び止めた。
聞くのは、今しかない。
「サクラ、俺のことどう思ってる?」
「えっ・・・・・・」
とたんに黙り込んだサクラに、不安はさらに深まっていく。
「先生でしょうーーー!!俺はサクラの大事な担任の先生じゃないの!」
「ああ・・・・そう、その通りよ」
カカシは思わずサクラの手を握りしめて喚いたが、気が抜けたような返事をされる。
サクラにしっかり「先生」と認識されていないと思うと、妙に悲しい。
サクラの頬が赤いことも、その意味も、今のカカシには全く気づけないことだった。
あとがき??
一応、サク→カカでした。(^_^;)
元ネタは時計野はり先生の『お兄ちゃんと一緒』。
正お兄ちゃんとさくらが、カカシ先生とサクラに見えてしょうがないです。(笑)
名前もさくらとサクラだし。
(おまけSSシリーズ292)『伝説』
「大丈夫よ、これくらい何ともないわ」
「駄目駄目、傷口が化膿したら大変だよ!」
任務終了後、サクラの腕にすり傷を見つけたカカシは、有無を言わせず怪我の治療を始めた。
サクラとしては、いつものようにサスケを追いかけたかったのだがもはや彼の後ろ姿は見えない。
仕方なく傷薬を塗る手元を見つめていたサクラは、突然しゃがみ込んだカカシを怪訝そうに見やる。「え、何?」
「負んぶしてあげる。家まで送っていくよ」
「えーー、な、何で!!?怪我をしたのは、腕でしょう」
「でも、傷から入り込んだバイ菌が足に影響するかもしれないし」
「・・・・・はあ」
わけが分からなかったが、楽をして帰れるのだからサクラにしても悪い話ではない。
サクラが素直に背中に負ぶさると、カカシは彼女の家とは反対方向を目指して歩き出した。「先生、うちに行くのはあっちの道よ」
「いいじゃない、ちょっと散歩しても。何か用事あるの?」
「ないけど・・・・」
いつになく強引なカカシに、サクラはひたすら首を傾げている。
どこに連れて行かれるのかと思ったが、橋を渡って土手を歩き、少々遠回りしただけだ。
一体何をしたかったのか、サクラには全く理解できなかった。
「はい、恋愛運がアップする、ボージョボー人形」
「有り難う」
植物の実やココナッツの繊維で出来たその人形を、サクラはまじまじと見つめた。
近頃願い事が叶うと評判の人形で、いのがサクラの分も購入してきたのだ。
「この前の魔法の水晶は、全然効かなかったわよね・・・」
「でも、今回は絶対よ」
おまじないや、占いのグッズに凝っているいのは、サクラに太鼓判を押した。
どこに根拠があるのかは不明だが、サクラはそれを大切に鞄にしまい込む。「今度こそ、好きな人と両想いになるのよ!」
息巻くいのの言葉を聞きながら、そのときサクラの頭に浮かんだのはカカシの顔だった。
「・・・・あれ」
「何、どうかした?」
「ううん、何でもない」
返事をしながら、サクラは顎に手を当てて考え込む。
好きな人。
このキーワードで何故カカシの顔が過ぎったのか、自分でも謎だ。
「ま、本当はこんなグッズより、もっと協力なジンクスがあるんだけれどねぇ・・・」
「何」
「赤い橋の伝説。あそこを好きな人をおんぶして渡るとその男女は絶対に結ばれるって話よ」だが、いのが憧れの人であるサスケを負ぶって橋を渡ることなど、十中八九ない。
同じ班のサクラであっても、今までそのような機会は一度もなかったのだ。
そして、伝説といわれる橋の名前を聞いたサクラは、昨日のカカシの不自然な様子を漠然と思い出していた。
「・・・ねえ、その伝説って上忍の先生も知っていたりするかな?」
「知ってるんじゃない?昔からある話で、有名だし」
あとがき??
今度はカカ→サク。
よほど強力な伝説のようで、早くも効果が出てきている様子。
元ネタは『木更津キャッツアイ』!
(おまけSSシリーズ293)『高天原 1』
神々が住む天上界。
その中で一番位の高く、全てを創造したのが“火影”と呼ばれる者だ。
先頃嫁をもらい、子供が生まれたという話は、神々の間に伝わっている。
北風の神であるカカシが地上での仕事を終え、彼に会いに行ったのは季節が春になった後のことだった。
火影の息子ナルトは親によく似た金色の髪の少年で、始終周りを走り回っている。
たまに雲の切れ間から地上に落ちるため、たびたび迎えに行っているらしい。
「やんちゃな子でねぇ」
苦笑しつつも、ナルトのことを語る火影の表情は優しい。
彼に挨拶に来たカカシだったが、彼の家に入るなり、気になったものが一つあった。
「火影様、あれは何ですか?」
「ああ、あれはナルトのお嫁さんとして作ったんだ。もう少ししたら目が覚めると思うけれど」部屋の隅に置かれた、小さな光る玉。
桃色の玉は、時がくれば火影が望んだ姿へと変化する。
空にある太陽も、天上の雲も、地上の草木や海も、同じように火影が作ったのだ。
もちろん、カカシも火影の手によって光の玉から生み出された。「あれの名前は?」
「・・・・・・内緒」
振り向いてカカシの顔を見据えた火影は、悪戯っぽく笑う。
「あの子の名前はパートナーになる人しか知らないの。あとでナルトに聞くといいよ」
あとがき??
パラレル、パラレル。そのうち続き書きますよ。カカサク。
日本神話のイメージなので、みんな着物です。
神様は赤ん坊を通り越して、生まれたときから子供の姿らしい。
元ネタは『恋人は守護霊』。花命羅はどうも好きになれなかったんですが・・・。
(おまけSSシリーズ294)『カカシ先生と秘密の日記』
『今日は久しぶりにあの人の顔を見られた。やっぱり胸がドキドキvv』
『なかなか話しかけるチャンスがない・・・・。当分は遠くで見守るだけ』
『いつ見ても可愛いvもうメロメロvv早く仲良くなりたいな〜☆』
「・・・・・・・・・・・何、これ」
どうやら、片思いをしている相手について書きつづったらしい日記を眺めて呟く。
いのが怪訝そうにサクラを見ると、彼女は深々とため息をついた。
「カカシ先生の家で見つけたの。こっそり持ち出しちゃった」
「ええ!!」
「もう、ショックで・・・・・」
「そりゃ、そうよね」エリート上忍がこれほど低レベルな日記を付けているとは、想像もしていない。
納得気味のいのを横目に、サクラは再び吐息を漏らす。
「私に会う前に、こんなに熱烈に想っている人がいたなんて・・・・」
「えっ、驚くところはそこなの!??」
仰天するいのだったが、サクラの眼差しは真剣だ。
「日付を見たら、5年も前からつい最近まで、彼女のことばかり書いてあるのよ」現在、サクラはカカシの家に毎日のように入り浸る関係だ。
彼女への想いをちゃんと清算してからサクラと付き合いだしたのかどうか。
そこが問題だった。
“恋は盲目“という言葉を噛みしめながらページを捲っていたいのは、ある一文にはっとなる。
『今日はあの人の写真をゲットvvこれで暫く会えなくても平気vここにも挟んでおこう』
日記に切り込みが入れられ、落ちないように一枚の写真が差し込まれていた。
「さ、さ、サクラ、これ!」
「えっ?」
いのの震える指先を見たサクラは、大きく目を見開く。
桃色の髪に赤いリボンをつけた、アカデミー入学当時のサクラがそこに写っている。
いのも一緒にいるが、中心はどう考えてもサクラだ。
隠し撮りらしく、視点はレンズには向かっていない。思わぬ“あの人”の正体に、いのは何と言葉をかけたら分からず、サクラを見やる。
年端の行かぬ少女を恋慕するなど、絶対に変だ。
さらに、日記の文章はストーカーじみていて恐ろしい。
「さ、サクラ・・・・」
「なんだーー、安心しちゃったー」
不安げないのとは対照的に、サクラは満面の笑みを浮かべて日記抱きしめた。
「そっか、先生、そんなに前から私のことを・・・・」
「えっ、感動するところなの、これ!!!?」いのの理解の範疇を越えている。
しかし、サクラは先ほどとはうって変わって幸せそうな表情をしているのだ。
幸福とはその人の考え方次第なのかもしれないと、しみじみ思ったいのだった。
あとがき??
うちのカカシ先生は、暗部時代からサクラのファンです。(^▽^;)
サクラの赤子時代からストーカーしていたかもしませんよ。
(おまけSSシリーズ295)『心残り』
扇の国は、その昔、うちは一族が木ノ葉隠れの里に移り住む前に暮らした場所とされている。
里から山を4つほど越えたところにあるその国に、サスケは以前から興味を持っていた。
いわば、自分のルーツともいえる場所だ。
うちは一族が去ったあとは残る人々が国を維持しているが、荒廃の一途をたどっているらしい。
火の国が支援をし、木ノ葉隠れの里が復興に協力する話を申し出た際、サスケに依頼が来たのは偶然ではなかった。「どうかしたのか?」
浮かない表情で黙り込んだサスケに、火影である綱手は怪訝そうに訊ねる。
「前から先祖の住んでいた場所を見てみたいって言っていただろう。一緒に行く班員はお前が選んでいいんだぞ」
「・・・・はい」
綱手は確認するように言ったが、サスケは暗い返事をするだけだ。
綱手の言葉のとおり、扇の国には行ってみたい。
一度行けば里に戻るのは何年先か分からないとはいえ、やりがいのある仕事だと思っている。
それなのに、サスケは綱手の心遣いに対して、何故か快い返答をすることが出来なかった。
「何だ?」
何が引っかかるのか分からないまま、火影の執務室を出たサスケは自問自答する。
行きたいのに行きたくないという、相反する気持ちが交錯していた。
理由は何だろうか。「サスケくーーん!!」
悶々と悩むサスケに駆け寄ったのは、廊下で彼が出てくるのを待っていたサクラだ。
「ねえねえ、今日はお寿司を食べに行きましょうよ。回ってるやつ!」
「そんな安い寿司は嫌だ」
「えっ、でも、サスケくんのおごりだし、高いところだと悪いじゃない」
「何で俺がお前におごること前提なんだ」不満げな顔で振り向いたサスケは、そのままサクラの顔をじっと見据えた。
答えが、彼女を見ているうちに分かってきた気がする。
「な、何、私の顔に何か付いてる?」
「・・・・寿司よりもっと良い物を食べさせてやる」
扇の国に“トリュフ”と呼ばれる珍味があることは、何かの資料で見て知っていた。
独特の芳香があり、高級料理で珍重されているということだ。「サスケくんが、何か美味しいものを食べさせてくれるらしいのよー」
休日を利用し、家に遊びに来たナルトにサクラは興奮した面持ちで説明する。
「わざわざ山を4つ越えて食べに行くらしいわ。トリュフって名前のキノコなんだって!」
「へぇ・・・・」
茶をすするナルトは、サクラの勘違いをあえて訂正しなかった。
サクラは、サスケの申請によってすでに扇の国を助力するメンバーに入っている。
一度行けば帰るのはいつになるか不明だ。
しかし、サスケに「美味いものと食べに行く」とだけ説明されたサクラはまだそれを知らない。「離れたくないなら、ちゃんとそう言えばいいのにねぇ・・・「黙って俺に付いてこい」、とか」
せっせとリュックに旅行用の荷物を詰め込んでいるサクラを横目に、ナルトは小さな声で呟く。
また、“美食ツアー”という名目に騙される方もどうかと思ってしまうナルトだった。
あとがき??
山を4つも越えて美味いものを食べに行こうとしているサクラちゃんも凄いと思います。(笑)
ちなみに、17歳設定でした。(サクラ、一人暮らし中)
281〜295まで載せてみました。
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