(おまけSSシリーズ311)『花とアリス』
「じゃあ、罰ゲームはサスケに決定ねー」
「・・・・」
サスケはやや不満げにカカシが見たが、仕方がない。
手裏剣投げのテスト、一番成績の悪かった者が罰ゲームと最初から決めていたのだ。
「カカシ先生、サスケくん今日はちょっと熱があって本調子じゃないのよ」
「問答無用。体調管理も忍者の大事な仕事です」
必死にかばおうとするサクラを無視して、カカシは辺りに咲いていた花を取ってサスケの髪にさす。
「午後はこのままでいることー」年中ふてくされたような顔をしているサスケと花は何ともミスマッチな雰囲気だ。
ほんの悪戯心だったというのに、サスケの顔を見た三人は無言のまま視線を合わせた。
「・・・・・何だよ」
不安になったサスケが問いかけても、誰も何も言わない。
熱があるためか、潤みがちな瞳に赤い頬と唇、そして髪飾りのような白い花。
おそろしく似合っている。
美人は何をしても様になるのだということを、三人は改めて実感していた。
「・・・・先生、やばいわよ。あんな姿でうろうろしたら、確実にどこかの変態に襲われるって」
「だってばよ」
「んー、あいつは絶対女に生まれるべきだったなぁ。もったいない・・・」
「おい、何なんだよ!」
自分に背を向けてひそひそ話をする3人に、サスケは大きな声で訊ねる。
「大丈夫よ、サスケくん。私が守ってあげるからね!」
振り向いたサクラにいやに力強く言われたが、サスケには全くわけが分からなかった。
あとがき??
珍しく坊ちゃん総受けっぽく。坊ちゃん好きですよ。
(おまけSSシリーズ312)『トラウマ』
「朝から痴漢に会っちゃったわよー。人通りの少ない道で突然後ろから抱きつかれて。最悪!」
「えっ、大丈夫だったの!?」
「顔面グーでパンチして反撃したわよ。ボコボコにして警備隊に突き出しておいたわ」
「へー・・・」
勇ましく語るサクラに、ナルトはやや引きつった笑いで応える。
「今までも、痴漢に会ったことってあるの?」
「ああ、小さかった頃はしょっちゅうだったわよ。今ならぶん殴ってやったのに」
過去の出来事を思い出したサクラは、怒りがぶり返したのか、思わず握りこぶしを作った。
今よりだいぶ大人しい性格だったサクラは、ただ怯えるだけで泣くことも出来なかったのだ。「体を軽く触られるくらいだったけどねー。なんだか動物のお面をかぶっていて、肩の出た服を着ていたわ」
「・・・・・その痴漢男は、白っぽい髪で後ろに刀を背負っていなかったか?」
後ろにいたサスケが問いかけると、サクラは目を丸くして振り返る。
まさに、そのとおりの特徴の男だった。
「何で知ってるの!?」
「いや・・・・」犯人はすぐ近くにいるということを、サスケは黙っておくことにする。
カカシの言う、チームワークを大切にするには仕方のない決断だった。
あとがき??
暗部×幼サクラ。
サクラが暗部衣装を知らない設定でした。
(おまけSSシリーズ313)『九尾』
「先生、これってナルトなの?」
サクラが指差したものは、里を半壊させた恐ろしい九尾の妖狐の絵だった。
里の歴史について書かれた本の挿絵だ。
禍々しい絵姿の妖狐が里に残した爪痕は深く、10年以上経った今も恐怖の代名詞となっている存在だった。
「どうしてそう思う?」
「夜中に目が覚めると、時々ナルトがこの九尾の姿になっていたの。もっとぬいぐるみみたいに小さいけど」
「・・・・・へぇ」
どっきりする発言をさらりと言うなぁと思いつつ、カカシはサクラの頭に手を置く。
「そうだって言ったら、どうするの?」いくつもの国を滅ぼしてきた恐ろしい化け狐。
同じ班の仲間として、いつかは分かってしまうことかもしれない。
サクラは少しは怯えた様子を見せるかと思ったが、「べつに、どうもしないわよ」と言っただけだった。
「ナルトはナルトだし、私が守るもの」
「・・・サクラちゃんってば」
つんけんした態度で通り過ぎようとしたサクラを、カカシは後ろから抱きしめる。
「可愛いねーーーv」
「何も出ないわよ・・・・っていうか、離してよ!」ふてくされるサクラは、図書館での他の人目を気にしつつ、カカシの腕をぎゅっと握る。
ナルトもサスケもカカシも、大事な仲間で失いたくない。
自分より長く忍びの世界にいるカカシの方が、そうした思いは強いかもしれないと思った。
あとがき??
サクナルでカカナルでカカサク。とにかく7班ラブなのです。
ナルトが里をでていったあたり。
寝ている間に本性が出てくるのは『チキタ☆GUGU』のネタ。
(おまけSSシリーズ314)『食べちゃいたいくらいに』
「私、あいつ嫌い!」
カカシの家でくつろぐサクラは、腹いせにクッションに拳をぶつけて言う。
「あいつって?」
「サイよ」
振り向いたサクラは、ソファーに腰掛けて本を読むカカシを睨み付けた。
「ナルトや私のこと馬鹿にしてる感じだし、それに・・・」
「それに?」
「私のこと、ブスって言ったのよ!!」
クッションをカカシに投げつけたサクラは思わず金切り声をあげる。
今まで、同じ年頃の少年に面と向かってそのようなことを言われたことは一度もなかった。
ひどい侮辱だ。「そっかー、サクラってば「可愛い」って言われたいのかー。可愛いなぁ」
サクラの憤りを受け流すカカシは、本から目を離すと、笑ってサクラの頭を撫でる。
「サクラ、可愛い、可愛い、可愛いv」
「・・・・」
まだ眉間に皺は寄っているものの、サクラの怒りは段々と静まっていく。
サイのことは気にくわないが、彼の言葉よりカカシの言葉の方がサクラには何倍も価値があった。
「ほらほら、サクラは笑っている顔の方が可愛いよー」
優しい笑みを浮かべたカカシは、両手で彼女の頬を包んで額にキスをする。
これではいくらサクラでも怒ったままではいられない。
「もっと」
「んー・・・」
自分から腕を巻き付けたサクラは、カカシと唇を重ねると勢いでソファーへと押し倒した。
舌を絡め服の上から体を触って彼の体臭を深く吸い込む。
「先生ー、このまま強姦しちゃってもいい?」
「・・・・機嫌、なおったのね」
いつもと形勢が逆転し、サクラの顔を見上げる立場になったカカシは、困ったように笑った。
あとがき??
サクカカもカカサクも大好きです。
これはいつなんだ、と突っ込まないように。
サクラのモデルはチキタに出てくるラーですね。クマのときの。
(おまけSSシリーズ315)『ナスガママ』
「兎にしてくれないとイヤ」
「はいはい」
カカシの要求通り、フルーツの籠から林檎を取りだしたサクラはそれを兎の形にしていく。
写輪眼を使いすぎては、倒れて病院に運ばれるカカシ。
サクラが病院で付き添いをするのも、これで何度目か分からない。
「食べさせてー」
林檎の入った器を差し出すと、甘えた声で言われる。
「口移しで」
「・・・・・・・・・・」
「冗談です」
サクラの冷ややかな眼差しが効いたのか、カカシはしょんぼりと肩を落とした。
看護士が相手だと人形のように大人しいらしいのだが、彼女には想像が出来ない。
サクラが一緒にいるときは、とにかくいろいろなことを頼み、我が儘放題なのだ。
「そろそろ帰るわよ」
「えーー。もうちょっとゆっくりしていきなよ」
「ヤマト隊長に修行を付き合ってもらう約束をしたの」
身支度を整えだしたサクラの一言に、カカシは眉をひそめる。
「近頃、ヤマトと行動することが多くない?」
「新しい術を習うためよ。里では彼にしか使えない技が沢山あるんだもの」
意気込むサクラの決意は固く、カカシが何を言っても聞きそうになかった。「修行も大事だけど、俺のこともちゃんと気にかけてよーー」
「毎日お見舞いに来てるでしょう!大体、先生がしっかりしないから代理で働く隊長が大変・・・」
「こんにちは」
口論を始めたとき、丁度話題となっている人間の声が割り込み、二人はぴたりと口をつぐむ。
見舞い用の花束を持って戸口に立つのは、カカシの後輩にあたる元暗部のヤマトだ。
カカシが休んでいる間の七班の隊長であり、ナルトやサクラも彼にはよく懐いている。「少し時間が出来たので。お加減は如何ですか?」
「おかげさまで。そろそろ退院出来そうだよ」
「それは何よりです」
話の合間、自分から離れヤマトにぴったりと寄り添うサクラの姿にカカシは顔を引きつらせた。
サクラがいかにも早く帰りたいといった様子でヤマトを肘で突いているところが、また気に障る。
「・・・・随分仲が良いんだね。サクラとは、プライベートでもそんなに親しいの?」
「ええ、まあ」
否定しろよ、というカカシの心の声など聞こえていないようで、ヤマトはにこやかな表情で先を続ける。
「カカシ先輩がまだ手を付けていなかったなんて、意外でした」
意味深な言葉を残して退出したため、病室で一人になったカカシはひどく狼狽していることだろう。
だが、廊下を歩く二人にはあずかり知らぬことだ。
「カカシ先生って、暗部にいた頃からあんなに喜怒哀楽激しかったんですか?」
「いや。無口で目つきの鋭い、“カミソリ”なんてあだ名が付いていたはずだよ」
「信じられない・・・・」
サクラは全く想像が付かないのか、難しい顔で考え込んでいる。
また、ヤマトにしても、憧れていた先輩と今のカカシではひどくギャップがあった。
傍らを歩く少女に翻弄されるような、軟弱な忍びではなかったはずだ。何か特殊な能力でもあるのだろうかと眺めていると、サクラはふいに顔を上げる。
明るい笑顔を向けられ、釣られて微笑んだヤマトはすでに自分が術中はまっていることに気づいない。
知らぬ間に心に入り込むこの笑顔が、一番のくせ者だった。
あとがき??
ヤマトさんとサクラが本誌で仲良しなので、ちょっとカカシ先生を絡めて書いてみる。
ヤマトさんの言葉は深読みしておいてください。
冗談だったんですが、カカシ先生は本気で動揺です。可哀相に。
これはいつの設定なんだ、と突っ込まないように。
(おまけSSシリーズ316)『下着ドロン』
3時間、4時間と遅刻するカカシのせいで、とにかく下忍達は暇を持て余していたのだ。
この日も集合場所で座り込む3人は、ぼんやりと空を流れる白い雲を眺めていた。
「あ、そういえば・・・・」
ごそごそと鞄を探ったナルトは、取り出した物を傍らにいるサクラに見せる。
「昨日、携帯電話を新しくしたってばよー。今度のはTVも見られるんだよ」
「へー、綺麗に映るのねー」
ナルトの手元を覗き込んだサクラは、意外に鮮明な画面に驚きの声をあげる。
サスケも気になったのか、二人の後ろからTVを見たが、丁度放送していたのは朝のニュースだった。近頃、木ノ葉隠れの里で下着泥棒が出没しているらしい。
そして、とある主婦が撮影したという、隠しカメラの映像が続いて流れる。
犯人は干してある洗濯物の中から下着を奪い、さらにはカメラに気づいてVサインまでして逃亡した。
ナルト達が驚愕したのは、口元を隠した犯人の顔の特徴だ。
「か、か、カカシ先生じゃないの、これ!!!」
「そっくりだってばよ!!!」
「・・・・・・だが、顔をマスクで隠しているから人相はよく分からないぞ」
「でも、この白髪といい、眠たげな目といい、傍若無人な態度といい、先生としか思えないってばよ!」
いきり立つナルトの言葉に、サクラは早くも涙ぐんでいる。
「前々から怪しい人だって思っていたけど、まさか下着ドロだったなんて・・・・・」
「おはよーーー」
カカシ犯人説で盛り上げる中、当の本人の声を耳にして皆は一斉に口をつぐんだ。3人が無言のまま振り返ると、カカシは頭をかきながらいつも通りの言い訳を始める。
「いやー、今日は道に迷ったおばーさんを・・・・」
「自首して!!!!」
全てを言い終えないうちに叫んだのは、涙で目を真っ赤にしたサクラだ。
「常備してる私の替えのパンツ。これ、あげるから早く警察に行って。お願い!」
「えっ?な、何??」
「先生、俺、先生が下着ドロでも嫌いになったりしないよ。だから、罪をちゃんと償って!」
「ええ??」
サクラにパンツを握らされたカカシは、今度はナルトに詰め寄られて頭を混乱させる。
ナルトとサクラが泣いて懇願する中、サスケだけは冷静にTVのニュースを最期まで聞いていた。
先ほどの映像が証拠となって、下着泥棒は捕まったらしい。
犯人は山田太郎(26)、マスクを取ると素顔はカカシとは似ても似つかない印象の男だった。
「ひどい侮辱だよーーー!!!」
「・・・・ごめんってばよ」
「・・・・反省しています」
騒ぎが収拾し、任務地へと向かう7班の面々だったがカカシはまだ不満を二人にぶつけている。
カカシを全く信用せず、ニュースを見るなり下着泥棒と決めつけていたのだから当然といえば当然だ。「俺ほど清廉潔白な人間はこの世にいないっての」
「その通りです・・・・」
何を言われても、ナルトとサクラは大人しく頷いている。
彼らの後ろを歩きながら、サスケは一つ気になることがあった。
サクラが無理矢理握らせたパンツ、カカシが返したところを見なかったが、あれはどうなったのか。
カカシに平謝りをしている二人を見ると、どうにも聞けない雰囲気だった。
あとがき??
どさくさに紛れ、ねこばばカカシ先生・・・。
元ネタは『時効警察』です。
しかし、NARUTOの世界に携帯電話はあるのかどうか。
パソコンはあったしなぁ・・・。でも水晶玉を使っていたり、よく分からない世界です。
(おまけSSシリーズ317)『ろりろりろ』
「先生ってばさ、最近、顔を会わせると必ず違うくノ一と一緒にいるのよ。美人ばっかり」
頬を膨らませて語るサクラに、いのはくすくすと笑う。
マスク姿が少々怪しくとも、エリート上忍であるカカシはよくもてた。
はたから見るとカカシはサクラに夢中なのだが、それでも心配らしい。
「仕事の話をしてるっていうけど、どうだかね・・・」
「大丈夫よー。カカシ先生ってロリコンだからサクラ以外の女に目がいかないってー」
「・・・・・やめて、変な慰め方するの」
さりげなく自分のぺたんこの胸に目をやったサクラは、さらに不機嫌になってしまう。
サクラも幼児体型という自覚はあったが、人には言われたくない。
「いらっしゃいませーー・・・あれ、カカシ先生?」
「えっ?」
花屋の店番をするいのに愚痴をこぼしていたサクラは、驚いて振り返る。
「あ、サクラー。やっぱりここにいたー」
噂されていたとも知らず、平和な顔で店に入ってきたのは確かにカカシだ。
そして、彼には小さな連れがいた。
「誰、それ。カカシ先生の隠し子??」
彼の傍らにいる少女に目をやったいのは、不思議な組み合わせに首を傾げる。
もちろん冗談のつもりだったが、サクラの顔ははっきりと強ばった。「やめてよ、いのちゃんー。これは同僚の娘。少しの間子守を頼まれてねー」
5、6歳と思われる金髪の少女はカカシに懐いているらしく、大人しく彼の手に掴まっている。
「お名前はー?」
屈んで同じ目線になったいのが訊ねると、少女はもじもじと恥ずかしそうにカカシの後ろに隠れる。
「・・・はな」
「はなちゃんっていうのね。可愛い名前ねーv」
微笑んだいのに釣られて笑うその姿は何とも愛らしい。
そして、彼女を見つめるカカシもこの上なく優しい表情だ。「先生ー、よく子守を任されてるのー?」
「うん。この前なんて、「お兄ちゃんのおよめさんになる」って言われちゃったー」
あははっと笑ったカカシだが、椅子から立ち上がったサクラは鋭い眼差しを彼に向ける。
「カカシ先生の浮気者ーーーー!!!」
「えっ・・・」
「やっぱり私より若い子の方がいいのね!もう、お別れよ」
涙声のサクラに怒鳴られたカカシはわけが分からず呆然としたが、彼女は構わず店から飛び出していく。
サクラがいなくなったあとも、何が起きたのか呑み込めなかった。
「な、な、何で??」
「・・・・タイミングが悪かったのよ」
数分後、火影の執務室へと駆け込んだサクラは、難しい表情で綱手の前に座っている。
彼女ならば、サクラの悩みを即座に解決することが出来るはずだ。「若返りたい!?」
「そうです!」
「・・・・・・・サクラ、いくつ?」
「13です!」
勢い込んで答えるサクラに、綱手は大きくため息をつく。
大事な愛弟子の願いを叶えたいのは山々だが、あまりも子供らしくない相談事だ。
「あと30年したら方法教えてあげるよ」
あとがき??
カカシ先生、ロリコンっていうより、サクラ好きーなだけなんですが。
(おまけSSシリーズ318)『人間誰しも・・・』
「もー、凄くショックよー」
「まあまあ。別にいいじゃない。他に女がいたわけじゃないんだし」
「でも、家が怪獣屋敷なのよ。百年の恋も冷めるわよ」
暗い面持ちでサクラに訴えるのは、彼女の古くからの親友だ。
近頃、付き合い出した恋人の家に行った際、彼の以外な趣味を知ってしまったらしい。
ウルトラ怪獣のオモチャ集め。
大きな物で等身大、小さな物でお菓子のおまけと、種類は様々だ。
顔と性格が良いだけに、たった一つの欠点がよけいに大きなものに感じてしまう。「あの量は異常よ!足の踏み場もないし、怪獣の話をするときの彼の幸せそうな表情といったら・・・」
「人間、誰しも変態的な部分は持ち合わせているんだって。マザコンやギャンブル好きよりマシよ」
「そうかなぁ・・・・・」
「うん」
しっかりと頷いたサクラは、先ほどからしきりに時計を気にしている。
親友の悩みを聞くため、喫茶店に立ち寄ったサクラだが実は彼女の話は殆ど頭に入っていなかった。
つい先ほど、憧れのサスケから家に来るよう連絡があったのだ。
同じ班で活動しているとはいえ、そうしたことは今までない。「じゃあ、私、そろそろ・・・・」
「もう帰るの?付き合い悪いわよー」
「大事な用事なの。ごめんね」
不満げな友人を残し、紅茶の代金を払ったサクラはいそいそと店を後にする。
滅多にない、サスケに取り入るチャンス。
これを逃す手はなかった。
「こんにちはーー」
「遅かったな」
さっそく彼の家を訪れ、満面の笑みを浮かべたサクラはそのまま体を硬直させる。
サスケが仏頂面なのはいつものことだ。
問題は首から下、身につけている服の方だった。
「・・・何だ」
「いえ、別に」
女学生が着る、セーラー服姿のサスケに訊ねられ、サクラは慌てて首を振った。
目の錯覚かと思ったが、どう見てもサスケはセーラー服を着ているのだ。『人間、誰しも変態的な部分は持ち合わせているんだって』
先ほど自分が口にした言葉がぐるぐると頭の中を回り、サクラはごくりと唾を飲み込む。
これが、彼の部屋着だからといって、何なのだ。
中身はサクラの愛するサスケ、それが大事に決まっている。
外で普通の格好をしてくれるなら、何の問題もなかった。「これ、お土産。サスケくん、甘い物嫌いだからお煎餅の詰め合わせよ」
「・・・・ああ」
あがるよう促され、サクラは心の中で「平常心」と唱えながらスリッパを履く。
もう一度確認したが、サスケが着ているのは間違いなくセーラー服と白い靴下だった。
サスケと目が合い、サクラは多少引きつりながらも笑顔を浮かべる。
女装と怪獣マニア、冷静に考えて、どっちがマシな趣味だろうか。
「・・・・何か、突っ込んでくれないと、逆に辛いってばよ」
「事情を説明も出来ないよな」
こそこそと天井裏から様子を見守るナルトとカカシは、セーラー服姿のサスケに同情しながら言葉を交わす。
トランプのばばぬきで負けたサスケへの罰ゲーム。
それが、セーラー服姿でサクラと会うことだった。
これでサスケに幻滅すれば、サクラは自分達にも注意を向けるかもしれないと考えてのことだ。
しかし、サクラのサスケへの愛はナルトやカカシが思った以上に深いものだったらしい。「サスケくん、その服可愛いわねー」
「そうか?」
にっこりと微笑んだサクラにはもはや迷いの色はない。
サスケならば、何でも許す。
サクラの心の葛藤を知らず、セーラー服のサスケは自分の体を見つめてしきりに首を傾げていた。
あとがき??
元ネタは『時効警察』でした。
(おまけSSシリーズ319)『小さくとも夢はある』
発売されたばかりの週刊誌『木ノ葉通信』を眺め、サクラは深々とため息をつく。
あまり信用出来ないゴシップ関係が主なネタで、先週は雪山に暮らす半漁人について詳しい記事を掲載した。
そして今週はエッセイを発売し、テレビ番組でも引っ張りだこの嘉納姉妹の特集だ。
サクラはとくにこの姉妹のファンというわけではない。
雑誌を購入して熱心に見ていたのは、彼女達のボディーガードとして木ノ葉隠れの忍びが雇われたからだ。「・・・・ちょっと、くっつきすぎじゃないの?」
カメラに向かって微笑む姉妹の写真の隅に、目当ての人物を確認しサクラは不満げに呟く。
ボディーガードの任務に就いた忍びは3人ほどいたが、その中でも姉妹のお気に入りはサスケらしい。
芸能人との付き合いの多い彼女達にしても、サスケの整った顔は目を引くもののようだ。
任務の時間外も姉妹に引き留められているという噂を聞いてしまっては、サクラも気が気ではなかった。
何しろ姉妹は抜群のスタイルとゴージャスな装いで男心を引きつける達人だ。
ボーリングの玉のような豊満な胸を押しつけられれば、どんな男性でも参ってしまうに違いない。
「どうせ私はぺったんこよーーー!!!」
「ちょっと、静かにしてよね」
『木ノ葉通信』を破り捨てて絶叫するサクラに、いのは迷惑そうに忠告する。
たまたま客足が途切れたから良かったが、花屋の店内で喚かれては営業妨害以外の何ものでもない。
「でも、聞いてよ。サスケくんってばもう三日も電話してくれないし」
「元々そんなに連絡してこない方でしょう。忙しいのよ」
「嘘よ。きっと私より巨乳が良くて、あの姉妹に飼い慣らされているのよ。もう帰ってこないわー!」
サクラはそのまま泣き崩れ、いのは「これは駄目だ」とばかりに首を振る。
胸にコンプレックスを持つサクラは、姉妹の巨乳を過剰に意識しているのだ。
仕事の手を休めてサクラの頭を撫でていたいのは、店先に感じた気配に振り返った。「いらっしゃ・・・・ああ、サスケくん」
「えっ!」
涙を拭いたサクラが慌ててその方角を見ると、確かにサスケが立っている。
思わず微笑みそうになったサクラは、何とか頬を引き締めて顔を背けた。
「お帰りなさい」
「・・・ただいま」
「仕事は無事に終わったの?」
「ああ。契約期間が過ぎたから、今日でお役ご免だ」
いのの用意した椅子に腰掛け、サスケは淡々とサクラの疑問に答えていく。
美人姉妹に嫉妬しているサクラは終始棘のある口調だったが、彼がそれに気づいている様子はない。
「サスケくん、木ノ葉の忍びなんか辞めてずっとボディーガードをやらないかって、誘われなかった?」
「よく知ってるな」
いのが面白半分に訊ねると、サスケは驚いたように片眉を上げる。
仰天したサクラは、すねていることも忘れてサスケに向き直った。
「こ、断ったの!!?」
「断らないとここにはいない」
「何で断ったの!?」
「・・・・何でって、何がだ」
サクラの質問の意図を測りかね、サスケは訝しげに首を傾げる。
訊き返されたサクラはどう言えばいいか分からず、もごもごとくぐもった声で先を続けた。
「だって、綺麗じゃない、嘉納姉妹って。ずっと一緒にいたいとか思わないの?胸だって大きいし」
「サクラの胸以外は触りたいと思わない」サスケの返答のあと、花屋の店内は沈黙が続いた。
最初に口を開いたのは、顔を耳まで真っ赤にしたサクラだ。
「そ、それならちゃんと電話してよね!!!馬鹿!!」
声を張り上げて言うと、サクラは脱兎のごとく店から飛び出していく。
何故怒鳴られたか分からないサスケは、心底不思議そうな顔つきでいのを見やった。
「何か、怒らせるようなことを言ったか?」
「すぐ戻ってくるわよ。照れてるだけだから」
あとがき??
すでに付き合っているらしいサスサク。
17、8歳のイメージでした。
うちの坊ちゃんはなかなか本音を口にしないので、たまに正直になるとインパクトありますね。
(おまけSSシリーズ320)『マイナスA』
「お前の遅刻癖を治すいい方法を思いついた」
「・・・・はあ」
「結婚しろ。そして、かみさんに起こしてもらえ」
言うが早いか、机の上に見合い写真が広げられた。
暗部時代の先輩の家に呼び出されたカカシは、その用件を聞くなり表情を暗くする。
周囲に必ず、こうしたお節介をする者が一人はいるものだ。
カカシは二親を早くに亡くしているため、よけいに「自分が何とかしなければ」と思っているのだろうか。「ちゃんとお前の好みを考えてさがしたんだぞ。まあ、見てみろ」
「・・・・はあ」
気の抜けた返事を繰り返し、カカシは渋々ながらその写真に目をやる。
そして、「あっ」と声をあげたまま、硬直したように動かなくなった。
定番の着物を着た見合い写真ではなく、日常風景を写したスナップショットだ。
彼女の顔を、カカシはよく知っている。
カカシの愛読書『イチャイチャパラダイス』が映画化された際の、主演女優にうり二つ。「お前、こういうのが好きなんだろ」
「はい・・・」
E、いや、Fカップはあると思われる胸元を眺めていたカカシは、しっかりと頷く。
イチャパラはストーリーも感動的だが、ヒロインである彼女もまた魅力的に描かれているのだ。
カカシの中で、まさに理想の女性といっていい存在だった。
「先生にさー、目覚まし時計100個買ってプレゼントしたらどうかな」
「・・・全部セットしてあげても、遅刻するような気がするわね。何となく」
いつもの集合場所で、いつもの会話を繰り返す。
視線を合わせたナルトとサクラは、大きくため息をついた。
まだ1時間しか経過していないのだから、あと4時間は待たされるはずだ。
サスケは諦めきった様子で座禅を組み、瞑想にふけっている。「段々サスケくんが悟りを開いたお坊さんに見えてき、ギャーーーーー!!!!!」
「サクラちゃん?」
突然大声を出したサクラに驚いたナルトだったが、その理由はすぐに分かった。
サクラの背中にカカシが張り付き、手はしっかりと彼女の胸を掴んでいる。
セクハラ行為は許せないが、それよりも、カカシが一時間の遅刻でやってきたことに驚いてしまった。
「先生、どうしたの!??」
「っていうか、ナルト、助けなさいよ!!」
「サクラー、お見合い相手がFカップだったのよ。でも、断っちゃったのよー、あー、もったいない」
「・・・・はあ、それで?」乳を揉まれるサクラは額に青筋を浮かせたが、どのみち抵抗しても上忍にはかなわない。
話を最期まで聞いて自由になるしかなかった。
「Fカップより、サクラのマイナスAカップの方がいいなーって思っちゃったの。やっぱりこれじゃないと」
「・・・・・・・・・褒めているんですか、けなしているんですか」
「愛しちゃってるんです」
あとがき??
サクラはちっこいままで良いんです!
乳ネタが続きました。
(おまけSSシリーズ321)『サクラの魅力』
「サクラには半径1メートル以内に近づかないこと。お触りも禁止。分かった!?」
「・・・・・はい」
「何、今の間は!!!気になるじゃないの。ちゃんと返事してよ」
「分かっていますよ。それより、しっかり休んで早く元気になってくださいね」
目くじらを立てるカカシに、ヤマトはうんざりした様子で言う。
カカシの言い分に呆れたため返事が遅くなったのだが、これ以上勘ぐられるのはご免だ。
カカシが入院している間の、代理の班長の勤め。
見舞いに行くたびに、カカシがよけいな口出しさえなければ、もっと楽に仕事が出来そうだった。
サクラは確かに可愛い外見をしているが、TVを付ければそれ以上に魅力のあるアイドルが沢山いる。
カカシが何故そこまで彼女に熱中しているのか、ヤマトには全く分からない。
思えば、同じ班のナルトもサクラには片思いをしていたはずだ。
一体、彼女の何がそこまで他人を惹き付けるのか。「ヤマト隊長」
傍らを歩くサクラに声を掛けられ、ヤマトは思考を中断させる。
「午前中に病院行って来たんですよね。カカシ先生、どんな感じでした?」
「君に近づくなって言われた」
「えー??何ですか、それ」
首を傾げたサクラは、くすくすと忍び笑いをもらす。
冗談だと思っているのだろう。
「サクラ」
「はい」
「君が勉強熱心なのは認める。だけれど、この術を君が習得できる可能性は殆どゼロだ。それでもやるのか」
「はい」
全く躊躇せず、サクラは返答する。
サクラが必死に頼み込み、ヤマトが渋々付き合うことになった木遁の術の修行。
彼女は仲間であるナルトのために、何としてもこの術をマスターしたいらしい。考えてみれば、彼女が医療忍者となるための修行を始めたのも、サスケを連れ戻すためだった。
普通の人間ならば5年以上かかるといわれる治癒の能力を2年と少しで身につけ、解毒術にも精通している。
才能もあっただろうが、彼女の努力のたまものだ。
そして今また、サクラは木遁の術も会得したいと願っている。「君はいつも、人のためだな」
「えっ」
「ナルトのために、サスケのために。頑張りすぎじゃないのか」
驚いて顔をあげたサクラに、ヤマトは本音を吐露する。
年頃の少女というものは、もっと自分のことで忙しいのだと思っていた。
おしゃれをして、遊びに行って、友達とお喋りをする。
忍びとしては優等生だと思うが、サクラは出来すぎだ。
不思議そうに首を傾げていたサクラは、やがて口元に薄い笑みを浮かべてヤマトを見つめた。
「人のためじゃなくて自分のためですよ、全部」
「・・・・サクラ」
「サスケくんを追いかけるのも、ナルトを守るのも、全部私の願い。二人と一緒にいたいからです」
サクラはくすりと笑って言葉を繋ぐ。
「私はきっと我が儘なんです。仲間が一番大切で、他のことは目に入らなくなっちゃう」
ナルトがいて、サスケがいて、カカシがいる、あの幸せな光景を取り戻したい。
そのためならば、何だって出来る気がした。
そして、新たに班のメンバーとなったヤマトも、サクラにとっては大切な存在だ。
「もしヤマト隊長がサスケくんみたいにいなくなっても、私は捜しますよ。絶対に」強い意志のある瞳で見つめられ、ヤマトは少しだけ表情を緩める。
物凄い殺し文句だ。
こんな風に思われて、悪い気のする人間がいるはずがない。
天涯孤独の身の上ならば、よけい言葉の一つ一つが身にしみる。
「サクラがいなくなっても、みんな、捜すよ。絶対に」
サクラの口調をマネして言うと、彼女の顔が一気に綻ぶ。こうして見ると、嬉しそうに微笑む姿は確かに、TVのアイドル顔負けかもしれない。
表面的な笑顔ではなく、内面からにじみ出る素直な表情だからだろうか。
誓いを破り、サクラの頭を撫でたことは、カカシには内緒にしようと心に決めたヤマトだった。
あとがき??
好評だったので、ヤマサクをもう一つ。
本誌のヤマトさん、好きすぎです!!!カッコイイよーー。
(おまけSSシリーズ322)『ニューヨーク恋物語』
ヤマトがカカシ班を率い、温泉宿に滞在していたときの出来事だ。
宿で働く人間と立ち話をして部屋に戻ると、ナルトがサクラにボコボコに殴られていた。
その理由は聞かずとも分かる気がするが、ヤマトは二人を横目で見つつサイに問いかける。
「・・・・何があったんだ」
「女湯を覗いたのがばれたようです。せっかくの忠告が無駄でしたね」
部屋の隅を陣取り、スケッチブックに筆を走らせるサイは淡々とした声音で言った。
額を押さえてため息をつくヤマトは、ナルトの息の根が止まる前に仲裁しようと心に決める。
今のサクラは鬼神もかくやという形相で、どうにも割り込む勇気が無い。
綱手仕込みの怪力はヤマトにとっても脅威なのだ。「も、もうしないってばよーーー」
頬を腫らしたナルトは浴衣の前あわせを掴んで離さないサクラに弱弱しい声音で謝っている。
「当然よ!!あんた、まさか自来也さんと旅をしていたとき、いつもこんなことしていたの!」
「してないよ!」
目を細めて問い詰めるサクラに、ナルトは反射的に答えた。
その勢いに驚いて目を瞬かせたサクラを見て、ナルトは伏し目がちに呟く。
「今日だって、サクラちゃんが入っていなきゃ興味なかったってばよ」
「ナルト・・・」
ようやくナルトから手を離したサクラは、怪訝そうにその顔を覗き込んだ。
「お風呂なら前から何度も一緒に入ってるじゃない。何でわざわざ女湯を覗いたりするのよ」
おかげで、自分以外の女の裸も見たかったのかと、誤解してしまった。
「やっぱり、ほら、旅先だとまた雰囲気違うし、遠目で見るのもいいかと思って」
「馬鹿ねぇ・・・・」
呆れてしまったサクラだが、正直に胸の内を話したナルトに少しだけ機嫌が直っている。
この分ならば、夕食の前には殴られて出来た傷を治癒の術で治してもらえることだろう。
「・・・・・予想外の展開なんだが」
「そうですか?前からラブラブだったじゃないですか」
「うーん」
唸りながら傍らに目をやったヤマトは、サイの手元のスケッチブックを見るなりハッとなる。
彼が先ほどから熱心に描いていた絵が完成しつつあった。
墨の濃淡だけで描かれた絵だが、それはヤマトがこれまで見たどの絵画より完璧な人物画だ。
温泉の湯に太ももまで浸かったサクラの絵は、今にも動き出しそうなほど生き生きとしている。
もし絵の具を持っていたら、彼は桜色になったサクラの肌の色まで再現していたかもしれない。
「お前も覗いていたのか?」
「彼のように見つかるようなヘマはしませんが」
最後の一筆を描き終え、スケッチブックを眺めていたサイはふいに顔を上げる。
「他にも何枚か女湯でのサクラさんを描きましたが、見ますか?」
さらりと訊ねるサイに、うっかり頷いてしまっていたヤマトだった。
あとがき??
なんでしょうか、これ。カカシのいないカカシ班のサクラ総受け?
うちのナルトは12の頃からサクラと普通に風呂に入る関係ということで、お願いします。
ちなみに、本当にただ一緒に入っていた、だけですので。
ああ、タイトルはニューヨークで入浴・・・・。
(おまけSSシリーズ323)『平成よっぱらい研究所』
目が覚めると、見知らぬベッドに横になっていた。
頭をかきながら半身を起こしたカカシは、調度品から女性の部屋と判断しながら、昨夜の記憶を反芻する。
上忍仲間と飲み屋をはしごし、家に帰るのがおっくうで、近くにあったナルトの家に泊まろうと考えたのだ。
だが、ここはどう見てもナルトの部屋ではない。
忍びとしての装備は外されていたが、服は身につけている。
どうしたものかと考えていると、玄関の鍵が開く音がして住人が扉を開けて入ってきた。「あっ、カカシ先生、起きたんだー」
「サクラ!」
靴を脱いだサクラがにこにこと笑顔で近づいてくるのを見て、カカシは再び周りを見回す。
「ここ、サクラの家だったのか。そういえば、一人暮らしを始めたって聞いたような・・・」
「そうよ。ちなみに隣がナルトの家。突然夜中に玄関の扉を叩かれて、飛び起きたわよ」
「・・・・・悪い」
間違えて隣の家に押しかけたようだが、幸い知り合いが住んでいて良かったとカカシは胸をなでおろす。
いや、これは本当に良かったという状況だろうか。
カカシの記憶は、この建物の前に来たところでぷっつりと途切れているのだ。「あの・・・、俺、何か変なことしたり、言ったり、しなかった?」
「もー凄かったわよーー。なんだかよく分からない歌を繰り返し聴かされて、やめてくれないんだもの」
「・・・はあ」
「それから突然服を脱ぎだして、私にキスしてきた。私、嫌がったのに、強引に・・・」
「嘘!!!」
「嘘です」
目を丸くしたカカシに真顔で答えたあと、サクラはくすくすと笑った。
「服を脱ごうとしたのは本当。だから、ベッドまで連れて行って寝てもらったの。先生、お腹痛くない?」
「・・・・そういえば」
カカシが服の裾をめくって腹を確認すると、アザが出来ている。
どうやらサクラに一撃をくらって気絶し、そのまま熟睡してしまったらしい。
なんとも情けなかったが、無理やり押しかけたのだから、サクラに文句は言えなかった。
「昨日まで師匠に命じられて里の外に出ていたから、冷蔵庫が空なの。今、コンビニで朝食買ってきたわ」
サクラは食事の入っているビニール袋をカカシに見せる。
「顔洗ってきてよ。一緒に食べよう」
「・・・うん」
闖入者にベッドを占領されたため、サクラは床で眠ったという話を聞いてカカシは心から反省していた。
おむすびと即席の味噌汁で朝食を取りながらひたすら謝罪するカカシに、サクラは苦笑いだ。
「もういいってば。私も少し良いことがあったし」
「えっ」
「先生の素顔、見ちゃった。寝顔が可愛かったわよv」
明るく微笑まれ、カカシは言葉に詰まる。
「可愛い」などと言われて喜べるはずがないが、サクラが嬉しそうにしているため、曖昧に微笑んでおいた。
「今度は素面のときに泊まりに来てよ。もう少しましなご飯用意するから」
鮭のおむすびをぱくつくサクラはさりげなく付け加える。
ワカメの味噌汁をすすっていたカカシは、椀を置いてサクラを見やった。
「・・・嘘」
「これは本当ー」
あとがき??
サクカカも好きー。サクラ16歳設定。ナルトの隣って、何だか良いな。
(おまけSSシリーズ324)『ニューヨーク恋物語 2』
12の頃は任務で里の外に出かけることがあっても、皆が一つの部屋で寝泊まりしていた。
現在ヤマト率いる七班は、温泉宿でサクラのみ個室を与えられ、女子として特別待遇だ。
サクラの寝顔を見ることも、どさくさに紛れて同じ布団に潜り込むことも出来ない。
心底がっかりしたナルトだったが、物は考えようだ。
別室ならば、仲間が邪魔に入ることもなく、添い寝以上のことが出来るかもしれない。
もちろんサクラの部屋に無事侵入できたとしての話だった。
「どこに行くんですか?」
抜け足差し足、気配を消して廊下に出たつもりだったナルトは、背後から聞こえた声に体を震わせる。
振り返ると、そこに立っていたのは、同じ温泉宿の浴衣を着たサイだった。
彼と相性の悪いナルトは顔をしかめて横を向く。
「・・・しょんべんだよ」
「それなら、ボク達が寝静まってからこそこそと移動する必要はないでしょう」
言葉に詰まったナルトに、サイは畳みかけるように先を続けた。
「夜這いですね・・・」
「だっ、だったらどーした。てめーには関係ねーだろ」
サイの視線の先にはサクラの部屋へと続く扉があり、ナルトはふてくされたように答える。「そうですね。ボクも混ぜてくれたら、騒がないでいてあげますけど」
「はあ!?」
また嫌味の一つや二つを言われると身構えていたナルトは、サイの予想外の反応に目を丸くした。
「お、お前はサクラちゃんのことなんて何とも思ってないんだろ!」
「そんなことないですよ。何で彼女があんなに発育不良な体なのかとても興味があります」
「てめー、サクラちゃんのこと馬鹿にしてるだろ!!」
ナルトがサイに掴みかかった瞬間、隣りの部屋の扉が唐突に開かれる。
不機嫌そうな顔で二人を睨み付けたのは、同じく浴衣姿のヤマトだ。
「お前達、煩いぞ!何時だと思っているんだ。他の宿泊客のことも考えろ」
「・・・・」
「ごめんなさい」
叱られてしゅんとしたナルトは、傍らのサイを睨みながらも、素直に謝罪する。
そして、頭を下げてからはっとなった。
今、ヤマトが出てきたのはナルトがこっそりと出てきた部屋ではなく、その向かい側の部屋だ。「・・・・・そこ、サクラさんの部屋ですよね」
「この外道ーーー!!!真夜中に俺のサクラちゃんの部屋で何してたってばよ!!犯罪者ーー!」
淡々と話すサイに続いて、ナルトが泣き叫ぶ。
もちろん、自分が何をしようとしていたかは彼の頭から消えている。
闇夜に響く泣き声に、宿に滞在中の人々が大いに迷惑したのは言うまでもなかった。
あとがき??
1が評判良かった(?)ので、続きを書いてみました。あれ、ヤマサク??
ヤマトさんはサクラの部屋で何をやっていたのか・・・・。謎です。
深読みしておいてください。
最初は、カカシ先生のいない7班なんてーと思っていたけれど、結構楽しい。シリーズ化??
(おまけSSシリーズ325)『先生二人』
「先生のこと、好きになったみたいなの。取り持ってくれないかな」
突然のサクラの呼び出しに浮き浮きと出かけたナルトは、その一言で奈落の底に突き落とされた。
「な、何で俺に・・・・」
「ナルト、先生と仲がいいじゃない。だから、お願い」
「・・・・」
自分の気持ちを知っているはずなのに、何と残酷なことを言うのかと思ったが、サクラには逆らえない。
かといって、素直に従うのも癪だった。「別に、仲がいいってわけじゃないってばよ。うちにたまに野菜を持ってきてくれるだけで」
「えっ、そうなの?」
「サスケのがずっと一緒にいる時間が長いってば」
驚くサクラに、ナルトはさらに畳みかける。
「よした方がいいよ。あんな、エッチな本ばかり読んでる先生」
「せ、先生って、そんな本が好きだったの?」
「何を今さら・・・・サクラちゃんだって、知ってるくせに」どさくさに紛れてサクラの手を握ったナルトは、緑の瞳を間近に見据えて話し続けた。
「サクラちゃんが少しでも油断したら、すぐ暗がりに連れ込まれて悪戯されるに決まってる」
「・・・・でも」
「先生なんて、足は水虫だし息は臭いし髪だってはげそうだし、やめた方がいいってばよ」
ナルトの必死の説得を聞きながら、サクラは悲しげに目を伏せる。
親しく付き合っているナルトがそう言うのだから、真実なのだろう。
誠実で優しげな見かけと違い、憧れの教師にそのような本性があったとは、心底ショックだった。
あとがき??
サクラの考える先生イメージ=イルカ、ナルトの考える先生イメージ=カカシ。
意思の伝達に失敗したようです。
ごめん、先生・・・。
311〜325まで載せてみました。
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