(おまけSSシリーズ341)『求婚者』
サクラがある任務で菜の国に行ってから、一ヶ月が過ぎた。
ほんの一週間の滞在のはずが、異様に長引いている。
病気や怪我をしたのではないかと心配したカカシだったが、理由は別のところにあったようだ。「手紙をもらったんだけどさ、求婚されたんだって、菜の国の大名家の息子に」
「えっ・・・・・」
大きく目を口を開けたカカシは、そのまま二の句が告げなくなってしまった。
火影ならば事情を知っているだろうと、綱手に会いに来たのだが、思ってもみない展開だ。
「国の方では凄い話題になっていて、新聞にも載ったらしいよ」
「羨ましいですねーーv御曹司と結婚なんて、玉の輿ですよ」
同席していたシズネはにこにこ顔で言うと、カカシの顔色がさらに青くなる。
サクラが結婚。
このまま、二度と木ノ葉隠れの里には戻ってこないかもしれない。
そう思うといてもたってもいられず、カカシは綱手に向かって大声で言っていた。
「有給休暇、ください!!!」
菜の国に入る通行手形を発行してもらい、サクラのいる大名家の屋敷に到着したのは、それから二日後だ。
自分の身分を伝え、サクラの元へと案内されたカカシが足を踏み入れたのは、玩具が沢山並ぶ子供部屋だった。
サクラは身なりの良い4、5歳の子供を膝枕で寝かしつけており、カカシを見るなり目を丸くする。
「カカシ先生!?」
子供へと目を向けたサクラは、声の音量を少しばかり小さくして問いかける。
「ど、どうしてここへ?」
「あの・・・・帰りが遅くて、心配だったから」
同じく小声で答えると、サクラは怪訝そうに首を傾げた。
「あと一週間くらいこの国にいるって師匠に連絡を入れたんですけど。聞かなかったですか?」
「・・・・・ああ」
カカシが綱手に聞いたのは、サクラが大名家の子息に求婚されたという情報だけだ。「それより、あの・・・・」
「なんです?」
「・・・・・一週間って、何で」
本当は大名の息子になんと返事をしたのか聞きたかったが、サクラと目が合ったカカシは話題をずらしてしまう。
「ああ、この子の乳母さんが急な用事で、一週間したら戻るんですよ。実は私、この子にプロポーズされちゃって」
「えっ」
「新聞にも載ったんですよ。えーと、確かこのへんに・・・・」
サクラは近くにあった鞄を手繰り寄せ、中に入っていた新聞記事の切り抜きをカカシに見せる。
『菜の国新聞・今週のほのぼのニュース』という見出しの欄に、確かにサクラの写真が載っていた。
大名家の鶴松様(5歳)が木ノ葉隠れのくノ一・春野サクラ嬢(16歳)にプロポーズ、という文章だ。
どうやら毎週どこかの子供に取材をする特集で、たまたま記者が来たときに鶴松がサクラに求婚したらしい。「書状を届けに来ただけなのに、何だか気に入られちゃって。乳母さんが休みの間代わって世話をしているんです」
「・・・・じゃあ、結婚はしないの?」
「先生ってば、子供の言うことじゃないですか。本気にしないでくださいよー」
あははっと笑うサクラを見て、カカシは急に脱力してしまった。
休憩を取らずに菜の国に急行したというのに、真相が分かってみればなんてことはない話だ。
おそらく、綱手もシズネも記事を見たうえで、カカシをからかっていたのかもしれない。
「先生、それより、何でここにいるんですか?仕事は??」
「・・・うん」
サクラの隣に座り込んだカカシは、すやすやと寝入っているライバルを横目に心の中で舌打ちをする。
子供とはいえ、サクラの膝枕で眠るとは、なんとも羨ましい。
「サクラにプロポーズをしようと思って」
あとがき??
サクラ、もてもて。元ネタは『カルバニア物語』。
(おまけSSシリーズ342)『銀魂のゴニンジャーをNARUTOで再現』
「忍者が忍者ごっこしてどうするのかしらね・・・・」
「子供達のためだってばよ!」
渡された衣装を眺めながら呟いたサクラだったが、ナルトは案外乗り気だ。
今回の7班の任務は、木ノ葉遊園地で開催されている『木ノ葉戦隊ゴニンジャー』ショーの遂行だった。
客席にはショーを楽しみにしている親子連れがぞくぞくと集まってきている。
本物の忍者がショーをやるだけあって、アクロバティックなパフォーマンスが呼び物となっていた。
ストーリーは悪の組織に捕まった姫を助けるという、ありきたりなものだ。「でもさ、普通、忍者ってこんなカラフルな衣装じゃないよね。目立っちゃいけないよね」
全身を覆う真っ赤な忍び服を着用したニンジャーレッドこと春野サクラは、真面目な表情で自問自答する。
「子供達のためだってばよ!」
「あんた、そう言えばなんでも許してもらえるって思ってるんじゃないの」
「だって、カラフルな方が子供達には分かりやすいじゃん。こういうのは、まず視覚に訴えないと」
黒と白の水玉模様の衣装でニンジャーホルスタインに扮したナルトは真顔で答えた。「それより何で俺の衣装が黄色なんだ。俺は赤の方がいい」
不満げに言うニンジャーイエローサスケをサクラは目で制する。
「サスケくん、赤は私のイメージカラーよ。それに赤はリーダーが着るって相場が決まってるじゃない」
「えっ、リーダーって、カカシ先生じゃ・・・・」
「そうか、そういう役割なら仕方がない」
ナルトの突っ込みは無視され、サスケは渋々頷いた。
「それから、ニンジャーイエローはカレーが好きだから。カレーは常に常備しておいてよ」
「ルージャ!!」
「・・・・微妙に違うよ、ラジャーだよ」
「何だかんだ言ってみんな結構楽しんでいるのでは?」と思うナルトは、袖を引っぱられて振り返る。
「ナルトー、これ、お前のと衣装取り替えてくれない?」
真っ白な衣装に目をやるニンジャーホワイトカカシは、実に悲しげな表情だった。
「これじゃーカレーうどんが食べられないよ。白い服って何だか怖い」
「あんた上忍でしょう。別にいいじゃん、食べなくて。何で今カレーうどんを食べる必要があるのさ。そんなの好きだった?」
「カカシ先生、ゴニンジャーなのに4人しかいないわよ。誰か補充しなくていいの」
ナルトとカカシの会話にサクラが割り込んでくる。
「それは大丈夫だよ。チャンバラトリオだってトリオなのに4人いた事実を俺は知っている」
「漫才グループと一緒にしていいのかしら・・・っていうか、うちの場合は一人多いんじゃなくて、足りないんだけど」
「レンジャー!!」
「ラジャーだっての。サスケ、うざい」
「あっちでカレーでも食ってろ」忍者ショーの開演時間は間近に迫っていたが、ぎりぎりまで騒がしく口論を続ける仲の良い7班だった。
あとがき??
銀魂をNARUTOで変換。
カレーニンジャーをあえてナルトではなくサスケにしましたが、やっぱりはまっていますよね。
うちのサスケは7班ギャグ担当。(確定)
原作での性格は正反対ですが、私の中でナルトと新八は同じ属性(可愛い系)なんです。
ナルトから黒い部分を取ると真っ白な新八になるというか。スレナルト。
(おまけSSシリーズ343)『二人の関係?』
一人暮らしをしていて、一番困るのが体調を壊したときだった。
何しろカカシには面倒を見てくれる家族がおらず、現在恋人も募集中だ。
一応、可愛い生徒の一人サクラに電話をしてみたが、「今、TV見てるから」と一方的にきられてしまった。
「寂しいよぅ・・・・」
咳をして布団にくるまるカカシは、しくしくと涙する。
あれほど口を酸っぱくして「仲間との絆」について教えたというのに、まるで効果がない。
いや、前回家に呼んだとき無理矢理押し倒したせいで警戒しているのだろうか。
あれはサクラがミニスカートという挑発するような服装で来たため、ついその中に手が伸びてしまったのだ。「でも、やっぱり可愛いよなぁ・・・・ん?」
チャイムの音に気づいたカカシは、ふらつきながらも立ち上がる。
「はいはい、誰ーー」
訊ねながら玄関の扉を開けると、そこに立っていたのはスーパーの紙袋を持って立つアスマだ。
「あれ、何?」
「お前が電話してきたんだろう」
顔をしかめるアスマはぶっきらぼうに言うと部屋に上がり込んだ。
サクラの対応が冷たかった愚痴を電話でアスマにこぼしたのだが、一応、様子を見に来てくれたらしい。
「台所、借りるぞ。言っておくが、普通に梅粥くらいしか作れないからな」
「うう、アスマ、お前将来いい嫁さんになるよ・・・・」
弱っているときに優しくされると、普段以上に感動するらしい。
「お互い独り身だし、お前が風邪を引いたときは俺が看病してやるからな。何なら、サービスで添い寝も・・・」
「いや、いい。来るな、絶対に来るな」
涙を流すカカシに両手を握られ、アスマは心底嫌そうに首を横に振る。
「・・・・・そうだったんだ」
ふいに背後から聞こえた声に、二人はハッとして振り向いた。
先程のアスマと同様に、買い物袋を持って立つサクラは、握られた二人の手をじっと見つめている。
どうやら熱で朦朧とするカカシが玄関の鍵をかけ忘れたため、そのまま中に入ってきたらしい。「あの・・・、サクラちゃん?」
「カカシ先生とアスマ先生がそういう関係だったなんて、知らなかったから・・・私、馬鹿みたい」
「ちょっと待てー!!」
アスマは声を荒げたが、青い顔で後退るサクラの耳には届いていない。
「先生の声が随分弱ってたから、気になって来ただけなの。邪魔してごめんなさい!」
自分の言いたいことだけ言うと、サクラは踵を返して駆け出していった。
残されたのは、台所に流れる微妙な空気だけだ。
「女ならともかく、お前との仲を邪推されるのって、凄く嫌なんだけど・・・・」
「こっちの台詞だ!!」
伏し目がちに呟いたカカシに、アスマは目くじらを立てる。
仏心を出したばかりに、とんだことに巻き込まれてしまった。
「うう、サクラがせっかく来てくれたのに・・・、アスマの馬鹿ァ」
「さっき、えらい感謝してただろーが!」
粥を作る準備をしたものの、頭にきたアスマは全部放り出して玄関へと向かう。
彼の精神はいたってノーマルで、もし怪しげな噂が流れでもしたら、里抜けしたいような気持ちだった。
あとがき??
翌日いのちゃんに「カカシ先生とラブラブって、本当ですかー?」と聞かれる可哀相なアスマ先生でした。
(おまけSSシリーズ344)『好きと比例する長さ』
「サクラちゃんさー、もう髪の毛短くしないの?アカデミーに入学した頃、短かったじゃん」
「もっと伸ばすつもりよ」
「何で?」
「サスケくんは長い髪の子が好きだから」
桃色の髪に向けられた視線を感じたのか、サクラは振り返ってナルトを見た。
サクラの口から出たライバルの名前に、ナルトは思わず顔をしかめる。「そんなのただの噂でしょう。俺は短い方がサクラちゃんに似合ってると思うし、好きだってばよ」
「じゃあ、私はずーっと長いままでいるわよ」
「何、それー」
ナルトは不満げに口をとがらせ、サクラは明るい笑い声を立てる。
まだサスケが里を抜ける前の、平和だったときの思い出だ。
夢から目覚めたサクラは、目の端に浮かんでいた涙を指で拭った。
いつかまた、絶対に取り戻すのだ。
ナルトがいて、サスケがいて、喧嘩しながらも楽しかったあの時間を。
半身を起こしたサクラは、自分の頬を軽く叩いて気合いを入れる。
後になって考えると、ナルトの夢を見たのは何か予感があったのかもしれなかった。
「ナルトが帰ってくるよ」
「えっ」
頼まれた資料を集め、執務室に入ったサクラは綱手の開口一番の言葉に目を見開く。
「自来也が連絡してきた。今日明日にもこっちにつくってさ」
「ナルトが・・・・・」
「全く。もっと早く連絡してこいってんだ」
それからも綱手の自来也に対する小言は続いたが、サクラはあまり聞いていなかった。
ナルトが里に戻ってくる。
そう思うだけで自然と顔が綻び、万歳をしたいような気持ちだ。「師匠、私が髪を短くしたら、どう思います?」
「え、失恋でもしたのかい?」
「綱手様、失恋すると髪を切るって考え方はもう古いですよ」
「・・・年寄り扱いするな」
忠告したシズネを綱手は横目で睨み、サクラはくすくすと忍び笑いをもらす。
「そんなんじゃないですよ。ただ、似合うって言ってくれる人がいる方がいいと思って」
あとがき??
綱手姫と修行していた頃のサクラは、髪が長かったですよね。
第二部のサクラの髪は、サクサスからサクナルになるっていう意思表示だったのかも・・・。
(おまけSSシリーズ345)『オレンジ』
いのの家を訪れたサクラは、お茶を持って部屋に入ってきた彼女に、色違いのTシャツを見せられた。
オレンジと赤の二色で、デザインもなかなか可愛らしく、これからの季節にぴったりだ。
「バーゲンで安かったのよー。あんたに一つあげるわ」
「えっ、本当」
「どっちの色がいい?」
「・・・えーと」
形は同じなのだから、あとは色の好みだけだ。
「こっち」
思案した後、オレンジ色のTシャツを指差したサクラを、いのは意外そうに見やった。
「何よ」
「ううん。あんたっていつも赤とかピンク着てるから、赤いの選ぶかと思った」
言われてみると、確かにサクラは赤系の服を沢山持っている。
だが、いのにどちらか選べと言われたとき、自然とオレンジに目がいっていた。
オレンジが、絶対に欲しいと思ったのだ。
自分には赤の方が似合うと思うのに、一体何故なのか。「サクラちゃーーん」
悶々と考えながら家路に就いたサクラは、その呼びかけに反応して振り返る。
手を振りながら走ってくるのは、満面の笑みを浮かべるナルトだ。
「これから一楽に行くんだ!!時間があるなら、一緒に・・・・」
話の途中、自分を凝視しているサクラに気づいたナルトは、怪訝そうな表情になる。
「あれ、どうしたの?」
「・・・あんたの色だわ」
あとがき??
スマップの曲では『オレンジ』が好きです。
(おまけSSシリーズ346)『幸せな家庭を築きましょう』
「やっぱりさぁ、そのマスクが怪しいんだってば。絶対」
「煩いよ・・・」
たまたま往来で居合わせたナルトの忠告に、カカシは眉を寄せて答える。
駆けてきた子供が目の前で転んだため、しゃがんで助け起こしただけなのだ。
それなのに、大泣きされてしまった。
今回だけでなく、カカシが近寄ると大抵の子供は怯えて去っていく。「小さい子供なんか嫌いだよ。すぐ泣くし、我が儘だし、あんまり近くに来て欲しくないね」
「俺は可愛いと思うけどなぁ〜。赤ちゃんとか」
刺々しい口調で語るカカシに、ナルトは思わず首を傾げる。
「そんなんじゃカカシ先生、いつまでたっても結婚出来ないんじゃないの?」
「独身のまま楽しむからいいよ」
ぷいと横を向いたカカシは、視線の先に知った顔を見つけた。
いのが店番をする花屋から出てきたのはサクラと、彼女とよく似た顔立ちの子供だ。
「私の従姉の子供で、モモちゃんよ。今年から木ノ葉幼稚園に通ってるの」
カカシとナルトに気づいたサクラは、自分の後ろに隠れる子供を二人に紹介する。
サクラと同じ桃色の髪の子供は、もじもじとしながらもサクラに促され「こんにちは」と挨拶をした。
はにかんだ笑顔が何とも愛らしい。
元々子供好きのナルトだけでなく、カカシまで心がぐらついてしまった。「サクラ、俺、サクラとなら大丈夫だから!!頑張ろうね」
自分の掌を握って力強く主張するカカシに、サクラは目を瞬かせる。
「・・・・え、何を?」
あとがき??
・・・子作り?
将来的にはめでたくカカシ好みの(サクラ似の)娘が産まれて幸せ家族になります。
さりげなくこの時点からナルト×サクラ似の娘っぽく・・・・。
(おまけSSシリーズ347)『一目惚れ?』
「中葉由紀恵って本当に綺麗よねー。次に産まれてくるときは私もこんな感じがいいわ」
いのの家で映画を鑑賞しながら、サクラは主演女優に憧れの眼差しを向けている。
「変化の術を使えばいくらでも体感できるわよ」
「そういうまやかしじゃなくて実際の顔のことよ」
テレビ画面から目をそらしたサクラは、頬を膨らませて反論する。
「んー、由紀恵ちゃんは無理だけど、もうちょっとマシな顔には出来るかもよ」
「・・・・・どういう意味よ」近頃化粧の勉強をし始めたといういのは、机からメイク道具を引っ張り出した。
顔は石けんで洗うだけですませているサクラは、その種類の多さに目を丸くする。
「こ、こんなにいろいろ顔に塗るの?」
「私、やるとなったらとことん極めたくなる質なの。まず道具から揃えないと」
「へーー」
眉毛をカットするハサミを見ていたサクラは、突然いのに腕を引っぱられた。
「こっち向いて」
「えっ」
「他人の顔って、一度やってみたかったのよねー」
戸惑うサクラを気にせず、いのは彼女の肌の色に合わせてファンデーションを選び始める。
「大丈夫よ、可愛くしてあげるから」
試行錯誤の末、1時間かけて出来上がった自分の顔を見て、サクラは特殊メイクのように感じてしまった。
普段何も手を入れていないだけに、変化も大きいのだろう。
黒髪ロングのウイッグを付ければ、もう完全に別人だ。
いのの家から出て周囲を歩いてみたが、途中で会った知り合いは誰もサクラに気づかない。
角の向こうからやってきたカカシとすれ違ったときはかなり緊張したが、彼はいつも通り本を読んでいた。
いののメイクの腕が良いのか、それともカカシの注意力が散漫なのか。
自分など眼中にないと言われているようで、これにはサクラも少しがっかりしてしまった。
「好きな女の子が出来たかも・・・・」
次の日曜日、土産を持ってカカシを訊ねたサクラは頭を殴られたかのような衝撃を受ける。
何度通っても少しも女の影がないため、すっかり安心していたのだ。
いつかは恋人同士に、と甘い夢を見ていたというのに、ひどすぎる。
「だ、だ、誰!?私の知ってる人??」
「・・・・よく分からない」
あやふやな返答をされ、サクラのさらに深く追求していく。
「何よそれ、どういうこと?どこで会った人なのよ」
「道ですれ違っただけなんだ。先週さ、いのちゃんの花屋の前を通ったときに。ロングの黒髪で緑の瞳の女の子」
「えっ・・・」
「何だか妙に印象に残って、会いたいなーと思うんだけど、あれ以来見かけないんだよね」肩を落としたカカシを横目に、サクラは腕組みをして考え込む。
黒髪で緑の瞳などありきたりな組み合わせで、捜すのは大変かもしれない。
いや、それよりも、その特徴はサクラが変装した人物とよく似ている気がした。
「その子って、上はレースの肩ひもが付いたオレンジのキャミソールで下はジーンズの・・・」
「何で知ってるの?」
不思議そうに聞き返したカカシに、サクラは思わず引きつった笑みを浮かべる。
気に入ってもらえたのは嬉しいが、あれはサクラであってサクラではない創作の人物だ。「私、彼女のこと知ってるかも」
「え、本当!会わせてよ」
「・・・・うーん」
いのにメイク道具を借りれば、再び同じ顔を作ることは可能だ。
彼女と同一人物だと知ったときカカシがどう反応するか、それが少しばかり怖いサクラだった。
あとがき??
16、7歳設定。元ネタは、「あたしのエイリアン」シリーズですね。
少女向け小説で、昔集めていました。
どうやって完結したのか凄く気になっているのに、もはや絶版で入手不可・・・。(涙)
キャラクターは千晶とジョナサンが好きだった。
少女向け小説にしては不思議な感覚の内容でしたが、作者が現在ホラー小説家になっているのも衝撃的でした。
(おまけSSシリーズ348)『肝試しで縁結び』
墓石の脇で座り込むナルトは、まとわりつく蚊と必死に格闘していた。
夜中に提灯を片手にこうした場所にいる理由は一つしかない。
町内会で催される「肝試し大会」のお化け役を任されているのだ。
近所の住人に頼まれて渋々引き受けたナルトだったが、やってみると案外面白い。
白い着物を身につけ、顔を腫らしたメイクを施したナルトが立ち上がるだけで、怯えてやってきた人々は絶叫する。
とくに若い女性や子供は大げさに驚いてくれるから、よけいに楽しかった。
「次の人、早く来ないかなぁ・・・・」
呟いた直後にひたひたと歩く複数の足音が聞こえ、ナルトは息をひそめた。「わ、わ、私、本当にこういうの駄目なんだってば!帰る」
「大丈夫だってー。俺が付いてるからさvそれに、一人じゃ入り口まで戻れないだろ」
泣きそうな少女の声と、続いて聞こえた男の声に、ナルトは思わず首を傾げる。
墓石の陰からこっそり顔を出すと、案の定、向こうから歩いてくるのはカカシとサクラの二人だ。
体を震わせるサクラはカカシの腕にしがみつき、カカシはにこにこと満面の笑みを浮かべている。
「キャッ!!」
近くに置かれていた髪の伸びる市松人形を見て、サクラは早くも悲鳴を上げた。
「もう嫌ーーー、カカシ先生ーーーー」
「よしよし」
目論見通り、サクラに抱きつかれたカカシは幸せの絶頂という顔をしている。
日頃ガードの堅いサクラに接近するチャンスだと思って連れてきたのだが、予想以上の効果だった。
「何だよ・・・、先生達なかなか来ないな」
スタンバイしているナルトは、なかなか近くに来ない二人に苛立ちを募らせる。
幽霊役も緊張しながら待っているのだから、故意にゆっくり歩くカカシの行動は非常に迷惑だ。
「もー、何やってるのさ二人ともーー!!」
怯えて泣き続けるサクラを抱きしめていたカカシは、業を煮やして姿を見せた幽霊へと顔を向ける。
妙なメイクをしていてもそれがナルトだとすぐ分かったが、恐怖に錯乱しているサクラは驚愕に目を見開く。
「いやーーーーー、気持ち悪いーーーーー!!!!」
「ギャアッ!!」
サクラにグーでパンチをされたナルトは、卒塔婆を倒しながら10メートル先まで吹っ飛ばされた。「帰るー、本当に帰るーーー」
「サクラ、落ち着いて」
泣きじゃくるサクラの肩を抱くカカシは、ナルトが倒れているであろう場所を心配そうに見やる。
サクラに殴られることが日常茶飯事のナルトならば、おそらく死ぬことはないだろう。
それよりも今はサクラとイチャイチャすることの方が大事だ。
「サクラ、何があっても俺が絶対に守るから。ほら、幽霊も退治したよ」
「・・・・うん」
鼻をすするサクラは、涙で瞳を潤ませながらカカシを見上げた。
「離さないでね。ずっとそばにいて・・・」
「喜んでv」
以来二人は言葉の通り、交際をスタートしたらしい。
危機的状況でそばにいる異性が、それまで以上に魅力的に見えるという話は本当だったようだ。
サクラに片思中のナルトにすれば、まさに踏んだり蹴ったりの悪夢の出来事だった。
あとがき??
元ネタは、銀魂のお妙さんかなぁ。
気の強い女性が、作り物の幽霊でキャーキャー言っていると何だか可愛い。
お妙さんは怖いけど。(笑)
ああ、ナルト、ごめん。
(おまけSSシリーズ349)『パパになりたい』
「子供って、いいよね・・・」
ぽつりと呟いたカカシは、微かに微笑みを浮かべていた。
彼の視線の先にはよちよち歩きの女の子がいる。
カカシの知り合いの女性に頼まれ、7班はベビーシッターの仕事をしている最中だ。
「カカシ先生?」
「やっぱり子供がいるっていうのは、幸せなことだよ。うん」
首を傾げたナルトの声は聞こえていないようで、カカシは小さく頷いている。
カカシが子供好きだったとは、今の今まで知らなかった。「何、先生子供が欲しくなったの?」
「うん。毎日賑やかで楽しそうじゃない」
振り向いたカカシは、にっこりと笑う。
今、世話をしている子供の母親はカカシと旧知の間柄で、未亡人だと聞いていた。
しかも超が付くほどの美人だ。
「はーい、高い、高い」
カカシは近くに来た女の子を抱え上げ、彼女は嬉しそうに歓声を上げる。
子供との相性は抜群らしい。
このときナルトは漠然と、カカシは未亡人との結婚を考えているのだと思った。
そうでなければ、突然子供との生活を匂わせる発言などするはずがない。
「来月挙式の予定だから。絶対出席してねー」
数日後、カカシから結婚式の招待状を貰ったナルトは心の中で「やっぱり」と頷いた。
仰天したのは、封筒を開いて中身を見てからだ。
「・・・・先生」
「んー?」
「これ、ミスプリントじゃないの?」
カカシの名前と並んでいたのは未亡人ではなく、サクラの名前だった。
冗談にもほどがある。「別に、間違ってないよ」
不思議そうに首を傾げたカカシは、傍らにいるサクラの肩を抱いて言葉を続ける。
「急な話で悪いねー。出来ちゃった結婚だから、お腹が大きくなる前に式をあげないといけないんだ」
「えっ!!」
目を丸くしたナルトがサクラを見ると、彼女は赤い顔で俯いている。
どうやら嘘ではないらしい。
だが、二人が付き合っているなど、ナルトは全く知らなかった。「い、い、いつの間に」
「えーと、逆算して考えると山菜取りの任務の休憩時間に・・・・」
途中、カカシの鳩尾にサクラのひじ鉄が入り、彼の話は強制的に中断する。
「コウノトリが連れてきたのよ、コウノトリが!」
「・・・そう」
焦ってフォローをするサクラに、ナルトは弱々しい声で応えた。
子作りではなく、交際の始まった時期を聞いたつもりだが、もうどうでもいい気がしてくる。
カカシの発言の真の意味を理解したものの、失恋の悲しみが癒えるには随分と時間がかかりそうだった。
あとがき??
サクラの年齢は、15か16か。
元ネタはカルバニア物語のカイルパパですよ。
またまた可哀相なナルト・・・・。妙に子供ネタが続いてしまいました。
ちなみにサスケは出てきませんが、7班の話のときはナルトかサクラの隣りにいます。
ただ台詞がないだけです。ごめん、坊ちゃん!
(おまけSSシリーズ350)『カカシ先生とおんぶ傘』
朝、家を出るときは晴天だったが、午後の降水確率は100%。
任務の終了と共に雨が降り出しても、皆は折り畳みの傘を持参していたために平気だ。
ただ一人、羨ましそうに傘を眺めていたのは7班の班長を務めるカカシだった。
「持ってこなかったよー。ナルト、俺もいれて」
「いやだってばよ!」
カカシは一番近くにいたナルトに対して猫なで声を出したが、あっさりと却下される。「ちゃんと天気予報チェックしてきてよ。それに、男同士の相合い傘なんて見苦しいだけだってばよ」
「ナルトなら小さいから大丈夫じゃないの」
「よけいに駄目じゃん。背が低い俺の方が濡れちゃうよ」
すげなく通り過ぎようとしたナルトの腕をカカシが引っぱった。
「じゃあ、俺がおんぶしてあげるから。ナルトは傘を持っていればいいよ。ほらっ」
「やーめーてーよーーー」
鼻歌を歌うサクラが柄をくるくると回すと、傘についた水滴が周りに散っていく。
広くて安定感のあるカカシの背中はなかなか快適で、たまには負ぶってもらうのも悪くないと思った。
ナルトを押しのけて「おんぶ傘」の提案にのったのは正解だ。
すれ違う人々が振り返って見ているのが少々気になるが、少ししたら慣れてしまった。「先生、そこ左ー」
「え、サクラの家は右でしょう」
「先生の家でお茶をご馳走してもらって帰るから、左」
分かれ道で左方向を指し示したサクラは、勝手に次の予定を決めている。
カカシが逆らうことなく従ったのは、一応彼女の傘の恩恵をこうむっているからだろうか。
「サクラ?」
肩にあった手を移動させ、くっついてきたサクラにカカシは首を後ろに動かす。
「先生、たまには傘を忘れてきてもいいよ」いつもいつも、ナルトやサスケの修行に付き合ってばかりで、こうして触れる機会など滅多にないのだ。
少しくらい独り占めをしても、罰は当たらないはずだった。
あとがき??
サクカカ。ナルトは相変わらず可愛いです。
(おまけSSシリーズ351)『求婚者 2』
「サクラ、僕と結婚して」
これが同じ年頃の男の口から出たものならば、七班の他の面々が黙っていなかったことだろう。
だが、サクラの目の前にいるのはまだ五歳になったばかりの子供で、場は和やかな雰囲気を保っている。
依頼主の一人息子である彼は、任務のためにやってきたサクラをいたく気に入った様子だった。
七班が家のセキュリティーをチェックする仕事をしている間中、サクラに付きまとっている。
「うん、いいわよ。でも、こんなおばちゃんでもいいの?」
「関係ないよ。サクラが好き」
「あら、嬉しいわねー」
抱きついてきた子供を受け止めたサクラは、明るい微笑みを浮かべた。
「いつ、いつお嫁さんになってくれるの?」
「そうね、坊やが結婚出来る年になったら、10数年後かしら・・・・」
サクラの返答を聞いた彼は、急に不安げな表情になる。「でも・・・、その頃にはサクラは他の誰かと結婚してるでしょう?」
「そんなことないわよ」
にこにこと笑うサクラは彼の頭を優しく撫でる。
「私、誰とも結婚なんかしないから。ちゃんと待ってるわ」
「わーい」
子供は心から嬉しそうに歓声をあげ、聞き耳を立てていた他の三人は作業の手を止めて顔を見合わせた。
「・・・・おいおい、サクラ、あんなこと言ってるけど。うちは家存続の危機じゃないの?」
「サスケ、サクラちゃんを怒らせること何かしたんだろう」
「・・・・・・」
カカシとナルトにひそひそ声で訊ねられ、サスケは首を傾げる。
サクラが冷蔵庫に入れたプリンを黙って全部食べたことだろうか。
いや、洗濯物のカゴに入っていた彼女の下着を勝手に手洗いしたせいかもしれない。
思えば、朝は妙に口数が少なかった気がする。「別に結婚しなくても子孫は繁栄出来る」
「あ、そういうこと言うんだ」
涼しい顔で呟くサスケを横目に、カカシはにやりと笑った。
「まあ、契約にしばられないと自由に恋愛出来るしねー。サクラの火遊びの相手に立候補しちゃおうかなぁ」
「サクラちゃんには将来の俺の火影の地位を継ぐ子供を産んでもらうってばよ!」
「無理だ。一族の再興のためにサッカーチームが出来るくらい子供を作るから、腹は空かないぞ」
「誰の種でもいいけど、俺はサクラ似の女の子が一人欲しいよ」
最初は小声で会話をしていたらしいが、段々と普通よりも音量が大きくなっていることに彼らは気づいていない。
なにやら喧々囂々と言い争いを始めた三人を、依頼主の子供は怪訝そうに見つめている。
「喧嘩してるの?」
冷ややかな眼差しで彼らを見つめていたサクラは、困ったように笑って彼の頭に手を置く。
「坊やはあんな大人になっちゃ駄目だからね」
あとがき??
サスケが里に戻ってきている設定で、たぶん16歳くらい。
元ネタは『カルバニア物語』のはずですが、ごちゃごちゃとわけの分からないことに。
一応、サスサクメインですけど、分かるのかどうか。
一分の救いもない悲劇サスサクをうっかり読んで死にそうなので、私はほのぼのサスサクを書きますよ。
(おまけSSシリーズ352)『確認』
「かわいい・・・・・」
「えっ!」
サスケが何気なく口にした一言を敏感に察知し、サクラは振り返った。
彼の視線の先にいたのは、新装開店したレストランのチラシを配るクマの着ぐるみだ。
相手が若い女性でなかったことにほっとしたが、サスケがああしたものが好きだとは知らなかった。
「かわいいって、あれのこと?」
「かわいいだろう。何だか見ていて癒されるし、ああいうのがうちの班にいればいいけどな」
真顔で語っているのだから、冗談なのか本気なのか判断しかねる。
サクラにとって、サスケの「かわいい」は非常にインパクトがあったことだけは確かだった。
翌朝、カカシが遅刻をして集合場所に行くと、サスケと、ナルトと、クマの着ぐるみが立っていた。
メンバーを考えると、クマの正体は考えずとも分かる。
そうまでして「かわいい」と言ってもらいたいのかと、ほろりと涙しそうになってしまう。
「あの・・・・サクラ、暑くないの?」
ギラギラと照りつける太陽を見てからクマへと視線を移したカカシは、心配そうに声をかけた。
「平気、へ・・・・・」
手を振る動作をしたものの、言ったそばから、クマの体が大きく傾ぐ。
暑さでのぼせたクマはそのまま意識を失い、次に目が覚めたのは涼しい風が通る木陰のベンチだった。「私・・・・」
「飲め」
差し出されたペットボトルは自販機で買ってきたばかりなのか、水滴が周りに付いている。
着ぐるみの頭部分を外されたサクラは、サスケの手から有り難くペットボトルを受け取った。
「サスケくん、優しいねv」
額の汗をぬぐったサクラは、幸せそうに微笑む。
しかし、後方で二人を見つめるカカシとナルトは、納得いかない表情で囁きあった。
「優しい?あれは優しいって言うのか??」
「遠回しな愛情確認だと思うけど・・・・」
意味不明な発言をしつつ、サクラがどう行動するか、反応を見ているのだろう。
「難儀な性格だなぁ」
あとがき??
元ネタは『魁!クロマティ高校』。
北斗くんとその子分ですよ。バンチョーちゃん。
(おまけSSシリーズ353)『カカシ先生の傾向と対策』
「やっぱり、何かあったんだ・・・・」
ナルトはぶつぶつと呟きながら部屋の中を行ったり来たりしている。
旅の途中、はぐれたサクラを捜しにカカシが山に入り、ナルトとサスケは先に麓の宿に到着していた。
日はすでに暮れ始めていたが、カカシとサクラがやってくる気配はない。
「カカシがついてるなら平気だろ」
「だから心配してるんじゃないかー、この馬鹿ーー」
素っ気ないサスケの物言いに、ナルトはわめき声を上げた。
18禁本を年中読み歩いているようなカカシが、暗くなりつつある森で、サクラと二人きり。
あらゆる意味でサクラの身が心配だ。
泣きそうになっているナルトを見かねて、サスケは読んでいた書物を脇に置く。「お前、カカシが読んでる本のタイトル、知ってるか?」
「えっ、イチャイチャ何とかってやつだろ」
「それ以外だ。『レッツ・人妻』、『熟女マニア』、『未亡人と私』、これでカカシの趣味が大体分かる」
「・・・・えーと、年上好み?」
「Eカップ以下の胸の女には興味がないとも言っていた」
それだけ言うと、サスケは再び書物へと目を落とす。
サクラのささやかな胸の膨らみを思い出したナルトは、ホッとしてその場に腰を下ろした。
忍犬を使えば、カカシがサクラを見つけることはたやすいはずだ。
少々遅いことが気に掛かるが、サクラの貞操の危機がなくなったのなら、少しは落ち着いて待っていられそうだった。
「かすり傷で良かったよ」
「・・・面倒掛けて、すみません」
ナルトが一人で気を揉んでいたその頃、サクラはカカシに支えられて何とか足場の安定した場所にたどり着いた。
皆との間に距離が開き、早く追いつこうと急ぎ足になったところに熊と遭遇するなど、運が悪いとしか言いようがない。
何とか応戦したものの、カカシが来なければ、かすり傷などではすまなかったはずだ。
サクラの荷物を取り払って上着を脱がせたカカシは、消毒のための薬品を持って彼女に向き直る。
「あのー、サクラ?」
「・・・・」
カカシが何を言いたいのか分かっていたが、サクラは脱いだ上着でしっかり上半身を隠していた。
熊の爪にやられた傷は胸元にあり、肝心の部分を隠しているようでは治療が出来ない。「ほら、早くしないと周りが真っ暗になっちゃうよ。ナルト達だって心配してるだろうし」
あるかないか分からない平らな胸を、どうしてそこまで必死にガードするかカカシには理解不能だ。
カカシが強引に両腕を掴んで振り向かせると、真っ赤な顔のサクラは瞳を潤ませる。
「だ、だって・・・、恥ずかしい」
涙目のサクラに上目遣いで見つめられたカカシは反射的に手を離してしまった。
胸に、妙な痛みが走った気がする。
「・・・カカシ先生?」
自分に背を向けたカカシに、怒らせてしまったのかと、サクラは不安げに声をかけた。サクラは自分の好みの範囲外。
深呼吸をしたカカシは何度も自分に言い聞かせる。
しかし、胸を隠して恥じらう少女は、豊満な胸をさらけ出せる場慣れした女とはまた違った魅力的があるかもしれない。
少しでも後ろを振り返れば決意が揺らぎそうで、カカシはなかなかサクラの呼びかけに応えることが出来なかった。
「サスケー、どーいうことだよ、あれはー」
翌朝、予定通りに宿を出発した七班だったが、ナルトはサスケを睨んで問いかける。
彼らの視線の先には本を読みながら歩くカカシがおり、いつも通りの光景だ。
問題はその本のタイトルだった。
ウラジミール・ナボコフ原作の『ロリータ』。
今まで読んでいた本とは明らかに系統が違う。
さらに、脇を歩くサクラを見るカカシの眼差しも妙に熱をおびているような気がした。
「・・・・まずいかもしれない」
どういった心境の変化なのか不明だが、どうやらカカシのターゲットの幅が広がったのは確かなようだった。
あとがき??
サクラが怪我をしてるので、その場では我慢したようですよ。
今後はどうなるか・・・・。
(おまけSSシリーズ 354)『四人暮らし?』
一人暮らしを始めたというサクラの家を訪れたいのは、まず、彼女が飼っているという三匹の猫と対面した。
いのを見ても、あまり興味がなさそうに通り過ぎた黒猫がサスケ。
挨拶をするようにすり寄り、気軽に体に触らせてくれるオレンジ色の毛の猫がナルト。
サクラの膝の上からけして離れない左右瞳の色が違う銀色の猫がカカシだ。
サクラの身近にいる人間の名前をつけたらしいが、それぞれの特徴によく合っている。「妙な宗教の勧誘や押し売りが来ると追い返してくれて、結構役に立っているのよー」
猫カカシの背中に手を置くサクラは、いのに笑顔を向けて言う。
「でも、こんなにいたら餌代とか大変なんじゃないの?」
「んー、それが、私のいないうちにママがいろいろ食材を冷蔵庫に入れて置いてくれるみたいで、平気なの」
「ふーん」
麦茶を口に運ぶいのは、うろうろと歩く猫ナルトを目で追いかけながら頷いた。
「掃除や洗濯もしてくれるんだけど、電話をかけると、そんなの知らないって言うのよ。何でかしら」
「それぐらい自分でやったら?」
「このごろ仕事が立て続けに入って忙しかったんだもの」
頬を膨らませたサクラは、上目遣いにいのを見やる。
「あ、そうそう。すぐ下のコンビニに超美味しいアイス売ってるのよ。ちょっと買ってくるから待っていて」
「別にいいわよ。面倒でしょ」
「近くだから。そのあと適当にお昼ご飯食べに行きましょうよ」
猫カカシをどかして立ち上がったサクラは、サンダルを履いてばたばたと駆けていく。
その間に、トイレを借りたいのは、出てくるなり仰天した。
洗濯機の前に立つナルトが、洗剤を入れてタイマーをセットしている。
「あ、いの、ちょっとキッチンにあるタオル持ってきてよ。一緒に洗っちゃうから」
「う、うん」いつの間に来たのだろうかと考えながら、キッチンに向かったいのは思わず足をすくませる。
サスケが包丁で野菜を切り、カカシが鍋の湯の中にパスタを入れてゆでていた。
「いのちゃん久しぶりー」
「こ、こんにちは」
「タオルはそこだ」
サスケに促され、タオルを持ったいのはいそいそとナルトの元へと戻る。
先程までサクラと二人きりだったはずが、妙に人口密度が高くなったようだった。
「ただいまーー」
コンビニの袋を持って帰ってきたサクラは、きちんとテーブルに用意された昼食を見て目を丸くする。
「いのってば、作ってくれたの?」
「えっ、う、うん・・・・」
「洗濯まで!別にそんなことしなくていいのにー。でも有り難う」
「い、いいのよ」
額から汗を流すいのの足下では、三匹の猫がニャーニャーと鳴いている。
サクラは自分の留守中に母がいろいろと家事をやっていると思っているが、おそらくそれは間違いだ。「あのさー、サクラ、一人暮らしを始めてどんな感じ?」
「え、楽しいわよ、凄く」
パスタを食べるサクラに笑顔で言われれば、真相を話す気を無くしてしまう。
「猫もパスタ、食べるんだ・・・・」
「私の食べてるものばかり欲しがるの。最近の猫ってグルメよねー」
机の下の三つの皿には同じようにパスタを盛ってあり、三匹もせっせと食事をしていた。
今のところ猫達との生活は順調なのだから、何か弊害が出てから話せばいいのかもしれない。
「サクラの家に行ったんだろ。一人暮らしで大変だって言ってか?」
その日の夕方、花屋に顔を見せたシカマルに訊かれ、いのは難しい顔で考え込む。
あれが一人暮らしと言うのかどうかは、はなはだ疑問だ。
「・・・・四人だから、平気みたい」
あとがき??
駄文の部屋にある『一人暮らし?』の続編です。
元ネタはハレグゥのレベッカとポクテの関係かもしれない。
もっと猫とニャンニャンする(?)エロい内容だったんですがさわやかに(?)終わらせてみました。
(おまけSSシリーズ355)『君という名の翼』
「どうか私達の国に残ってください」
一つの任務を終える頃には随分と親しくなり、依頼主から懇願されることが多々あった。
それまで誰かに慕われる経験がなかったナルトには、何より嬉しい言葉だ。
可愛い少女に言われれば、多少なりとも心がぐらつく。
このまま留まれば、確かに幸せな人生を送れることだろう。
だが、謝罪の言葉と共に、ナルトが彼らに言う台詞は最初から決まっている。「俺は木ノ葉隠れの里で、火影になるって決めているから」
国に戻り、報告書を提出したナルトは、少しばかり後悔のため息をついた。
任務地でどれだけ感謝されても、木ノ葉隠れの里ではただの中忍の一人。
また多忙な毎日が待っている。
やっと一息ついたというのに、明日は早朝から仕事が入っていた。「ナルト」
廊下をとぼとぼと歩いていたナルトは、その呼びかけに反応してすぐさま振り返る。
火影の執務室から出てきたのか、資料のファイルをいくつか抱えるサクラはナルトに駆け寄った。
「戻ってたんだ」
「う、うん。2時間ばかり前に」
「怪我とか病気とか、しなかった?前は熱を出したんでしょう。いつもお腹出して寝てるから」
「今度は平気だってば。みんないい人だったし、お土産も沢山もらったよ」
「そう」
ナルトの体を心配そうに見ていたサクラは、何も変わったところがないと分かると、ようやく表情を和らげた。
「お帰りなさい」
サクラの声には、他の誰に言われるのとも違う、響きがある。
サクラの微笑みを見るたびに、どれだけ彼女を好きなのか、思い知らされる気がした。
そして、自分が帰る場所は何があっても、サクラのいる、木ノ葉隠れの里なのだと再確認してしまう。
いや、彼女がいてくれるならば、国はどこであっても構わないのかもしれない。
鼓動が早くなり、頬が赤くなるのを意識しながら、ナルトははにかんだ笑みを浮かべた。「ただいま」
あとがき??
サクラちゃんはナルトの心の故郷というか、港なのですよ。
あたたかく迎えてくれる場所あるから、また遠くに旅立てる。
16歳設定くらい?
341〜355まで載せてみました。
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