(おまけSSシリーズ356)『介護?』

 

任務を終え、ヤマトやサイと別れたあとサクラはナルトと肩を並べて歩いていた。
ナルトは笑顔で話していたが、どうしても気になる。
少々ぶしつけだとは思ったが、会話が途切れたときにサクラは意を決して切り出した。
「ナルト、あんた昨日お風呂に入った?」
「え、入ってないけど」
「じゃあ、前に入ったのはいつなの」
「えーと・・・・」
指折り数えだしたナルトは、真剣な表情で考え込む。
「1週間・・・前?」
声にならない叫び声をあげたサクラは、とたんにナルトから3メートル離れた場所に移動した。
道理で妙な臭気がするはずだ。
多少涼しくなったとはいえまだ暑い日もあるのだから、当然汗はかいている。

自来也といた頃のナルトは山にこもって修行することが多く、一ヶ月以上風呂に入らないことはざらだった。
川で水浴びはしたが、冬になるとそれも辛い。
麓の村で温泉を使わせて貰い、それ以外は濡れたタオルで体を拭く程度だ。
里に戻った今は家に風呂があるのだが、ついついそれまでのように入るのを忘れてしまっていた。

 

 

「犯されるーーーーーーーー!!」
「変なこと言わないでよ。近所の人が誤解するでしょう!」
ナルトの服を強引に脱がしたサクラは、最期の一枚のパンツも無理矢理引き剥がした。
あとは裸のナルトを風呂場に放り込み、頭から湯をかぶせる。
ナルトの家より自分の家の方が近いと思ったサクラは彼を引っ張り込んだわけだが、もちろん下心は一切ない。
綺麗好きのサクラにすれば、不潔の塊のようなナルトが同じ班にいることが耐え難かっただけだ。

「あんた、どれだけ体洗ってないのよ。信じられないわ!」
「ひーーー!」
石けんを付けたタオルで力一杯肌を擦られるナルトは、あまりの激痛に悲鳴を上げる。
皮が剥がされるかと思ったが、彼の体から出てくるのは長い間こびりついていたアカの山だ。
烏の行水のナルトは今まで風呂に入った際もまともに洗わずに出てきていたらしい。
「ま、ま、前は自分で洗うから!」
「恥ずかしがらなくていいわよ、見慣れてるから。こっち向きなさい」
衝撃的なサクラの発言に目眩がしたナルトだったが、医療術を学ぶ彼女は以前から病院の手伝いをしていた。
介護が必要な老人の入浴に付き添ったことがあるため、ナルトの髪を洗う手つきも堂に入っている。
体の隅々までばっちり見られてしまったナルトの傷心などサクラのあずかり知らぬことだ。

「よし、もう出てもいいわよ!」
「・・・・・はい」
半袖短パン姿で一仕事を終えたサクラは、手の甲で額に滲んだ汗を拭った。
完璧に磨き上げられたナルトは渡されたタオルを握りしめて打ち拉がれている。
涙が止まらないのはおそらく、擦られて真っ赤になった皮膚が痛むせいだけではなかった。

 

 

「え、何、あんなとこやそんなところを全身くまなく見られた上に触られて、恥ずかしかった?」
シクシクと泣いて語るナルトに、ベッドに横たわるカカシは眉をひそめる。
病院で療養中のカカシでさえ、そうしたことはやってもらったことはない。
さらにナルトは洗濯した服が乾くまでサクラの部屋着を着せられ夕食をご馳走になったとのことだ。
「羨ましいじゃないか」
思春期の少年の心の機微は全く伝わらなかったようで、ナルトの泣き声は一層大きくなっていた。

 

あとがき??
なんかこう、発作的に書いた。サクラは一人暮らし設定らしい。

 

 

(おまけSSシリーズ357)『どんな関係ですか?』

 

「それでね、その子がサクラのこと紹介して欲しいって言ってるのよ」
「・・・・えっ?」
店先の花を眺めつつお喋りを続けていたサクラは、突然話題を変えたいのに、目を丸くする。
その子というのはいのの従兄の少年でサクラも花屋を訪れたときに何度か見かけていた。
つまり、彼はいのを通してサクラと親しく交際したいと伝えているらしい。
「どうするー?」
「そ、そんなこと言われても・・・、ええと」
しどろもどろになったサクラの思考は、店先を横切った人物を見るなり一時的に停止した。

「・・・・サクラ?」
怪訝そうに呼びかけたいのは、ゆっくりと移動するサクラの視線を追ってその方角へと目を向ける。
「あ!!!」
硝子窓越しに見えたのは、カカシが一楽の看板娘であるアヤメと楽しげに歩く姿だ。
いつの間にそうした仲になったのかと首を傾げると、サクラが険しい表情でいのを見据えている。
「いの、さっきの話、進めてくれる!?」
「・・・・えっ、ああ、うん」
自分の切り出した従兄の話を忘れかけていたいのは、慌てて首を縦に動かした。
目つきの鋭いサクラは妙に威圧感がある。
サクラが何故豹変したのかは不明だが、取り敢えず従兄の喜ぶ顔は見られそうだった。

 

 

「先生―、昨日、見たってばよ!アヤメのねーちゃんといい雰囲気だったよねー」
任務終了後、意味ありげに笑ってカカシを見上げたナルトの一言に、サクラは思わず片眉を上げる。
「ハハハ、見られちゃったかー」
ナルトの頭を乱暴に撫でたカカシは、にこにこと笑って先を続けた。
「でもな、アヤメさんとは別に何でもないから」
「えー、そんな感じじゃなかったってばよ」
「事情があるんだよ」

昼食を取るため、一楽に立ち寄ったカカシはアヤメからある相談を受けたのだ。
以前店に通っていた客の一人にストーカーめいた行為をされ、困っているらしい。
顔は何となく覚えているが名前も分からず、存在を匂わせるだけでアヤメの前にはあまり出てこない。
そして偽の恋人役を頼まれたカカシは、ラーメン代を一週間無料にするという提案に一も二もなく飛びついた。
いとしい彼女が他の男といちゃつけば、こそこそと隠れて様子を窺っていた客はすぐに姿を現す。
カカシがクナイを突き付けて散々脅かしたため、もう二度と彼女に近寄らないはずだ。

 

「なんだー、そういうことだったのかー」
「ちょっと、どうしてくれるのよ!!!」
唐突に二人の間に割り込んだサクラは、目くじらを立ててカカシに詰め寄った。
「え、な、何が?」
「私、いのの話、OKしちゃったじゃないの」
そう言われても、カカシとナルトには何のことだかさっぱりだ。
サクラはいのの従兄に交際を申し込まれた話をうち明けたのだが、ナルトは怪訝そうに眉をひそめる。

「その話とカカシ先生に彼女が出来たことと、何の関係があるの?」
「・・・えーと、ほら、焦っちゃったのよ」
サクラ自身でもよく分かっていないことを質問され、彼女は適当に言い繕う。
「先生みたいはずぼらで遅刻魔の人にも恋人がいるのに、美少女くノ一の私が一人って理不尽じゃない」
「はあ・・・」
納得いかないナルトの横で、カカシはにっこりと微笑んでサクラの肩に手を置いた。

「断るんでしょう」
「えっ?」
「誤解が解けたんだから、いのちゃんの持ってきた話は断るんでしょう」
「でも、いのにも悪いし、一度お茶をするくらいなら・・・」
サクラが言葉を濁すと、カカシは俯く彼女の腕を強引に引っぱる。
「大丈夫だよ。俺も一緒にいのちゃんのところに行ってあげるから。じゃあ、善は急げと言うことで」
「ちょ、ちょっとカカシ先生」
サクラの返事を待つことなくカカシはいのの店に向かって歩き始め、ナルトは呆然と二人の後ろ姿を見送る。
「・・・なんか、怖かったってばよ」

顔は笑っているのに、カカシの眼光は異様に鋭かった。
サクラに恋人が出来たら出来たでまたカカシには関係ないことだとナルトは思うのだが、違うのだろうか。
サクラもカカシも無自覚に行動しているのだから、第三者のナルトにその理由が分かるはずもなかった。

 

あとがき??
・・・・あれ、カカサク??
あんまり関係ないですが、第二部設定なんです。サイがいないな。
元ネタは『結婚できない男』です。好きなんだなぁ、このドラマ。

 

 

(おまけSSシリーズ358)『恋文』

 

自分が望んで、綱手のもとへ弟子入りしたのだ。
後悔はなかったが、その日のサクラの足取りは重かった。
医療術を会得するために必要な書物は山のようにあり、チャクラのコントロールにも細かい神経を使う。
朝早く起きて火影執の務室へ向かい、図書館で知識を頭に詰め込んで帰宅したあとは、泥のように眠るのが日課だ。
少しばかり疲れが溜まっているのかもしれなかった。

 

「あら?」
郵便受けを覗くと、そこに一枚の絵はがきが入っている。
差出人は不明だ。
汚い文字でサクラの家の住所が書かれ、ただ一言『元気!』というメッセージが書かれていた。
思わず吹き出したサクラは、そのまま明るい笑い声を立てる。
確かに手紙を書けとは言ったが、短すぎる内容と書き忘れた名前が何とも彼らしかった。
「元気、かぁ・・・・」
絵はがきは南の国で出されたもので、サクラは修行中の彼のことを頭で思い描く。
他のどんなメッセージよりも、彼の現状が伝わってくるような気がした。

「頑張るよ、私も」
絵はがきを胸に押し当てたサクラは、囁くように言う。
先程まで暗い気持ちはどこかに消えてしまっていた。
たとえ側にいなくても、彼の存在は十分にサクラに力を与えてくれる。
『元気!』という言葉は、彼のことだけでなく、自分への励ましのために書かれたように思えたサクラだった。

 

あとがき??
修行中のサクラの話。ナルチョ、ちゃんと手紙を出していたらいいなぁ。
帰る時間が不規則なので、一人暮らしをしているようですよ。

 

 

(おまけSSシリーズ359)『好きです』

 

初めて会ったときから、妙にナルトに絡む奴だとは思っていたのだ。
そして、サクラがナルトと話していると必ず割って入ってくる。
サイのナルトに向ける眼差しがただならぬものだと警戒していたサクラは、ある日ついに決定的証拠を目にした。
「・・・これは」
隙を見てサイの荷物をあさったサクラは、中から出てきた写真の数々に愕然とする。
どれも任務に励むナルトを写したもので、隠し撮りをしたらしく、視線は逸らされていた。
サクラの疑惑が確信に変わった瞬間だった。

 

「ねぇ」
任務の休憩時間、スケッチブックに絵筆を走らせるサイの傍らにサクラは腰掛ける。
彼女の視線の先にはヤマトと談笑するナルトがおり、おずおずとした口調で切り出した。
「もしかして、好きなの?」
「えっ・・・・」
無表情なサイの顔に動揺が走ったのを見て、サクラはごくりと唾を飲み込む。
やっぱりだ。
好意を持っていなければ、ナルトの写真を後生大事に持ち歩いているはずがない。
心なし頬を赤くしたサイは、絵筆を置き、サクラの顔を真っ直ぐに見つめ返した。

「サクラさんは、ナルトくんのことどう思ってるんですか?」
サイの真剣な眼差しに多少たじろぎながら、サクラは負けじと彼の顔を睨み付ける。
「ナ、ナルトと私の間に、あんたの入る隙間なんてないわよ!よけいなちょっかい出さないでよね」
サイの魔手から何としてもナルトを守るのだ。
彼のような根性悪と付き合ってもろくなことはない。
サクラに握り拳を突き付けられても、サイの顔にはいつものように、感情の読めない笑みが広がっている。
「僕は諦めませんよ」

 

 

一人暮らしをするサイは料理があまり得意ではなく、食事は外食が多い。
任務を終えたサイは行きつけとなった一楽に向かったが、その夜は先客が居た。
「こんばんは」
「ああ、久しぶり。最近顔を見せなかったな」
「仕事が立て込んでいたもので・・・・」
サイに隣りの席を勧めたのはナルトの親代わりであるイルカだ。
度々この場所で顔をあわせる二人は、近況を互いに報告しあう間柄になっていた。
普段は取っつきにくいサイも、穏和な人柄のイルカには珍しく心を開いているようだ。

「ああ、そうだ。これ、頼まれていたものです」
「有り難う!!」
サイの差し出したアルバムをイルカは嬉々とした様子で受け取る。
任務中のナルトの写真が収まったアルバムは、近頃イルカと会う機会がなかったため、ずっと鞄に入っていた物だ。
保護者の立場として、イルカはいつもナルトのことを気に掛けているが、任務先までくっついていくわけにはいかない。
同じ班のサイの情報は大変有り難かった。

 

「そういえば、君は絵を描くんだよな。見ていいかい?」
サイの鞄の脇に置かれたスケッチブックに目を留めると、イルカは彼の了解を得てから中を開く。
一枚、二枚と見ていくうちに、イルカはあることに気づいた。
抽象的な絵も何枚かあるが、新しいものはナルトやサクラ、主にサクラを描いたものが多いようだ。
「・・・・サクラのことが好きなのか」
「仲良くなりたいんですけど、何でかいつも怒らせてばかりなんですよね」
小さくため息をついたサイを、イルカは同情の眼差しで見つめる。
「年頃の女の子は気むずかしいからなぁ」

 

あとがき??
サイサクを読みたいというご意見を頂いたので書いてみました。
何だか、「すきです、極丸さん」←『こいつら100%伝説』を思い出しました。
可愛いナルトを巡ってのライバルなので、原作でのサイとサクラはあまり仲良くならないと思います。

 

 

(おまけSSシリーズ360)『獲得したもの』

 

「カカシ先生、あれが欲しい」
サクラに腕を引かれて立ち止まったカカシは、ゲームセンターの入り口に置かれたクレーンゲームへ目を向ける。
サクラが近頃集めているクマのぬいぐるみが景品だ。
「お店で買ってあげるよ」
「あれはゲームでしか取れない非売品なの!お願い」
両手を合わせたサクラに可愛らしくおねだりをされれば、カカシに断ることが出来るはずがない。
コインを入れてスタートボタンを押したしたものの、初心者のカカシにはこれがなかなか難しかった。
ぬいぐるみを何とかつり上げても、途中で落下して取り出し口まではたどり着かない。
「先生、頑張って!もう少しよ」
サクラが声援を送り、知らぬうちに熱中していたカカシは、一つのぬいぐるみのために随分な金額を使ってしまう。
ようやくぬいぐるみが手に入ったときは、思わずサクラと抱き合って喜んでしまった。

「はい」
「有り難う」
ぬいぐるみを手渡すと、サクラはカカシを見上げて嬉しそうに微笑んだ。
よほどクマのキャラクターに入れ込んでいるのだな、と思ったカカシだが、サクラの笑みの理由は別のところにある。
いつも飄々とした態度を崩さないカカシの、意外な一面を見てしまった。
「何?」
くすくすと笑うサクラに、カカシは不思議そうに訊ねる。
「ううん、何でもない」
大の大人に「可愛い」と言うのは憚られ、ぬいぐるみを抱えるサクラはカカシの腕に自分の手を絡ませる。
これから長く付き合えば、もっと意外な彼の素顔が見られるかもしれない。
年の差もあり、遠い存在だと思っていたカカシが一歩近くに来てくれたようで、どうしても顔が綻んでしまうサクラだった。

 

あとがき??
カカサクデート風景。ぬいぐるみだけでなく、サクラのハートもゲットしたカカシ先生でした。
カカサク好きだーーー!!!

 

 

(おまけSSシリーズ361)『ツイスターマイスター』

 

「・・・・お前、今度は何をしたの?」
ボコボコに殴られて顔面を腫らしたサイを見て、ナルトはげんなりとした口調で言う。
また無神経にサクラを怒らせる発言をしたのだろう。
サクラの機嫌を損ねると自分までとばっちりを受けるため、正直やめて欲しかった。
「もうサクラちゃんには近寄らない方が・・・・ギャーーーー!!!!!」
忠告している最中、サイの顔がすぐ間近に迫っていることに気づいたナルトは、悲鳴を上げて後退る。
危うく、セカンドキスまで男に奪われるところだった。

「な、な、な、何するんだってばよ!!!新手の嫌がらせか!」
「・・・・ちょっと試してみようと思っただけですよ。おかしいな」
激高するナルトを見たサイは首を傾げて手に持っていた書物を広げた。
コミュニケーションの方法について書かれたもので、挨拶としてのキスの挿絵があったが、どうやら外国の書物らしい。
サイの後ろから眉を寄せてそれを眺めたナルトはハッとなる。

「お、お前、もしかして、サクラちゃんにも同じことを」
「ええ。ファーストキスがどーのって、騒いでいたような・・・それで思い切り殴られて」
サイは無表情のまま腫れた頬に手を当てる。
「やり方を間違えたのかと思って、もう一度君で実験しようと思ったんだけれど・・・ナルトくん?」
ふと目をやると、握り拳を作ったナルトの体が小刻みに震えていた。
「・・・殺す」

 

 

「みんな、今日はカカシ班の親睦を深めるためにいいもの持ってきたぞー」
少しばかり遅刻して集合場所にやってきたヤマトは、とっくみあいの喧嘩をするナルトとサイを見て目を見開く。
仲裁係のはずのサクラも、何故か二人の様子を傍観しているだけだ。
「な、何があったんだ、サクラ」
「それより、何を持ってきたんですか?」
「ツイスターゲーム・・・」

 

あとがき??
とぼけた話になってしまった。カカシ先生のいないカカシ班、結構好きかもしれません。
サイサク、好きな人が多いようだったので、第二弾でした。

 

 

(おまけSSシリーズ362)『いやな奴』

 

9月も半ばを過ぎたが厳しい残暑が続き、カカシ班は川に涼みにやってきていた。
服の裾を捲ったナルトとサクラは川岸で水遊びをしている。
カカシは手頃な岩に腰掛けていつもの愛読書を読んでいる、と見せかけて、目は字面を全く追いかけていない。
本を素通りしてカカシが眺めているのは、サクラのすらりとした足だ。
締まった足首や白い太股を見ていると、年頃の少女は独特な脚線美があるものだと思ってしまう。
もちろん、足だけでなく、服に隠れた他の部分も見てみたい。

今日はサクラを誘って何か食べて帰ろう。
そのあとは何か上手く理由を付けて家に引っ張り込めばいい。
そんな邪なことを考えていたため、自分を凝視するサイに気づくと、カカシは思わずびくついてしまった。
彼はナルト達にまじらず、先程から妙な抽象画を描き続けていたようだ。
「な、何?」
「・・・今考えていたこと、当ててみましょうか」
サイは感情のこもらない微笑みを浮かべ、カカシは唾を飲み込む。
「今日の夕食の材料は木ノ葉ストアで買って帰ろうと思っていましたね」
見当違いなその返答に、岩からずり落ちそうになったカカシだったが少しホッとした。
「あー、そうそう、そんな感じ」

 

「二人とも、何楽しそうに話しているのよ」
水から上がったサクラは、濡れてしまった裾を絞りつつ訪ねる。
「彼の考えていることを当ててみせたところなんだ」
「そうそう、よく当たるんだよ」
「へー、どんなこと?」
「君を夕食に誘って、その後家に連れ込んで無理矢理
××で○○をしようとしてるみたいだよ」
先程と違い、的確に頭の中の妄想を言い当てたサイにカカシは悲鳴を上げそうになった。
目を細めたサクラは、焦るカカシに冷ややかな眼差しを向けている。
「・・・・最低」
「さ、サクラ、サイが勝手に言っているだけで、俺は別にそんなやましいことは・・・」
「じゃあ、何でそんなに動揺しているのよ」
言葉に詰まったカカシから、サクラはぷいと顔を背けた。
「先生なんかとご飯食べにいかない!」

こうして、サイの告げ口(?)のために、サクラと楽しい時間を過ごす計画はふいになってしまった。
サクラはさっさとナルトのいる川岸に戻り、カカシが半眼でサイを睨んでも、彼は涼しい顔をしている。
「・・・お前、いい性格してるな」
「有り難うございます」
にっこりと微笑んで応える彼には嫌味も通じないらしい。
「何で分かったんだよ」
「ボクも貴方と同じことを考えていたからですよ」

 

あとがき??
サイ・・・・苦手なキャラのはずなのに、書きやすいんですけど・・・。
これはいつなんだとか、聞かないように。

 

 

(おまけのその後)

「サクラさん、今日はボクと何か食べに行きませんか」
「いいわよ」
サイの誘いにサクラはあっさりとOKの返事をし、カカシは目を大きく見開いた。
「だ、だ、駄目だよ、サクラ!!こいつについていったりしたら、サクラ、襲われちゃうって!」
「・・・何よ、先生とサイを一緒にしないでよね」
サイがカカシの妄想を当てたことをまだ根に持っているのか、サクラは冷たい口調で言う。
「サイはそんなことしないわよ。だって、サイはナルトのことが好きなんだもの」

サイはサクラの言葉を否定せず、ただ笑っていた。
獲物が油断していた方が料理しやすいに決まっている。
先程とは逆に、サイの考えていることが手に取るように分かり、カカシは怒りで頭の血管が切れそうになる。
「男はみんな狼なんだって!!こんなやつ信用しちゃ駄目だ」
「嫌だ、離してよ!」
腕を掴まれたサクラは、痛そうに顔をしかめた。
「何でそんな風に思うのよ。チームワークを大切にしろって、先生が言ったことじゃない!」
カカシの説得は逆効果だったらしく、サイの後ろに隠れたサクラはカカシを睨み付けている。
「サクラァ・・・・」

どんなときもニコニコと、得体の知れない笑みを浮かべているサイ。
それが、いつになく楽しげに見えるのは、カカシの気のせいではないはずだった。

 

あとがき??
本当に終わり。サクラ、どうなったんだろうなぁ・・・・。

 

 

(おまけSSシリーズ363)『口説いてます』

 

「どおー?」
「うん、落ち着いた色合いで、いいんじゃない。男の人にあげても大丈夫そう」
自分の作ったブーケを褒められたいのは、にこにこと嬉しそうに笑う。
「そうなのよ。これのコンセプトは、男の人が持っていても恥ずかしくないブーケなの」
「へー」
「まだうちのママみたいに上手く出来ないけどね。これ、サクラにあげる」
「えっ」
いのにブーケを差し出されたサクラは、驚きの声をあげた。
買い物のついでに花屋に寄っただけで、今日はとくに花を購入する予定はなかったのだ。
「でも・・・」
「お金はいいわよ。練習用の花だし、いらなければ好きな人にでも渡して」

 

 

買い物袋を片手に、ブーケを抱えるサクラはきょろきょろと首を動かしながら歩いていた。
これからまだ何軒か店を梯子する予定なため、綺麗だがブーケが邪魔なのだ。
いのの言葉のとおり、知り合いがいればプレゼントするつもりだったが、今日にかぎって誰もいない。
諦めて家に帰ろうかと思ったとき、サクラは人混みの中に担任の姿を見つけ、顔を綻ばせる。

「カカシ先生――!」
すぐさま駆け寄ると、愛読書から目を離したカカシはサクラを見て柔らかく微笑む。
「あれ、サクラも買い物?」
「うん。ねえ先生、これからどこに行くの?」
「本屋で立ち読みして、もう家に帰るところだよ」
カカシの返答に、サクラはにんまりとほくそ笑んだ。
「カカシ先生にこれ、あげる!」

渡されたブーケをつい受け取ってしまったカカシは、不思議そうにサクラの顔を見つめた。
今日は誕生日でも何かの記念日でもなく、ただの休日だ。
「・・・何で?」
「いのに、好きな人に渡せって言われたからよ」
口にしてから、サクラは「あれ?」と思った。
好きな人というのは「好きにすれば」という意味合いなのだが、これでは違うように聞こえるのではないか。
まるで愛の告白のような・・・。

 

とたんに顔を真っ赤にしたサクラは、慌てて首を横に振る。
「ち、ち、違うわよ、好きって、別にそういう好きじゃなくて、あの、私は・・・・」
「有り難う」
猛烈な勢いで言い訳するサクラを気にした風もなく、カカシは嬉しそうに微笑んだ。
「あげたことはあるけど、人に花をもらったのなんて初めてだよ」
「え、そ、そうなの・・・」
しどろもどろと答えたサクラは、まさかこれほど喜ばれるとは思いもしなかった。
もらい物であることや、屈託のない彼の笑顔につい見入ってしまったことは、絶対に言えない。
先程よりも頬を赤くしたサクラは、はたと気づく。

「先生が花をあげた人って、やっぱり女の子?」
「えーー?」
視線を逸らして誤魔化したカカシを見て、サクラは「やっぱり」と思う。
「男の人が女を口説くときに花をプレゼントするって本当なのね。一体何人の人にあげたのかしら」
「・・・サクラ、なんか怒ってる?」
「別にー」
すねた口調で後ろを向いたサクラに、カカシはくすくすと笑い声を漏らした。
優しく頭を撫でられれば、サクラは嬉しいような恥ずかしいような、変な気持ちになる。
「じゃあ、今度はサクラにプレゼントしてみようかな」

 

あとがき??
ほんのりカカサク。

 

 

(おまけSSシリーズ364)『どっち?』

 

カカシの遅刻癖は仕事のときもデートのときも同じだ。
少しは悪いと思っているのか、30分以内にやってくるが、それでもサクラは面白くない。
本当にサクラを想っているなら、時間より前に到着しているはずだ。
だからサクラはカカシの愛情を確かめてみることにした。
好きな気持ちが強ければ、絶対に間違えるはずのない簡単なテストだった。

 

「おまたせーー・・・、あれ?」
20分ほど遅れて待ち合わせの橋までやってきたカカシは、弁解の言葉を口にする前に、首を傾げた。
サクラが、二人いる。
服装も背格好もまるで同じサクラが、カカシを見つめてにっこりと微笑んだ。
「「どっちが、本当の私か分かる?」」
声まで重なって聞こえる。
「どーいうこと?」
「「片方はナルトなの。まさか、恋人を間違えたりしないわよねー」」
「・・・・・」
どうやら、試されていると分かったカカシは、腕組みをして考え出した。
「「もし間違えたら絶交だから」」
二人のサクラに真面目な顔で言われてしまっては、カカシとしても本気にならざる得ない。
しかし、一人がナルトとは思えないほど、サクラは瓜二つだ。
見かけだけでなく、ちょっとした仕草や、微笑むときの表情など、まるで同じ。
年中サクラのことを見つめているナルトだからこそ出来る擬態かもしれない。

「えーとね、キスしてみればすぐ分かるんだ。サクラの唇って本当に柔らかいから」
「「えっ?」」
カカシが右側のサクラの肩に手を置いて顔を近づけると、左側のサクラの顔が瞬時に強張る。
「だ、駄目―――――!!!!カカシ先生の馬鹿―!!」
思わず握りこぶしを作って絶叫すると、ぴたりと動きを止めたカカシがにやりと笑った。
「君が本当のサクラでしょ」
謀られたと分かったときにはもう遅い。
顔を赤くしたサクラは、口を尖らせてそっぽを向いた。
本物のサクラにキスをすれば正解で、偽者のサクラにキスをしようとすれば本物が騒ぎ出す。
カカシの作戦勝ちだ。

 

「先生なんか嫌いよ!」
「俺は大好きだよー」
にこにこ顔のカカシはサクラを後ろから抱き締めて言う。
まるで自分がカカシへの愛情をテストされたようで、よけいにイライラが募ってしまったサクラだった。

 

あとがき??
またサクカカっぽいですね〜。

 

 

(おまけSSシリーズ365)『いじわるな気持ち』

 

「ねえねえ、ヤマト隊長って、サクラちゃんのこと好きなの?」
小首を傾げたナルトの唐突な質問に、ヤマトは動揺を押し隠して笑顔を作った。
「・・・ナルトやサイのことも同じように好きだよ。何で?」
「なーんか、サクラちゃんのこと見てるような気がして。俺の気のせいかー」
ナルトは何故かがっかりした様子で視線をそらす。
「ヤマト隊長と一緒だったら、2対1でサクラちゃんに勝てるのになぁ・・・・」
どういう理屈なのか分からないが、ナルトは恋のライバルを蹴落とそうという気持ちは無いらしい。
普段は鈍いナルトも、サクラに関することだけは意外と鋭い洞察力を発揮するようだ。

 

「ヤマト隊長!」
その日の任務終了後、サクラに呼び止められたヤマトは、少し緊張して振り返った。
先程ナルトに妙なことを訊かれたために、変に意識してしまう。
「あの、ちょっとお話が・・・・。今日、時間あります?」
「別に、いいけど」
ヤマトの返事を聞いて、サクラはにっこりと微笑む。
「ヤマト隊長、甘い物大丈夫ですか?この近くに美味しいあんみつ屋さんがあるんですけど」

とくに甘い物が好きというわけではなかったが、彼女の微笑みを見てしまっては、断る気にならない。
サクラに従ってその店に入ったヤマトは、適当に注文をすますと、居住まいを正して彼女に向き直った。
「それで、話っていうのは?」
「・・・・・あの、その」
赤い顔で俯かれてしまっては、その先の言葉を嫌でも期待してしまう。
「ヤマト隊長、暗部にいたんですよね。そこでカカシ先生と一緒に仕事もしていたって・・・」
「ああ」
「あの、カカシ先生、自分のことあんまり喋らないんです。そのときの先生のこと教えてくださいますか」
「・・・・」
どうやら、ヤマトが思っていたのとは違う方向に話は進んでいたようだった。

 

 

「おそーーい」
病室に入っていくと、枕を投げられた。
体は大分回復しているらしく、カカシはベッドの上で腕立て伏せをしていたらしい。
臨時の隊長であるヤマトの仕事は、そろそろ終わりが近いようだ。
「ちょっと、用事があったんですよ・・・」
「今日のサクラはどんな感じだったー?ちゃんと元気にしてた??」
「・・・先輩、いつもサクラのことを最初に聞きますよね」
「そう?」

カカシはヤマトから顔をそむけてとぼけている。
サクラの話を聞きたがるカカシと、カカシの話を聞きたがるサクラ。
お互いに気づいていないようだが、両想いらしい。
無難に彼の活躍を話したヤマトだったが、女遊びが激しかった話もすればよかった。
「グループ内での交際は火影様が禁止していますよ。任務に支障を来しますから!」
少々厳しい口調で言うと、カカシは目を丸くする。
「何、突然」
「・・・・別に」

 

あとがき??
ヤマサクを読みたいーvというご意見があったので書いてみたのですが・・・。
カカサク←ヤマになってしまった。
ああ、可愛いナルトの言葉はブリーチの織姫です。

 

 

(おまけSSシリーズ366)『夢見が丘』

 

「今日、夢にサクラが出てきたよ」
まだ、夢を見ているような眼差し呟かれた声に、サクラはどきりとした。
自分が、どのようにカカシの夢に登場したのか、非常に気になる。
サクラは続くカカシの言葉を待ったのだが、カカシは何故か忍び笑いをもらしたままだ。
「ど、どんな夢だったんですか?」
「えーとね・・・・」
もったいぶるカカシは、まだ口端を緩めてサクラを見つめている。

「サクラが俺に「結婚してくれないと死んじゃう!!このまま私を連れ去って!」って、言っている夢」
「な、な、何よ、それ!!?」
「いや〜、あんな熱烈な愛の告白初めてだったなぁ〜〜」
「ゆ、夢の中の話でしょう!!」
「そう。だからさ、現実世界のサクラだったら、どんな風に言う?」
カカシがその顔を覗き込んで訊ねると、至近距離にある彼の瞳にサクラの胸は再び高鳴った。

「・・・・カカシ先生のことが好きです」
告白を仮定しての話なのに、サクラの顔は真っ赤だ。
満面の笑みを浮かべたカカシにそのまま腕を引き寄せられたサクラは、思わず悲鳴を上げた。
「そうかー、それは嬉しいなぁ。両思いだね」
「た、たとえ話でしょうー!!」
苦しげにもがくサクラをカカシはより一層強く抱きしめる。
「うん。これは夢じゃなくて現実だもの」

 

あとがき??
蹴った空き缶が人に当たり、「わざとじゃないんです」と謝ったら「じゃあ、本気か!」と言われた感じの話。
サクラの「好き」が聞きたかったんです。

 

 

(おまけSSシリーズ367)『夢見が丘 2』

 

顔を見るなり、いきなり泣かれてしまった。
何が起きたのか分からず気が動転したカカシだったが、サクラの涙の原因は今の彼にあるわけではない。
「え、何?夢に俺が出てきたって」
手の甲で瞼を擦るサクラは小さく頷いた。
「先生が、私のこと、大嫌いって言ったのよ」
「・・・・・はぁ」
「先生、ひどい!」
そう言われても、カカシにはどうしようもない。
たが、夢とはいえ自分がサクラを傷つける要因となってしまったことは申し訳ないと思った。

「ごめん、ごめん。そんなの嘘だからねー。はい、こっち向いて」
鼻をすすりながら目線をあげたサクラは、近くにあったカカシの顔に仰天する。
よける間もなく額にキスをされ、サクラは声も出ない。
「もう悪い夢を見ないように、おまじないだよv」
「・・・・・ば」
「ば?」
「馬鹿ーーー!!!セクハラーー、痴漢ーーーー!!!」
サクラに思い切り突き飛ばされたカカシはその場で尻餅をつき、彼女は一目散に駆け出していく。
おそらく、照れているのだ。
本当に嫌ならば、「嫌い」と言われた夢を見ただけで、あれほど落ち込んでいるはずがない。

「なんか、幸せかも〜」
えへへっと笑うカカシだったが、偶然一部始終を目撃してしまったアスマは冷ややかに呟く。
「早く立て、馬鹿」

 

あとがき??
夢のことでもちゃんと謝っちゃう先生が好きです。

 

 

(おまけSSシリーズ368)『trick or treat?』

 

数年前に木ノ葉隠れの玩具屋が始めたハロウィーンの風習は、今では里全体に広がりつつあった。
カカシが町を歩くと、子供達が皆、様々な仮装をして往来をうろついている。
そして、夜になれば彼らは「trick or treat?」の言葉と共に家の扉を叩くのだ。
イタズラをされたくなければ、お菓子をよこせという脅迫の言葉だった。
もちろんカカシはお菓子を渡してさっさと帰ってもらっているが、毎年用意するのが面倒くさい。

 

「何でもかんでも、異国の真似すればいいってもんじゃないよ。悪しき風習だと思うね、俺は」
「そうかい」
「子供はねぇ、かりんとうでも食べてりゃいいんだよ。俺が小さい頃はチョコレートなんてなかったぞ」
「・・・・それは、嘘だろ」
煙草を銜えながら適当に相槌を打っていたアスマは、思わず突っ込みを入れていた。
「とにかく火の国の人間は、醤油を一升瓶で買っていた頃に戻るべきさ!」
熱心に語っていたカカシは、道を横切った子供にぶつかって立ち止まる。
誰かと思えば、何か動物の着ぐるみを身に付けたナルトだ。

「あ、カカシ先生。trick or treatだってばよー!」
「はいはい・・・」
ポケットから取り出した飴を渡すと、ナルトの顔はたちまち綻んだ。
「で、何、その格好は。狸の着ぐるみ?」
「兎だってばよ!!」
ナルトは両手を上げて抗議する。
「何、何で兎?」
「満月を見て変身するじゃん!ガオーって」
「・・・・・」
おそらく狼男と勘違いしているのだろうが、見かけが可愛いため、誰も指摘しないようだった。
人混みの中を並んで歩くカカシとアスマが、次に遭遇したのはサクラだ。

 

「あ、カカシ先生ーー」
「サクラv」
真剣に「火の国の未来」を憂えているようだったカカシは、たちまち顔を緩ませた。
黒いマントで身を包むサクラは、やはり何かの仮装をしているのだろう。
「はい、お菓子だよ〜vvサクラには全部あげちゃう」
「有り難うー」
「・・・・・悪しき風習じゃなかったのか」
「可愛い、可愛いv」
アスマの呟きを無視して、カカシは満面の笑みを浮かべてサクラの頭を撫でている。

「で、それは何の仮装なの?」
「バンパイアよ」
「でも、そんな風にマントで隠していたら下の服が見えないじゃないの」
「下は何も着ていないもの」
「・・・・・・・・」
黒いマントで体をくるむサクラを見下ろしていたカカシは、暫しの間考え込んだ。
「・・・えーと、もう一度お願い」
「マントを付けたら、下には何も着ちゃいけないんでしょう?」

 

 

ハロウィーン行列の最期には、10班の子供達も混じっていた。
魔女姿のいのに強要されたのか、シカマルとチョウジはそれぞれ魔法使い、ミイラ男に扮している。
「アスマ先生ー、サクラ見かけなかった?いなくなっちゃったんだけど」
いのが駆け寄ると、アスマは苦虫を噛みつぶしたような表情で、カカシの家の方角を見やった。
「狼男に攫われた」
「え??」

 

あとがき??
たぶん、サクラはイタズラするより、される方が似合うかと・・・。(?)
昔アニメの『ときめきトゥナイト』のEDで、蘭世が素肌にマント一枚だったらしいですよ。
蘭世は吸血鬼の娘なんですが、なんかドキドキなEDですよね。(笑)
手足だけで肝心な部分(?)は見えないとはいえ。

 

 

(おまけSSシリーズ369)『くノ一ですから』

 

「けして自分は本気にならず、相手を本気にさせることー」
くノ一の教本を声に出して読むと、マニキュアを塗っていたサクラが振り返る。
「基本中の基本ね。ちなみに、これは美爪術です」
「じゃあ、俺はサクラの術中にいるわけだね」
言葉と共に、カカシはサクラの背中にくっつく。
体が揺れたために少し色がずれてしまった。

「私は好きになるとその人しか考えられないから、本当はくノ一向きじゃないんだけどね」
はみ出したマニキュアをふき取ったサクラは、手を翳しながら言う。
「・・・サクラ、この前テンゾウの家から出てきたでしょう」
「見間違いじゃないの?」
振り向いたサクラはにっこりと微笑んだ。
少しも動揺していないところは、くノ一教室での訓練のたまものだろうか。

「ま、別にいいけど・・・」
サクラの手から爪を整える道具一式を奪うと、カカシは華奢な体を抱き寄せる。
優等生のサクラはくノ一の教えにも忠実だ。
分かっていても手放す気になれないのだから、くノ一教室の教官は凄腕のくノ一だったのかもしれない。

 

あとがき??
何気にヤマサク要素含む。小悪魔サクラちゃんも好きです。
冒頭の台詞は、BONNIE PINKの歌か。

 

 

(おまけSSシリーズ370)『お昼寝中』

 

木陰で横になったサクラが、すやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
忍者とは思えないほど無防備な寝顔だ。

「あああーーーーーーーー!!!」
大きなわめき声を耳にしたカカシは、眉を寄せて振り返る。
「煩い」
「い、い、今、カカシ先生、サクラちゃんにキスしたってばよ!!」
「うん」
悪びれた様子もなく、カカシは素直に頷いた。
「だって、可愛いじゃないか」
目をつむり、微かに微笑んでいるように見えるサクラの寝顔は確かに愛らしい。
思わず納得しかけたナルトは「違うー!」と地団駄を踏む。
「先生ばっかり、ずるいってばよ!!」
「じゃあ、ナルトもすれば。ほら」

そう言われても、純真なナルトにはサクラの寝込みを襲うような度胸はない。
もじもじとしているうちに、サクラの睫毛が揺れ、緑の瞳がナルトの姿を捉える。
「騒がしいわねぇ・・・・」
身を起こしたサクラは不機嫌そうにナルトを見上げた。
「カ、カカシ先生が・・・あれ?」
「先生なんかいないじゃない」
サクラの言葉の通り、カカシは忽然と消えている。
カカシの悪行を密告しようと思ったナルトだったが、彼の痕跡がないのでは信じてもらえるか微妙だ。
「うあああーーー!!」
頭を抱え、再び絶叫したナルトをサクラは怪訝そうに見つめていた。

 

あとがき??
早い者勝ち。いいなぁ、サクラにチュ〜〜。

 

 

356〜370まで載せてみました。
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