(おまけSSシリーズ401)『先生、怒る』

 

「今日はカカシ先生と喧嘩をしようと思うの」
「・・・えっ?」
炬燵でぬくまっていたカカシは、突然のサクラの「喧嘩宣言」に目を瞬かせる。
「喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない。でも、私、先生と一度も喧嘩したことないし」
「あー、そうだっけ?」
茶をすするカカシは首を傾げて考えたが、確かにそうかもしれない。
だが、喧嘩というのは、やろうと思ってするものとは、違うような気がする。

「先生、蜜柑食べる?」
「うん」
蜜柑の皮を剥いていたサクラは、一房カカシの口元へと持っていく。
そしてカカシが口を開けたところで、サクラはそれを自分で食べてしまった。
もぐもぐと口を動かすサクラときょとんとして見つめたあと、カカシはでれでれとした笑顔を浮かべる。
「サクラってば、おちゃめさんだなぁv」
アハハッと笑って額を小突かれたサクラは、どうも想像していた反応と違うと思った。
「先生なんて、嫌いよ!」
「俺はサクラが大好きだよ〜」
憎まれ口を叩いてみても、カカシはサクラにべったりとくっつくだけだ。
喧嘩をしたい。
ただそれだけだったのだが、サクラの願いは叶いそうにもなかった。

 

 

「喧嘩をしないのは、お互いに遠慮していて、心を開いていない証拠だってTVで言ってたんだけど」
花屋で立ち話をするサクラは、浮かない表情のままいのの作るブーケを見つめた。
「私達もそうなのかなぁ・・・」
サクラが思い出すのは、カカシの明るい笑顔ばかりだ。
どんな失敗をしても、優しくフォローしてもらった記憶しかない。
「考えてみると、先生って任務中でもよほどのことがないと怒らないし。大人だからかな」
「・・・・私は頻繁に先生が怒ってるの見てるような気がするんだけど」
「えっ、いつ!?」
サクラが驚きの声をあげると、それまで黙々と作業をしていたいのがようやく振り返る。
「サクラさー、あんたにちょっかい出していたタローくん、最近顔を見た?」
「タローくん?・・・・・そういえば、見かけないわね」
一緒に映画に行こうと誘われたのが、彼の姿を見た最期な気がする。
それまでは度々サクラの前に出現していたのだから、考えてみると変だった。

「夜道を歩いているときに、暴漢に襲われてボコボコにされたらしいわよ」
「えー、怖い。どの道なのかしら」
「他にもサブローくんとか、イチローくんとか、あんたと仲の良かった男の子が軒並みやられてるみたいね」
「男の子ばかり狙う変質者なの!!?いやだー」
青ざめたサクラが体を震わせると、いのは額を押さえて小さくため息をついた。
いのにはすぐに犯人が分かったが、サクラは彼のことをまるで疑っていないらしい。
「ところで、先生が怒るのってどういうシチュエーションなの。教えてよ」
「あんたは知らない方がいいと思うわ・・・」

 

あとがき??
男の子の名前、適当すぎだろう。
タイトルは大魔神っぽく。

 

 

(おまけSSシリーズ402)『黒ネコ』

 

「ただいま〜」
荷物を抱えて扉を開けたサクラは、疲れた声で帰宅を知らせる。
綱手に頼まれた仕事がなかなか終わらず、三日ほど泊まり込んでようやくレポートをまとめ上げた。
仮眠室ではどうにも熟睡することが出来なかったため、久々にゆっくり眠れると思うと堪らなく嬉しい。
廊下の先にある気配に気づいたサクラは、にっこりと笑って振り返る。
「サスケくん、久しぶり〜〜。充電、充電」
ふらつく足取りで手を伸ばしたサクラは、しっかりとサスケにしがみついて満面の笑みを浮かべた。
毎日眺めていた写真とは違い、間違いなく本人の匂いがする。
「・・・夕飯出来てる」

着替えをすませたサクラは、自分が作るよりずっと美味い料理を夢中で食べた。
サスケの方も任務で忙しいはずだが、部屋は綺麗に片づいており、風呂も沸かしてある。
結婚すればいい奥さんになりそうだなぁと思うサクラだったが、不機嫌になることが分かっているから言わない。
「あっ、ジャッキーの映画やってる」
新聞に目を通したサクラは、風呂に入るのを後回しにしてTVを付けた。
いつもならば、夜はサクラがドラマや映画などでTVを独占し、サスケは書庫にこもって本を読んでいる。
この日もサスケはさっさと部屋を出ていくと思ったのだが、ふと目をやると彼はまだ傍らの椅子に座っていた。
急にアクション映画に興味が出てきたわけでもないらしく、さして感動している風でもない。
怪訝そうにサスケを見たサクラだったが、映画が盛り上がってくると、違和感は徐々に無くなっていった。

「面白かったー。サスケくん、TV消していい?」
映画のED画面が流れ始め、サスケが頷いたのを確認してからサクラはリモコンで電源を切った。
すっきりした表情で立ち上がったサクラは、そのままいそいそと風呂場に向かって歩き出す。
すっかり見入ってしまったが、明日も仕事は朝から入っているのだ。
鼻歌を歌って脱衣所の扉を開いたサクラは、いつの間にか後ろにくっついていたサスケにギョッとした。
何か用があるのかと思ったが、サスケは黙ったままで、サクラは困惑してしまう。
「・・・・一緒に入る?」

 

次の日になると、サスケの態度はいつも通り、素っ気ないものに変わっていた。
それならば、昨夜のあの、甘えん坊のような眼差しは一体何だったのか。
悶々と考えながら資料を纏めるサクラの耳に、背後で立ち話をするくノ一仲間の会話が耳に入る。
「いつもはうざいって顔して触ると嫌がるのに、暫く放っておくと急に寂しくなって擦り寄ってくるのよねぇ」
「そうそう。普段は我が儘で自分勝手だけど、見た目が可愛いから許しちゃう」
ハッとしたサクラは、思わず振り向いて彼女達に話しかけた。
「それって誰の話!?」
「誰って、猫よ、猫」
「猫・・・」

今の話をサスケに置き換えて考えると、妙な行動も説明が付くような気がする。
一言もそれらしいことは言わず、指摘しても否定されるだろうが、放っておかれて寂しかったのかもしれない。
だからサクラの行くところ、行くところに付いて回っていた。
「何、サクラも飼ってるの?」
首を傾げるくノ一仲間に、サクラは腕組みをして考えながら答える。
「・・・・黒猫を、一人ほど」

 

あとがき??
ナルトが狐だと、サスケは黒猫イメージ。
そういえば、「黒ネコのタンゴ」って随分と艶っぽい歌だったんですねぇ。
童謡だと思っていたので歌詞見てびっくり。お色気黒猫!
のだめの最新巻で、のだめに放っておかれて千秋先輩が寂しそうだったので、こんな話を。

 

 

(おまけSSシリーズ403)『きずな』

 

昨日からの仕事が長引いて、朝帰り。
すぐにも汗を流して眠りたくて、風呂には一緒に入ることにした。
一人一人入るより、時間の節約だ。
わしゃわしゃとサクラに髪を洗われて、カカシは泡が入らないよう、目をつむる。
普段はしないことだが、朝風呂というのも、なかなか気持ちがいい。
頭からお湯をかけられて瞳を開けると、にっこりと微笑むサクラの顔がすぐそばにあった。
「今度は先生が私の髪、洗ってよ」
「うん」
洗髪の仕上げとして、唇に軽くキスをされる。
こうしてじゃれ合っていると、入浴時間は短縮どころか逆に長引いているのかもしれない。

 

「もっと早くサクラと会いたかったなぁ・・・」
「えー?」
「サクラと同い年・・・せめて2つ3つ離れるくらいでさぁ」
「なあに、誰かに何か言われた?」
少しばかり気落ちしたカカシの呟きを、サクラは明るく笑い飛ばす。
風呂場を改装したおかげで、浴槽は二人で入ってもそうきつくはない。
湯に浮かぶアヒルの玩具を突くサクラは、くすくすと笑いながら声を出した。

「先生って、昔、まあまあ美少年だったんでしょうー。それで天才忍者なんて言われて、いい気になって」
「・・・誰から聞いたの」
「アスマ先生ー」
目線を上げたサクラは、笑顔のまま言葉を繋ぐ。
「私は、今のカカシ先生と会いたかったよ」
カカシの瞳を真っ直ぐに見つめて微笑むと、サクラはそのままカカシの首筋に腕を回した。
「傷物になっちゃって、駄目駄目な大人に成長しちゃった先生だから、こうやってギューッとしたいんだもの」
「・・・傷物」
確かに十代の張りのあるサクラの肌に比べ、歴戦の傷痕はカカシの体に生々しく残っていたが、妙な言い回しだ。
「サクラは臑に傷のある、駄目な人間の方が好きなの?」
「んーん」
頬を寄せ合うサクラの甘い声が、すぐ耳元から伝わってくる。
「そのままのカカシ先生が好きなの」

苦笑を漏らすカカシは、腕の中のいとしい人を力一杯抱きしめる。
可愛い可愛いサクラ。
無防備な笑顔で、嬉しくなるようなことを平気で言うのだから、どうにもこうにも、かなわなかった。

 

あとがき??
べたべた、あまあま。カカサク幸せ〜。

 

 

(おまけSSシリーズ404)『スレナル注意』

(一応、ナルト誕生日に書いたSSの続き。「ナルトへの誕生日プレゼント=サクラ」という内容でした)

 

19時(夕食)

食事は当番制で、この日のメニューはサクラの作ったオムライスだった。
サクラの料理のレパートリーは少なく、本を見ながら四苦八苦している状況なため、失敗することもしばしばだ。
だが、ナルトは一度もそれについて不満を言ったことがない。
「美味しいってばよ」
「・・・・無理しなくていいわよ」
不味くはないが美味くもない、微妙な料理を前にしてサクラは項垂れていたが、ナルトはにこにこと笑っている。
「んー、まあちょっと味が薄いかもしれないけど、この前のエビフライよりは上だよね」
前回の失敗料理を例に挙げたナルトは、カップに入ったスープをすすった。
「今までやってなかったんだからしょうがないよ。段々上達してるんだし、これから頑張れば大丈夫だよ」
「・・・・うん」
こうして優しく励まされると、ナルトのためにまた頑張ろうという気持ちになる。
サクラにとってはまさに最良の同居人だった。

20時(自由時間)

「ナルト、出来たわよ」
「有り難うーー」
アイロンを掛けて皺を伸ばしたシャツをナルトに手渡す。
他にもアイロンが必要な衣服はあるだろうかと見回すと、シャツを仕舞ったナルトが戻ってきた。
「サクラちゃん、そろそろドラマが始まるってばよ!」
「えっ、もうそんな時間?」
慌ててアイロンとその台を片づけたサクラは、クッションを用意してTVの前に座った。
最初はサクラが夢中で見ていたのだが、今ではナルトも楽しみにしているらしい。
後からやってきたナルトは、ホットチョコレートの入ったマグカップをサクラに手渡した。
「これ終わったらお風呂入るからねー」
「うん」

23時(就寝)

ナルトは10時を過ぎると眠くなり始めるため、どんなに遅くても0時前には布団に入る。
「じゃあ、お休みなさい」
「お休みー」
声をかけあったあと、サクラは枕元の電気スタンドのスイッチを切った。
それまで使っていたベッドはサクラに譲り、ナルトは床に布団を敷いて眠っている。
そして翌朝の6時に起床し、朝食を作り始めるという、実に健康的な生活だ。

 

 

「ちょっと待ったーーー!!」
突然片手を上げて話の腰を折ったいのに、サクラは目を瞬かせる。
ナルトとの暮らしぶりを訊ねられ、素直に答えていたサクラだが、何か変なところがあっただろうか。
「何」
「あんた、健全な若い男女の生活が、それでいいと思ってるの!!」
「えっ?」
「「えっ」じゃないわよ。何、その清らかすぎる生活は。同棲しているからにはもっといろいろあるでしょう」
「あー・・・」
いのの言いたいことが分かったサクラは、苦笑して頬をかいた。
「でも、ほら、ナルトだし。夜の方とか、全然知識ないんじゃないかしらねー」
「そんなはずないじゃない!」
怖い顔で詰め寄られたサクラは、思わず後方へとのけぞった。
そんなに変だろうか。
ナルトと一緒にいると妙にほのぼのした気持ちになり、彼が異性であることも忘れてしまいそうになる。
どんなに成長しても、サクラの中では12歳の頃のナルトの印象がいつまでも残っているのだ。

 

 

「って、いのに言われちゃった」
夜、寝る前にいのとの会話を思い出したサクラは、髪を櫛でとかしながらナルトに切り出した。
とくに深い意味はなかったのだが、ベッドに腰掛けるナルトは口元に手を当てて何か考える仕草をする。
「・・・・俺は別にかまわないけど」
呟くように言うナルトは、サクラの方へと顔を向けると、にっこりと微笑んだ。
「手加減しないよ」
いつも通りの柔らかな笑顔だったため、サクラも同じように笑いそうになった。
だが、何かとんでもないことを言われたような気がする。

「・・・・えーと」
櫛を握ったまま硬直したサクラは、頬を引きつらせて何とか笑顔らしき表情を作る。
ナルトの視線が何故だか痛い。
「え、遠慮しておきます」
「そうだよねー。もう暫くはこのままでいいよね」
明るく笑ったナルトは、床に敷いた布団に体を滑り込ませた。
「お休みー」
「・・・・・お休みなさい」
手加減とは、一体どういう意味だろう。
布団から出たナルトの頭を見つめ、悶々と考えるサクラだったが、どうしてか訊くことが出来ない。
それよりも、「もう暫く」という言葉の方を気にした方がよさそうだった。

 

あとがき??
自来也さんと旅をしている間に、そっちの方の奥義も究めたらしい。
泣かせた女は一桁ではないはず・・・。
でも、今のところはサクラとのおままごとのような生活で満足している感じで。
ナルトはご飯のときも一番好きなものは最期に取っておくタイプなのです。
スレナル・・・。(萌)
誕生日SSの続きを読みたいっておっしゃった方がいたんですよね。今頃なんですが。(^_^;)

 

 

(おまけSSシリーズ405)『世界で一番』

 

火影就任が決まったナルトは火の国の国主との謁見が許可された。
自来也と共に各地を旅してきたナルトだが、火の国の都に上るのは久しぶりだ。
祭りでもあるのかと思うほどの人の多さと、立ち並ぶ背の高い建物が印象的な都市だった。
一週間ほど前からわくわくしていたナルトは、旅の準備も万全だ。

 

「ナルト、ほら」
綱手に出発の挨拶をして里の出入り口である門に向かったナルトは、シカマルに促されて振り返る。
門の警備をする特別上忍の隣に立っているのは、彼の思い人であるサクラだ。
綱手のそばにいないと思っていたが、どうやら先回りをしていたらしい。
「見送りに来てくれたの」
共に旅をする忍びを待たせ、サクラに駆け寄ったナルトは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「うん」
「有難う〜。お土産、何でも好きなもの買ってくるよ」
サクラの両手を握って満面の笑みを浮かべたナルトは、頭の中で女の子の欲しがる物を思い浮かべた。

「都で人気の甘いお菓子とかどう?あっ、アクセサリーの方がいいかな」
「怪我しないで帰ってきて」
あれこれ考えながら話すナルトに、サクラがさらりと言った。
一瞬、何を言われたか分からなかったナルトは、目を丸くして聞き返した。
「お土産の話だよ」
「そうよ」
「・・・・それだけでいいの」
「それがいいの」
驚いた顔のナルトを見つめて、サクラはふっと表情を和らげる。
「あの・・・他に」
「いらないわよ」
「・・・・・」
胸にこみ上げる熱いものに、ナルトがなんとも言えずにいると、サクラは笑顔のまま先を続けた。
「いってらっしゃい。気をつけてね」

 

昔に比べて随分と感情をコントロールできるようになったと思っていたが、まだまだだった。
手を振るサクラに背を向けて歩き出したとたん、赤い目元を拭ったナルトにシカマルが声をかける。
「お前、殿様に会うときは、もっとしゃんとしていてくれよな」
「・・・うん」
いのから預かった、買い物リストの入った胸ポケットを押さえて、シカマルは小さくため息をついた。
「幸せもんだよ、お前は」

 

あとがき??
ナルトは無茶する子なので、サクラは心配なのです。

 

 

(おまけSSシリーズ406)『恋のダイヤル6700』

 

「それで、サクラちゃんに美味しいカレーの作り方を聞いたらあっさり切られたってばよ・・・」
「くだらない用事でちょくちょく電話したからだろ。そのうち着信拒否されるぞ」
「そんなーー」
「自業自得だ」
項垂れるナルトだったが、サスケの態度は素っ気ない。
それまで黙って本を読んでいたカカシは、怪訝そうな表情で二人の方へと顔を向けた。
「サクラ、携帯持ってたっけ?」
「先月買ったって言ってたよ。俺もサスケも次の日に番号教えてもらったし。なぁ」
「ああ」
「もしかして、先生、聞いてないの?」
きょとんとした顔のナルトに訊ねられ、カカシは無言の返事をした。
答えを察した二人は、すでに憐れみのこもる眼差しでカカシを見つめている。
「・・・・あの、やめてくれない、そんな目で俺を見るの」

 

 

本来ならば、担任であるカカシに真っ先に教えてもいいようなものだ。
緊急の仕事が入るかもしれず、自宅に電話をかけるよりも、本人に繋がりやすい。
何よりも、自分にだけ内緒にしていたことがショックだった。

「サクラーーー!!」
夕食後、いつものように机に向かって勉強をしていたサクラは、唐突に窓を開けて侵入してきたカカシにギョッとした。
カカシは時折ふらりと立ち寄ることがあるのだが、きちんと手土産を持参するあたり、歓迎していいのかそうでないのか微妙だ。
「・・・先生、下の階の両親が気づきますから」
「携帯買ったなんて、聞いてないよー!」
「言ってませんから」
カカシから桜餅の包みを渡されたサクラは、けろりとした表情で答える。
「何で!!サクラの番号知ったからって毎日しつこく電話したり、ラブコールやモーニングコールを強要したりしないって!」
「いえ、別にそんなのどうでもいいんですけど・・・」
きょろきょろと外の様子を窺うと、サクラは窓を閉めて振り返る。
「先生、サスケくんの修行を見てあげたり、ナルトの家に野菜届けたりしてるでしょう」
「うん」
「だからですよ」
「・・・・・え?」
カカシの反応が予測出来たため、あまり言いたくなかったのだが、サクラは渋々口を開く。
「・・・電話で簡単に話が出来るようになったら、先生、こうやって私に会いに来てくれたりしないでしょう」

不思議そうに首を傾げていたカカシは、サクラの言葉の意味を飲み込むと、とたんに瞳を輝かせる。
「それって、声だけより、俺の顔を直に見たいってこと!」
「いえ、この、お菓子がなかなか・・・・」
「俺ってば、愛されてるなぁ〜v」
カカシにぎゅうっと抱きしめられながら、サクラはお土産の桜餅をもぐもぐと口に含む。
殆どお土産が目当てだったが、自分だけ気に掛けてもらえないと面白くないのは本当だ。
カカシが7班以外の任務で遠方に行く前ならば、番号を教えてもいいだろうかと考えるサクラだった。

 

あとがき??
先生の土讃は和菓子がメインです。近所に名店があるらしい。
カカシ先生ってば、結構贔屓すると思うんですよねぇ。第一部はサスケで第二部はナルト。
おおお、怨めしい・・・・。(カカサクファンの嘆き)
タイトルはフィンガー5。って、誰が知ってる。

 

 

(おまけSSシリーズ407)『遺品』

 

鏡台の隅に置かれた、ヒビの入った分厚いレンズの眼鏡。
整理整頓されたサクラの部屋の中で、それだけが異質だった。
視力のいいサクラが、眼鏡をかけるはずがない。
そもそも、裂け目のあるレンズではかけてもまともに役割を果たさなかった。
ただのゴミだ。

「駄目」
カカシが手を伸ばすと、先に動いたサクラは眼鏡を脇から奪い取る。
眼鏡をカカシの目から庇うようにして握るサクラを見れば、その持ち主が誰なのかすぐに分かった。
殉職した恋人の遺品だ。
そしてサクラはカカシを疑っている。
確かに、大切にしていたサクラを横から掠め取ったあの男を憎いとは思っていた。
だが、カカシが裏で手を回したのだったら、もっと苦しむ殺し方をしたはずだ。
任務中の事故で即死などという、生ぬるいことはしない。

 

「帰ってください。もうここには来ないで」
「そんなこと言わないで、戻っておいでよ。また前みたいに仲良くしよう」
「・・・・」
「これ、壊しちゃってもいいの?」
カカシの手元にある物を見て、サクラははっとする。
どんな術を使ったのか、サクラが持っていたはずの眼鏡がカカシの手の内にあった。
「返して!」
飛びついてきたサクラを片方の腕で抱き寄せ、空いた手で目障りな眼鏡をボロボロに砕く。
破片で傷付いたカカシの指先から血がにじみ出した。
目を見開くサクラに、カカシはにっこりと笑いかける。
これでお仕舞い。

 

あとがき??
あれ?暗いですね。本当はもっと明るい話だったんですよ。サクカカっぽい。
NARUTOの眼鏡キャラってカブトさんしか思い出せないような・・・。とくに誰ということはないです。
ちなみに、好きな人の壊れた眼鏡を大事にしているのは、エヴァのレイのイメージ。
カヲルくんとレイという茨道カプを応援中・・・。色素薄い系。

 

 

(おまけSSシリーズ408)『S』

 

久しぶりにサクラと過ごす休日だというのに、カカシの家にやってきた彼女は体中が白かった。
腕や足に包帯が巻かれ、一番目立つのは顔の半分を覆うものだろうか。
個別の任務で暫く会っていなかったため、サクラを一目見てカカシは心底驚いた。
優秀な医療忍者のサクラならば、どれほど大きな傷だろうと、時間をかければ治してしまうはずだ。

「間者は全員捕まえたんですけどね。特殊な毒が武器に仕込んであったらしくて、簡単に治癒しないの」
「へぇ・・・・」
「師匠は会議で外に出ているし、戻ってくれば何か知恵を貸してくれると思うけど」
見るからに痛々しい姿だったが、我慢強いのか、サクラは少しも怪我人らしくない。
隠そうとする気はさらさら無いらしく、短いスカートにノースリーブのシャツという身軽な出で立ちだ。
持参したケーキを頬張ると、サクラは満足げに微笑む。
可愛い笑顔も今日は半分しか楽しむことが出来ない。
いつもと同じサクラなのに、いつもと違う。
真っ白のサクラも綺麗だなぁと思うカカシは、特殊な嗜好の持ち主かもしれなかった。

 

「ねえサクラ、しよっ」
「へ?」
紅茶を飲んでのんびりとしていたサクラは、間抜けな返事をしてしまう。
割れ物と遠ざけたカカシにキスをされたが、今日はそうしたことはしないと思っていた。
サクラを見れば誰でも気を遣って当然だ。
カカシに肩を掴まれて体を横たえたサクラは、傷に響いたのか、僅かに顔をしかめる。
カカシが笑ったように見えたのは、おそらく気のせいではない。

「先生って・・・・、サドっ気あるわよねぇ」
「えー、そう?」
「私が嫌がってる方が、嬉しそうだもの」
サクラの怪我の位置を確認しつつ、カカシはサクラの肌に口づける。
殺しの任務のときはなるべく相手が苦しまないようにするし、誰に対しても優しく接しているつもりだ。
それならば、サクラに対してだけの感情だろうか。
可愛くて可愛くて可愛くて、こんなに自分を夢中にさせるサクラが、時々ひどく憎らしい。
「好きな子を虐めちゃう、いじめっこの気持ちかなぁ・・・」
「そんな好きは嫌なんですけど」

 

あとがき??
エヴァの綾波イメージSS二つ目。やっぱり痛いなぁ。

 

 

(おまけSSシリーズ409)『世界で一番 2』

 

ナルトのお目付役として火の国の都へと上ったシカマルだったが、案の定、旅はトラブル続きだった。
困っている人を放っておけないというナルトの性分から、山賊の退治、幽霊船との遭遇、長老の入れ歯探し、etc.
映画が一本作れてしまうほど内容の濃い旅だ。
おかげで都への到着が遅れ、分刻みのスケジュールの中で買い物をする暇などほとんどなかった。

 

「ぜってー、殺される・・・」
無事国主と対面を果たし、帰路に就いたナルト一行だったが、里が近づくに連れシカマルの顔色がどんどん悪くなっていく。
いのに渡された買い物リスト。
一つも品物が手に入らなかったと知れば、半殺しではすまない。
そもそも、女物の商品が並ぶ店で、シカマルに少女達に混じって買い物をしろというのが無理な話なのだ。
「シカマル、シカマルー」
「ああ?」
影を引きずって歩くシカマルは、脳天気に笑うナルトに肩を叩かれて振り返る。
「はい、これ」
「・・・何だ」
「いのへのお土産。買う暇なかっただろ。俺のせいだから、お詫び」
えへへっと笑うナルトは、シカマルに紙袋を一つ手渡した。
何も考えていないようなナルトだが、迷惑を掛けていた自覚はあったらしい。

「俺達が会議をしている間に、宿のおばさんに頼んで買いに行ってもらったんだ。サクラちゃんとお揃いのペンダント」
覗いてみると、店名の入った紙袋には小箱が一つ入っている。
「都で評判のジュエリーショップの品らしいよ。サクラちゃんが緑で、いののは紫の石が付いてるの」
「何もないよりマシかもしれねーけど、こんなんであいつの怒りがおさまるかどうか・・・・」
「大丈夫だよ」
にっこりと微笑むナルトは、いやに自信ありげに続ける。
「女の子が機嫌を直す、とっておきの呪文を教えてあげるから」

 

 

ナルトとの珍道中はいのにも伝わっていたようで、いのはシカマルを頭ごなしに叱ることはなかった。
かといって、機嫌がいいわけでもない。
そこでナルトに教えられたとおりの行動を取ったわけだが、これにはかなり勇気がいった。
しかし、背に腹は代えられない。

 

「お前、いつもあんなことサクラに言ってるのか・・・」
「うん」
ストローで吸い上げたジュースは底を突き、ズズズッと不快な音が響く。
空になったオレンジジュースの紙パックをゴミ箱に投げたナルトを、シカマルは少しばかり尊敬の眼差しで見つめた。
ナルトに教えられた呪文は「可愛い」の一言だ。
土産の品を身に付けたいのはまだ不満を呟いていたが、それでようやく笑顔を見せてくれた。
思えばいのにそうした言葉を言ったのは、初めてだったかもしれない。

「だって、女の子って可愛いじゃん。どこ触ってもふわふわで柔らかくて、いー匂いするし、気持ちいいし」
「・・・気持ち」
「サクラちゃんと待ち合わせしてるんだ。じゃねー」
腕時計を見たナルトは、妙な引っかかりを感じたシカマルを気にした風もなく、そのまま駆け出した。
端から見るとただの腕白小僧なのだが、もしかすると、それは表面だけのことなのかもしれない。
少なくとも、シカマルよりは女心を理解している。
「強者だ・・・・」

 

あとがき??
うちのナルチョはスレナルです。女の子大好きー。でもサクラちゃんが一番好きー。
ナルトなら、シカマルと違って女の子だらけの店に喜んで入っていくと思います。
いの、出番ないよ!!これでシカいのって言えるのか。
いや、長くなりそうだったんで、省いてしまって・・・。
今度またチャレンジしたいですね。
本当の呪文は「好きだよ」の一言なんですが、シカマルに却下されたので、変更した模様・・・。

 

 

(おまけSSシリーズ410)『今日も元気です』

 

近頃元気がないと思っていたが、この日のカカシはことさら表情が暗かった。
昼間の7班の仕事だけでなく、夜は個別の任務がぎっしりと入っているらしい。
自分はまだ若いと豪語しているわりに、クッションを抱くカカシは老人のように背中を丸めて座っている。
あと1時間もすれば、また新たな任務に出発しないといけないそうだ。
サクラにしても、久しぶりにカカシとどこかに出かけたい気持ちだったが、仕事では仕方がない。

「先生、大丈夫?」
「駄目・・・・」
振り向くことなく答えるカカシの背中に、サクラがくっつく。
「カカシ先生ー」
「ん・・・」
「大好き」
耳元で囁く声に振り返ると、サクラはにこにこと明るく笑っていた。

「・・・え、何?」
「元気になるかと思って」
言い終えないうちに、サクラは再びカカシに擦り寄ってくる。
クッションと入れ替わりに、サクラを抱きしめたカカシは何とも幸福な気持ちに浸った。
全く単純だったが、サクラのためにも、もう少し頑張ろうかなぁと思えてくる。
「やる気出てきたー?」
「いや・・・、別のとこが元気になっちゃったんだけど」

 

あとがき??
卑猥なネタだなぁ・・・・。いや、言わないと分からないって。
早めに削除予定。
サクラちゃんは自分の言動に責任を取らないといけないと思います。
彼女の「好き」には大きなパワーがあるようですよ。

 

 

(おまけSSシリーズ411)『うつるんです』

 

「風邪がうつると嫌だから・・・」
キスをしようとしたカカシから、ふいと顔を背けたサクラは眉を寄せて言った。
「そっか」
何となく納得して離れたものの、「誰が?」という疑問が頭をぐるぐると回る。
果たして、いつ自分は風邪をひいただろうか。
近頃カカシに対していやに素っ気ないサクラは、その日も彼におざなりな返事をしつつ去っていった。
サクラに避けられている。
カカシの疑惑は、このキスの件で確信に変わった。

こうして徐々に距離を取るようになっていって、自然消滅・・・。
「嫌だ、冗談じゃない!!」
自分の想像に思わずカカシは悲鳴を上げる。
時間を掛けてようやくここまで親密な間柄になったというのに、失うわけにいかない。
いずれ、サクラとは結婚して幸せな家庭を築くのだ。
サクラが他の誰かに心変わりをしたのなら、そいつを抹殺するまでだった。

 

果たして、サクラの浮気相手は誰なのか。
サクラは今、7班の任務よりも綱手の手伝いを優先的にしている。
だとすると、綱手の周りに控えている特別上忍の可能性が強い。
悶々と考えるカカシだったが、その相手は思いのほか身近にいる人物だった。

「サクラーーー!!」
「・・・・先生」
きょとんとするサクラの傍らにはナルトがいる。
二人が楽しげに笑いあってキスをしているのを、カカシはその目でしっかりと見た。
サクラと食べようと思い、手作り弁当を抱えて綱手の秘書達が控える部屋に入った、矢先の出来事だ。
「ナルトか、ナルトだったのか!」
つかつかと歩み寄ると、カカシは強引に二人の間に割り込んだ。
「何の話?」
「風邪とか何とか言って、俺とはしなかったのに、ナルトと・・・」
こみ上げてきそうになった涙を、カカシは手の甲でごしごしと拭った。

「風邪?ああ、もう一ヶ月ちかくひいてるのよ。夜になると急に咳が止まらなくなっちゃって」
「・・・えっ」
目を丸くしたカカシは、サクラの顔をまじまじと見つめる。
「風邪がうつると嫌って・・・・」
「カカシ先生によ。先生ってたいてい夜も任務入ってるじゃない。迷惑かけちゃ悪いし」
サクラはあっけらかんとした口調で答える。
そそくさと帰るのも、そうした理由があったのだろう。
自分の身を思ってのことかもしれないが、今のナルトとのキスを見逃すわけにはいかない。

「ナルトならいいのかー!!」
「そんな真剣にならなくても、ただじゃれてただけでしょう。それに、馬鹿は風邪ひかないって言うしね」
「ねーー」
サクラは傍らに移動してきたナルトの頭を、軽く撫でる。
身長はとっくにサクラを追い抜いていたが、まるでペット感覚だ。
馬鹿が羨ましい。
サクラに自分と別れる意思がないことを知ってほっとしたカカシだったが、本当に安心していい状況だろうか。
カカシの嫉妬の眼差しをものともせず、サクラに笑いかけるナルトはよほどの大物かもしれなかった。

 

あとがき??
カカサクかと思いきや、オチがナルサク!?
どれだけナルトのこと好きなんだー!!ってことで。
うちのナルトは普通にサクラとチューしたり、一緒に寝たり、風呂入ったりしてる設定です。
でも、一線は越えない方向で。あくまで、ほのぼの姉弟っぽく。
ミスチルの「Over」からイメージしたSSでした。

 

 

(おまけSSシリーズ412)『運命じゃない人』

 

あるところに、将来を誓い合った若い忍びのカップルがいた。
しかし男は任務の最中に殉職し、女は泣く泣く親の薦める縁談を受け入れる。
死んだと思っていた男が里に戻ってきたのは、女が縁談の相手と結婚し、子供が生まれた後のことだった。
女にはすでに自分の生活がある。
今生で結ばれることを諦めた二人は、次の世代へと自分達の夢を託したのだった。

「というわけなのよ」
「・・・・・はあ」
夕食後、母親から長々とドラマのような話を聞かされたサクラは、曖昧に頷いた。
「お互いの子供は女の子しか生まれなくて、ようやく孫の代で男の子と女の子が誕生したのよ」
「へぇーー」
「その女の子がサクラってわけ。サクラには許嫁がいるのよ」
笑顔で語る母親の顔に、サクラは危うく飲みかけの茶を吹き出すところだった。
「はあーーー!!!?な、何、それ。聞いたことないわよ」
「だから今、話したじゃない。明日、2丁目のカフェ・カリマンタンで待ち合わせだから」
にこやかに語る母親をサクラはまじまじと見つめた。
「・・・・誰と?」
「話ちゃんと聞いてたの?あなたの許嫁に決まってるじゃない」

 

つい昨日まで許嫁の存在など露ほども知らなかったというのに、唐突すぎる。
しかし、母親に逆らえずにカリマンタンにやってきたサクラは、道端からオープンカフェの店内を窺った。
何しろ先方の情報は「男」ということ以外何も伝えられていない。
今、店内には二組のカップルと若い女性、そして中年の男性が席に着いている。
「まさか、あれじゃないわよね・・・いくら何でも」
脂ぎった顔の中年男性を見つめてこそこそと呟いたサクラは、思わず唾を飲み込んだ。
もし彼がそうなのだとしたら、まるで人身御供だ。
即刻婚約を破棄してもらうしかない。
いや、そもそも相手がどんな男だろうとサクラに結婚の意思は初めからないのだ。
自分達が結ばれなかったとはいえ、孫に結婚をせまるとは、何か間違っている。

「サークラ」
「ギャッ!!!」
唐突に背ろから肩を叩かれたサクラは、叫び声と共に10センチほど体を浮かせる。
忍者が簡単に背後を取られるなどあってはいけないことだが、振り向くと、立っていたのは彼女の担任だった。
上忍相手ならば、少しは言い訳が出来るはずだ。
「カカシ先生・・・・何やってるんですか」
「それは俺の台詞だよ。何だかすごーく怪しいよ、サクラ」
「えっ・・・・」
周囲へ目を配ると、電柱の影から店の内部を探るサクラは目立っていたらしく、思わず咳払いをして誤魔化した。

「わ、私はあそこで人と待ち合わせをしているのよ」
「へー、奇遇だねぇ。俺もそうなんだ」
にこにこと笑うカカシの顔を見上げたサクラは、何故だか非常に嫌な予感がした。
「誰と会うの?」
「許嫁だよ。昨日じーちゃんから話を聞いたばかりで、どんな人か知らないんだけどねー」
「・・・・・」
非常によく似た話を知っている。
いや、これは十中八九間違いない。
「あれ、サクラ、顔色悪いよ」
「・・・・気のせいですよ、たぶん」

 

あとがき??
続いていますね。このあとサクラはカカシ先生のおじーさんと対面するんですが、書くかは未定。

 

 

(おまけSSシリーズ413)『運命じゃない人 2』

 

カカシの祖父の影丸は、彼が生まれる少し前に任務中の事故で昏睡状態になり、つい先日まで眠り続けていたらしい。
その間にサクラの祖母が亡くなったことを知って大いに落ち込んだらしいが、その分、今回の縁談話に乗り気だった。
体はまだ自由に動かず、リハビリのために入院している。
カカシに連れられて見舞いに訪れたサクラは、緊張の面持ちで病室の扉を見詰めた。

「ど、どんなことを話せばいいのかしら」
「そんな固くならなくて大丈夫だよー。適当に世間話でもすればいいんじゃない」
サクラの頭に手を置いたカカシは、明るい笑顔を浮かべて言う。
「ま、俺も先週初めて話したんだけどね。目が覚めたら旧友は殆ど死んでるし、何だか寂しいみたい」
扉を横にスライドさせると、サクラの目にまず映ったのは煌びやかなシャンデリアだ。
カカシが一番上等の個室を用意したのか、高価な家具が並び、まるでホテルの一室のような部屋だった。
「サクラ」
カカシに促されてその方角を見やると、ベッドで半身を起こした初老の男性を目が合う。
細かい皺はあったが、若いころはさぞ美男子だったと思える面立ちでカカシとはあまり似ていない。
「こ、こんにちは」
おずおずと声を出したサクラは、少しだけ頬を緩ませる。
老人の顔が劇的に変化したのは、その瞬間だった。

 

「サクヤーーーーーーー!!!」
「ひゃーーーーー!!!」
ベッドにいた弱々しいはずの老人に突然飛びつかれ、サクラは甲高い悲鳴を上げた。
「生きていたんだな、サクヤーーー!!」
「さ、さ、サクヤはおばあちゃんの名前ですー。私はサクラ」
「お爺様ってばー、落ち着いてくださいよ」
ハハハッと緊張感のない笑いを浮かべると、カカシは強引に二人を引き剥がした。
「これはサクヤさんの孫のサクラ。あなたの昔の恋人じゃないですよ。よく見てください」
「・・・・・そう、なのか」
サクラを凝視した老人は悲しげな表情で俯いた。
サクラは幼い頃に亡くなった祖母を殆ど覚えていないが、おそらくよく似た風貌だったのだろう。

「すみませんでした、サクラさん・・・」
「い、いえ、気にしないでください」
「でも、孫のカカシとの結婚を快諾してくれたそうで、とても嬉しいです」
気を取り直したのか、明るく微笑んだ彼を見てサクラは硬直した。
許嫁がいると知ったばかりのサクラは、当然「結婚を快諾した」覚えなどない。
「あの、私はその、結婚なんて・・・」
何とか言い繕おうとしたサクラだったが、唐突に老人が咳き込み始めた。

「ゴフッ!!」
「キャアーーーー!!!」
目の前で血を吐かれたサクラは再び絶叫する。
何の病かは不明だが、血を吐くということは相当重病だ。
「お爺様!!」
「ま、孫と結婚を・・・・」
「し、します、しますから死なないで」
慌てたサクラは取り敢えず頷いて応えると、とたんに老人は姿勢を正す。
「そうか、それは良かった」
けろりとした顔で言われ、サクラはぽかんとなった。
矍鑠としたその姿はとても今にも死にそうな咳をしていた老人には見えない。

「あの・・・、大丈夫なんですか?」
「ああ、昼にトマト料理を食べ過ぎたようで。気にしないでください」
老人の首の回りについた赤い染みは、冷静になって見ると血とは別物だ。
「あーー、お爺様ってば。すぐ替えのパジャマを用意しますから」
目を細めたサクラは、いそいそと引き出しを開けるカカシに疑いの眼差しを向ける。
「・・・・・二人して私をからかってるんじゃないのよね」
「えっ、何のこと?」

 

あとがき??
愉快なおじーちゃんです。
名前は伊賀の影丸から。

 

 

(おまけSSシリーズ414)『運命じゃない人 3』

 

「こ、これが若い頃のおばあちゃん?」
「そうよ」
自宅でアルバムを渡されたサクラは、その写真を驚愕の眼差しで見つめた。
10代後半と思われる祖母は、サクラというよりも、チョウジによく似ている。
つまり、凄まじくぽっちゃり系の体型なのだ。
サクラとの共通点は髪の色くらいだろうか。
カカシの祖父影丸と恋人同士だったという話は本当だったようで、当時の彼も隣りに写っている。
映画俳優でも滅多にいないような美男子姿に、サクラは目眩を覚えたほどだった。
どちらかというと、カカシよりサスケに近い整った顔立ちだ。

「何でも木ノ葉小町って呼ばれて、もてもてだったそうよ。その頃は太めの女の子が良かったのかしら」
茶をすする母親の隣りで、サクラは目を丸くしたままアルバムを眺め続ける。
確かに、どの写真も祖母は超がつくほど男前の青年達と写っていた。
「おばあちゃん・・・・凄すぎる」
サクラが当時生まれていれば、無理をしてダイエットする必要はなく、幸せに過ごせていそうだと思ってしまった。

 

最初に対面して以来、サクラは暇を見つけて影丸の病室を訪ねていた。
彼が活躍した任務の話や、当時の里の様子を聞くのがなかなか楽しい。
そして、サクラの祖父母はすでに他界しているため、自分を可愛がってくれる影丸の存在は嬉しかった。
「こんにちはー」
その日もサクラは花束を抱えて扉を開けたのだが、ベッドに老人の姿はない。
代わりに窓際に佇んでいたのは、目を見張るような美男子。
いや、影丸の若い頃とそっくりな人物だ。
「サクラ、喜んでくれ。ようやく昔のように術を使えるようになったぞ。変化の術も完璧だ」
「お、お爺様、ですか」
彼に詰め寄られたサクラは、思わず顔を赤らめた。
もともと渋みのあるいい男だったが、若返るとまた雰囲気が違う。

「俺が間違っていた。夢を孫に託そうだなんて、とんだ思い上がりだ」
「えっ・・・・」
「夢は自分で叶えるものなんだ。サクラ、俺と結婚しよう」
ぎゅっと掌を握られたサクラは、驚愕の表情で彼の瞳を見つめ返す。
「愛があれば、年の差の50や60」
「えええーーーー!!ちょ、ちょっとまっ・・・」
「お爺様、人の許嫁に手を出さないでください」
いつの間に入ってきたのか、影丸は背後に立つカカシに頭をはたかれた。

「カカシ先生・・・」
カカシを見てほっと息を付いたサクラだったが、後頭部を押さえる影丸はご立腹な様子だ。
「こら、老人をいたわらんか!」
「孫の許嫁を口説くような老人は知りません」
素っ気ない口調で答えると、カカシはサクラの方へと顔を向けてにっこりと笑う。
「サクラは俺のことが好きなんだよね」
「・・・あ、はい」

 

あとがき??
サクラはおじいちゃんのこと結構好きなんですが、お付き合いするとしたら太らなければいけないのかなぁと思って、カカシ先生を選んだという・・・・。

 

 

(おまけSSシリーズ415)『無色透明 1』

 

どの女性も綺麗だったが、彼の家に行くたびに相手の顔が違う。
2、3度味見をして飽きたら捨てるらしい。
どれほど優秀な忍びでも男としては最低だ。
「それでもいいからって、向こうから寄ってくるんだもの」
真っ黒な内面をつゆほども感じさせず、その人は朗らかに笑った。
何故こんな男がもてるのか心底分からない。

「全く最悪よ」
「そうね」
愚痴をこぼすと、いのはサクラの言葉を肯定して頷いた。
「好きになっちゃ駄目よ」
しっかり者の親友は釘を刺すことも忘れない。
サクラはそれには答えることなく、窓の外へと目をやる。
自分の心を自由にコントロールできるなら、それほど楽なことはなかった。

 

仲間に囲まれて楽しく話していても、ふとしたときに、全然別のところを見ている。
目が合うと笑顔を返したが、それは彼の本心だろうか。
彼は簡単に捨てられそうだ。
身の回りのあらゆるもの、自分自身でさえも。
寂しそうだった。

 

 

桃色の髪の女性と階段ですれ違う。
彼女がカカシの家から出てきたことをサクラは直感した。
用無しになった女性を追い出すのは大抵朝方だったから、こうした時間に出くわすのは珍しい。
カカシが不在なのかと思ったが、彼はちゃんとサクラを出迎えた。

「何で帰しちゃったの、あの人?好みにタイプじゃなかったの」
茶を入れながら訊ねると、カカシは首を傾げて思案する素振りをする。
「・・・なんでだろう」
聞き返されても、サクラに分かるはずがない。
カップを差し出したサクラを見たカカシは、小さな声で呟きを漏らした。
「サクラに少し似てたからかなぁ」

 

あとがき??
UTMのセイジュっぽいカカシ先生。

 

 

401〜415まで載せてみました。
web拍手にて、何番の作品がお好きかご意見を頂けると嬉しいです。

戻る