小桜のチョコと愛の大きさ

 

「ただい・・・」
「おかえりーーー!!」
アカデミーから帰宅するなり、満面の笑みで出迎えたカカシに小桜は思わず後退る。
「え、何でパパがいるの?」
難しい任務が舞い込んだらしく、カカシはこのところ毎日帰りが遅かった。
あとからやってきたサクラは苦笑しつつ状況を説明する。

「小桜に会いたくて、早めに帰ってきたんだって」
「へー・・・」
今日は2月の14日。
カカシが何を期待して家にいるかは、すぐ分かる。
「サクラは、手作りのチョコレートケーキをくれたんだけどなぁ〜」
ちらちらと自分を見ながら催促するカカシに、ため息をつくのをぐっと我慢する小桜だった。

 

その夜、サクラに電話で呼び出されたナルトは大きな紙袋を三つ持ってやってきた。
中身はもちろん、くの一達からもらった沢山のチョコレートだ。
「・・・・凄い量ね」
「んー、何だか知らないけど、みんながくれるんだ」
サクラが用意した夜食を取りながら、ナルトは不思議そうに首を傾げている。
「きっと俺がもてないと思って、気を遣ってくれてるんだよ。嬉しいけど、ちょっと複雑かなぁ」
「・・・」
笑って答えるナルトをサクラは唖然として見つめた。
おそらく、本命で渡す女子がいても、鈍いナルトが気付かないだけに違いない。
ナルトの隣りに座る小桜は不満げに口を尖らせている。

「そんなにあったら、もう私からのチョコレートはいらないかしら」
「・・・・そうだね」
あっさりと答えたナルトにショックを受ける小桜だったが、振り向いた彼は明るい微笑を浮かべている。
「義理は沢山もらったから、本命以外はいらないかも」
「・・・」
「小桜ちゃんのは、どっちかな」
「も、もちろん、本命チョコに決まってるじゃない!」
小桜は抱えていた手作りチョコを勢いよくナルトに差し出す。
二人のやり取りを微笑ましく眺めていたサクラだが、風呂からあがったカカシの怒声で雰囲気はぶちこわしになった。

 

「ちょっとそこ、ラブラブモードになってない?!ナルト、小桜にちょっかい出すなよ!」
「あーもー、先生ってばもう出てきたの。ちょっとあっちで
TVでも見ていてよ」
サクラに背中を押されたカカシは、まだ言い足りないのか、何度も後ろを振り返っている。
ソファーに座り
TVを見ている快が食べるチョコはカカシの物と同じだが、ナルトのチョコが倍の大きさだと知ったら、さらに騒ぎは大きくなっていたかもしれない。

 

あとがき??
こんな父ちゃん嫌だ・・・・。(涙)
今回出てこなかったけど、サスケにもちゃんとチョコは渡したようです。小桜は
11歳。
しかしゴディバのチョコ、二粒で1,260円ですよ。ひーー。
買うより、もらいたい。自分で買いたくはないが食べたい・・・・。

 

のど飴

 

桃色の毛並みの可愛い仔犬だった。
友人が捨てると言うので貰い受けたが、残念なことに忍犬の適性はない。
忙しい任務の合間、早々に新しい飼い主を見つけなければならなかった。

「誰か、いないかなぁ・・・・」
寝転がって飴玉を口に放ったカカシは、腹の上にいる仔犬がしきりに鼻を鳴らしているのに気づく。
「何、お前も食べたいの?」
軽い気持ちで飴玉を一つ犬に食べさせたのだが、次の瞬間、カカシの瞳は驚きに見開かれる。
仔犬の背中に突如として現れたファスナー。
勝手に開いたその場所からは白い手が伸び、最終的に現れたのは桃色の髪の愛らしい少女だ。
小さな仔犬の中にいたにしては、その姿形は普通の少女と変わらない。

「こんにちはー。いつも可愛がって、頂いて有難うございますv」
「え、ああ・・・、どういたしまして」
にっこりと微笑んだ少女を見上げ、カカシは唖然としたまま返事をする。
すると少女はすぐに抜け殻となった仔犬の皮へと足を突っ込んだ。
「あれ、も、もう戻っちゃうの!?」
「ええ。効き目が切れたので」

全てはあっという間の出来事で、残されたカカシは狐につままれたような表情で仔犬を見つめる。
尻尾を振って自分に擦り寄る仔犬を変化させたのは、直前に食べた飴玉の力だろうか。
とりあえず、飼い主を探すことはやめた。

「これ、全部食べていいからなv」
袋から出したいくつかの飴をカカシはまとめて仔犬の口に入れる。
これだけ食べさせれば、かなりの時間彼女と一緒にいられるはずだった。

 

あとがき??
春日井製菓の飴の
CMが可愛かったので、カカシ先生とサクラで真似してみた。
加藤晴彦くんが出ているやつ。
何気に好きなんです、彼。

 

動物好きー

 

「暫くの間、留守にするから」
休日の朝にうちは宅を訪れたサクラは、手土産の菓子を食べながら言った。
「仕事か?」
「違う。有給使って、砂の国までバカンスです。我愛羅くんが連れて行ってくれるの」
「・・・・」
笑みを浮かべるサクラの顔を、湯のみを持つサスケはじっと見つめる。
「あんなところ、砂ばっかで何もないぞ」
「いいじゃない砂漠、綺麗で!ラクダに乗って旅をするのよ。どんな感じか写真も見せてもらったし」
サクラは両手を組み合わせると、夢を見るような眼差しで喋り続けた。
「実は月を背景にしてラクダに乗るのが、昔からの夢だったのよね〜〜v」

サクラの心はすっかり砂漠に魅了されたようで、「ルルル〜♪」と名曲『月の砂漠』を口ずさんでいる。
どうやら、砂の兄弟とは火影の命令で仕事をするうちに親しくなったらしい。
とはいえ、里の外ではどんな危険が待っているか分からないのだ。
能天気に構えすぎな気がしてならない。

「それは、お前が付いて行きたいって言ったのか?」
「ううん。我愛羅くんに「俺が面倒見るから、一緒に砂の国に行こう」って言われたの」
口に含んだ茶を盛大に噴き出したサスケの気持ちは、サクラには一生分からないに違いなかった。

 

「え、それってプロポーズじゃないの?」
「・・・だよな」
任務に向かう前の休憩室、事情を聞いたナルトの第一声にサスケも思わず頷いていた。
色恋沙汰にはうといナルトでさえすぐ気づいたのだ。
サクラの鈍さの程度がどれほどかよく分かる。

「でも、サクラちゃん里にいるじゃん。お前が必死に止めたの?」
にやにやと笑うナルトだったが、別に彼が期待しているようなやり取りがあったわけではなかった。
「南の島のペンギンを見に行く約束をした」
ラクダとペンギン、動物好きのサクラにしてみれば、どちらにも会いたい。
突然の誘いに悩んだサクラだったが、サスケという付加価値もあり、砂の国より南の島を選んだらしい。

「もっと簡単に引き止める方法もあるだろうにねぇ・・・」
呆れた口調で呟くナルトを、サスケは憮然とした表情で見やる。
サクラは単純にサスケもペンギンが見たいのだと思っているようだ。
我愛羅だけでなく、サスケ本心が彼女に通じる日もまた遠いようだった。

 

あとがき??
随分前に書こうと思っていた話だった。我愛羅くんには申し訳ない・・・・。
たぶんナルト達は
17歳くらいかな。
いえ、私がエジプトに行ってみたかっただけです。一度はピラミッド見てみたいですよねぇ。ロマン。

 

木ノ葉最強伝説

 

スヌーピーが歩いていた。
いや、正確には大きなスヌーピーぬいぐるみを背負った人間が歩いていた。
1メートルはゆうに超え、店頭のディスプレイ用でしか見かけない大きさだ。
それを持っている人物が人物なだけに、道行く人々の視線を大いに集めている。
誰かが自分を指差しているのを視界の端に入れるたびに、彼はこのまま車が激しく行きかう車道に飛び出したい衝動に駆られた。

「サスケー、いいもの持ってるなぁ〜」
通りの向こうを歩くサスケを見つけたナルトは、軽やかな足取りで近づいてくる。
「彼女へのプレゼントか〜」
「・・・・うるさい」
言いながら、サスケはナルトをじろりと睨む。
だが、いくら怖い顔ですごんでも後ろにスヌーピーがいては全く迫力がない。
彼らが向かったのはもちろん、大事なお姫様がいる城だ。

「わーい、有難うvv」
「サスケくん、いつも悪いわねぇ」
小桜は巨大スヌーピーに抱きつき、サクラは礼を言いながら笑いを噛み殺している。
玄関の扉を開け、スヌーピーとサスケの組み合わせを見たときは目が点になってしまった。
およそぬいぐるみとは縁がない人間だと思っていた。
先週家に訪れた際、小桜と何か約束をしたと言っていたが、これのことだったのだろう。
小桜は今、このビーグル犬に夢中なのだ。

 

「サスケくん、汗びっしょりよ。タオル使って」
おそらく、往来で相当の緊張を強いられていたのだろう。
サクラからタオルを受け取ったサスケは額に滲んでいた汗をそれで拭く。
職場の同僚にあの恥ずかしい姿を目撃されていないことを祈るのみだ。

「小桜ちゃんって、凄いよねぇ・・・」
「え、何?」
自分の頭をぽんっ叩くナルトに、小桜は首をかしげる。
サスケも今では暗部で一つの部隊を率い、鬼の隊長として恐れられていた。
その彼に白昼堂々、スヌーピーを担がせるのは小桜くらいだろう。
サクラ似の愛らしい横顔を見つめながら、末恐ろしいと思わずにいられないナルトだった。

 

あとがき??
たまにはカカシファミリーシリーズ。
木ノ葉に車はなさそうですが、イメージで。

 

熱伝導

 

「サスケくんってば、顔は確かに文句なしに格好良いけど、取っ付きにくいわよね」
つい数ヶ月前まで彼を追いかけ回していたいのは、頬杖を付きながら言った。
くの一達が集まる休憩所で、サクラとヒナタを混じえた三人組は銘々好きなことを話し合っている。
飲み物は近くの自販機で買い、机には甘いお菓子が並んでいた。

「怖い感じ・・・がするかも」
「えー、そう?」
俯くヒナタの言葉に、サクラは不思議そうに首を傾げている。
「サスケくん、可愛いじゃない」
「・・・そんな風に思っているのは、里であんただけだと思うわよ」
「そうかなー」
腕組みをしたサクラは怪訝そうな顔で答える。
「あ、噂をすれば」

いち早く彼の気配を察したいのは、サクラに目で合図をした。
振り向くと、女だらけの部屋には入りにくいのか、扉付近で立ち往生しているサスケがいる。
「あんたを待ってるんじゃないの?」
「そうかな」
嬉々とした顔で立ち上がったサクラは、いそいそとその場所へと向かう。
いの達が遠巻きに眺める中、何か言葉を交わしたと思うと、サクラがサスケの手を握っているのが見えた。

 

「・・・・何だって?」
戻ってきたサクラに、いのはさっそく彼の用事について訊ねる。
「私、医療に関する術について勉強しているでしょう。それで、サスケくんがこの間疲れているように見えたから、ああやって手を握って、元気になるように体内のチャクラを活性化させる術を使ったのよ」
「へぇ・・・・」
サクラの説明に、そのような術があるのかと感心したいのとヒナタだったが、紙コップのココアを一口飲んだサクラは、一言付け加える。
「真っ赤な嘘なんだけどね」
「・・・・え!!?」
「私にそんな高度な術が使えるわけないじゃない。だから、手を繋いで「元気になれー」って念じただけなんだけど、サスケくんは信じちゃってるみたいなのよね。それ以来、時々こうして会いに来るの」
えへへっと笑うサクラは、サスケを騙している罪の意識はまるでないらしい。
「ね、可愛いでしょうv」
確かにそうかもしれないが、サクラのように彼を上手く手なずける芸当は、いのにもヒナタにも無理なようだった。

 

あとがき??
たまにはサスサクってみる。たぶん、サクラの術は手を握る以外、頭を撫でてあげるのも効果的です。
サスケは弟くんなので、甘えたがりのイメージなのですよ。

 

私の青空

 

「また、空を見てる」
振り返ると、綱手が缶コーヒーを持って立っていた。
晴れていれば、サクラは決まって屋上で弁当を食べている。
彼女が修行をしている部屋はこのすぐ下だ。
サクラの敷いたビニールシートの上に座ると、綱手は傍らを見やる。

「この場所、好きなの?」
「はい」
「まぁ、天気いいし。分かるけどね」
「疲れたり、落ち込んだりしたときは、青い空を見上げるんです。空は、みんなと繋がっているから」
言葉を区切ると、サクラは手にしたお結びを頬張って、また顔をあげる。
微笑みを浮かべるサクラの横顔に、綱手はその理由を尋ねたくなった。
「・・・みんなって?」
「みんなは、みんなですよ」

 

あの日も快晴だった。
旅立ちの日が近いことは、事前に知らされている。
だけれど、会いに行く気はしなかった。
怖かったから。

「サクラちゃん」
薬草を摘むため、森に出かけたときだった。
青空を背負うようにして立つナルトは、サクラにいつもと変わらぬ笑みを向けている。
「俺さ、明日、里から出るよ」
「・・・・そう」
「握手してよ」
何か餞別をと考えるサクラに、ナルトはそれだけを望んだ。
あたたかい掌と、その笑顔。
もう会えないかもしれないという不安で、手を離せなくなった。

「サクラちゃん?」
「・・・なんで、なんでいなくなっちゃうのよ。あんた達は」
同じ里で育って、同じ班になって、これからもずっとずっと一緒にいられるはずだった。
どうしてこんなにも、歩む道が違うのか。
やり場のない憤りがこみ上げてくる。
強く掌を握り締めても、ナルトはただ黙ってサクラを見つめていた。

 

「サクラちゃん」
どれだけ時間が経ったのか、サクラに自分の額をくっつけたナルトはその目を間近で見ながら言う。
「俺さ、空を見たらサクラちゃんのことを思い出すよ。そうしたら、力が湧いてくる。だからサクラちゃんもそうしてよ」
「・・・ナルト」
「空はこの地上どこにでもある。みんなを繋げてくれているんだ」
青い、空のような瞳を持つ彼は優しく微笑む。
誰でも暖かく包む、大気のような人だと、そのとき感じた。
独り占めすることは出来ないのだ。

「いってらっしゃい」

 

あとがき??
ナルトに夢見すぎですか?うちのナルト、全部こんな感じなんですが。

 

笑顔の生まれる場所

 

「眉間に皴ー」
難しい顔で机に向かっていたナルトは、その声で初めてサクラの存在に気づいた。
いつからいたのか、机の前に立つサクラは腕組みをしてナルトを見つめている。
「珍しいわね。ナルトがそんな顔するなんて」
「・・・うん」
ナルトは笑顔を見せたが、それは到底いつもの表情ではない。
難しい仕事を抱え、余裕がなかった。
任務の失敗も続いている。
サクラがわざわざ様子を見に来てくれたことは嬉しかったが、うまく表すことも出来ない。

「近頃、全然休みを取ってないんだって?」
「うん。でも大丈夫だよ。俺、体だけは丈夫だしさ!」
「ナルトって変わらないわね」
ガッツポーズを作って言うナルトに、サクラは思わず苦笑する。
「昔から「諦めない」の一言で頑張っちゃう。困っている人がいると放っておけないのよね・・・・」

そのまま、サクラの声は途切れた。
不思議に思い顔を上げると、サクラが悲しげに面を伏せている。
驚くナルトが何かを言う前に、サクラはそっとナルトの手を握った。

 

「そんなにいつもいつも、頑張らないでいいわよ」
「・・・サクラちゃん」
「木ノ葉には優秀な忍びが揃っているし、言ってくれれば私も手伝うから」
真剣な眼差しで自分を見るサクラに、ナルトは目を瞬かせた。
「何」
「初めて言われたと思って。頑張るな、なんて」
「そう?」
少しだけ微笑んだサクラにつられて、ナルトも笑う。
自然に浮かんだ笑顔は、長い間忘れていた感情を揺り起こす。
疲れた気持ちで仕事に取り組んでも、失敗が続くのは必然だろうか。

 

あとがき??
ナルサクを読みたいと言われたので書いてみた。
たぶん、5、6年後。
うちのナルトは誰かに心配されることに慣れていないので、戸惑ってしまうのです。
サクラは心のよりどころです。

 

洗濯機は俺にまかせろ

 

「先生って、意外と不器用みたいね・・・」
「そうね」
林檎をかじりながら言うサクラに、カカシも相槌を打った。
手摺もないこぢんまりとした椅子に腰掛けるサクラは、作業中のカカシをぼんやりと見ている。
洗濯機が壊れたのは、三日前。
おかげで近くのコインランドリーに通うはめになり、非常に不便だ。
修理のためにやってきたカカシは、やる気がないのかあるのか、のんびり工具をいじっている。

「ま、俺は修理工じゃないし」
「知ってるわよ」
林檎を食べ終えたサクラはつっけんどんに答えた。
「先生、困ったときはすぐ呼べって言ったじゃない」
「・・・・こういう意味じゃなかったんだけど」
スパナを握るカカシは振り向いてサクラの反応を見たが、彼女は素知らぬ顔をしている。
庭先に洗濯機を置いているため、見上げると青い空が綺麗だった。
風に流される雲を眺めつつ、壊れた洗濯機など放って、どこか遠出をしたいと思う。
もちろん、目の前にいる相棒を連れて。

「本当はもう、直ってるんじゃないの?先生、私と一緒にいたいから、嘘ついているんでしょ」
「ハハハ、そうならいいけどねー」
ためしにスイッチを入れても、洗濯機は全く動かない。
思わずため息を付いたサクラに、カカシは苦笑している。
「サクラと一緒にいたいのは、本当だよ」

 

あとがき??
まったりとね。おそらく未来の話、サクラは一人暮らし中か?
ただこのタイトルで何か書きたかっただけでした。
同タイトルの映画は未見です。

 

(おまけSSシリーズ91)『それゆけ!アンパンマン(偽)』

(注)純粋に原作のファンの方は読まない方がよろしいです。

 

子供向けのショーを依頼された7班は、さっそく舞台用の脚本を作りリハーサルをしていた。
配役はサクラがアンパンマン、サスケがショクパンマン、ナルトがカレーパンマンだ。
くじ引きで決めた配役で、カカシはジャムおじさん、その他大勢のエキストラを兼任している。
もともと、彼らは忍者だ。
術を使ったアクロバットな演技は、子供達にも好評を博すことだろう。

そして、物語は森で行き倒れた旅人を発見する場面へとさしかかった。
「可哀相に。私を食べてどうか元気を出してください」
「・・・・じゃあ、遠慮無く」
旅人を演じるカカシはおもむろにサクラの手を掴むとその場で押し倒す。
「ギャーー!ちょ、ちょっと、脚本と違うでしょー!!」
「アドリブということで」

 

「・・・・おい、このままじゃアンパンマンが完食されそうだぞ」
「困ったなぁ、子供向けのショーなのに」
サクラのピンチに、ナルトとサスケは台本を眺めながら頭を抱える。
「大体、何でアンパンマンなんだ。誰が決めた?」
「カカシ先生」

 

あとがき??
サクラに「私を食べて」と言わせたいがために、演目を決めた先生。
おそらく、くじも細工したんだと思います。
・・・冷静に傍観しているナルト達もどうかと思う。いつものことなのか。
アンパンマンファンの方、ごめんなさい。

 

(おまけSSシリーズ92)『続・それゆけ!アンパンマン(偽)』

(注)純粋に作品のファンの方は読まない方がよろしいです。

 

助けようとした旅人に襲われピンチのアンパンマン。
救ったのは意外にも彼女の仲間ではなく、天敵であるはずのバイキンマンだった。

「アンパンマン、無事!?」
「・・・・バイキンマン」
すでに半裸にされていたサクラはバイキンマンに扮するいのを頼もしそうに見上げる。
足りないメンバー補充のために呼んだのだが、彼女がいてくれて本当に良かったと思う。
面白くないのは、いのの蹴りを食らって倒れているカカシだ。
「ちょっとー、何でバイキンマンが助けに入るんだよー。設定、無視してるんじゃないの?」
「旅人が正義の味方を襲う設定の方が非常識でしょう!!」
カカシの抗議にいのは声を荒げて反論する。

「アンパンマン、こんな奴らは放っておいて、私と一緒に行きましょう」
「・・・バイキンマン」
アドリブを続けるいのとサクラを、ナルトとサスケは煎餅を食べながら見つめている。
「何だか盛り上がってきたな」
「ハッピーエンドで、なかなかいいかもね」

子供達に披露するショーの日は目前まで迫っていた。

 

あとがき??
あれ、いのサクだったんですか、これ?
続きませんので、あしからず。

 

(おまけSSシリーズ93)『会いたい』

 

『感動の再会スペシャル!』という番組をナルトの家で見ていたときのことだった。
TVは恩師と、初恋の人と、様々な感動の再会を映し出している。
「ナルトは、もう一度会いたい人とか、いる?」
炬燵で蜜柑を食べるサクラは、隣りを見ながら訊ねる。
「母ちゃん」

あとは会話が続かなかった。
何で、とも言えない。
当然の願いだ。

「「有難う」ってね、言いたいんだ」
サクラのむいた蜜柑を半分受け取ると、ナルトはにっこりと笑う。
「母ちゃんが生んでくれたから、俺はここにいる。いろんな人にあって、いろんなことが出来る」
「・・・ナルト」
「サクラちゃんとこうして炬燵でのんびりも出来るしね」
蜜柑を口に放ってナルトは再び画面へと顔を向けた。
「あとは、心配しなくて大丈夫って言いたいよ」

ナルトの生い立ちを知ってるサクラにすれば、恨み言ではなく、感謝の言葉が出るとは思わなかった。
そうした境地に行き着くまで、様々な葛藤があったことだろう。
「サクラちゃんは?誰かいるの」
「んー・・・」
残りの蜜柑を食べるサクラは、もぐもぐと口を動かしながら呟く。
「ナルトママに、息子さんは私が幸せにしますって言うかなぁ」

 

あとがき??
サクラ、プロポーズですかね。ラブなナルサクです。

 

(おまけSSシリーズ94)『2月14日』

 

大好きな人にチョコレートで思いと伝える大事な日。
サクラが大事そうに抱えてきた紙袋を渡した相手は、もちろんサスケだった。
カカシとナルトには、義理のチロルチョコが一つずつ配られる。
当然なことに、ナルトは不満を爆発させていた。

「ずるいってばよ」
「しょうがないでしょう。本命は特別製なんだから」
にいっと笑ったサクラは、寂しげなナルトの後ろ姿を見送りつつカカシに一つの包みを手渡す。
「先生、これ、お弁当」
「え?」
「ラーメンおごってもらったお礼に、今度作ってきてあげるって言ったでしょう」
「・・・そうだったっけ?」
全く覚えていなかったが、カカシは押し返すのも悪いと思い、素直に受け取る。
サクラの意味深な笑いに気付くのは、昼休みになってからだ。

 

「・・・これ」
サクラ手作りのサンドイッチを頬張ったカカシは、一口囓ったパンをじっと見つめる。
チョコレートクリームが挟まれたサンドイッチ。
サクラは、本命は特別製なのだと言っていた。
「どっちが本命なのかね」
サスケやナルトと騒がしく弁当を食べるサクラを遠目に見つめ、カカシは一人呟く。
甘い物は苦手だが、今日に限っては、残さずに食べられそうだった。

 

あとがき??
ちょっと素直じゃないサクラちゃんでした。

 

(おまけSSシリーズ95)『だーれだ?』

 

穏やかな気候で、昼食の後はどうしても眠たくなる。
午後からの任務は13時から。
あと30分はあるだろうかと考えたとき、カカシは椅子の後ろに立つ人物に目隠しをされる。
小さな掌は子供のものだ。
おそらく、7班の下忍の誰かだろう。

「サクラ?」
その掌をどけて振り向くと、カカシの呟きどおりに佇むサクラがいる。
「何で分かったの?」
気配は完璧に消していたはずだ。
そして、こうした悪戯はサクラよりもナルトがよくやっている。
不思議に思ったサクラの問いかけに、カカシは笑顔で答えた。
「サクラだったらいいなぁと思ったから」

春に咲く花の名前を持つ彼女は、蕾が綻ぶ瞬間を思わせる朗らかな笑みを浮かべる。
長い冬の季節が終わるのは、すぐ間近なようだった。

 

あとがき??
春よ恋。

 

(おまけSSシリーズ96)『熱伝導 2』

 

自分でもはっきりと分かるほどいらついていた。
仲間のミスから任務の失敗が続いている。
「気にするな」と言っても、感情がすぐ表に出てしまうのだ。
元々近寄りがたい雰囲気のあるサスケだが、近頃ではさらに拍車が掛かったようだった。

 

「サスケくーーん」
廊下を歩くサスケに声をかけたのは、元7班のメンバーであるサクラだ。
サスケの荒れた胸中を知らないのか、にこにこと笑顔で彼に駆け寄る。
「任務、また失敗したんだって?」
「・・・・・」
あまりにはっきりと言われ、怒るに怒れなくなった。
嫌味で言っているわけではないことは、その顔を見れば分かる。

「サスケくんが疲れ気味だって聞いて、助っ人に来たのよ」
「・・・・助っ人?」
「うん。サスケくん、手、出して。どっちでもいいから」
「・・・・・」
促されるままに、サスケは右手を差し出す。
すると、サクラはその掌を両手で包むように握り、何かぶつぶつと呟き始めた。
目を瞑るサクラの表情は、真剣そのものだ。

 

「はい、終わり!」
「・・・・何なんだ」
「体の中のチャクラを活性化させる術なの。こうすると元気になって気分も前向きになるのよ」
サスケの手を握ったまま、サクラは彼を見上げて満面の笑みを浮かべた。
言われてみると、何故だから気持ちが明るくなった気がする。
サクラの笑顔を見た瞬間から。

「有難う」
「いえいえ。いつでもやってあげるから、疲れたときは会いに来てね」
素直に礼を言うサスケに、サクラは照れくさそうに笑い、その場から立ち去った。
再び歩き出したサスケの足取りはサクラが現れる前よりもずっと軽いものになっている。
体の中のチャクラを活性化させる術。
機会があれば、自分もマスターしたい術だと思うサスケだった。

 

あとがき??
日記に書いた『熱伝導』の少し前の話です。
体の中のチャクラを活性化させる術というのは真っ赤な嘘。
ただ、サクラが「元気になれー」と念じただけなのですが、サスケにはよく効いたようです。
愛の力か?(笑)
サクラの笑顔を見られたら、誰でも元気になっちゃうよ、と思って出来た話。

 

(おまけSSシリーズ97)『十年前からストーカーです』

 

「サクラ、髪、もう伸ばさないの」
サクラの頭を撫でたカカシは、思い出したかのように訊ねた。
「んー、当分このままのつもりよ。洗うのも楽だし」
「そっかー。でも、そっちの方が元気なサクラに似合うかもね。昔はずっとショートだったし」
にこにこと笑うカカシにサクラも笑顔で応えたが、ふと、ある疑問が頭を過ぎる。

「先生、何で知ってるの。私が小さい頃にショートだったこと」
「え・・・」
「アカデミーに入ってすぐ伸ばし始めて、ずっとロングだったんですけど」
「・・・・・・」
不審な眼差しで自分を見つめるサクラから、カカシは不自然に目線を逸らす。
町中で可愛い女の子を見付けてはカメラで隠し撮りをし、夜中にアルバムを眺めているとは言えない。

それ以来、サクラがさりげなくカカシから距離を取るようになったのは、気のせいではなかった。

 

あとがき??
ぼろが出ました・・・・。
ロリコンはそういうことをするって聞いたんですが。果たして。

 

(おまけSSシリーズ98)『護る手』

 

「サクラはすごいなぁ」
治療済みの掌を眺め、しきりに感心しているカカシにサクラは苦笑する。
修行の最中、様子を見に来たカカシの手に傷を発見し、サクラが治してみせたのだ。
綱手の元で学び始めて、また数ヶ月しか経っていない。
サクラならば優秀な医療忍者になれそうだった。

「かすり傷だったでしょう」
「それでも凄いよ。俺には出来ないもの、誰かを癒すなんて」
サクラを見るカカシは、少しだけ寂しげに笑う。
「サクラは俺と逆なんだなぁ」

人を殺すための術を千覚えるより、救える術を使える方がずっと尊い。
自分の力量について悩んでいたサクラが、相応しい道を見付けてくれたことは嬉しい。
だが、サクラが遠くに行ってしまった気がした。

 

「・・・私、先生の手が好きよ」
遠い眼差しで横を向くカカシの掌を、サクラは唐突に掴む。
「疲れていても、落ち込んでいても、先生が頭を撫でてくれると頑張ろうって思える」
「・・・サクラ」
「それって、チャクラいらずの癒しの術だと思うわ」
重なった手に力を込めると、サクラはにっこりと笑った。
「先生と私は一緒よ。里の人達のために、方法は違っても、目的は同じだもの」

サクラに釣られるように微笑むカカシは、空いている方の手を彼女の頭の上に置く。
「それは、こうして欲しいってこと?」
「うん」
カカシの笑顔を見つめて、サクラは何故だか泣きたい気持ちになった。
忍びである限り、罪は重なっていく。
優秀な上忍であればなおのこと。
奪った命以上に救うことが出来れば、彼の心は救えるだろうかと思った。

 

あとがき??
殺す手と癒す手。
里にはどちらも必要なのです。

 

(おまけSSシリーズ99)『悪夢』

 

「どうすれば、お前は死ぬ?」
唐突に訊ねられた。
上忍であり写輪眼を持つカカシは隙がなく、そう簡単に殺せない。
だから、本人に直接訊きに来たのだろうか。

「簡単さ」
カカシは笑って桃色の髪の少女を指差す。
「あの子を殺せばいい」
大事な大事な女の子。
彼女のいない世界に何の未練もありはしない。

「・・・じゃあ、やめた」
声の主はしごく残念そうに呟く。
「それでは、意味がない」

 

 

ぱちりと目を開けると、白い天井が見えた。
一瞬、どこか分からなかったカカシだが、眠る前の状況をゆっくりと思い出す。
顔を動かすと、腹の上あたりに黒い塊が乗っかっているのが見えた。
悪夢の原因はこの重みのだろうか。

「先生、起きたのー?」
自分の家に遊びに来たというのに、ソファーで居眠りをしていたカカシにサクラは声をかける。
向かいの席にいる彼女は雑誌を読んでくつろいでいたらしい。
「ああ、ごめん」
「いいわよ。先生、ずっと仕事で寝ていないんでしょう。うちでくつろいでいってよ」
身振りでカカシに横になるよう促すサクラは、そのとき初めて猫の存在に気付く。

「おいで、先生の邪魔でしょう」
サクラの飼い猫は、呼ばれるとすぐ彼女に駆け寄った。
爪を立てて、さり気なくカカシの腕に傷を作った後に。
「・・・・サクラ、その猫って雄だっけ」
「そうよ」
サクラに抱えられた黒猫は、彼女には文字通り猫なで声を出しながら、カカシを瞳で牽制している。
発せられる殺気は本物に間違いない。

 

「猫って、殺すと祟るんだっけなぁ・・・・」
「えー、何?」
物騒なことを呟くと、カカシは再び眠りに落ちていく。
取り敢えず、共存の道を探してからにしようと思うカカシだった。

 

あとがき??
ちょい未来、サクラは一人暮らし中。
猫は祟るという怯えが心のどこかに常にある・・・・。
いえ、祟られるようなことはしていませんが。

 

(web拍手おまけSS 100)『落とし物』

 

「サクラー!」
カカシの家に向かう道すがら、サクラは駆け寄ったいのに紙袋を渡される。
「これ、落とし物で受付に届いていたんだって。あんたのでしょ」
「え・・・・」
「じゃーねー」
サクラがその紙袋を受け取ると、いのはすぐに踵を返していなくなってしまう。
見覚えのない水色の紙袋。
何故サクラのものだと思ったのか、心底不思議だった。

 

「サクラー、何、これ?」
「えー?」
サクラが洗面所で手を洗って戻ると、カカシが例の紙袋を手に持っていた。
「お土産?」
「そうじゃないんだけど・・・」
サクラが曖昧に答える間にカカシは勝手に紙袋を開けている。
そして中身を覗くなり、驚愕の表情でサクラを見つめた。

「さ、サクラ、俺のためにこんなもの買ったのか・・・・」
「え、何なの?」
奪い取った紙袋の中を見たサクラはカカシ同様目を丸くする。
巷で話題の『豊乳軟膏』。
眉唾物の商品だが、豊満な胸に近づけると評判でなかなかの売り上げらしい。
この落とし物をサクラの私物だと思い込んだいのに、彼女は憤りを隠せない。

「いのブタめ・・・・」
「サクラーー、俺は胸がなかろうとえぐれていようと、愛してるから大丈夫だよv」
「うるさーい!」
抱きついてくるカカシを押しのけてサクラは声を張り上げる。
馬鹿にされた恨み、何としても晴らすつもりだった。

 

あとがき??
先生は無い乳大好きだから、大丈夫ですよサクラちゃん。
そういう問題でもないのか。

 

拍手用おまけSSと日記に書いたSSをまとめてみました。
さかのぼればまだあるんですが、この辺で。

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