似たもの同士
「まもり姉ちゃん」
数回目の呼び掛けで、彼女はようやく振り返った。
「あ、ごめん、セナ。何?」
「・・・大丈夫?何だか顔色悪いけど」
心配そうに見上げるセナに、まもりは笑いかける。
「平気よ。ちょっと寝不足なだけだから」セナは部活を休んで帰ることを勧めたが、まもりは頑として聞かない。
今日はチームのメンバー全員が揃っての、部室の大掃除の日。
選手の補助役である、マネージャーの自分が出ないわけにいかないというのが、まもりの主張だった。
「揃ってるかー」
コンビニの袋を片手に扉を開けると、部室は静まりかえっていた。
動揺した眼差しでヒル魔を見ているのは、セナとモン太の一年生コンビだ。
「・・・何だよ。通夜会場か、ここは」
怪訝な表情で言ったあと、彼は床に倒れ込んでいるマネージャーに気づいた。
「な、何だか体調が悪かったみたいなんだけど、ここに来るなり眩暈を起こして、それで・・・・」
矢継ぎ早に喋り出したセナの前を横切ると、ヒル魔は意識のないまもりへと手を伸ばす。「先に掃除してろ」
唖然としているセナ達に言うと、まもりを横抱きにしたヒル魔は校舎に向かってすたすたと歩き出した。
人を一人抱えているというのに、その足取りはしっかりしたものだ。
「か、格好良い・・・」
「僕達じゃ、まもり姉ちゃんを担げないからね」
申し訳なさそうに頭をかくセナを、モン太はぎろりと睨み付ける。「お前、まもりさんのこと気づいてたのに、何でここに連れてきたんだよ!」
「言っても聞かないんだよ、昔から。ぎりぎりのところまで我慢して、突然倒れるの。それで大人達は初めて姉ちゃんの異変に気づくんだ」
ふいに言葉を切ったセナは、考えるようにして腕を組む。
「・・・まもり姉ちゃんとヒル魔さんって似てるかも」
「え、どこが!!?」
「人に弱みを見せまいと頑張っちゃうところ」
仰天するモン太へと首を傾けたセナは、少しだけ寂しげに微笑んだ。
「もうちょっと、素直になってくれてもいいのにね」
最初に目に入ったのは、医務室の白い天井と蛍光灯の光。
そしてジョギング中の野球部の掛け声が耳に届く。
セナと共に部室に入ったとたん、立ちくらみを起こしたことをまもりは思い出した。
誰が自分を医務室に運んでくれたのもおぼろげながら覚えている。
「まだ寝てろ」
ベッドから身を起こそうとしたとたん、誰かに制された。
「風紀委員の仕事にマネージャー、成績優秀で夜中まで勉強していれば倒れるのも当然だな。全部完璧にこなそうなんて考えてると、そのうち病気になるぞ」
傍らを見やると、医務室に備え付けのパイプ椅子に座ったヒル魔が何かの本を読んでいる。
彼がここに運んでくれたのは分かっているが、起きるまで留まっているとは思わなかった。「・・・・ずっといてくれたんだ」
「掃除をさぼりたかっただけだ」
顔を上げたヒル魔は、いつもの意地の悪い笑みを浮かべる。
「セナじゃなくて悪かったな」
「ううん」
憎まれ口を叩く彼に慣れているまもりは、にっこりと笑い返した。
「心配してくれて有難う」
あとがき??
ヒルまも、良いですよね。私が書くと全然甘くならないんですが・・・・。以心伝心で通じ合っているイメージ。
私、まもセナが本命なんですけど。(茨道!)
セナの台詞を書きたかっただけなので、またアイシールド21駄文を書くかは微妙。
本編が面白すぎて、つけ込む隙がない。突っ込みどころ満載のNARUTOとは違う。(笑)