可愛い可愛い可愛い


昔なじみに偶然出くわし、飲んで帰った夜のことだった。
ほろ酔い気分で帰宅した銀時は、扉を開けるなり絶叫しそうになる。
家の中に化け物がいた。
その物体が聞き慣れた声を出さなければ、幽霊が大の苦手な彼は、おそらく失神していたことだろう。

「銀ちゃん、おかえりヨー」
「・・・・えーと」
一気に酔いさめた銀時は、掌を額に押し当てながら考え出す。
足音を聞きつけたのか、玄関先で待ち伏せしていたこの物体は、神楽らしい。
その彼女が、何故白塗りのお化けのような顔になっているのか。
一人で考えていても、分かるはずがなかった。

 

 

 

「結野アナだったのか・・・・・」
神楽の奇妙な白塗りメイクの理由を知った銀時は、がっくりと項垂れる。
結野アナは銀時が毎日毎日しつこく口に出す名前だ。
そして彼女の真似をして化粧をしているうちに、メイクが原型を留めないほど濃くなったというのが真相らしい。
新八がいれば止めただろうが彼は実家に帰っている。
道具の持ち主であるキャサリンが、激減した高価な化粧品を見て何と言うか、恐ろしくて考えたくなかった。

「それで、何で結野アナみたいになろうと思ったんだよ」
クレンジングクリームで化粧を落とし、洗顔した後、銀時は彼女の顔をタオルでごしごしと拭いている。
「銀ちゃんに可愛いって言ってもらいたかったアル」
「・・・・何だ、それ」
「銀ちゃん結野アナのことが好きネ。こうすれば早く帰ってくると思ったアルよ」
「・・・」

元気のない神楽の声に、顔を拭う銀時の手が止まる。
思えば、近頃飲み歩くことが多く、家に帰るのが遅かった。
帰れないことも屡々だ。
新八がいれば大丈夫だと思っていたが、彼とて姉のいる家に帰ってしまう時がある。
その間、彼女は一人きりなのだ。
普段の傍若無人な振る舞いから全く想像できなかったが、まだ十代前半の少女、誰かがそばにいないと寂しいのかもしれない。

 

「・・・らしくねーなー」
「イッ、イタタタッ、痛いアルよ!!」
唐突に頬を引っ張られた神楽は、蹴りを入れて銀時から離れた。
間一髪でその攻撃をさけた銀時は、口を尖らせている彼女の頭にぽんっと手を置く。
「そーそー、そうやって鼻息荒くしている方が似合ってるよ、お前は」
「馬鹿にしてるアルか!?」
「いーや。まだ子供なんだから、化粧なんかしなくても十分可愛いって言ってるんだ」
屈んで神楽と目線を合わせた銀時ははっきりとした口調で言う。
ぽかんとした表情の神楽を見て彼は少しだけ苦笑いをした。

「・・・もう一度言うアル」
「可愛い可愛い可愛い」
「結野アナよりもか?」
「ああ。ほんのちょっとな。早く帰るようにするからもう特殊メイクで驚かすんじゃねーぞ」
「うん」
素直に頷いた神楽は、嬉しそうに顔を綻ばせる。
愛らしいとしか表現できそうにない笑顔は、毒舌と怪力さえなければ、女子アナや巷のアイドルなど目ではない。
そうなれば悪い虫が近づきやすいというわけで、万事屋のメンバーとしては、彼女はこのままで良いのだろう。

「もう寝る・・・・」
大きな欠伸をして寝床へと向かう銀時に、神楽は後ろから飛び付いた。
「銀ちゃん、今日一緒に寝ても良いアルか?」
「いーけど、どうなっても知らねーぞ」


あとがき??
ラブラブ。
神楽ちゃんは新八より銀ちゃんにそばにいて欲しかっただけなのですが、彼の方は気づいていないですね。
だからもてないんだよ、銀ちゃん。(実際、もてもてだと思いますが)
私が書くと可愛い系の神楽嬢になるのですが、それは恋をしているからなのですね。沖神でも銀神でも。
二人が一線を越えた話、書いてもいいのかどうか。


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