散歩に行った神楽が、びしょぬれになって帰ってきた。
外は快晴だ。
「真選組のあいつのせいで、噴水に突っ込んだアル」
不満げに語る神楽のために、銀時は棚からタオルを持ってくる。
新八は買い物に行って留守だ。

「早く風呂入れ」
「んー・・・・」
銀時が濡れた髪をタオルでごしごしと拭くと、神楽は生返事をした。
あまり綺麗な水ではなかったのか、彼女の体からは妙な匂いが発せられている。
そしてタオルを片手に目線を下げたとき、薄手の上着が透けているのを見て銀時はぎょっとした。

「・・・お前、下着、何にもつけてねーのか」
「パンツはいてるアル」
「いや、そうじゃなくて」
もごもごと口ごもる銀時は、「ほら、胸を隠す、アレだよ」と、珍しく照れた表情で頭をかいている。
「必要ないアル。ぺったんこだし」
銀時を一瞥した神楽はあっけらかんとした様子で脱衣所へと向かう。
確かに、無いに等しい胸だが、全くというわけではない。
以来、薄着でうろつく神楽を見ると妙に心配になるのは、親心というやつかもしれなかった。

 

 

 

何度かさりげなく話題にしたのだが、神楽は嫌そうに顔をしかめるだけで言うことを聞かない。
とはいえ、「神楽の胸が気になる」とは、他人には相談出来なかった。
家にいるときはどんな格好をしていようとかまわないが、また外で水をあびるようなことがあれば、非常に問題だ。

こうなれば実力行使しかないと、強引に神楽を連れて女性用下着売り場へと足を踏み入れた銀時は、そのまま身動きが出来なくなった。
ちらほらといる客は、女性ばかりだ。
神楽と共に立ちつくす銀時は異様に目立っており、まして、男である彼がどの下着を選べばいいか分かるはずもない。
「いらっしゃいませ」
ふいに声をかけられ、銀時はびくりと肩を震わせる。
「何か、お探しですか?」
年輩の店員は二人を不審な眼差しで見ることもなく、優しい笑顔を浮かべていた。
これならば、いくらか話は出来そうだ。

 

「こいつに、合ったものが欲しいんだけど」
「いらないアルヨ!乳バンドなんて、動くのに邪魔なだけアル!!」
相変わらず反発する神楽だが、銀時が手を繋いでいるために逃げることはない。
「えーと、お嬢様には、そうですね・・・・」
暫く考えた店員は、二人を店の隅にあるコーナーへと連れて行く。
そこが胸がふくらみ始めた少女達のための下着を置いた場所だったようだ。

「これはね、スポーツをする人のためのブラだから、それほど締め付ける感じはないですよ。他にも、こんな感じのはどうかしら」
「・・・・ほら」
銀時に背中を押され、神楽は店員と共に渋々試着室へと入っていく。
神楽はなにやら店員とぼそぼそ話し込んでいたが、これで悩み事が一つ減ると思うと、ホッとした。
もう、思春期の娘を持つ父親のような心境になるのは勘弁だ。

 

「有り難うございます」
「いえ、お役に立てて良かったですわ」
会計をすませ、頭を下げた銀時に店員もにこやかに答えた。
「いいお兄さんがいて羨ましいわね、お嬢ちゃん」
「違うアル、銀ちゃんは兄ちゃんじゃないネ」
自分に笑いかけた店員に、銀時の隣りに立つ神楽はきっぱりとした口調で言う。
「愛人なの」

 

 

 

家路につく銀時の足取りは重い。
神楽がよけいなことを言ったせいで、別れ際のあの店員の眼差しはツンドラ地帯のような冷え冷えとしたものだった。
警察を呼ばれなかっただけ、マシだろうか。

「・・・お前、今度はどんなドラマにはまっているんだよ」
「ドラマじゃなくて、映画。『レオン』」
銀時の手を握る神楽は全く悪びれた様子はない。
彼女の頭の中では、銀時が冷酷な殺し屋で、神楽は彼に助けを求めた少女、という設定になっているようだ。
そのとき見ている物の影響で、たまに無責任な発言をするところが神楽の困ったところだった。

「銀ちゃん、これしてると、胸の形がよくなるそうネ」
「そうかい」
「おっきくなったら銀ちゃんに触らせてあげるアル」
何気ない神楽の一言に、銀時は石も段差もない道でつんのめった。
「・・・何、馬鹿なこと」
「嫌アルか?」
顔をあげた神楽は、不思議そうに銀時を見つめている。
神楽は子供だ。
今日言ったことなどすぐ忘れるのだろうが、ここは乗っておいた方が賢明か。

「よろしくお願いします」
「うん」
神妙に答えると、神楽は偉そうに胸を張って答える。
再び前方へと顔を向けて歩き出した二人だが、銀時が考えていたのは「乳を育てるためには何を食べさせれば効果的だろうか」ということだった。


あとがき??
恥ずかしすぎて死にそうです。終わる!


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