愛があれば星の差なんて 2
神楽が買い忘れたトイレットペーパーを購入するため、24時間営業のスーパーマーケットへと向かった新八は、帰宅するなり「あれ?」と首を傾げる。
TVが付けっぱなしになっていた。
だが、皆がくつろぐ場所であるソファーの周りには誰もない。
「二人とも、どこかに行ったのかな?」
TVのスイッチを切った新八は、扉を開く音に反応して振り返る。
パジャマ姿の神楽が、洗いざらしの髪にタオルをかぶせ、苺牛乳を飲んでいた。「おかえりヨー」
「ああ、ただいま」
彼女が今まで風呂場にいたのは一目瞭然だ。
それならば銀時は一人で出かけたのだろうかと思いつつ、新八はソファーに座る神楽に訊ねる。
「銀さんは、また飲みに出かけたの?」
「違うヨ。銀ちゃん、まだ脱衣所」
「・・・・・え」
表情を強張らせた新八は、神楽に続いて髪を拭きながら現れた銀時にぎょっとする。
彼女同様、苺牛乳の瓶を片手に持つ彼はどう見ても湯上がりだ。
そして、この家に風呂場は一つしかない。
「い、い、い、一緒に入っていたんですか!!!!」
「そうアル」
「ちょっと、銀さん!!」
「こいつなぁ、髪の毛洗うの下手なんだよ。風呂から出た時に、いっつもシャンプーが髪に残ってる。だから、俺が洗ってやってるんだ」
神楽の頭をポンポンと叩き、平然と語る銀時に新八は開いた口が塞がらなくなった。
実の親子でも、10歳を過ぎる頃には一緒に風呂など入らなくなる。
まして、二人は赤の他人なのだ。
仲が良すぎるにも程がある。「神楽ちゃんは女の子なんですよ!!何か間違いがあったら、どうするんですか!」
「何、変な心配してるんだよー」
傍らで小言を繰り返す新八に、銀時は思い切り顔をしかめて反論する。
「大丈夫だって。神楽、初潮まだだから」
「なお悪い!!っていうか、何で妊娠の心配してるんですか、あんた!!!」新八の悲鳴混じりの声を出している間、銀時の膝枕でソファーに横になる神楽はすやすやと寝息を立てている。
あんまりな光景を目にして、新八は彼女の身を案じて抗議している自分が馬鹿らしくなってしまった。
「神楽ちゃんさぁ、僕らと出会う前は一人でちゃんと身の回りのこと出来ていたの?それとも、誰かにやってもらっていた??」
いつものように、銀時に髪を二つに纏めてもらい、鼻歌を歌いながら外に出た神楽に新八が声をかけた。
新八の目に、彼女はあまりに幼く見える。
銀時と一緒にいるときは、とくにそうだ。
一人で髪を洗えず、結うことも出来ず、今までどうやって生活していたのか心底不思議だった。
親元から離れて暫くは、他の人間のもとにやっかいになっていたはずなのだから、もっと自立していていいはずだ。「一人だったら、何でも自分でするアルヨ」
定春の体を撫でながら、神楽はにっこりと笑って言う。
「でも、銀ちゃんは優しいから甘えたくなるアル。銀ちゃんがいるから、私はパピーとマミーがいなくてもここにいられるネ。銀ちゃんは一番大事、大事ヨ」
「・・・・」
その笑顔に、彼女が銀時に寄せる信頼がかいま見えたようで、新八は複雑な気持ちで口をつぐむ。
胸にざわつくこの思いは嫉妬だろうか。
だが、それがどういった意味合いなのか分からず、一層悩みを深くする新八だった。
あとがき??
新八が好きなのは、銀ちゃんか神楽か、微妙ですねぇ。(笑)
どっちでもいいです。万事屋でぐるぐると仲良くしてくれれば。