幕末純情伝 3


草木も眠る、丑三つ時。
半身を起こした土方は、強い覚悟と共に傍らを見やる。
そこには、部屋を移動した後ものうのうと土方の部屋で休息を取る沖田がいた。
実は、沖田に土方をマークするよう頼まれた神楽なのだが、そのようなことを彼が知るはずがない。
今日こそは、沖田が男か女か、はっきりとさせるつもりだ。

息を殺し、すやすやと寝息を立てる神楽に近づいた土方は邪魔な掛け布団を取り払う。
今、彼女が着ているのは一枚の浴衣のみ。
神楽の襟元を掴んだ土方はごくりと唾を飲み込んだ。

 

「副長ーーーー、最近、付き合い悪いですよーーー」
「一緒に飲みましょうやーーー」
唐突に開かれた襖の向こうには、年中明け方まで飲んでいる酒好きの隊士達がそろっている。
そして、彼らが目にしたのは、神楽に馬乗りになって浴衣を脱がそうとしている土方だ。
これで誤解をするなと言う方が無理だった。

 

 

 

「副長と沖田隊長が出来ていたなんて・・・・」
「俺は前々からあやしいと思っていたよ。沖田隊長のあの執拗なまでの副長いじめ。あれは愛情の裏返しさ」
隊士達が数人揃えば、口にするのは皆、同じ話題だ。
昨夜の出来事はあっという間に他の隊士達の知るところとなった。
それまで二人を色眼鏡で見た者は皆無だったが、事が起こると全ての行動が不審に思えてくるから不思議だ。

「でも、分かる気がするよ。沖田隊長、この頃妙な色気があるし」
「あ、やっぱりお前もそう思うか!」
「稽古の後とか、何度抱きしめたいと思ったことか」
「そうそう、真っ白な肌が桜色になって、甘酸っぱい体臭が香ってきて・・・」
悶々と話し込むうちに話はあやしい方向へと進みだした。
むさ苦しい男しかいない場所に少女が混じれば違和感があって当然なのだが、事実を知らない彼らはすっかり混乱している。
彼らのひそひそ話は道場から出てきた神楽が通りかかると、ぴたりと止まった。

 

「こんな所に集まって、何かあったアルか?」
「べ、別に・・・」
神楽の問い掛けに視線をそらす中、一人の隊士が彼女の前に進み出る。
「あの、これ、隊長のために買った饅頭です!食べてください」
「わぁ」
どこに隠し持っていたのか、山のように饅頭の入った紙袋を差し出された神楽は瞳を輝かせる。
食べることが生きがいの神楽には何よりのプレゼントだ。
「嬉しいアル!」
神楽が思わず彼に飛び付くと、周りにいた隊士達が大きくどよめいた。

「お、沖田隊長、俺はナッツのチョコ持っていますよ!」
「俺は焼き菓子を!!」
わいわいと詰めかける隊士達は、神楽のおやつを次々と貢いでいく。
土方とねんごろの間柄なら自分達にも勝機はあるはず。
まだ神楽を沖田だと思い込んだままだったが、彼女を中心に異様な盛り上がりをみせる真選組屯所だった。

 

 

 

 

「・・・・神楽、お前、身長伸びてないか?」
「成長期だから当然でさァ」
「・・・・何なんだよ、その喋り方は」
「江戸に住み着いていれば、訛りはうつるものじゃねーんですかい?」
「・・・・」
神楽に化けて万事屋に潜入した沖田は、TVを見ながら銀時の詰問をかわしていた。
神楽と同様に鬘を付け、声も変えているものの、銀時の疑惑はどうも晴れない。
宇宙人とはいえ、そう簡単に体が伸び縮みするものだろうか。

「新八ー、俺はどうも神楽が別人になったように思えるんだが」
「何、馬鹿なこと言っているんですか。そんなことあるわけないでしょう」
流し台で洗い物をする新八に話しかけると、ぴしゃりと言いこめられてしまった。
「神楽ちゃん以外に、こんなにお米をたいらげる女の子なんているはずないでしょう。まぁ、いつもより小食みたいですけど」
「・・・・」
神楽と同じ大食漢の沖田は、10人前の食事をぺろりと平らげている。
自分よりも神楽と一緒にいる時間が長かった新八にこうもきっぱり否定されては、銀時も食い下がるわけにいかなかった。


あとがき??
どうなるんだろう、これ・・・・。書こうと思えばいくらでも続きますよ。神楽総受で。
タイトルは『幕末純情伝』ですが、内容は『御法度』っぽいですね。
すんごいエロくなりそうだったのですが(直接の描写はないけど設定が)、理性がそれを押し止めております。どないしよう。
ああ、この設定では沖田(16歳)、神楽(14歳)です。身長差はそんなにない様子。
沖田くん、チャイナ服ですがさすがにスカートは遠慮してパンツルック。


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