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幕末純情伝 5
「副長、何か悩み事でもあるんですか?」
「ああ?」
「いえ、何だか最近元気がないっていうか、食事も残していましたし・・・」
「・・・・・」
気遣わしげな視線を感じ、土方の眉間に皺が寄った。
ミントンしか頭にない山崎に心配されるとは、よほどぼんやりしていたのだろう。
真選組の副長として、そんなことでは示しがつかない。「何もねーよ。それより、仕事に集中しろ!」
「は、はい」
土方が不機嫌な声を出して一睨みすると、山崎は慌てて市中へと目を配った。
巡回の最中に指名手配犯と出くわすことは滅多にない。
だが、平穏な町の治安を維持するためには彼らが目を光らせることも必要だった。
局長の近藤がふらふらとしていても組織の規律が守られているのは、ひとえに副長である土方の努力のたまものだ。
悩んでばかりはいられないと、土方は自分に言い聞かせる。
そして、頭に常にある沖田のことは隅へと追いやった。
寝ても覚めても彼の顔を思い出すなど、まるで恋をしているようだ。
恋、男相手に。
自分の発想に青ざめた土方はその考えを打ち消すように必死に頭を横に振る。
真選組一の色男と言われ、芸者衆にも人気の自分がよりにも寄って男に懸想するなどあるはずがない。
いや、あってはならなかった。悶々と考え込む土方を、山崎は心配そうに見つめている。
近頃の彼はいつもこのように自分の世界に入り込み、苦悶の表情を浮かべているのだ。
理由については誰にも口を割らないのだから、どう対処すればいいのかも分からなかった。
「あ、副長、沖田さんですよ」
道行く人々の中に知った顔を見付けた山崎は明るく言ったが、土方は思わず体をびくつかせる。
昨夜は沖田を相手にした淫らな夢を見たせいで、朝からまともに顔を見られなかったのだ。
ちなみに夢での彼はきちんと女の体になっていた。
自分がそこまで妄想していたと思うと、恥ずかしくて気が狂いそうになる。
「あれ、万事屋の旦那も一緒だ・・・・・っていうか、沖田さんが無理矢理引きずられているような」
「何!!?」
間髪入れずにその方角を見ると、確かに、沖田は銀時に腕を引っ張られて何か口論をしている様子だった。
「銀ちゃん、離すアルー!!これからみんなと見回りに行くアルヨーー!」
「うるせー!どうも変だと思ったら、こんな遊びをしてやがったのか」
「楽しいネ。屯所の食事も美味しいし」
「アホ!!帰るぞ」
「嫌アルー!!」
神楽は全体重をかけて拒むが、元が軽いために腕を引く銀時に全く逆らえずにいる。
曇り空の下、午前中の稽古をさぼって屯所の外を彷徨いていた神楽は、偶然銀時と出くわしたのだ。
それまで誰にも気付かれずにいたというのに、変装をした神楽を一目見て、銀時はその正体を看破した。
沖田と神楽が密かに入れ替わっていた悪戯も露見してしまったというわけだ。「じゃあ、今、家でごろごろしてるのは沖田なんだな」
「そうアル」
「全く、変な小細工しやがって・・・」
乱暴に薄茶の髪を掴んでそのウイッグを取ろうとした銀時は、遠くからでもはっきりと分かる尋常でない殺気に後ろを振り返った。
すでに刀を抜いた状態で銀時を睨んでいるのは、犬猿の仲である土方だ。
彼の後ろでは山崎がおろおろとして事態を見守っている。
「てめー、うちの総悟とどんな関係だ!!」
「どんなって・・・・」
腕を掴んだままの神楽をちらりと見ると、銀時は土方に視線を戻してさらりと言う。
「いろいろヤッちゃった関係」
神楽が今、沖田の姿でいることはあまり頭になかった。
彼の目にはどんな服を着ていようと神楽は神楽だ。「・・・・斬る」
「ふ、ふ、副長、駄目ですよー!こんな、人目があるところで」
冷や汗をかきながら土方を止めようとした山崎は、鬼の形相の彼を見て口をつぐむ。
こうなったら、彼は誰が何を言ってもきかない。
剣術は苦手な監察の山崎がどうこう出来る状況とも思えなかった。
「死にたくなければ、その手を離せ!」
「おいおい、落ち着けよー。これはお前達の知ってる沖田じゃねーぞ」
片手を振って合図した銀時は、神楽のウイッグをはぎ取った。
そこからこぼれ落ちたのは、沖田のものではない、柔らかそうな桃色の髪だ。
何が起きたのか分からず、呆然とする土方と山崎を見やり、銀時は苦笑して話を続ける。
「お前らも騙されていたみてーだな。うちでTV見てくつろいでるのが、本物の沖田。これは神楽だ。声はこの機械で変えていたらしい」
銀時がからくりを暴露するなり、土方は最近起きた身の回りの珍事がようやく呑み込めた気がした。「じゃあ、こいつは連れて帰るから・・・」
「待て!!!」
神楽の腕を引っ張って歩き出した銀時を、再び土方が呼び止める。
「そいつは真選組の一番隊隊長だ。置いていってもらおうか」
「・・・・はぁ?」
素っ頓狂な声を出した銀時が首を傾げる中、地面に落ちたウィッグを拾った土方は神楽の頭にそれをのせた。
「これで総悟だ。お前の家にいるニセモノはお前にやる。だからこいつはうちに戻せ」
神楽の肩を強引に掴んで引き寄せると、土方は彼女をかばうようにして銀時の前に立つ。
年齢が少しばかり低いのが問題だが、男に惹かれたわけではないと分かって土方は心から安堵していた。
そうなると、みすみす気にくわない男に彼女を取られるわけにいかない。
「うちの娘を誘拐する気か、コラ!」
「総悟のことは、姉のみつさんにくれぐれもよろしくと頼まれている」
「だから、それは神楽だって言ってんだろーが」
「総悟だ」
不毛な言い合いが延々と続き、業を煮やした銀時は大きな声で神楽に呼び掛ける。
「おい、神楽!!俺とこの瞳孔開きっぱなしの男とどっちがいいか、はっきり言ってやれ!」
「んー・・・、銀ちゃんはいつも乱暴で痛いだけだけど、多串くんは優しくしてくれたから気持ち良かったアル」この返答には、当然神楽に選ばれると思っていた銀時だけでなく、土方と山崎も仰天した。
「て、てめー、神楽に手を出しやがったな!!」
「知らん!!!」
「本当なんですか!?」
目を丸くした山崎が問いつめると、神楽はしっかりと頷いてみせた。
「昨日の夜、多串くんが布団に入ってきたときは驚いたアルヨ。お酒の匂いが凄くて、こっちまで酔っぱらったネ」
「おい!!どういうことだよ!」
「・・・・えーと」昨夜、土方は珍しく酒に酔い、女の沖田を押し倒すリアルな夢を見た。
だが、朝起きたときに彼女は消えており、沖田は男なのだから願望が見せた幻だとばかり思い込んでいたのだ。
何故沖田の部屋で寝ていたのか不思議に思ったが、あまり深いことは考えなかった。
しかし、それがニセモノの神楽だったとしたら、妙に現実味をおびてくる。
「・・・神楽の内股にあるほくろの数、いくつか知ってるか?」
「三つ」
即答した土方に対し、正解を知っている銀時は鋭い眼差しで木刀を構えた。
「殺す」
近くの露店やその商品を壊しながら斬り合う銀時と土方を、道行く人々は遠巻きに眺めている。
土方が制服を着ているところから、犯罪者の取り締まりの最中だと思ったようだ。「苺味で良かったんだよね」
アイスクリーム屋から戻ってきた山崎は、二人の戦いぶりを見ている神楽に買ってきたものを手渡す。
「うん。有難うネ」
嬉しそうに顔を綻ばせる神楽は年頃の少女そのものだ。
沖田と似通った顔立ちだが、ウイッグや変声機だけで彼女を男と思い込んでいたなど、真実を知ってしまっては信じられない。
「あ、あの、神楽ちゃん」
「んっ」
「今度、僕の部屋にも遊びに来てくれる?」
「いいアルヨ」
にこにこと邪気のない笑みを浮かべる神楽を見て、山崎は思わず頬を染める。
本物の沖田には悪いが、彼より神楽がいた方が、屯所内がずっと華やかで楽しいものになりそうだと思った。
あとがき??
どっちが勝ったんでしょうねぇ。
こういう、ただれた話はNARUTOのサクラ受でよく書きますが、銀魂でやって良かったのかどうか・・・。
長々と続いたシリーズですが、これにて終了。
1から読んで下さった方は、有難うございましたv