プレゼント U


 「酷い顔・・・」

ナミは鏡を見詰めて一人愚痴る。
鬱な気持ちは簡単には晴れそうになかった。
おかげで顔もむくんで体調も最悪だ。

ナミは気分を変えるために、夜風にあたろうと部屋の扉を開く。
そこに、運悪く廊下を歩くウソップと出くわした。
「ナミ・・・」
顔をしかめたナミに、彼は咎めるような視線を向けてくる。
「サンジがすごく心配してたぞ。何があったのか知らないけど、飯くらいちゃんと食べに来いよ。お前はこの船の航海士なんだから、仕事はちゃんとしろよな」
「・・・・」
正論だ。
ナミは俯いて唇を噛む。

「分かったか」
厳しい声音で確認するウソップに、ナミは小さく呟く。
「・・・嘘よ」
「え?」
「嘘よ。サンジくんが心配してたなんて。ビビと私に同じプレゼントするような奴なんだから、ビビがいれば、満足なはずよ」
ナミのその言葉に、ウソップは大方の事情を察知する。
ウソップは頭をかきながら、申し訳なさそうに声を出した。

「あのよ、ビビが何を言ったのか知らないけど、あいつにあのブローチをやったの、俺だぞ」
「嘘!?」
顔を上げるなり決め付けるナミに、ウソップは憮然とした表情になる。
「嘘じゃない。このあいだ、ビビの髪飾りをうっかり踏んづけて壊しちまってな。ビビは気にするなって言ってくれたけど、俺の気がすまないし。それで、代わりになるものを何かプレゼントしようと思って前に寄った港で買ったんだ」

 

港町についたはいいが、ウソップには女物の装飾品の良し悪しなど分からない。
困り果てているときに、偶然サンジがあの蜜柑のブローチを購入している場面を目撃した。
女の扱いの上手いサンジのことだ。
同じ物を買えば、間違いはないはず。
そう思い、ウソップはサンジの去った後、同じ店に入り同じ品物を購入した。
そして、それをビビに渡したというわけだ。

ウソップの話を聞き終え、ナミは驚きの表情のまま硬直していた。
そうとは知らず、自分はサンジに何を言ったのか。
色を失ったナミに、ウソップが優しく声をかける。

「サンジなら、みかんの木のところにいたぞ」
「・・・・」
二の足を踏むナミの背を、ウソップが強く叩いた。
「ほら、早く行ってやれよ」
「・・・うん。ありがと、ウソップ!」
駆け出したナミのうしろ姿を見詰め、ウソップはため息混じりに苦笑する。
「やれやれ」
頭のバンダナをずり上げながらこぼす。
「世話の焼ける奴らだ・・・」

 

甲板にやってきたナミはきょろきょろと辺りを見回す。
ウソップに告げられた場所には、すでにサンジの姿はなかった。
走ったせいで乱れてしまった息を整え、ナミは額の汗を拭う。
大きく息を吐いたあと、ナミは固く目を閉じた。

元々恋人でも何でもないサンジが、ナミ以外の女性にプレゼントをしていたところで、ナミに怒る筋合いはない。
一人で勘違いして、やつあたりをして。
「馬鹿は私だわ」
夜はもう遅い。
ナミは明日の朝、まだ誰も起床しないうちから朝食を作るためにキッチンにいるであろうサンジに、謝ることを決めた。

部屋への道すがら、ナミは長時間水分を口にしていないことを気付く。
気持ちに余裕がなく、全く気付かなかった。
ナミは渇いてしまった喉を潤すために、キッチンへと足を向けた。

 

かすかに開いた扉から、明りが漏れている。
こんな時間に一体誰が。
同じように水分補給に来た仲間がいるのかと、ナミはキッチンの扉を開いた。

「ナミさん!」

そこにいた人物に、ナミは大きく目を見開く。
キッチンでは、サンジが料理器具を手に、何やら作業をしていた。
「・・・何してるの?」
今はすでに深夜とよべる時刻だ。
料理を始める時間ではない。
ナミは呆然と訊ねる。

「ん、ナミさんに食べてもらおうと思って。新しいデザート考えたんです」
サンジはボウルを片手に、逆の手でテーブルの上にのった蜜柑を指差した。
「これ、さっき勝手に木から取って来ちゃったんですけど、まずかったですかね」
サンジはナミの顔色を窺うようにして言う。
ナミに食べてもらうためのデザートとはいえ、蜜柑の所有権はナミにある。
心配げな表情で問うサンジに、ナミは目じりをつり上げた。

「何で!」
「え?」
「何でそんなに優しいのよ。私、あんなに酷いこと言ったのに!!」
ナミは謝るためにサンジを探していたことも忘れ、拳を握り締めて声を荒げた。
怒っているならともかく、何もなかったように優しくされたら逆に素直に謝ることができない。
見当違いな腹立たしさにナミは苛立っている。

自分を睨みつけるナミを、サンジは戸惑った表情で見詰め返す。
そして、静かな口調でナミに語りかけた。

「あれぐらい、全然怒ることじゃないですよ。ナミさん、何だか様子が変だったし。それに、知らなかったですか」
サンジはにっこりと微笑みながら言った。
「俺のナミさんへの愛は無限なんですよ」
腕を広げて大げさなアクションでアピールするサンジに、ナミは口の端をゆるめ、苦笑いする。
「・・・キザね」
笑顔を見せたナミに、サンジはほっとしたように相好を崩す。

「俺は、ナミさんに豪華な宝石なんて似合わないと思います」
サンジはナミを見詰めてあっさりと言う。
「だって、ナミさんは内面が綺麗だから、外側の飾りなんて、必要ないですもん」
無邪気な笑みを向けられ、ナミは、どっちが綺麗なのよ、と一人ごちた。
他の人間が言ったのだったら冗談まじりの返答をしただろうが、サンジに言われると、何故か赤面してしまう。
ナミは誤魔化すように額に手を当てる。

 

「 ・・・ごめんね 」

小さく呟かれた声に、サンジは温かな笑みを返した。


あとがき??
ついに書いちゃったよ!サンナミ、いや、ナミサン!!ナミ視点。最初で最後。(笑)
ウソップ、いい味出してるな。よっ、燻し銀野郎!
済みません。ナミはもっとはすっぱな言動をするイメージなんですけど、私が書くと、どんな女子キャラでも可愛らしくなります。ごめんなさい。(平謝り)
ナミの精神年齢が下がる。サクラちゃんと一緒。そして気付いた。
私、サンナミというより、ナミサンだったらしい。
ナミがサンジさんをあしらっているように見えて、実はサンジさんはその一段上のところでナミに付き合ってあげているというか。理想。(笑)
ナミに気付かれないところで、実は遊び人のサンジさんがいいなぁ。
ジゴロ!女泣かせ!!浮気はばれなきゃいいのよ!(←!?)

サンジさん、イメージ的に可愛い人。ルフィは可愛いでなくて、格好いいだと思うのですが。え、違う?
どうにもルフィ受けってのが私、駄目。彼は攻め攻めでしょう!
それにしても、まさかワンピ、ナミサン駄文書く日がくるとは思わなかった。
別人になるのが嫌だから絶対に書かないと思っていたのに。やはり別人になってしまったけど。(笑)

ゲームの評価としては退屈だと思っていたけど、私にナミサン駄文を書かせたという点では『とびだせ海賊団!』凄いゲームかもしれない・・・。
どうしよう。このままサンナミ(ナミサン)中心サイトになっていたら。(ない)
こんなの書いちゃいましたが、私、ルナミ本命です。というか、ナミがルフィ以外の男によろめくのは想像できない。
ルフィ以上の男なんて、そうそういないだろうし。(^_^)
でも、気になるのは断然サンナミ(ナミサン)なんだよなぁ。

うう。いつか、サンジ視点のサンナミ書いてみたい・・・。そのときはクールなナミを。(ドリーム)


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