新婚さん(おまけ)


庭には花の一つも咲いておらず、草木が乱雑に飢えられているだけだ。
下っ端の隊士達が綺麗に掃除をしているが、どこか殺風景だった。
だが、神楽はその庭を一望する縁側が好きらしく、姿が見えないときは決まってここにいる。
何をするわけでなく、ただその板敷きに座っているのだ。

 

「・・・仲がよろしいですね」
通りかかった山崎は、彼らを見つめてからかうように言う。
神楽がいつも通り縁側にいたが、今日はその背中を支えるように沖田がいた。
「万事屋の旦那が、いつもこうしていたみたいですぜ」
沖田にもたれ掛かる神楽は相変わらず居眠り中だ。
また、徹夜でゲームでもしていたのだろう。

「知ってるかい、こいつが、庭を眺めている理由?」
「さあ、何ですか」
「ここを真っ直ぐ進んでいくと、万事屋がある」
「え?」
山崎は驚いて振り返ったが、屯所の周りを囲む壁に阻まれて、視界は限りなく悪い。
「目では見えませんぜ」
くすりと笑ってみせる沖田は、腕の中の神楽を抱え治した。
「なぁ、こいつ、返した方がいいと思いますかい」
「・・・・」
妙に寂しげな声を聞きながら、もう離せやしないだろうに、何故そうしたことを訊くのかと思う。
だから、結論だけを言うことにした。

 

「沖田さんと喧嘩したり、ゲームしているときの奥方さんは、楽しそうに見えますよ。それに、沖田さんといるのが嫌だったら、いくら止めても万事屋にさっさと帰るでしょう」
暫く一緒にいれば、神楽の性格は山崎も分かっている。
にっこりと笑ってみせる山崎に、沖田は明るく言葉を返した。
「すまねぇな」

もう一つ、付け加えるのを忘れていた。
以前のように冷たく接しているようで、いろいろと神楽のことを考えている沖田。
そうした心遣いは、彼女にちゃんと伝わっているはずだった。

 

 

 

廊下を進んで土方の部屋の前を通りかかった山崎は、ぼそぼそとした声に眉を寄せる。
少しばかり開いた襖から覗くと、土方が兎に一生懸命に話しかけていた。
「ぴょん吉、強く生きろ!こんなちゃらんぽらん名前を付けられて不憫だが、お前には真選組が付いている!!」
「・・・・」
嫌々ながら世話をしている間にすっかり情が移ったらしい。
だが、当然ながら兎は素知らぬ顔で鼻を動かしている。
そっと襖を閉めた山崎は、しみじみと呟いていた。
「面白い人だなぁ・・・・本当に」


あとがき??
土方さん、大好きです。


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