『観覧車にて』

 

「卑怯者ーーーー!!」
「ここまで来たら、がたがた言うない。観念しな」
肩を座席に押しつけられ、沖田がのし掛かれば神楽の体は全く動かなくなる。
何しろ、狭い観覧車。
逃げようにも場所がかぎられており、新月の影響で力の出ない神楽は簡単に掴まってしまう。
何も疑わず乗り物にのったのが馬鹿だった。

「安心しなせェ。チューするだけだって、言って・・・」
「嘘アルーー!じゃあ、何で脱がそうとするアルか」
彼の言葉を遮ると、神楽はボタンがとんだ服の前合わせをしっかりと押さえながら言う。
「・・・・つい」
「誰かーー、お巡りさんー!!!ヘルスミー!!」
目の前にいるのが警官だということも忘れ、神楽は叫び続けた。

 

「・・・・何だかあのゴンドラ、揺れてない?」
「上は風が強いのかなぁ」
「でも、あれだけっていうか・・・・」
観覧車の行列に並ぶカップルは、神楽達の乗るゴンドラを見上げてそんな会話をしていた。
もちろん、中の様子など全く頓着していない。

一周20分の巨大観覧車。
神楽の貞操は風前の灯火だった。

 

あとがき??
おそらく、泣き出した神楽ちゃんが思わず銀ちゃんの名前を呼んで、興醒めした沖田くんがでこチューで我慢して終わりです。
おでこにチューも、いいですよね。
成功していてもいいけど、20分で大丈夫なのかと、いろいろよけいな心配が。(以下、略)