I LOVE YOU TO DEATH
昼食後の午後のひと時。
気持ちのいい晴天に、甲板ではクルー達が思い思いにくつろいでいた。
暇をもてあまし船内をうろついていたサンジは、座り込んで何やら作業をしているウソップに足を止める。「何してるんだ?」
「ああ、これ、直してるんだよ」
ウソップは振り向くことなく返す。サンジは、ウソップがまた何か新しい発明をしているのかと思ったが、違った。
ウソップの手には古ぼけたラジオ。
「ふーん・・・」
サンジは立ったまましげしげとそのラジオを観察した。
見れば見るほど、今まで音が出ていたのが不思議なほどの年代物。
直るまでの手間隙を考え、サンジはあっさりと言う。
「新しいの買えばいいじゃないか」
しかし、ウソップは頭を振った。
「いや、俺はすぐ買い換えるってのは気に入らないんだ。“鳴かぬなら、鳴かせてみようホトトギス”だよ」
ウソップは昔の偉人の言葉に準えて答えた。ウソップらしい前向きな言葉に、サンジは明るく笑う。
「お前は?“鳴くまで待とうホトトギス”ってタイプか」
ウソップは首を回らして訊ねる。
サンジは顎に手を当て、考えるような動作をした。
「そうだな・・・・」
偉人の言葉には三通りの答えがある。
“鳴かない鳥(ホトトギス)”を前に、どういった行動を取るか。
“鳴かせてみよう”という、好奇心旺盛なタイプ。
“鳴くまで待とう”という、楽天的タイプ。そして。
「俺は、殺すかな」
サンジが口にしたのは、意外にも、残された一つ。
「どんなに大事にしても、返してくれなきゃ寂しいし、そのうちに誰か別の人間になびいたりしたら目も当てられない」
聞く者が耳を疑う、ぞっとするような低い声音だった。
手にしたトンカチを取り落とし、ウソップは目を大きく開けたままサンジを見上げる。
しかし、どこか遠くを見ているサンジの瞳は、ウソップを映していない。
熱のこもった深い色の瞳。
まるでここにはいない、誰かに想いをはせているような。ウソップはサンジがこのような瞳をするのは、誰を見ているときなのか十分に知っていた。
「それに、焼き鳥にして食べた方がいいだろ」
取ってつけたように言い、サンジは表情を和らげる。
「な」
サンジは確認するようにウソップを見た。
その笑顔に、ウソップは曖昧な笑みで応える。
「焼き鳥!?どこにあるんだ!!!!」
どこから聞きつけてきたのか、ルフィがバタバタと騒がしく駆けてくる。
「・・・お前、食べ物のことになると地獄耳だなぁ」
サンジはため息混じりに呟くと踵を返した。
「これからナミさんのために3時のおやつを作るんだ。お前の分も作ってやる」
「おーー!!!」
ルフィは嬉しげに両手を上げて答える。そのままうきうきとした顔でサンジの後ろ姿を眺めていたルフィは、ふと、傍らのウソップに目をやった。
落としたトンカチを拾うこともなく、硬直したように動かないウソップ。
「ウソップ。お前も腹減ってるのか?顔色悪いぞ」
「・・・いや。大丈夫だ」
額の汗を拭うと、ウソップは冴えない顔で返事をする。
サンジの言葉が。
冷たい声が、耳から離れない。
あれは、本当に“ホトトギス”を指してのことだったのか。
それとも、他の何かを示す比喩表現だったのか。ウソップは前者であることを強く祈った。
あとがき??
暗い!!!しかも、当初書こうと思っていた話はこれではない!!
いつかそれも書かなければ。サンナミ熱が冷めない間に。タイトルは映画『殺したいほどアイラブユー』から。
でも、訳すと『死ぬほど好き』か??
サンジくんの負け。